難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

聴覚リハビリテーション(3) アリゾナ州立大学のクリニック

2008年08月02日 09時11分39秒 | 補聴器
080801-ばら083040.jpg今、アメリカで聴覚リハビリテーションが補聴器のフィッティングのレベルからカウンセリングも含む難聴者の全生活支援に発展しようとしていることはある意味で驚きだ。

アメリカでは、難聴者にもカウンセリングが進んでいると思っていたが、オーディオロジストがカウンセリングも出来るようになりつつあるということが新しい傾向ということか。

ハワイの風さんからのレポート、3項目。

ラビット 記
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アリゾナ州立大付設の言語聴覚クリニックは、全16時間(週2時間×8週)の無料ARプログラムを提供している先駆的存在。

院長のイングレッド・マクブライド博士によれば、「ARの萌芽期には、補聴器をフィッティングして読話を少し教えたら終わり、だった。今はそれはAR全過程の始まりでしかない」と言う。

効果的なARとは、
1)補聴器と人工内耳はARの一部、
2)聴覚障害者は自分の心理社会的変化やコミュニケーション対策などについて学ぶ必要がある、
3)専門家による情報提供は大事だがクライアントが実際に訓練することはもっと大事、
4)環境の変化に適応するカウンセリングが必要、
5)難聴は本人だけでなく周りの問題(コミュニケーションは双方通行)、
といった考えに基づき、
A)読話を含めた包括的コミュニケーション対策の強化訓練、
B)補聴援助機器・技術に習熟し駆使、
C)肉体的・心理的・社会的変化に適応するための個人・家族カウンセリング、
を特に重要視する。

家族や聴覚管理の専門家がARの講座を履修することの恩恵も大きい。マクブライド博士の8週間のARコース詳細については、
http://www.hearinglossweb.com/res/hlorg/shhh/cn/2008/ws/ar.htm
を参照(英文)。

*本稿は、HLAA(全米難聴者協会)の2008年全国大会で発表されたワークショップ原稿を元にしています。





聴覚リハビリテーション(2) 保険サービス

2008年08月02日 09時11分27秒 | 補聴器
ひまわり080724-084530.jpg聴覚リハビリテーションが医療サービスで、保険でまかなわれるという考えはオージオロジストが医師と同じような専門的な資格を要する専門家ということがある。
保険でなければ自費で受けるというのは難聴者のリハビリテーションを受ける権利が保障されないだろう。


ラビット 記
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全米言語聴覚協会(会員数13万の言語聴覚士・言語療法士・その他言語や聴覚にかかわる専門家の有資格団体)も、ARプログラムを提供することを長年会員に勧めてきたが、実際には、クライアントを見る限られた時間内で医療保険対象外のARが提供されることはほとんどない。

ARを保険適用医療サービスにするにはだいぶ時間がかかりそうだが、現在修士課程にはないカウンセリング学を、博士課程で必修にすることはもう行われて いる。博士号をもつオージオロジストが増えれば、少なくともクライアントの立場や心情を理解する専門家が増えることになる。

ARが保険対象外、という一見マイナスな要因も、「優良商品には必ずある無料アフターケアや保証サービス」という見方もできる。

つまり、質の高いARプログラムを提供すれば、顧客の満足感が高ま

→専門家に対する信頼感が増す→コミュニケーションがよくなる
→AR全体の効果が出る→ARの第一歩であった補聴器や人工内耳
といった技術をうまく使いこなすことになる
→補聴器返品率の減少→オージオロジストの時間の有効利用と評判アップ
→補聴器・人工内耳・補聴援助機器の利用者がさらに増える、

という、長期的な経済循環効果が期待できる。
健康維持のスポーツクラブがそうであるのと同じで、保険適用外でも長期的効果が広く知られれば、私費でもARプログラムに参加するクライアントが増えるかもしれない。
(続く)




聴覚リハビリテーション(1) カウンセリングの重視

2008年08月02日 09時06分51秒 | 補聴器
080801-紅いバラ083050.jpgハワイの風さんから、聴覚リハビリテーションとオージオロジストについて、手紙がありました。


ラビット 記
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アメリカでは現在、オージオロジスト(言語聴覚士)になるためには、最低大学院修士課程の教育が必要であるが、これだけでは十分な聴覚リハビリテーショ ンプログラムをクライアントに提供できないとして、博士課程を必須にしようとする動きがある。聴覚リハビリテーションというのは英語の
Audiological Rehabilitation (AR)
の訳で、複数ある定義の本質をまとめると、"聴覚障害のもたらす様々な機能的・心理的・社会的損失や生活上の困難を、技術・教育・訓練・啓蒙・カウンセリングなどのあらゆる手段を通じて減少する包括的プロセス#となる。
(続く)