難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

難聴者の就労支援施策について(2)

2008年08月18日 19時45分42秒 | 就労
080812-あさぎ083646.jpg080724-黄色の花084515.jpg8月7日の要望書の続き。

この厚生労働省の検討会には、聴覚障害者当事者の団体が委員として入っていない。
就労施策を障害者権利条約の合理的配慮の観点から検討しようとするなら、障害者当事者を含めた検討が決定的に重要である。
議論の幅が広がり、時間もかかるかも知れないが、不十分な施策により
実施に移された時のトラブルや混乱を考えるなら、ずっと問題が少ない。

それぞれの聴覚障害者団体は他の関係団体に呼びかけて要求の集約が必要となる。


ラビット 記
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4.雇用者側の「合理的配慮」義務に対応した行政側の就労時施策として「障
害者雇用割当制度」、またそれに基づく「障害者雇用納付金制度」があります
が、就業・労働場面では「障害者介助等助成金」を雇用者側の「合理的配慮」
を補完するものとして明確に位置づけることが必要と考えます。

因みに聴覚障害の場合、現在の「障害者介助等助成金」は「手話通訳担当者の委嘱助成金」しか明文化されておらず、手話の理解の出来ない中途失聴・難聴者への配慮はありません。「障害者介助等助成金」制度は、障害者の就業時に必要な支援・配慮(例えば会議などでの要約筆記者の準備)に対応して整備・拡充すべきです。

5.就業に当たっての「合理的配慮」には、要約筆記者の派遣など人的支援に止まらず、会議室での磁気ループの設置、拡声機能のある電話機、テレビ電話の設置など補聴援助システムの整備、電話リレーサービスや遠隔コミュニケーション支援サービスの利用の確保を図ってください。

6.就業場面での「合理的配慮」は、必要なタイミングを外しては意味があり
ません。コミュニケーション支援に当たっては事後救済ではなく、即時的救済が可能となる施策を講じてください。

7.各種助成制度の申請要件は、中小企業にとってハードルが高いものです。企業規模に応じて、申請要件を緩和する措置を取ってください。

8.遅れた難聴者、中途失聴者の就労支援施策の検討のために、当事者団体、関連機関を含めた研究会を設けてください。





難聴者の就労支援施策について(1)

2008年08月18日 13時08分54秒 | 就労
080806-緑の葉085010.jpg全難聴は、8月7日、厚生労働省の「障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」で支援の充実に付いて、意見を述べた。

中途失聴・難聴者の就労問題について、こうした専門の研究会で意見が述べられたのは初めだ。



ラビット 記
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2008年8月7日

労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会
委員各位
社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 高岡正

中途失聴・難聴者の雇用・就労問題に関する団体意見

国連障害者権利条約が「合理的配慮の欠如は差別」であることを明記し、障害者の雇用促進と職場での合理的配慮の提供を義務付けたのは画期的なことであり、早急にわが国の労働法制・施策が障害者権利条約に整合したものに整備されることを求めます。労働法制・施策整備に当たっての団体意見を下記の通り提出しますので宜しくご検討願います。

1.施策の前提として、わが国の聴覚障害者の定義が国際的に非常に狭く、身体障害者手帳の保持者(両耳70dB以上の聴覚障害者)が極端に少ないこと、又聴覚障害者のコミュニケーション手段が非常に多様で、大多数の聴覚障害者は補聴器の使用、筆談などで日常のコミュニケーションを図っていることを理解してください。(添付資料参照)

2.採用試験、面接試験の際に応募者の希望に従った情報保障を採用者側にて準備することを義務付けてください。又、採用可否判定においてその情報保障の利用を不利益な判定材料としないで下さい。

3.コミュニケーションに課題を持つ聴覚障害者の場合は、就労後の労働環境の問題が非常に重大です。就労した後十分なコミュニケーション支援が得られず、転職・離職・昇進差別など多くの問題に直面しています。
聴覚障害者の労働実態を調査し、就労後の差別事例、業務遂行に困難な事例を集積し、就労場面での「合理的配慮」の類型化、ガイドライン作成を進めてください。又、聴覚障害者が職場での問題を相談できる部門を企業内に設置することを義務付けて下さい。
また、難聴者問題に精通した相談支援員、カウンセラー等を養成して下さい。難聴者等当事者のジョブコーチの研修にあたって、コミュニケーション支援、情報保障を担保して下さい。
ハローワーク等に要約筆記者の配置や補聴援助システムをするなど、難聴者等の相談に配慮してください。
(続く)





国際的燃料高騰と難聴者施策

2008年08月18日 08時59分32秒 | 福祉サービス
080817-花弁が尖った花123228.jpg遅い昼食をとりながら、日本農業新聞を読んでいると、北海道の来年産の米作は肥料費、飼料費、燃料資材費の高騰で30haでも採算割れとある。
こんな大規模な農家は北海道でもどのくらいあるか分からないが日本農家は平均1ha以下だ。ということは来年の米作は壊滅ということになる。
今年の漁業関係者のデモどころではない。

その下には、内閣府が発表した国民生活に関する世論調査では悩みや不安を感じている人が初めて70%を超え、その不安の一番多いのが「老後の生活設計」で6年連続首位だ。一番不安に感じている世代は50代が76.2%、40代が74.4%、60代が71.1%と高齢者世代の前に多い。二番目の不安は「自分の健康」49.0%、今後の収入と資産42.4%と続く。
これを受けて、政府に対する要望の一番が社会保障改革が72.8%とダントツだ。二番目が物価対策の56.7%だが21.8%増と急上昇している。

これは、国際的な投機マネーによる燃料高騰が我が国の食料危機にまでなっていることを示している。また農業問題だけではなく、当然社会全般に大きな影響を与え、日本経済の構造的問題が社会福祉の根幹にも影響を与えることを意味する。
つまり、社会経済のいろいろな変化が社会福祉にも大きな影を落とすことになる。当然社会福祉施設の運営にも自治体の障害者施策にも影響する。

「これからの地域福祉のあり方に関する検討会」の報告書がフォーマルな支援とインフォーマルな支援と言っているのは、市民のニーズの多様化にマンパワーが足りないというだけではなく、財源も足りないということが背景にある。

要約筆記事業においても、任意事業の要約筆記奉仕員の養成に予算が避ける自治体は限られることを考え、都道府県にその養成の責任を果たすように要望が必要だ。
また、要約筆記奉仕員の地域の聞こえのバリアフリーに関わるボランティア、地域の福祉学習やボランティア活動のコーディネーター、コミュニティ・リーダーとしての積極的な意義を打ち出す必要がある。そのことで自治体に地域福祉の担い手としての新たな位置づけを獲得しなければならない。


ラビット 記