難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

国際的燃料高騰と難聴者施策

2008年08月18日 08時59分32秒 | 福祉サービス
080817-花弁が尖った花123228.jpg遅い昼食をとりながら、日本農業新聞を読んでいると、北海道の来年産の米作は肥料費、飼料費、燃料資材費の高騰で30haでも採算割れとある。
こんな大規模な農家は北海道でもどのくらいあるか分からないが日本農家は平均1ha以下だ。ということは来年の米作は壊滅ということになる。
今年の漁業関係者のデモどころではない。

その下には、内閣府が発表した国民生活に関する世論調査では悩みや不安を感じている人が初めて70%を超え、その不安の一番多いのが「老後の生活設計」で6年連続首位だ。一番不安に感じている世代は50代が76.2%、40代が74.4%、60代が71.1%と高齢者世代の前に多い。二番目の不安は「自分の健康」49.0%、今後の収入と資産42.4%と続く。
これを受けて、政府に対する要望の一番が社会保障改革が72.8%とダントツだ。二番目が物価対策の56.7%だが21.8%増と急上昇している。

これは、国際的な投機マネーによる燃料高騰が我が国の食料危機にまでなっていることを示している。また農業問題だけではなく、当然社会全般に大きな影響を与え、日本経済の構造的問題が社会福祉の根幹にも影響を与えることを意味する。
つまり、社会経済のいろいろな変化が社会福祉にも大きな影を落とすことになる。当然社会福祉施設の運営にも自治体の障害者施策にも影響する。

「これからの地域福祉のあり方に関する検討会」の報告書がフォーマルな支援とインフォーマルな支援と言っているのは、市民のニーズの多様化にマンパワーが足りないというだけではなく、財源も足りないということが背景にある。

要約筆記事業においても、任意事業の要約筆記奉仕員の養成に予算が避ける自治体は限られることを考え、都道府県にその養成の責任を果たすように要望が必要だ。
また、要約筆記奉仕員の地域の聞こえのバリアフリーに関わるボランティア、地域の福祉学習やボランティア活動のコーディネーター、コミュニティ・リーダーとしての積極的な意義を打ち出す必要がある。そのことで自治体に地域福祉の担い手としての新たな位置づけを獲得しなければならない。


ラビット 記




再調整した人工内耳のその後 3日目。

2008年08月15日 12時35分54秒 | 人工内耳
080815-BTE081641.jpg今朝から、フリーダムのコントローラーを耳かけ型にした。
首回りがすっきりしたので楽だ。なんといっても夏の必需品の首のタオルがコードに絡まないのが良い。
耳かけ型にしたのは、人工内耳がマップを調整したことで聞こえるようになったことと、バンクーバーで一緒になったNさんから電池のことを詳しく聞いて、人工内耳用の電池を取り寄せたからだ。国際難聴者会議のコクレア社のブースで、消費者担当副社長にもその電池はだめだ、もっとよく聞こえる電池があると説明していた。
NPO法人まちづくり福祉推進ネット
http://www.matidukuri.net
welf@e-mail.jp

昨夜は、岡村ようこの「千の風になって」のイントロのギターがよく聞こえた。左に補聴器をつけて一所懸命耳を慣らしていたときの音楽だ。人工内耳でも音色がわかる。歌も分かる。
よく、他にも聞き込んでいる歌なら分かるだろう。

今朝のテレビのニュースで「日本の航空会社は」と聞こえた。画面を見ると安寧の言葉があったので北朝鮮関係のニュースだったかもしれない。

勤務先で定例の業務報告の電話を人工内耳でしてみた。「おはようございます。」「はい、分かりました。」と担当の女性が答えていたのは分かった。
顧客のサンプル依頼の入力を受注担当者の女性に頼んでみた。
「じゃあ、そのサンプルリストのコピーをちょうだいよ」というのが分かった。「ちょうだい」ではなく「ちょうだいよ」というのが分かったので、私に対する気持ちも感じ取れたような気がした。

その後、運送業者が「今している○○が足りない」と言ってきた。何度か聞いたが分からない。補聴器を取り出そうかと思ったが「曜日」というのだけ分かった。それで昨日渡した「月曜日指定配送」のシールが足りなかったのだ。
管理担当の女性から「納得のゆくものが出来ましたか」と言われたので驚いた。作業改善の品物を頼んだのでその出来映えを聞かれたのだ。

日常会話の微妙な部分が分かるというのは嬉しい。みな、言葉の言い方やニュアンスで、人間関係を円滑にしている。難聴者はこれが聞こえないので、かなりトラブルの元になっているのだろう。



ラビット 記




社会福祉概論3回目のレポート

2008年08月14日 08時32分44秒 | 社会福祉の学習
080805-092617.jpg080814-080616.jpgQさん、
おはようございます。

社会福祉概論の第三回目のレポートは4時頃、書き上げることが出来ました。
今回はどういうことを学んだかというと、社会福祉行政の市町村、都道府県、国の役割とか、権利擁護の意義です。権利擁護実践は社会福祉専門職の実践そのものということですが大変共感を感じた部分です。

また、ケアマネジメントの視点と方法、チームアプローチの視点と方法はフォーマルなケアはインフォーマルなケアとあいまって充実すると言うことは、要約筆記者派遣事業と補聴器購入ほじょ事業などは地域の要約筆記ボランティアの理解と支援によって利用の促進が墓慣れるので、難聴者支援にも当てはまるものでした。

レポートを書くためにテキストを部分的にしか読んでいませんが、レポートを書き終えたので、これからゆっくり読んでみたいと思います。
学んだこととこれまで難聴者運動を実践してきたことが一つ一つ結びつくのでとてもよく理解できます。

10/12、13日は後期のスクーリングがあります。これの要約筆記者の派遣を再度学校側に依頼しています。前期は市が負担したのですが、今度は学校側に負担してもらおうと再度お願いしています。

8月はあと3つもレポートを出さないといけないので大変。


ラビット 記




再調整された人工内耳と「千の風になって」

2008年08月13日 08時47分20秒 | 人工内耳
080812-3つのマイク222318.jpg再調整された人工内耳でWebの「千の風になって」を聴いてみた。
補聴器のようにはまだ聞こえないが、それでも字幕付きなのでうたっている歌詞は分かる。もっと、聞き込めば聞くだけで歌詞も聞こえるようになるだろう。
http://blogs.dion.ne.jp/rabit/archives/6071743.html

そうだ、去年の今頃は人工内耳の装用を考えて、左耳に補聴器を付けて聞いてみたりしていた。
今年の夏も人工内耳のトレーニングで頑張ろう。


ラビット 記





地デジのアクセシビリティ 手話放送と「目で聴くテレビ」

2008年08月13日 08時46分01秒 | 放送・通信
080806-085232.jpgデジタル放送のアクセシビリティの内、手話放送の取組みが遅れている。手話は実写の動画にすると映像の容量が大きいが、FLASHで手話を表現できれば出来ると いうことだ。
現在のデジタル放送のデータ放送に載るのではないか。

このFLASHに字幕が付く機能が付いた。
TimedTextというのは、W3Cで検討されていた字幕の統一様式だ。

ラビット 記
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FLASHの字幕(キャプション)対応
* FLASH CS3で、かんたんに字幕(キャプション)をつける機能がついた。
1. FLVPlaybackCaptioningコンポーネントをステージに置く。
2. 「パラメータ」で字幕の内容を書いたXMLファイルを指定する。
* XMLファイルはTimed Textという仕様にする。内容は単純な構造のXMLファイル。
http://japan.cnet.com/blog/webclip/2008/08/12/entry_27012882/
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> === アクセシビリティ に関する Google ニュース アラート ===
>
> アクセシビリティ規格JIS X 8341-3:2009はWCAG2.0とほぼ同じに
> CNET Japan
> 2008年7月18日(金)、NPO法人ハーモニー・アイ主催のWebアクセシビリティのセミナーに参加した。そのなかで、アクセシビリティ規格
> JIS X8341-3:2009の動向について情報があったので、お伝えしたい。 アクセシビリティ規格JIS
> X8341-3:2009はWCAG2.0とほぼ同じに。 ...
> http://japan.cnet.com/blog/webclip/2008/08/11/entry_27012880/




再調整した人工内耳 初日と二日目

2008年08月12日 23時10分00秒 | 人工内耳
080812-083621.jpg080812-3つのマイク222318.jpg昨日、病院から家まで、再調整した人工内耳(フリーダム)だけ付けて帰った。帰りのバスや電車の車内の音、帰宅したテレビの声、家族との会話、今までの4つのマップのどれよりも聞こえる。
新しいマップを使って数時間だが、周囲の音はよく聞こえる。

テレビのクイズ番組はテロップと字幕を読みながらだと問題ない。趣味の番組で「帆布」とテロップがでてなんと読むのか聞かれたが、ハンプと聞き取れた。
オリンピックの番組は字幕がないので何を言っているのか聞き取れなかった。

再調整して二日目。
出勤すると前の上司が話しかけてきた。声の高い方だがノーマルなマップのままで、富士登山で近くに落雷があって九死一生を得たという話は分かった。細部は分からなかったので補聴器を付けると今までよりステレオに聞こえる。今日はそのまま両耳に付けていたが補聴器と人工内耳の聞く割合は7対3から3対7と人工内耳で聞くウェートを高くした。
夕方の課内ミーティングがあったが、聞き取れなかったのでまだ要約筆記は必要だ。
夜の「難聴者の集い」の実行委員会は、人工内耳もT回路にすると磁気ループのおかげでよく聞き取れた。

6月の半ばくらい以来だから約2ヶ月ぶりのマッピングだ。その間は、補聴器を付けていた右耳の外耳炎の治療や仕事の関係で病院に通うことが出来なかったのだ。
この間、よく聞こえない人工内耳に精神的にも焦りがあったのは正直なところだ。


ラビット 記




地域福祉と難聴者支援

2008年08月12日 18時56分40秒 | 福祉サービス
080812-083646.jpgQさん、

A県Z市の社会福祉協議会のホームページを見ました。地域福祉推進事業と地域の福祉力向上事業(住民主体事業)、地域生活支援事業(当事者支援事業)とありますね。いまは社会福祉というのは、地域福祉のことなんです。

全難聴はこの地域福祉の中に難聴者の支援を取り込む仕組みを作ろうとしています。難聴者が集まるだけでなく、高齢者や地域の中にいる難聴者をその地域で生活したり活動することを支援する仕組みです。
介護の在宅福祉サービスを受けるのに要約筆記を使う、地域福祉活動に難聴者が加わるのに要約筆記を使う、老人大学で学ぶのに要約筆記を使うというように、難聴者が要約筆記を使うのは難聴者協会の例会だけではなく、会員でない難聴者が地域で地域の一員として何かをしようとした時、それを支えるのが要約筆記です。

普通の高齢者が受ける社会のサービスを難聴者が受ける場合にコミュニケーション支援サービスを併用するのです。
傾聴ボランティアというボランティアがあります。一人暮らしのお年寄りの家を訪ねて、安否確認と生活やそのほかのニーズを把握するために訪問するボランティアですが、これは難聴者は出来ないのでしょうか。
そんなことはないのです。難聴者も要約筆記者と一緒に行けば「傾聴」ができるんです。逆に高齢者側が難聴の場合、傾聴ボランティアの訪問を受ける時、要約筆記が付けばそのボランティア活動を受けられるのです。

こうした地域の福祉と要約筆記が一体のものとして、展開していけるように考えていました。


ラビット 記




新しい病院で人工内耳の再調整の結果

2008年08月11日 20時06分31秒 | 人工内耳
080811-転院170902.jpg人工内耳と補聴器の両方を装用するための調整を新しい病院ですることにしていた。
それが今日だった。土曜、日曜の講義のことで頭が一杯ですっかり忘れていた。
ST(言語聴覚士)は人工内耳と補聴器の両方の装用にも取り組んでこられたそうだ。

最初にどうかといわれたものは「反響音」(実際には反響していないが)があるものの人工内耳だけで先生の話していることが分かった。
最後のマップに切り替えた時点では、読み上げたのを3つの文章から選択したり、物語のどこを読んでいるかは口元をみないでも問題なく指示出来る。しかし「盛る」、「掘る」、「富む」、「込む」などを区別するのは半分くらいしか分からなかった。

正直1回目の調整で、補聴器なしでここまで聞こえるとは思わなかった。口を見ながらなら会話するのはほぼOKだ。この時補聴器をしていない。

今までのマップは20ー40dBの小さな音も聞こえる設定だったのを45ー70dBの設定にしたのでうるささはかなり減った。全体的にキンキンするので高い音もカットした。
これで、あとはテレビや朗読など自分の声、会話を人工内耳で聴くことを練習することと言われた。

次に、医師がデジタル補聴器の調整をしようとしたら、PCからアクセスできない状況とのこと。補聴器自体が壊れている可能性があるとのことなので、補聴器を調整して、両方の聞こえを合わせるのは次回になってしまった。


ラビット 記





デジタル放送移行の予測

2008年08月10日 08時47分04秒 | 放送・通信
GOOGLEのニュースによると、2011年の7月の地上波デジタル放送に移行時にアナログのテレビからデジタルテレビに変えるのは75%しかいないということだ。

聴覚障害者団体は、視聴覚障害者向け放送の充実や「目で聴くテレビ」の保障などについて、要望している。

先日、放送行政に関わる人から、アナログにしか対応してないアイドラゴンが今日まで製造され、それを市町村が給付してきたことに驚く、総務省は2001年にデジタル放送に切り替えることを放送事業者、放送機器メーカーなどに周知してきた、今更デジタル対応でない機器の責任なんか取れないと言い放ったのにはこちらこそ驚き、怒りを禁じ得ない。

現在の放送が手話放送に全く対応していなく、緊急時の放送には字幕放送すらない状況で、聴覚障害者団体が自らの力で聞こえない人の命と安全を守るために手話と字幕を付けた放送をしてきたのだ。
阪神淡路大震災や多くの台風、茨城県原子力事故で命を失わったり、必要な情報もなく危険な状態にあったり、被害を受けたという事実をまともにみようとしない姿勢にはあきれるしかない。

緊急災害時の聴覚障害者の情報保障の実験事業には郵政省時代から当局の関係者が参加しており、通信放送機構TAO(情報通信研究機構NICT)を通じてこの実験事業に助成をしてきたことはいったいなんだったのか。

地上デジタル放送に移行することでテレビが視聴できなくなる人々の問題を審議している情報通信審議会情報通信政策審議会は2月の審議会で、視覚障害者、ろう者、中途失聴・難聴者の立場でデジタル化移行の問題点を指摘したにも関わらず、その後発表された第5次中間答申で、経済的弱者への対応は盛り込んだが、情報弱者である視聴覚障害者のことについては一言もふれられていないのは、異常だ。

9月に発表されるという第6次中間報告には、これまでのアナログ放送でも視聴が出来なかった障害者、今まで視聴できていたのが出来なくなる視聴覚障害者に国の責任としてしっかりとした施策の提言を盛り込むべきだ。


ラビット 記
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デジタル放送に関するグーグルニュース
約75%がアナログ終了までに地デジに対応予定―地デジ定期リサーチ
インターネットコム
地上波のテレビ放送は、2011年7月24日までにアナログテレビ放送が終了し、地上デジタル放送に完全移行する。いったいどの程度の人々がデジタル放送に移行するのだろうか。 このレポートは、インターネットコムと goo リサーチによる「地上デジタルテレビ放送に関する定期 ...
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広島原爆慰霊祭の秋葉市長の言葉

2008年08月08日 08時44分53秒 | 権利
080806-広島080547.jpg080806-広島081520.jpg今日8月6日は、広島の原爆慰霊祭の日だ。

朝からNHKが中継している。しかし、字幕はない。

夜のニュースの時には字幕放送が行われるがそれまでは分からない。

ことはテレビを見ている人だけの問題ではない。テレビで見ると被爆者のほとんどは高齢者だ。難聴の方も10人や20人ではない。炎天下で参列するのも大変だが、何が話されているのか分からないまま座っているのは拷問だろう。

式典を準備するのは広島市だろう。広島市は参列しているすべての人に市長の平和宣言を伝える責任がある。参列している諸外国の代表の耳にはイヤホンがある。同時通訳を提供しているのだろう。手話通訳はテレビにも映っていた。

誰もそこにいる難聴者のことに思いがよらないのだろうか。広島市の高齢者や障害者施策の担当者は?広島市の被爆者関係者は?高齢者施設の方は?
広島市と広島県の難聴者協会は広島市に働きかけているがまだ実現していない。

磁気ループやワイヤレス受信機の配布、屋外電光表示器の設置など技術的に何も問題なく、普通のシステムだ。


聞こえる人だけ分かり、聞こえない人に分からないのは実際に文字にして表示する時間も方法もある、相当の経費がかかるわけでもないのは合理的配慮の範囲だ。それにも関わらず、聞こえない人に伝えないのは「差別」になる。意図していなくても差別となる。
まず主催者に行政の責任が問われる。


ラビット 記




聴覚リハ カウンセリングの出来るオージオロジスト

2008年08月04日 21時15分03秒 | 補聴器

banana.jpg「カウンセリングの出来るオージオロジストですね。」と聞いたところ、次のような返事があった。


ラビット 記
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ううん、やはりカウンセリングはカウンセリングの専門の勉強をちゃんとやった人がやるべきなのですが、オージオロジストがこれまで「2時間待ちの10分診療」で有名な医者と同じ医療従事者という見方をされていたのに対して、これからは時間をかけて難聴者の気持ちや意見を聞くカウンセラーのように、クライアント本位のサービスを提供する専門職になってもらうため、「聴く」訓練を受ける必要があるという意味であって、カウンセリングができるとかカウンセラーの肩代わりという意味ではないです。

だからカウンセリングのできるオージオロジストというより、聴覚リハビリテーションを成功させるためにカウンセリング知識のあるオージオロジストが必要という意味です。

写真はばななの花。





聴覚リハビリテーション補足

2008年08月04日 20時15分13秒 | 補聴器

banana.jpgハワイの風さんから補足説明が来た。

送ってもらったの写真はバナナの花。


ラビット 記
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私費でARを受けることを推進しているわけではありません。医療保険対象外のARが保険対象になるまでには数年以上要します(というか、まったくならない可能性もあります)。
その間、何もしないで待つのではなく、私費でも効果のあることはできる人はして、同時に、保険適用医療行為にするための運動も並行してやるのがいいのです。

アメリカでは一般的なカウンセリングはほぼ定着していますから、難聴者も何か問題があれば一般的なカウンセリングに行くことはできます。
が、聴覚専門のカウンセラーはまずいません。聴覚専門のカウンセラーを育てる努力をしながら、数としてもすでに断然多いオージオロジストにもカウンセリングの素養を身につけてもらうことで、カウンセラー的なオージオロジストを増やすことはできる。

私が原稿で書いたことはクライアントへの歩み寄りの施策のことです。すべての医療従事者がカウンセリングの基本から学ぶことは多いですから。

聴力検査は医療行為で保険が適用されます。その検査を行うのはほとんど場合アメリカではオージオロジストで、場所も病院ではなくて一般の聴覚センターや地域クリニックのことが多い。
主治医にまず照会してもらわなければなりませんが、まず問題ありません。

聴力検査後、補聴器のフィッティングのために同じオージオロジストのクリニックへ行くわけで、満足いくフィッティングをしてもらうまでは何度でもそこへ通います。いやなら別のオージオロジストに変えることもできる。
気に入った人ならば親身に生活上の悩みなどを聞いてもらうことは十分ありえます。
私がサンフランシスコで見てもらったオージオロジストは二人とも辛抱強く、注文の多い難聴者(つまり私)にきちんと対応できるすばらしい人たちでした。カウンセラーとしての素養も持っていたと思います。ただ、

一般的にオージオロジストがみなそうなわけではありません。現状はオージオロジーサービスに不満な難聴者が多いから、カウンセリングの資質を育てるためのオージオロジー博士課程ができた、ということになったのではないかと思います。

だとすればそれは難聴者アドボカシーの結果で、好ましいことです。そして、博士号を持つオージオロジストに見てもらえばARを保険適用にできるようにしよう、といったことも当然目論見のひとつにしているわけです。

ラビットさんと一緒にいったバンクーバーのWIDHHのようなところが増えれば、実はもっといいですね。オージオロジストにカウンセラー的なことをさせなくても、聴覚問題専門のカウンセラーがいますから、補聴器のフィッティング以外のことはこの人に話せばいいのです。

日本ではあまりに分業化しすぎるのはどうか、という声も出そうですが、アメリカでも有資格カウンセラーはカウンセリングはちゃんと医療行為で保険請求できますから。
ただ北米でも、ああいった総合的な聴覚センターが十分にあるわけではないので、オージオロジストにもカウンセリングの資質があれば、ないよりまし、当座はこれで補える、ということなわけです。

いずれにしてもカウンセラーの肩代わりをさせる、というのではなく、すべての医療従事者に必要な「患者の(クライアント}の気持ちや状況を理解できる」技術を身につけさせようという、医療の消費サービス化という潮流で考えるのがよいと思います。







聴覚リハビリテーション(3) アリゾナ州立大学のクリニック

2008年08月02日 09時11分39秒 | 補聴器
080801-ばら083040.jpg今、アメリカで聴覚リハビリテーションが補聴器のフィッティングのレベルからカウンセリングも含む難聴者の全生活支援に発展しようとしていることはある意味で驚きだ。

アメリカでは、難聴者にもカウンセリングが進んでいると思っていたが、オーディオロジストがカウンセリングも出来るようになりつつあるということが新しい傾向ということか。

ハワイの風さんからのレポート、3項目。

ラビット 記
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アリゾナ州立大付設の言語聴覚クリニックは、全16時間(週2時間×8週)の無料ARプログラムを提供している先駆的存在。

院長のイングレッド・マクブライド博士によれば、「ARの萌芽期には、補聴器をフィッティングして読話を少し教えたら終わり、だった。今はそれはAR全過程の始まりでしかない」と言う。

効果的なARとは、
1)補聴器と人工内耳はARの一部、
2)聴覚障害者は自分の心理社会的変化やコミュニケーション対策などについて学ぶ必要がある、
3)専門家による情報提供は大事だがクライアントが実際に訓練することはもっと大事、
4)環境の変化に適応するカウンセリングが必要、
5)難聴は本人だけでなく周りの問題(コミュニケーションは双方通行)、
といった考えに基づき、
A)読話を含めた包括的コミュニケーション対策の強化訓練、
B)補聴援助機器・技術に習熟し駆使、
C)肉体的・心理的・社会的変化に適応するための個人・家族カウンセリング、
を特に重要視する。

家族や聴覚管理の専門家がARの講座を履修することの恩恵も大きい。マクブライド博士の8週間のARコース詳細については、
http://www.hearinglossweb.com/res/hlorg/shhh/cn/2008/ws/ar.htm
を参照(英文)。

*本稿は、HLAA(全米難聴者協会)の2008年全国大会で発表されたワークショップ原稿を元にしています。