あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

地震後の暮らし

2011-03-03 | 日記
今回の地震から1週間が過ぎた。
地震という地殻変動はそこに住む人だけではなく、周りの地域にも影響を及ぼしている。
ボクの身近なことで言えばツアーのキャンセルが相次ぎ、仕事が全くなくなってしまった。
ボク自身で言えば、全てを受け入れる心の準備はできている。じたばたしてもどうにもならないし、「しゃあないやん」と気楽に構えている。
なので娘の送り迎えをしたり、庭の手入れをしたり、納豆を作ったりして毎日を過ごしている。
普段はなかなかできない、娘と共に過ごせる時間という物を楽しんでもいる。

深雪はクィーンズタウンの小学校へ通い始め、ボクもそこに足を運ぶことが多いのだが、今まで見えなかった物も見え始めた。
ある日、深雪が興奮して言った。
「学校のグラウンドにパラシュートが降りて来たの」
学校のそばにはゴンドラがあり、その上から観光客とインストラクターの二人組みのパラグライダーが、天気の良い日は次から次へと飛び立つ。
パラグライダーは学校のグラウンドに着陸する。
学校の校庭にパラグライダーが降りて来るなんて、こんなのはクライストチャーチの学校ならば考えられない。いやクライストチャーチどころかNZ全国だってないだろう。娘が目を丸くして言うのも無理はない。
リゾートタウンの小学校とはこういうことなのだ。
ボク自身、20年以上もこの街を知っているのだが、こういう観点でこの街を見たことはなかった。
これも地震の影響か。

スクールバスで通うというのも深雪には初めての経験だ。行きはスクールバスで行き、帰りはボクが街の用事を済ませ一緒に帰ってくる。
クライストチャーチの深雪の通う学校にはスクールバスがないので親が車で送り迎をする。
ここはほとんどの子供がスクールバスで通うのだろう。学校の前にはバスの駐車スペースがあり、何台もバスが並ぶ。
深雪を迎えに行き、道路を渡ろうとしたらスクールバスが出てくるところだった。
「深雪、見ろ!運転しているのはキヨミちゃんだぞ」
「キヨミちゃんって、この前会ったキヨミちゃん?」
ほんの数日前、僕らは大勢で森を歩きに行き、キヨミちゃんの家で一緒に昼飯を食べたのだ。
「そうだ。あのキヨミちゃんだよ」
「うわあ、カッコいい~」
小柄な彼女が運転するとバスがよけいに大きく見える。
深雪は手を振り、キヨミちゃんもにこやかに手を振りバスは去った。
小さな町だとこういうこともよくある。

直ぐ近くには図書館もある。
カウンターには張り紙があり、クライストチャーチからの来訪者はご連絡ください、と。
自分達がそうだと告げると、すぐに深雪用の図書カードを作ってくれた。
学校の編入手続きといい、図書館の対応といい、公共の施設の対応が速い。
普段と違う物事が起こった時に、現場で何ができるかという事を個人や組織が判断し行動を起こせる。
これがニュージーランドの良いところだ。
大人の社会とはこういうことだと思う。

クライストチャーチでは今も復旧活動が行われている。
我が家では水が戻ってきた、と妻から連絡があった。
だがこの瞬間も家に戻れない人は多数いるし、トイレやシャワーを使えない家も少なくない。
まだまだ地震の爪あとは残るだろうが、ポジティブな面もネガティブな面も全てを受け入れることが自分のやるべきことの一つでもあると思っている。
そして光は常にそこにある。

コメント (4)
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