あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

ラグビーワールドカップ

2011-10-24 | 日記
ラグビーのワールドカップが終わった。
ここ1ヶ月は街でもオールブラックスの旗をつけた車が多かったし、家にオールブラックスの旗を掲げる所もあった。
テレビのニュースでも毎日オールブラックスの事を報道していたし、学校の休みもワールドカップに合わせ普段と変えてしまうなど、とにかく国中でワールドカップ一色だった。
ラグビーが嫌いな人は国外に逃げていたのではないか、それぐらい国中で盛り上げっていた。
嬉しかったのは普通のテレビで主だった試合がライブで見れたこと。
なので我が家でもテレビの前で観戦した。
特に決勝は、ハラハラドキドキ。特に最後の20分は自分の心臓の鼓動が分かるくらいにドキドキした。
心臓の悪い人はこれで死んでしまうんではないか、というぐらいの試合展開だった。
それだけに勝った喜びも大きい。ボクも感動して涙がにじんだ。

ラグビーのワールドカップが始まったのは1987年、24年前である。
ニュージーランドで開催され、その時にオールブラックスが優勝した。
これは今となっては人に自慢できることだが、その時にボクはオークランドにいて決勝をイーデンパークに見に行った。
その時にはラグビーのルールも知らず、生でラグビーなぞ見たこともなかったのだが、周りの観客と一緒に盛り上がりオールブラックスが点を取る度に喜んだ。
試合が終わった後は皆グラウンドになだれ込み選手を囲む。
今では考えられないことだが、当時たいして混乱もなかったのは観客も節度を持って行動していたからではなかろうか。
当時のパンフレットには選手のプロフィールに職業という欄があり、メカニックとかファーマーとかドクターとか何かしら仕事があった。
その頃はまだラグビーのプロリーグは無く、皆アマチュアだったのだ。
ワールドカップと言ってもショービジネスではなく、田舎の大会といった雰囲気だった。
古き善き時代である。
決勝は当時通っていた英語学校の友達とバスに乗って試合を見に行った。
チケットは街のスポーツショップで売っていて、50ドルぐらいだったような気がする。
その時は友達に誘われるままに行ったのだが、今から考えるとその経験はボクの大きな財産である。
なんといってもワールドカップがある度に人に自慢できる。
この経験はどんなに金を積んでも、今はできない。
過去は過ぎ去ってしまったものであり、同時にその瞬間とは永遠のものなのだ。

ボクは日本のブラジル、清水の出身なのでサッカーには詳しいが、ニュージーランドへ来るまでラグビーの事は何も知らなかった。
もちろん自分でやったこともないし、今でも細かいルールはよく分からない。
でもこの国にいるうちに、世界のトップクラスレベルの試合を見ているうちに、目は肥えてきてラグビーの面白さが分かるようになってきた。
ラグビーというスポーツは面白いもので、試合の終了はタイムアップでもゲームセットでもなく『ノーサイド』である。
世界中であれだけ人が転ぶスポーツはない。
汚い言葉は当たり前、相手を引きずり倒しボールを奪う。
とても乱暴なスポーツだ。
でも試合が終わればノーサイド。
時間の間は全力で敵をやっつけるが、それが終われば敵も味方も審判もなく皆一つ。ワンネスの精神だ。
とはいえ勝負というものは読んで字のごとく勝ちと負けはある。
勝てば嬉しいし負ければ悔しい。
決勝で負けたフランスは悔しそうだし、勝ったニュージーランドは満面の笑みである。
勝ちたいが為に一生懸命やるのだし、負けたくないから一生懸命やる。
だが表面上に現れる勝ち負けだけでなく、その下にあるノーサイドの精神。
これはこれからのスポーツにおいて重要な位置を占めていくことになるだろう。
そしてもうひとつラグビーを語る上で大切な言葉。
One For All,All For One.
一人は全員のために、全員は一人のために。
ラグビーを見ていれば分かるが、自分が引きずり倒されながらも味方にパスをつなぐ。
味方を盾にして後ろのボールを持った選手を前に進める。
自分が自分がというエゴではなく、目標に向かって全員が一つになる。
これはスポーツに限らず、いろいろな面で人間が学ばなくてはならないことの一つだ。

ともあれニュージーランドが優勝したことは嬉しい。
嬉しいことは嬉しいと素直に喜んで良い。
24年前の優勝の瞬間がボクの心の中で存在し続ける。
そして24年後のホームでの勝利もボクは忘れないだろう。
たかが人口400万人の国が世界を制した。
このちっぽけな国が、ノーサイドの精神のラグビーというもので世界の頂点に立ったということも、何かしらの意味があるとボクは見ている。
そして今、けが人続出、ボロボロのオールブラックスにエールを贈る。
よくやった。お疲れ様でした。
押忍。
コメント (8)
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