あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

チャリンコ野郎達 7

2010-05-30 | 
クィーンズタウンの夏は午後が長い。
夕方になっても日はさんさんと輝き、湖は抜けるように青い。白い雲がぽっかりと浮かぶ。
僕は次のビールを開けてリオに聞いた。
「そんで、ここから次はどこへ行くの?」
「ハイ、ワナカに抜けて、そのまま西海岸へ行こうと思っています」
「そうか、じゃあ、あのポトカーフの森だなあ。西海岸もいいぞお」
「ハイ『あおしろみどりくろ』をじっくり読みましたから。」
「そうだったな。フランツジョセフではタイに会うかな?」
「タイさんですね。どんな人なんですか?」
「ヤツもオマエさんと話が合うよ。ヤツはねえ若いんだけど、物事の本質を見極めている。人間として対等に話ができる男だな。電話でもしといてあげようか?」
「ええ、お願いします。」
「イヤ、待てよ・・・」
僕はリオの顔を覗き込んで聞いた。
「オマエ、タイに会いたいか?」
ヤツは僕の視線を外さずに答えた。
「会いたいです」
「じゃあ、きっと会えるよ。それなら連絡もしない方がもっと面白いな。直接行ってタイを探してみろよ。小さな街だからきっと見つかるよ」
「それも面白そうですね」
「それでケトリンズでトモコに会って、テアナウでトーマスに会って、クィーンズタウンでオレに会ったと言えばすぐに通じるから」
「分かりました!西海岸も楽しみだなあ」
「きっとまた、この国の自然にやっつけられちゃうぞ」
「やっつけられたいです」
人間との出会いはタイミングである。
会いたくても会うべきタイミングでないと人は会えない。
逆にその時が来れば何もしなくても人は出会う。
タイはかなり明るい光を持っているスーパーポジティブな人間だ。
見る限り、リオにも明るい光が見える。
こういった強い光を持つ人達は引き寄せ合う。これを引き寄せの法則という。
逆にネガティブな人の周りには、そういう人が集まってくる。
よく言うじゃないか、類は友を呼ぶ。
ボク自身、明るい光を持っていると思う。だからボクをとりまく人達は皆、面白く生き生きと輝いている。
他人は自分を写す鏡だ。
ボクとリオがこうやって会うのも、それは起こるべくして起こっているのだ。
人との出会いには人知を超える何かが存在する。僕らはそれを受け入れるのみ。
今回もし彼らが出会わないのならば、それはそういう巡り合わせなのだろう。
それよりもリオがタイに会いたい、と強く望めば連絡なぞしなくてもそれは実現する。
人は夢を実現化する力を持っている。
自分がある物事を『できない』と思ってしまったらそれはできなくなる。
それは自分で可能性を断ち切ってしまっている。
『いつかこうなったらいいな~』と思い続けていれば、それは実現する。
その為には、自分がやることをやり、明るく楽しく正しく生きるのだ。



「それから?ニュージーランドが終わったら次はどこ?」
「インドネシアです」
「インドネシアかあ。アジアだな」
「そうです」
「先は長いのお」
「そうですね」
「オマエね、この先、旅の途中でこうやってもてなしてくれる家があるかもしれない。その時は遠慮なく腹一杯ごちそうになれ。オレも南米チリで知り合いの知り合いという日本人の家に2週間以上も泊めてもらったことがある。そういう家に行ったらオマエがやってきた旅の話をしてあげるんだ。一カ所に住む人にとっては、旅人の体験談は最高の娯楽になるからな。」
「ハイ!」
「それでいつの日か、オマエがどこかの地に落ち着いた時に旅人が来たら、もてなしてあげればいい。人から人へ。エネルギーはそうやって回っているからな」
「ハイ!分かりました。いやあ、やっぱりここへ来て良かったです」
「よかよか。まあビールでも飲みんしゃい。オレの分も持って来てくれ」
「ハイ!」
ヤツはうれしそうに、ビールを取りにキッチンへ走った。
弟とはこういうようなものだろうか。
いつのまにか日は傾いてきた。時計を見ると8時をまわっている。
「もうこんな時間か。腹も減るわけだ。太陽につきあって遊んでいるとどんどん遅くなっちゃうな」
「うわあ、太陽につきあって遊ぶって、良い言い回しですね。ボクも使いたいな」
ヤツは自分でも文を書き、それを雑誌に載せたりもしている。
「おう、どんどん使え。何でも盗んでいいからな」
僕らは夕日を見ながら飯を食った。

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2 コメント

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類は友を呼ぶ (Thomas)
2010-05-30 14:52:51
いやいや、Hedge節のシーズンが始まりましたか。また多くの読者を惹きつける事でしょう。リオは本を次の旅人に託したかな、それともまだ彼のサイドバックに入っていますかねぇ。
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本の行方 (ひっぢ)
2010-05-31 05:34:25
昨日、リオからメールが来て本は4人目に渡ったそうな。今頃はどこを旅している事やら。

放浪という旅が出来なくなったオレ達の分、あの本は世界を回ってくれるだろう。
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