あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

にんにく

2015-06-25 | 
梅雨時の日本からニュージーランドに帰ってくると真冬の寒さだった。
最低気温はマイナス5度にも下がり、あわててダウンジャケットを引っ張り出した。
二ヶ月も留守にしたのだから、帰ってきてからもやることは山積みにある。
ニワトリ小屋の糞の掃除をして、新しいオガクズを入れた。
僕の留守中にニワトリが脱走して犬のココにかみ殺された。
こういう出来事は必ずと言っていいほど僕がいない間に起こる。
襲われたのは四羽のうち二羽でもう一羽は首の辺りの毛をむしられたがなんとか生きている。
ただこういう事が起こるとショックで卵を産まなくなってしまうことがある。
そうなったらしょうがない、我が家で美味しく食べてあげよう。
日本の友達に美味しい鶏の食べ方を教わってきたのだ。

日本にいた時から気になっていたのがニンニクの植え付け。
ニンニクは冬至に植えて夏至に収穫というのが基本だ。
いつもは5月ぐらいに早々と植えるのだが、今年はちょうど冬至の頃にやる。
雑草を抜き取り、ニワトリコーナーへ捨てるとニワトリ達が食べてくれる。
土を耕し、寝かせておいた鶏糞を混ぜて均す。
去年収穫したニンニクのうち、粒の大きい物を選んで等間隔で植えていく。
こういった作業を黙々とやる。

やり始めて感じた。
ああ、この感覚、これが労働なんだと。
二ヶ月の間、体を使って働いたのは、山小屋の家の近くの草刈をして溝を掃除したくらいだ。
自分で動き、じかに手で土を触る感覚。
僕の場合これが基本になっている。
作業をしながらもいろいろな事を考える。
日本の事、世界の事、自分の人生の事。
答が出ないことを知りつつなおかつ考えるのが禅問答なのだが、農作業をしながら僕は考える。
そうするうちに心は澄み渡り、土にニンニクに目に見えない微生物に愛着が湧く。
そして湧き出る感情は感謝である。
感謝は強制されてするものではなく、心の奥から込み上げる感情だ。
そしてまた他人にそれを求めてもいけない。
土も水も空気もニンニクも自分も一つになる。
これがワンネスだ。
一種の瞑想のようなものだが、作業をしながらそれを行うのが作務なのである。

作業がひと通り終わったら水をかけて語りかける。
「さあさあみなさん、起きる時間ですよ~。大きなニンニクに育ってくださいね~」
これってけっこう大切だと思うな。
かくして今年のニンニクの植えつけも無事終わり、ひと安心。
芽が出た状態で冬を越し、夏にはまた収穫祭りをするのだろう。
季節は巡りその中でぼくらは生きる。
冬の仕事場であるスキー場にも雪が降り、今週末にオープンする。
冬になれば雪が降るのが当たり前だったのだが、その当たり前の雪が去年は降らなかった。
夏は暑く冬が寒いという当たり前もこの先は分からない。
先が分からないので、今ある状態を当たり前と思わずに感謝をしつつ日々を過ごしていけばと、ニンニクを植えながら思うのであった。







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