法務問題集

法務問題集

憲法 > 国民 > 経済的自由権 > 財産権

2011-07-04 00:00:00 | 憲法 > 国民の権利・義務等
【問題】
01. 何人も、原則として、財産権を侵害してはならない。

02. 第三者の所有物を没収する場合、没収に係る告知や弁解、防御の機会を所有者に与えずに所有権を奪ってはならない。

03. 没収の言い渡しを受けた被告人は、第三者の所有物に係る場合でも、没収の言い渡しが違憲であるとして上告できる。

04. 被告人としてもその物の占有権を剥奪され、これを使用・収益できない状態におかれ、所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によって救済を請求できるものと解すべきである。

05. 刑訴法では被告人に言い渡される判決の直接の効力が被告人以外の第三者に及ぶことは認められていない以上、没収の裁判によって第三者の所有権は侵害されていない。

06. 被告人自身は没収によって現実の具体的不利益を蒙ってはいないので、現実の具体的不利益を蒙っていない被告人の申し立てに基づいて没収の違憲性に判断を加えることは、将来を予想した抽象的判断を下すものに外ならず、憲法81条が付与する違憲審査権の範囲を逸脱する。

07. 財産権の内容は、公共の福祉に適合するよう法律で規定される。

08. 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために使用できる。

09. 私有財産を公共のために使用する場合の正当な補償は、自由な市場取引で成立すると考えられる価格と一致しなければならない。

10. 憲法29条3項を直接根拠にして、補償請求をする余地はない。

11. 私有財産の収用後に収用目的が消滅した場合、法律上、被収用者にこれを当然に返還しなければならない。

12. 予防接種に伴う特別な犠牲は財産権の特別犠牲と比べて不利に扱う理由はなく、後者の法理を類推適用すべきである。

13. 財産権の侵害に損失補償が出され得る以上、予防接種が引き起こした生命や身体への侵害も同様に扱うのは当然である。

【解答】
01. ○: 憲法29条1項

02. ○: 最判昭37.11.28(第三者所有物没収事件)要旨1
関税法第118条第1項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第31条、第29条に違反する。

03. ○: 最判昭37.11.28(第三者所有物没収事件)要旨2
前項の場合、没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、これを違憲であるとして上告することができる。

04. ○: 最判昭37.11.28(第三者所有物没収事件)理由
(略)被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである(略)

05. ×: 最判昭37.11.28(第三者所有物没収事件)理由
(略)第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。(略)

06. ×: 最判昭37.11.28(第三者所有物没収事件)理由
(略)没収に係る貨物が被告人以外の第三者の所有に係るものであることは、原審の確定するところであるから、前述の理由により本件貨物の没収の言渡は違憲であって、(略)

07. ○: 憲法29条2項

08. ○: 憲法29条3項

09. ×: 最判昭28.12.23(地主補償問題)理由二
(略)各農地のそれぞれについて、常に変化する経済事情の下に自由な取引によってのみ成立し得き価格を標準とすることは許されないと解するのを相当とする。(略)

10. ×: 最判昭43.11.27(河川附近地制限令事件)要旨2
財産上の犠牲が単に一般的に当然に受認すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法26条第3項を根拠にして、補償請求をする余地がないではない

11. ×: 最判昭46.01.20 理由
(略)私有財産の収用が正当な補償のもとに行なわれた場合においてその後にいたり収用目的が消滅したとしても、法律上当然に、これを被収用者に返還しなければならないものではない。(略)

12. ○: 東京地昭59.05.18

13. ○: 大阪地昭62.09.30

【参考】
財産権 - Wikipedia
第三者所有物没収事件 - Wikipedia
地主補償問題 - Wikipedia