月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

おっさんなんどい:問題提起編(月刊「祭」48号.2015.11月の1)

2015-09-25 01:25:28 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-
◎おみこっさん「どい」
屋台の石段登りで名を馳せる三木市大宮八幡宮の秋季例大祭。しかし、祭の主役はお神輿(おみこっさん)になります。
管理人が子どもの頃は、小学五、六年男子がお神輿を担いでいました。宮入や宮出の屋台を尻目に神事に参加したのを今でも覚えています。
さて、今回は大宮八幡宮のおみこっさんを担ぐ時の掛け声について調べてみます。といっても「おみこっさんじょい、チヨーサンジョイ」の掛け声について調べるのではありません。
管理人が子どもの頃、「おみこっさんじょい」ではなく「おみこっさんどい」、「チョーサンジョイ」ではなく「チョーサンドイ」と聞こえていました。それは周りの友人にもおなじだったらしいようです。「どい」は、播州弁では、はい、いいえを答えに伴わない疑問語尾です。ちなみに三木の屋台の担ぎ上げの大阪締めも、「うってくれー、あーもひとっせー、アーヨーサンドイッ」と、祝うて三度もドイの影響を受けています。
「どい」の語源はゾエだったと聞きます。母音が変化してゾイ、多くの播州人はザ行の発音が苦手でダ行になりドイになったのでしょう。
ゾエは疑問の語尾としてだけでなく、~だよと言う意味でも使えそうです。だったら、「おみこっさんどい」もそんなに変な意味ではないかもしれません。


◎チョーサ
チョーサンジョイ、チョーサンドイのチョーサは長財などに通じるのでしょうか?
チョーサの掛け声は豊浜や観音寺市でも使われており、掛け声が太鼓台そのものを表す言葉にもなっております。隣の愛媛県でも新居浜では使われている掛け声です。管理人は知らないのですが、おそらく新居浜周辺でも同様の掛け声が使われているかもしれません。
東大阪や姫路市の網干区などでもお馴染みの掛け声です。そして、三木市大宮八幡宮の近くでは神戸市の淡河八幡神社でも、御神輿を担ぐ時に使われていました。


◎おっさんなんどい
ですが、今回のテーマは「おみこっさんどい」でも、「おみこっさんじょい」でもありません。また、「チョーサンドイ」でも、「チョーサンジョイ」でもありません。
管理人が子どものころ、「おみこっさんどい、おっさんなんどい」という掛け声が流行りました。おみこっさんに一緒について面倒を見て下さる方には非常に申し訳ないのですが、脈々とこの掛け声は受け継がれていた時があったみたいです。管理人も嬉々としてこの掛け声をかけていました。
そこで、今回の祭を使って、いつ頃からいつ頃まで、この掛け声が使われていたのかを聞き取り調査してみたいと思います。

太鼓に込める願い、韓国編(月刊「祭」47号.2015.10月)

2015-09-16 16:16:05 | コリア、外国

祭シーズンが近づいて来ました。

我々が太鼓に熱き思いを乗せていろんな祭りをするように、韓国でもいろんな場面で太鼓が使われます。それを今回は見ていきます。

◎殺牛の代わりとしての太鼓
 太鼓が演奏される前、牛を生贄にし雨乞いなどをする信仰が日韓両国にあったそうです。 日本霊異記や日本書紀から、日本では仏教導入の影響でその習慣は廃れたことが分かります。また、韓国でも農作業に牛を使うことから、古代よりは少なくなったと管理人は推測しています。ただ、韓国では仏教の勢力が日本ほど強くなく、牛肉を食べる習慣は朝鮮時代から続いています。それにともない、あまり多くはなかったと思われますが、戦前の論文には韓国で殺牛信仰が続いていたという報告もなされています。 仏教信仰の強弱はあるものの、その影響で両国とも殺牛信仰はへったと思われます。牛の皮を使う太鼓は殺牛の代替物として使われているのではと管理人は推測しています。


◎祭での太鼓
  韓国では地車や屋台、太鼓台など我々のように乗り物に太鼓を乗せて練り歩くという様子はほとんど見られません。中国やインドでも山車のようなものはある、もしくはあったようですが、なぜ韓国・朝鮮だけ?という謎が残ります。祭で太鼓が使われる一番多いと思われるのが踊りや劇、歌を伴う農楽などと呼ばれる芸能です。

●慶尚北道安東市河回村 両班劇
  有名なのがチャンゴと呼ばれる太鼓で、ある時は踊りながら、ある時は座ったままで太鼓が打たれます。豊作や大漁など、生産活動の盛況を願うことが多いようです。
 砂時計型の締め太鼓で、左右違う形の長さ30cmほバチを持ちます。 左側-クンピョン 低音面で、鉦のバチのように先に丸いかたまりのついたバチを使います。小指側に先が来るように下向きにバチを持ちます。右手で打つことはないようです。 右側-チェピョン 高音面で、先が細いバチを使います。親指側にバチの先がくるように上向きに持ちます。左手も交えながら打ちます。

●両班劇の演奏者、右側がチャンゴ

●全体のリズムをとる鉦


 踊りながらの場合は広島の花田植や、沖縄のエイサーなどを彷彿とさせます。画像はないのでネットなどをご参考にしてください。
 

◎寺院の太鼓 -生きとし生けるもののために-
鐘、木魚、雲板とセットで太鼓が寺院に設置されます。聞くところによると、木魚が水の生き物、鐘は人間、雲板は空の生き物、そして太鼓は4本足の生き物のために演奏されるそうです。 今まで見たことあるのは全て鋲太鼓でした。鏡面は1メートルをゆうに超えるものがほとんどです。カラフルな装飾が施されています。

●慶尚北道海印寺の太鼓

◎統一祈願太鼓
 韓国西北部、京畿道パジュ市(坡州市、파주시) のイムジン河(임진강.臨仁江)ほとり、つまり南北国境間近に作られています。この太鼓が置かれている施設は統一展望台。そこから、北の様子が見ることが出来る施設です。 また、統一を祈願し、やがて実現するまでを展望する施設ともいえるでしょう。国が分断された戦争があったことで、日本の経済復興がなされた一面を考えると、複雑な思いがします。いつの日か平和的に統一され自由に行き来できる日がくることを願ってやみません。
⚫編集後記
 今年の夏は6回目の渡韓にして、初めてソウルに行きました。相変わらず韓国の人は優しくて、益々この国を好きになりました。 我が国の祭においても朝鮮や韓国にルーツを持つ人たちが、今も欠かすことができない役割を果たしている例にいくつか出会いました。 政治的な批判や議論はお互いに大いに行うべきです。が、人格を否定する差別発言で、実はあなたの隣の人を傷つけているかおしれません。そのような想像力が我々祭り人にも求められている時代が来ているように感じます。