月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

412.ヘリマネのススメ-祭を「保存」「活用」する??-(月刊「祭御宅」2023.05月1号)

2023-05-26 22:22:52 | 屋台・だんじり・神輿-子どもへの指導、後継者育成-
ヘリマネの募集がはじまる
 今年度、兵庫県で、二度目の無形民俗部門のヘリテージマネージャーの講習会がはじまります。管理人もとりました。
締め切りは6/30日です!!

詳細はクリック











●無形民俗文化財部門のヘリマネとは?
ようは、小さくとも価値のある祭りを保存したり活用したりするための知恵を、共に考えたり、いろんな人を紹介したりする人のことといえそうです。

小さな祭りを保存・活用するために
 個人的には小さな祭りを保存・活用するために必要なのは、楽しい部分は目一杯楽しくすることだと考えています。
歴史的な価値があるけど、そこまで楽しくない部分だけでは、若い人たちはなかなか定着しずらいように思います。
楽しくできるところは、楽しくすれば、歴史的な価値のある祭にも関心がいくように思います。


●無形の側の有形
祭りは、無形民俗文化財とされることが多いですが、エアー屋台をかつぐわけではなく、エアー鬼面をかぶるわけではありません。
つかったら、傷みます。修理するときにぼったくられるようでは話しになりません。
有形物の修理にも的確なアドバイスができる人もやはり必要だとおもいます。これにかんしては、屋台やだんじりの祭がさかんなところにはたくさんいそうだと思います。


395.間違いが!?-教科書の中の祇園祭-(月刊「祭御宅」2022.8月3号)

2022-08-30 20:38:25 | 屋台・だんじり・神輿-子どもへの指導、後継者育成-
●伝統文化への理解??-教科書にのりはじめた祇園祭-
 教科書に祇園祭がよく掲載されるようになってきました。いや、もともと掲載されていたのかもしれませんが、かなり、めだつようになってきました。
とはいえ、教科書を書く人は、社会科教育や道徳科教育の専門家であって、祭の専門家ではありません。なので、教育効果が高まる作りにはなっているものの、祇園祭に参加したり、祇園祭の歴史をちょっとかじった人には「あれ?」とおもわれる間違いが過去にもあったし、現在にもみられます。

●過去 -某社会科教科書の指導書-
 某社会科教科書、小学六年生・歴史分野の指導書(教科書に沿って先生方が授業するための手引き)の記述です。
室町時代ごろから盛大になった山鉾巡行を室町文化のひとつとして位置付けての学習です。祇園祭の画像は2枚ありした。一枚目は山鉾巡行が描かれた洛中洛外図の鶏鉾の本体が前面、長刀鉾の長刀が下から少しでているものです。もう一枚は現在の長刀鉾の写真です。
そして、教師の指導の要点かなにかに「長刀鉾が当時からかわらないことにきづく」といったことが書いてありました
昔の鶏鉾と今の長刀鉾をくらべても、、長刀鉾の変化の様子はわかりません。
もうひとつ、祇園祭の創始伝承を史実として取り上げているところも問題点として指摘したメールをおくりました。
丁寧なメールでのお返事では、指摘に対するお礼の言葉をたまわり、また、真摯に間違いを認める旨のメールをいただきました。おそらく、後に発行されたものでは訂正されていることでしょう。

●現在 -ぎおんまつり・小学2年道徳科-
 小学2年の道徳科「ぎおんまつり」でも間違いがみられました。まずは、辻回しの掛け声は、「ヨーイトセ」ではなく、動かしはじめの「エンヤラヤ」のかけごえとされています。

↑ヨーイトセの声での辻回し北観音山


↑ヨーイトセの声での辻回し放下鉾
次は間違いかどうかはかなりグレーな表現ですが、「壁にぶつかりそう」なのが角に差し掛かったときとなっています。山鉾巡行路の「角」は大きな山鉾が方向転換できるだけの十分なスペースがあり、壁に当たりそうなことはありません。「グレー」としたのは、角に差し掛かる前の狭い直線道路の表現ならば、そういうことまあるので、ギリセーフといったところでしょうか。
これらの間違いについては、指摘のメールは昨今だしたのて、返答までにしばらく時間がかかると思われます。

●訂正すべし、されど責めるべからず
これらの間違いにたいしては、実際に祭りに取り組まれている方のこともあるので、訂正すべきです。とはいえ、教科書発行業務のうち、もっとも事実確認が困難を極めるもののひとつが、これらの歴史民俗的な内容といえるでしょう。間違えてしまうのも、無理はないので、それを笑ったり責めることも術喜多はないと思います。
歴史認識の是非はさておき、日本の義務教育の教科書は子どもが目標に到達できるように、考え抜かれて作られています。教科書をうのみにするのは危険ですが、そのよさは、存分に行かし享受したいものです。

編集後記
 某カルト教団と政治家との繋がりが連日報じられています。国民の関心の高さは、政治家たちがカルト教団幹部と信者のような関係、盲目的な服従の関係、徹底的な搾取被搾取の関係、北朝鮮の総書記と国民のような関係をこの国でも作ろうとしているのではないかという疑念によるものだと思います。


262.富嶋神社子ども屋台の安全対策(月刊「祭」2020.2月7号)

2020-02-22 10:01:00 | 屋台・だんじり・神輿-子どもへの指導、後継者育成-
●未来に祭を残す子ども屋台
 未来の祭を担うのは当たり前ですが、今「子ども」と呼ばれている年齢の人たちです。その子どもたちに祭に馴染んでもらうのが、祭を残すための最もシンプルな方法です。そして、その方法の代名詞といえるのが、子ども屋台です。
 しかし、このシンプルな方法はさまざまな苦労や工夫が必要となってきます。現に安全上の理由や身長が大きく違う子どもたちだけでこぶりとはいえ屋台を担ぐことは不可能です。実際に力をいれて担いでいるのは大人だけで、子どもたちは触っているだけというのが、現状のところが多いというか、管理人が見た限りではほとんどでした。
 といっても、それでは全く意味がないということはなく、子ども屋台の運行は屋台の動きや太鼓のリズムなどを身につける絶好の機会になるし、何よりも一人一人にかけがえのない思い出を残すことになると思われます。
 しかし、子ども屋台は子どもがさわるから危険が一杯です。子どもに触らせようと大人が肩から下ろして「手がき」をすると、やはり重たくなり屋台を落とす危険、子どもたちに取り返しのつかない怪我をさせる危険につながります。逆に大人が肩にいれてしまうと、子どもたちは全く屋台にさわれません。
 その矛盾を解決する見事な工夫を見ていきましょう。
 
●兵庫県たつの市富嶋神社の屋台文化
 たつの市富嶋神社の屋台は、網干型の屋台が担がれています。白木のまま金具を取り付けた屋台があったり、何度も差し上げを繰り返す連続チョーサなど、独自の屋台文化をもつ祭として知られています。
 

↑白木のまま金具をつけた黒崎屋台
 
 
 当然、子ども屋台もチョーサを、繰り返します。大人と子どもはどのようにして屋台を担いでいるのでしょうか。
 
 
 
●子ども屋台の棒わり
 上の写真であげた黒崎屋台の子ども屋台が下の写真です。練り棒のあたりを拡大してみましょう。
 
 
 
 

↑黄色く囲んだところは大人が担いでいます。つまり大人は外側を担いでいます。一方、内側の本棒を子どもたちが担いでいますが、高さを変えることで大人も子どもも担げるようになっています。また、本棒の先に横棒を渡して、そこも大人が傾げるようになっています。
 こうすることで、大人が主要な部分を担ぎつつ、子どもたちも屋台に触れられるという構造になっています。
 下に棒わり図をあげてみました。




●編集後記
 民俗学では、「今」を語ることが大事だそうです。屋台の祭の今を知るためには、担いだ時の重さや、危険さを知っていないと、分からないことがたくさんあります。

238.祭を経験のない人に伝えるには(月刊「祭」2019.12月2号)

2019-12-04 14:11:00 | 屋台・だんじり・神輿-子どもへの指導、後継者育成-

●増えてきた祭の話を伝える機会
 最近小学校では、各学校の地域副読本(「わたしたちの◯◯」などという本)で、祭の記述が見られたり、道徳の教科書や音楽の教科書で祇園祭であつかうなど、祭りをあつかう教材がふえてきました。
 また、近年では播州などでも祭を扱った博物館の展示や、書籍が少しずつ増えてきています。それに伴って、大学などでも祭を扱うことが増えてきました。そのような中で、我々祭オタクが話をする機会も少しずつ増えてきているように思います。
 とはいえ、普段話している祭関係者相手に話すのとは、勝手が違うこともあります。おみこっさんと屋台の違いが分からなかったり、「練り合わせ」がわからなかったり、それこそ「台車」のイメージも難しいというのが現状です。
 ここでは、民俗学や歴史学を専攻していない、祭にも関わったことのない学生さんにどのように話すのかを自分の経験から考えてみました。だいたい20人くらいを相手にした場合と思ってください。
 
●大前提
 まずは、歴史的なことよりも現代的な問題に関心があるということです。どこぞの祭ブログの管理人みたいに自分の調べた内容をここぞとばかりに嬉々と話すだけでは退屈してしまいます。
 
●留意点
 コツとしては次のような感じでしょうか
①屋台の大まかな分布
 神輿との違いを簡潔に述べたあと、写真と地図をつかうといいと思います。
 
 








 
 ②屋台にいくまでの祭の歴史
  管理人は播州全体についていくつも 例をあげてダラダラと話してしまいましたが、主題とする祭を一つ決めて具体例としてあげ、その後一般化して話す方が分かりやすかったと思います。
 屋台前→江戸時代→戦前くらいまでを簡潔に。「自分が発見して面白いと思うのを伝えたい」気持ちもわかりますが、根拠をつらつらと述べるよりも面白いと思うポイントを絞る。
 
●メインのお題について
 例えば社会学部の学生さんだったら、こちらで現状を報告して、後継者不足などの問題について議論するなどしてみると面白いかと思いました。
 美術系の学生さんなら、彫刻や刺繍をメインテーマにもってくることもできるかもしれません。
 こちらが一方的に話すだけでなく、学生さんの興味に沿って、あれやからやと話して意見を言う機会を設けるといいように感じました。また次の機会があったら頑張ってみます^_^
 
 
 

197.太鼓の打ち方の教え方(月刊「祭」2019.9月24号)

2019-09-28 14:00:00 | 屋台・だんじり・神輿-子どもへの指導、後継者育成-

●太鼓打ちを限られた時間で育てる
 多くの地域で、祭においてその継承が課題となっています。屋台や太鼓台の場合、特に頭を悩ますのが、太鼓打ちの育成です。聞いているようで聞いてない、聞いてないようで聞いている、関係ないように見えてリズムがくるうと怪我の元になるという太鼓は、センスと努力を必要とします。管理人にはその両方がたりず、大成はしませんでした(ToT
 おそらくほとんどの屋台や太鼓台の太鼓打はそれを本業とするプロの演奏家ではありません。仕事や部活終わりなどの限られた時間にその技術を身につけなければなりません。
 その下地として、子どもたちにその技術を早めに身につけてもらい、担い手になる門戸を広げる活動が活発になっています。とはいうものの、気が強かったり、分別がついたりする男子高校生や中学生に教えたりするのとは少し教え方もかってがちがってきます。ある程度の基本を子どもに短い時間で身につけさせる技術は、太鼓の名手が才能ある若手を育てる方法とはまた違う方法が必要になってきます。つまり太鼓打としてのスタートラインに立たせるまでの教授法の確立が必要ということになります。
 
 ここではその留意点を書いてみたいと思います。。ここでは、「ドンドン(両手両手) ドンデドン(右左右) ドンデドン(右左右)」という三木市三木地区の一般的な太鼓のリズムを教える過程を例にして、それぞれの年代で考えていきます。
 最後のポイントは他地域でも、使えるところだと思います。
 


 
 
●小学校3年生以上
Aはじめに教えるべきこと
まずは、挨拶、準備片付けのマナー、小さな子への思いやりなどを教えます。目の前に立派な目標(青年団)があり、強制でなく好きで来ているので、普段は腕白で通っている子も意欲的に頑張る子が多くなります。
 
Bまずはドンドン ドンデドン ドンデドン
 管理人が失敗した例としては、「打ってくれドンドン」から教えたことでした。これは、普段使う太鼓ではありません。担ぐ前にスタートするためのもので、掛け声が複雑で混乱の元になるので後にする方がいいでしょう。差し上げ、太鼓を落としたりすえたりしたときなども後にする方が混乱を避けられます。
 
Cドンドン ドンデドン ドンデドンの教え方
1 ドンドン ドンデドン ドンデドンの見本を見せる
 ドンドン ドンデドン ドンデドンの見本を見せます。こうすることで、今からどのリズムを打つかの見通しが立ちます。
 
2 ドンドンを覚える
 次に両手でドンドンを教えます。これは、できるまでには、あまり時間がかかりません。
 よくできたことを褒め、でも、一番奥の深いリズムでもあることを伝えて次に行きます。
 
3ドンデドン ドンデドンを教える
 ここで、つまづく子は比較的多くなります。一番多いのが、はじめのドンデドンを右左右と打った後、次のドンデドンを左右左と打ってしまうことです。ドンデドン ドンデドンを「みひみ、みひみ」と言いながら打つと、この癖を正しやすくなります。
 もう一つが、大きくバチを回すとリズムが狂うことです。この場合は、はじめはほとんどバチを回さずに打たせて、徐々に大きくすると動きをマスターできます。
 少しでもよくなったら、そこを褒めてあげましょう。
 
4 ドンドン ドンデドン ドンデドンをつなげる
ここまで打てればあとはつなげるだけです。微妙な音の調整をしたり、ドンドンの時に「サッサ」と声をかけて太鼓を次のドンデドンから変わることなども教えていくといいでしょう。
 
ポイント
 ●礼儀面は、青年団員を目標として、はじめに約束させる
 ●はじめは、基本的なリズムから学ぶ
 ●基本的なリズムの教え方は、
①全体の見通しをもたせる 
②簡単なところからパートに分けて教える ③左右が難しいところは、「み、ひ、み」と言ってやる 
④小さい動きから動きを大きくする
 
●幼稚園くらいから小学校2年生
鏡方式
 基本的には、上のやり方と同じです。ですが、右と左の区別がつかない子がこの年代にはかなりいます。かといって、後ろから手を持つと嫌がる子がいたり、自分で覚えようとしなくなったりということがあります。
 そこで、その子の対面にすわり、その子が右利きで右左右と打たせたいなら、教える方は左右左と手を動かして、真似するように促します。これを繰り返すことで、手本なしでもその子自身で太鼓を打てるようになります。
 


教える人にめざしてほしいこと
 管理人も前職が教員ということもあり、太鼓を子どもたちに教える機会が多くあります。
 もちろん短い時間で、太鼓を打てるようにすることも大切です。でもそれ以上に、青年団やその子の家の人、屋台係や町の人たちが頑張ってるから祭ができるゆうことが大人になった時にわかって欲しいものです。そして、基本的な挨拶や礼儀、思いやりが身についていって欲しいと思っていました。ですが、祭好きな子は来る前から身につけてきてる気もします。