・伝統的な疫病対策
現在同様に疫病は、それぞれの時代で人々を悩ませてきました。一方それに抗うための対策を人々が立ててきたのも事実です。
現在同様に疫病は、それぞれの時代で人々を悩ませてきました。一方それに抗うための対策を人々が立ててきたのも事実です。
今回は享保の大飢饉後に起きた疫病時に出された「薬方書付御触」を見ていきます。この御触書は享保十八年(1733)に出されました。この記事では、幕末期に記された「村翁夜話」という播州の地誌に引用されたものを紹介します。
●薬方書付御触
「時疫流行之節、此薬を以て其煩を逃るへし」
疫病が流行したら、この薬で症状を和らげよといった意味でしょう。この言葉ではじまり、「時疫」と書かれたおそらく流行病・疫病への対処と「一切の食物の毒」など書かれた食中毒への対処法が書かれたものがあります。享保十八年の疫病は赤痢、疫痢と思われる下痢を伴う病がはやっていたところから、後者にかなりの行がさかれています。
全部書くのは煩雑なので、今回は前者の「時疫」への対処4種を紹介します。いずれも当時読まれていた医学書をもとに書かれています。
●時疫にハ
黒豆も飲む水に混ぜたのかは分かりません。煎り豆は節分の鬼追いで見られますが、あながち迷信ではなかったのかもしれません。
↑法隆寺の鬼追い
②茗荷(みょうが)の根と葉をつき砕き、汁を飲む
物忘れの元ともいわれる茗荷ですが、のむといいそうです。
牛蒡は漢方にもなっているとか、日本でしかあまり普段の食用にはされていないそうです。
雷がなると桑原(クワバラ)と唱えるように、桑もまた悪いものを追い払うと思われていたのかもしれません。
④熱が強く騒ぐほど苦しい時は、芭蕉の根をつき砕き絞って飲む
西遊記では火を消すために芭蕉扇を使いました。芭蕉が火や熱を鎮めると考えられていたのでしょう。
↑屋根の像は西遊記一行(韓国水原市八達門)
●日本が新型コロナにましな秘密??
こうして見ると、上に挙げたものの多くが日本では現在もよく食べられています。もしかしたら、これらの食習慣が偶然いい方に作用したのかもしれませんが、それは分かりません。
また、いくつかの体に良いとされる食物は、伝承でも悪いものや熱を払ってくれると信じられていたようです。
それを確かめる術を持たないのところが、文系研究者(自称)の悲しいところです。