月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

290.江戸時代の「時疫」対策(月刊「祭」2020.6月10号)

2020-06-29 20:48:00 | 新型コロナと祭、民俗
・伝統的な疫病対策 
 現在同様に疫病は、それぞれの時代で人々を悩ませてきました。一方それに抗うための対策を人々が立ててきたのも事実です。
 今回は享保の大飢饉後に起きた疫病時に出された「薬方書付御触」を見ていきます。この御触書は享保十八年(1733)に出されました。この記事では、幕末期に記された「村翁夜話」という播州の地誌に引用されたものを紹介します。

●薬方書付御触
 「時疫流行之節、此薬を以て其煩を逃るへし」
 疫病が流行したら、この薬で症状を和らげよといった意味でしょう。この言葉ではじまり、「時疫」と書かれたおそらく流行病・疫病への対処と「一切の食物の毒」など書かれた食中毒への対処法が書かれたものがあります。享保十八年の疫病は赤痢、疫痢と思われる下痢を伴う病がはやっていたところから、後者にかなりの行がさかれています。
 全部書くのは煩雑なので、今回は前者の「時疫」への対処4種を紹介します。いずれも当時読まれていた医学書をもとに書かれています。

●時疫にハ
①大粒の黒大豆一合よく煎って、甘草一匁(いちもんめ・約3.75g)水にて煎じ出して飲む。
 黒豆も飲む水に混ぜたのかは分かりません。煎り豆は節分の鬼追いで見られますが、あながち迷信ではなかったのかもしれません。

↑法隆寺の鬼追い



②茗荷(みょうが)の根と葉をつき砕き、汁を飲む
 物忘れの元ともいわれる茗荷ですが、のむといいそうです。
 
③牛蒡(ごぼう)をつき砕き汁をしぼり、茶碗に半分2度飲む。その上での葉一握り火であぶり黄色になったら、茶碗4杯の水に入れ、2杯になるまで煎じてにこみ、飲んで汗をかく。若葉ではなく枝でもオッケー
 牛蒡は漢方にもなっているとか、日本でしかあまり普段の食用にはされていないそうです。
 雷がなると桑原(クワバラ)と唱えるように、桑もまた悪いものを追い払うと思われていたのかもしれません。

④熱が強く騒ぐほど苦しい時は、芭蕉の根をつき砕き絞って飲む
 西遊記では火を消すために芭蕉扇を使いました。芭蕉が火や熱を鎮めると考えられていたのでしょう。


↑屋根の像は西遊記一行(韓国水原市八達門)


●日本が新型コロナにましな秘密??
 こうして見ると、上に挙げたものの多くが日本では現在もよく食べられています。もしかしたら、これらの食習慣が偶然いい方に作用したのかもしれませんが、それは分かりません。
 また、いくつかの体に良いとされる食物は、伝承でも悪いものや熱を払ってくれると信じられていたようです。
 それを確かめる術を持たないのところが、文系研究者(自称)の悲しいところです。


289.私家版:新型コロナ基礎知識(月刊「祭」2020.6月9号)

2020-06-26 16:32:00 | 新型コロナと祭、民俗
 ここでの祭開催は、「屋台、だんじりを通常通り運行すること」を意味するものとします。

●開催可否の決定
 この夏に秋祭開催決定可否の決定がひとまずなされるところが多そうです(その後、岸和田春木地区、灘のけんか祭の自粛が決定しました。)。その判断の基準として絶対にしてはいけないのが、「他がやるからうちもやる」です。そもそも新型コロナがどんな性質なのか、それに対する医療がどんな状況なのかを知らないまま、判断するのは危険です。
 そこで、医学オンチで理系科目赤点スレスレの管理人が調べたことを、できるかぎり分かりやすく記述して行きたいとおもいます。
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「恐るるに足らずの例外規定」
②インフルエンザウイルスとの比較で見る新型コロナの性質
・共通点
・異なる点(新型コロナのタチの悪さ)
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「恐るるに足らず」の例外規定
 「ホンマでっか」の武田先生の「必要以上に恐ることはない、正しく怖がろう」「インフルエンザより死者数は少ないので、そこまで怖がらなくていい」といった主張、6月12日の大阪府の専門家会議で出た「自粛不要論」をもとに大っぴらに祭をして大丈夫という結論はかなり危険と言わざるを得ません。
 武田先生の場合は、自身で公衆便所スーパーでの購入物からの伝染の可能性が高いこと高齢者は自粛不要の対象外であるという主張を展開しています。
 また、大阪府の専門家会議で中野貴志氏が自粛不要論を唱えましたが、同会議内では夜の街での感染の危険性は依然としてあることが指摘されました。
 物の共有、公衆便所の使用、夜の街の様相、高齢者祭に親和性の高い事柄が自粛不要論の例外となってしまっています😭


②インフルエンザウイルスとの比較で見る新型コロナの性質
  世界保健機関(WHO)の報告(Tanya Basu「新型コロナとインフルの似ているところ、違うところ=WHO報告」2020.03.12 MIT technology review )やこちら(山本健人「新型コロナウイルス感染症はなぜ厄介か? 季節性インフルエンザやSARSとの違い」2020.04.29 Yahooニュース」を元に、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの性質を比較してみましょう。

・似ている点
感染経路
 接触感染が多いそうです。人→人、あるいは人→物→人の、感染が考えられています。一方で、新型コロナは飛沫感染の可能性も多いに考えられていること、物に付着してからの生存期間が数日に及ぶ物もあることなどが相違点として挙げられています。

症状
 呼吸器系に悪影響を及ぼす、発熱、倦怠感を伴い、肺炎から死に至ります。

・異なる点(新型コロナのタチの悪さ)
治療方法の有無
 とてつもなく大きな問題の1つがこれです。
 インフルエンザ・・・ある
 新型コロナ・・・・・ない


感染してから症状が出るまでの時間
 インフルエンザ・・1日から数日
 新型コロナ・・・・4日から8日
つまり、新型コロナは自分が感染したことに気づきにくいということになります。また、症状が出る前にも感染力を持っているので、知らずのうちに感染を広めている可能性があります。

ウイルスの排出期間
 インフルエンザ・・2日〜7日
 新型コロナ・・・・約20日 8日〜37日
新型コロナがかなり長いことがわかります。一見直ったように見えても、ウイルス排出の可能性があり、長期の隔離が必要となってしまうようです。

致死率
 世界保健機関(WHO)の報告(Tanya Basu「新型コロナとインフルの似ているところ、違うところ=WHO報告」2020.03.12 MIT technology review )では、3〜4%となっています。しかし、東洋経済オンラインの統計を計算(2020.03.17〜06.24)する限りでは、国内での致死率は約5.4%となります。感染者のおおよそ3人に1人がロシアンルーレットをする計算になります。
 そして、かなり手厚い医療を施しての結果の数字であり、医療崩壊などがおきれば、死亡率もグンと上がることが予想されます。

治療法がなく、気づかないまま他人に感染させ、致死率が高いウイルスが跋扈していますその中で、夜の街の様相を呈し、公衆便所の使用が不可欠で、高齢者が多数参加する祭の開催はやはり厳しいと言わざるを得ません。

編集後記
 ついついすがりたくなる恐るるに足らず論。ですが、よく聞くと、「これさえ気をつければ」の例外があります。その例外は、祭の様相そのものといえるのが、現状と言えます。 

288.本気で祭に向かう姿勢-神戸新聞2020.06.21の灘のけんか祭り記事より-(月刊「祭」2020.6月7号)

2020-06-21 20:39:00 | 新型コロナと祭、民俗
●播州にも祭を開催するかどうかについての報道
 大阪府知事の岸和田地車サポート発言(それについての記事)に続き、神戸新聞(2020.06.21)に松原八幡神社(灘のけんか祭)の秋季例大祭の開催可否についての記事が掲載されました。




 その記事から見出した下のキーワードを元に今回の記事を書いていきます。
①灘の判断待ち 
②安易

①灘の判断待ち
 大きな規模の祭礼の判断を待つのは悪くありません。しかし、灘がやるからウチもやるは、大きな間違いです。大規模な灘が祭をすれば、感染者が出た場合に医療資源が大幅に減ります
 逆に灘ができないと判断した場合に、自分たちの祭がほんのかすかながら、できる可能性が見えてきます。結局、それぞれの祭、屋台で、より様子を見る必要があるのは、
①国内の感染状況と出入りしてる国の感染状況
②感染者が出た場合の近隣の医療資源を確保できるか
③徹底的な感染防止対策を学び実行することができるか
などのシビアな様子見が必要になってきます。
 そして、
 ①無理して無策で祭する≠本気
 ②シビアな条件を途方もない労力を使ってクリアする=本気
  ③不可能なら撤退=本気
です。今年は播州の祭がより本気を見せる年になります。

②安易
・安易にやめる
 新聞記事のなかでは、「安易にやめる」ことの危機感を氏子の一人が言っています。たしかに、「この世の土産に孫の最後の晴れ姿」「今年しかできない祭の役割」「青年団最後の年」などの思いを持っているのが、祭です。その年の祭はその年にしかありません。毎年が一生に一度の祭です。安易にやめる決断をする気になれないのも理解できます。
 しかし、あるいは、なおさら、一生に一度の祭を一生の後悔にしないためにも、本気ならこの記事の懸念事項などを本気でクリアせねばなりません。
 もし、やめる決断をした場合、「今年に特別な思いをもって臨んでいた人の思いをどうくみとるか」が課題になりそうです。こちらは、祭関係者の得意分野だと感じています。

・安易にやる
 「(感染者が)出る時は出る」「死んだらその時や」「なんかあったらワシが責任とる」といったような威勢のいい言葉、「しっかり手洗い」みたいな幼稚園児でも言える合言葉だけでやるのは許されません。
 誰が、どの場面で、どのような感染対策をとるかなど、シビアな課題を本気で考えて乗り越えること(リンク先の「クリアするべき懸念事項」参照)が求められます。例年の度胸とはまた違ったものが、頭と関係者、観覧者に求められています。

編集後記-「できない理由」を探して潰す-
 「やるため」には「できない理由」を見つけ、それを「徹底的に潰す」。それが、祭を復活させるための条件です。今は、「できない理由」を具体的にしていく段階と言えるでしょう。自分なりに現在の感染状況などを調べた限りでは、今年に関しては、悲観的な結論しか出すことができません。
 ほんの少しだけ明るい希望がありました。ワクチンの治験が10人以下ですが、初めてうまく行ったそうです。



287.大阪府知事のだんじりサポート発言②-祭開催の懸念事項-(月刊「祭」2020.6月7号)

2020-06-20 04:05:00 | 新型コロナと祭、民俗
    
●吉村大阪府知事の岸和田地車サポート発言
 吉村大阪府知事の「岸和田だんじりサポート発言」が祭好き達の注目を集めています。結論から言うと、希望は見えたものの、「祭をやる=屋台・だんじりを大っぴらに出せるか」にはまだまだ疑問が残ります。また、我々のような播州の屋台を担ぐ祭は、岸和田の地車のような曳く祭より開催が困難になると思われます。それらを下の順序で書いていきます。

①吉村大阪府知事の発言した内容
②その発言の根拠と思われる研究(管理人のザックリ解釈)
大阪府庁に質問した内容と回答
クリアするべき懸念事項
播州屋台の祭が岸和田だんじりの祭より開催がより困難と思われる点
今回は、④⑤です。

 大阪府知事の6月17日の「だんじり開催でも全力サポート発言」は、核物理学者の中野氏の自粛意味な発言の後押しを受けていると思われます。その論は、一週間の感染者数/累計感染者数=k値とよばれるものが、0に近くなると感染収束に近づくという理論にもとっきます。その理論によると日本は収束への道のりを歩んでおり、自粛の意味もなかったというものです。
 また、病床数の増加などの動きはいまのところないという府の担当職員の方のご回答をいただきました(6月18日)。
 今回は、本当に祭を「やる」場合の懸念事項と、播州の屋台祭が岸和田のだんじり祭以上に開催が困難になることを指摘します。

 ④クリアするべき懸念事項
感染数や医療状況の懸念事項
①依然として新規感染者数が3月の感染爆発前夜(一月後には300人となった)と同程度の30人以上の日々が続いている。
②新型コロナウィルスは高気温下では活動レベルが落ちるにも関わらず、①の状態が3月よりずっと気温が高い6月で保たれていること
③数学的知見から「日本国内においては」自粛は効果がなかったという主張をしている中野氏だが、国内で感染を抑えられている理由はまだはっきりしていないこと。
④③のような状況でありながらも、夜の町など距離の近い飲食物の共用の場、韓国での宗教団体の感染爆発などの事例から、それに近い条件が揃うと思われる祭の危険性は否めないこと
⑤祭が行われる各地域では、首都圏や阪神地域のような医療資源が整っているとは言い難く、重症化しやすい高齢者は多い傾向があると思われること


祭をする人自身の懸念事項
 ①-④を屋台やだんじりのリーダーに求めるのは、かなり酷なものになります。求められるのは、根性とか心意気ではなく、それらを形にするための科学的な根拠に基づいた努力です。

①酒に酔った人がたくさんいる中で、予防を徹底的にしながらどこまで祭ができるのか? あるいは、必要最低限のお神酒以外、酒を一切飲まないで、屋台、地車を運行できるのか?

②逐一除菌をして、飛沫を他人にうつさないようにマスクをして、間隔をとって(少ない人数で)屋台や地車を動かすなど肉体的につらいものになると思われる巡行を本当にやる気があるのか?

 「できるだけ距離をとって手洗いをしよう」のような子どもでも言える標語ではなく、運行時、担ぎ手、太鼓打、飲食の場、共用物使用時など、あらゆる人、場面、場所での具体的な感染予防策を調べて作り、必要な物品を調達し、周知徹底し実行できるか。

④感染者が出た場合に、地域的な医療崩壊が起きるかどうか検証し、それを防ぐための医療資源を地域行政に確保させることはできるのか。

播州屋台の祭が岸和田だんじりの祭より開催がより困難と思われる点
 今回の話題は大阪府と岸和田でしたが、最後に播州の屋台祭の開催について考えます。結論から言うと、開催は岸和田よりも困難なものになると思われます。それは、次の2点からです。

ⅰ 開催時期
 岸和田などのだんじり祭は9月にも行われます。もちろん10月にもありますが、一番規模の大きな岸和田市岸城神社氏子域、弥栄神社氏子域のものは、9月の祭りとなります。
 一方で播州の屋台祭は9月に行われるものはほとんどなく、殆どが10月の開催となります。つまり、播州の方が岸和田などより新型コロナが活出しやすいとされる寒い時期と重なります。

ⅱ 密着した運行
 岸和田の曳く祭りと比べて、播州屋台の祭は担ぐ祭です。担ぐために、狭い場所に密集して担ぐことが増えてきます。担ぎ手の交代も必要になってきます。
 その時に、屋台が担がれたままだとなかなか、
人がのく→棒を消毒→抗体の人が入る
という順序をとるのは困難を決めると思います。

吉村大阪府知事のサポート発言もありましたが、祭をやるために超えなければならない懸念事項は、重いものが数多くあり、実現は極めて困難だという見通しになると思われます。











286.大阪府知事のだんじりサポート発言① -知事の発言の根拠と府の感染者対策-(月刊「祭」2020.6月6号)

2020-06-20 01:53:00 | 新型コロナと祭、民俗
●吉村大阪府知事の岸和田地車サポート発言
 吉村大阪府知事の「岸和田だんじりサポート発言」が祭好き達の注目を集めています。結論から言うと、希望は見えたものの、「祭をやる=屋台・だんじりを大っぴらに出せるか」にはまだまだ疑問が残ります。また、我々のような播州の屋台を担ぐ祭は、岸和田の地車のような曳く祭より開催が困難になると思われます。それらを下の順序で書いていきます。

①吉村大阪府知事の発言した内容
②その発言の根拠と思われる研究(管理人のザックリ解釈)
大阪府庁に質問した内容と回答
クリアするべき懸念事項
播州屋台の祭が岸和田だんじりの祭より開催がより困難と思われる点
今回は、①②③までです。

①吉村大阪府知事の発言した内容
 発言をしている時の動画がアップロードされていますが、削除されるかもしれません。2020.6.17 MBS 「ミント」のインタビューにおいて、大凡下のようなことを言っています。
①政教分離な大原則があるから、だんじり祭をやるやらないを決めるのは地元の人
②自分はだんじりファン
③やる、やらないどちらの決断を岸和田がしても府として全力でサポートする。
④感染者が出た場合のサポートなどを全力でしたい。
‪といった内容でした。
 ③の発言は、知事が地車の曳行を容認したようにとらえられて、祭好き達のSNSに広がっています。

 個人的には、政治家として、政党としても、吉村知事を信用する気にはなれません。でも、「だんじりファン」と言った時だけは、「政治家の顔」から、祭を見てかっこええと思う「少年の顔」になったように見え、その言葉に嘘はないように見えました。それは、岸和田の地車の魅力がなせる技でもあるのでしょう。
 
 とはいうものの、吉村府知事は経済活動の回復をいそぐあまり、やや希望的観測で根拠としているだろう研究を解釈しているように感じています。それを次に書いていきます。

 ②その発言の根拠と思われる研究(管理人のザックリ解釈)
  吉村府知事が、岸和田だんじり祭の開催を容認したとも捉えられる発言をした背景には、2020年6月11日か12日(リンク先では11日とも12日とも思える表現で書かれている)に行われた大阪府新型コロナウィルス専門家会議において、『「大阪大学 核物理研究センター」のセンター長・中野貴志教授が、「感染拡大の収束に外出自粛や休業要請による効果はなかった」と明言した。』ことによるものだと思われます。
 中野氏は感染収束の指標としているK値(直近一週間の総感染者数/総感染者数)というものを用いて、その効果はないとしたそうです。残念ながら、なぜ、この数が有効なのか有効でないのかは分かりません。
 記事から理解できたことは、下の通りです。
①中野氏が核物理学者であること
②日本は感染をうまく抑えこめていると中野氏が主張していること
③K値で見るとピークアウトは3月28日だと中野氏が主張していること
④三連休の気の緩みは関係ないとと中野氏が主張していること
⑤国内の自粛政策は後から見たら過剰だが、ことさら間違っていると責めるのは間違っていると中野氏が主張していること
⑥朝野座長は飲酒接待の場でクラスターが発生している事実を指摘していること。
 このサイトによると、中野氏の理論は統計的には「今のところ正確」ですが、疫学的(例えば新型コロナウィルスの性質?)からは正確かどうかは分からないと言ったところでしょう。
 また、赤点ギリギリの数学音痴の管理人の見解ですが、中野氏の理論だと日を追うごとに分母が大きくなるので、どうしても楽観的な数字が出やすくなるように思ってしまいます。
 また、結局飲食を共にする場では集団感染が起きる事例は夏でも続いていることなどを考えると、やっぱり厳しいのかなと考えてしまいます。


 大阪府庁に質問した内容と回答 
 そこで、岸和田だんじり祭などを開催して感染者が出た時のためのサポートとして病床数を増やす計画があるのかどうかを聞こうと思い立ち、大阪府の新型コロナ相談室に電話で問い合わせました。しかし、そこから「府民お問い合わせセンター」に電話するよう案内され、そこから災害対策課に繋がれてお話を聞くことになりました。
おおよその質問の内容と、回答は大凡下のようなものでした。なお質問番号は煩雑さ回避のために便宜的につけました。

----これより---
質問1
だんじりなどで感染者が出た場合などの病床数を増やす計画はあるのか

答え
(だんじりをやる場合の対策をしろという)指示はまだ降りてきていない。
また、さらに病床数ふやすことについても今のところはやっていない。
 感染対策課、災害対策課、(新型コロナ対応のためにつくられた?)健康医療チームなどで協力して対応することになると思われる。

質問2
祭に間に合うのか??

答え
答えてくれた人の個人的な感覚としては、軽症者のためのホテルの確保は一月かからずにできたなどノウハウはあると思う
----
今のところ、具体的に動いているという様子ではないものの、軽症者用のホテルの確保などのノウハウには自信が伺えたと感じています。しかしながら、祭の開催の是非を判断するのは、大阪府がどこまでできるかが分かった上で検証しなければならないことだと思われます。

次号では似たような内容と言われかねませんが、やる上での懸念事項と播州の屋台祭が、岸和田のだんじり祭以上に開催に困難が伴うだろう点を挙げていきます。







 
 

285.卒論で祭を書くということ(月刊「祭」2020.6月5号)

2020-06-17 10:32:00 | 屋台・だんじり・神輿-研究史・名著-
祭を題材にした卒論を書いた学生さんのことを最近のニュースを見て思い出しました。
 
 




 
 
●屋台やだんじりを題材にした卒論を書く学生
 昔からいたけど管理人が知らないだけなのかもしれませんが、いろんな大学のいろんな学部で屋台・太鼓台、だんじりを題材に卒論を書いている学生をよく見るようになって来ました。
 その中のいくつかは、管理人も何人かのお手伝いをさせていただきました。そのまま、プロの学者になる方は今のところいませんが、研究史的な名作となるものもあるし、そうでなくとも、いずれも人の心を打つものでした。まずは、それを紹介していきます。
 
●名作ぞろい
2007年度 Tnさん(三木市)
 管理人の同級生の知り合いの学生さんでした。管理人とっても、卒論をアドバイスする初めての経験でした。どうアドバイスしたらいいか分からないまま、知っとることを殴り書きしてメールに送ってしまいました。その読みにくい文章を申し訳程度に簡潔にまとめつつ、独自の調査をふんだんにもりこんで三木市の祭とその中の大宮八幡宮の祭の現状をまとめました。
  当時は新町屋台が事故で消失した年でしたが、新町の復活を願う文章に心打たれました。
 
2011年度 Tkさん(岡山県)
 管理人が協力したというより、一緒に祭を見たといのが正確でしょうか^_^;
 瀬戸内地域に分布する古い布団太鼓を、悉皆調査していき、布団太鼓ができた時は川を伝って伝播していっだろうこと、大塩平八郎の乱以降にだんじりにとってかわってきたことなどを結論づけました。
 播州屋台研究家の粕谷さんが、その著作で批判的な文章を掲載していました。粕谷さんが批判する対照となるのは、間違いなく一流の証です。
 
2012年 Iwさん(三木市)
 三木市大宮八幡宮の屋台のそれぞれの歴史を調査し、違うルーツの屋台を大宮八幡宮仕様にしていることを指摘しました。管理人のダラダラした話を簡潔にまとめ、三木が誇る屋台研究家横山氏のご教示を的確にまとめ上げて、結論を導きました。
 先代のみき歴史資料館の学芸員さんも、参考にしていました。
 
2018年度 Dさん(三木市)
 一番仲良くしてる友達ですが、実はまだ読んでません^_^; 卒論の発表は聞きました。
 地元の祭だけでなく、北条節句祭の某屋台青年団に入団し、実際に活動しないと分からない屋台の性質の考察も入れたそうです。新しく加わった宮本屋台を含めた北条節句祭の全屋台の来歴を明らかにしています。
 しかし、卒論は彼の活動の「ほんの一部」というのが正確です。近畿圏内の屋台蔵、だんじり小屋の所在地を調べGoogleマップにプロットし、膨大な屋台だんじり マップが今も作られ続けています。
 
2020年度 Ioさん(たつの市)
  新型コロナ禍の中ですが、今年も頑張っている学生さんがいます。内容は秘密^_^
 
●祭を卒論に選んだ学生さんたちの功績
 管理人が学生のころは、あくまで体感ですが、屋台やだんじりの研究がそこまで活発に行われているようには思えませんでした。しかし、上のような学生さんたちが現れることによって、大学の先生方も関心を持つようになったのではないかとも感じています。
 また、それぞれの場で祭などの地域に貢献しはじめているかつての学生さんもいるようです。
 そして何よりも管理人にとっては、祭の卒論にかかわれたた(余計な口をはさんだ)体験は本当に楽しいものでした。
 
 
編集後記
 小池東京都知事が卒論必須の学部を卒論もなく卒業したとのたまっていました。その卒業証書は「学力証明」ではなく、「コネ証明」といったところでしょう。
 同時に思い出したのは自分が卒論を書いた時のこと、そして、上に書いた卒論のお手伝いをさせていただいた学生さんたちのことです。どの学生さんも就活、バイトと本当に忙しい中でも、目を輝かせながら大好きな祭のことを調べていました(一人はメールでのやりとりですが、後でお礼を言ってもらえた時はやはりそうでした。)。
 「目を輝かせて一つのことを調べる。」これは、大学生の特権です。せっかく大学に行かせてもらいながら、それを経験せずに卒業だけを主張する小池知事の中身のなさが、哀れにおもえてきます。
 
 

284.祭を「やる」場合の留意点(月刊「祭」2020.6月4号)

2020-06-16 21:39:00 | 新型コロナと祭、民俗
●お上は新型コロナ感染拡大の戦犯押し付け先探し中
 オリンピックしたい一部の立場ある人たちに国内で広がった新型コロナですが、やはり感染拡大の責任は取りたくないものです。お上は夜の町、パチンコ店など感染拡大の戦犯押し付け先を目をさらにして探しています。このブログ愛読者は耳タコかもですが、祭の中の神事には当たらないとも言われるだんじり、太鼓台などの祭関係者もその候補になる可能性は極めて高いと思われます。
 管理人としては、ワクチンの流通が9月10月には間に合いそうにない、祭町は概して年長者が多いことを考えると、現状ではするべきではないと考えています。 
 しかし、「やる」選択肢をとる祭、屋台、だんじりがあることも予想されます。その時の留意点をあげたいと思います。

●感染防止策
 最も重要な観点だと思われます。
 挙げてはみましたが、特に担ぐ時、曳く時の対策の実現は難しそうです。
担ぐ時、曳く時
①密集して担いだり曳いたりしない。
②担ぐ、曳くの交代時は触れていたものを消毒する。
③太鼓は対面に座らない。
④全員マスク着用

飲食時、トイレ時
①飲み物、食べ物は一つのものをみんなで食べるのではなく、小分けにして。
②盛り付け、レンジで加熱、蓋、口に触れる部分の重点消毒。
③飲み物も個人用のペットボトルや缶で。
 口にする前に消毒
④食前の手洗いと消毒
⑤トイレのドアノブ、鍵、を触ったら消毒してから用を足す。トイレットペーパーは、カットする金具部分を消毒、一回転分は捨てて使う。

●組織運営
「ワシはやめとく」を認める
「ワシはやめとく」を伝える
 「やる」という決断をしても、高齢者など重症化リスクの高い人との同居など、家庭の事情によっては祭に出ない人もいると思われます。
 
 祭は一年一年が特別なかけがえのないものです。特に青年団長などを努めるのは、地域によっては一生に一度の地域であり、みんなと祭りに臨みたいものです。
 でも、命に変えられるものではありません。自分や家族を守るために「やめとく」の決断をする人も祭り仲間の中に現れるでしょう。
 「やめとく」と言われた人は、その人を許して、また戻ってきたら前と変わらず接する必要があります。
 一方で、いくら大切な友達や仲間が一生に一度の大役を務めるからと言って、ムリは禁物です。例えば自分の親が感染により帰らぬ人となるようなことがあれば、その大役を務めた仲間も後悔の念に苛まれます。




283.三年峠シリーズ②の2-神戸市の苦集滅道(くかめち)はなぜ三回坂になったか(月刊「祭」6月3号)

2020-06-14 11:17:00 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-

●悟り・解脱と西方浄土信仰との習合
 話題沸騰(自称)のこちらの記事で、神戸市西区の太山寺近くの墓地に通じる道が、悟りに至る道を意味する苦集滅道(くかめち)と呼ばれ、転ぶと寿命が縮むという伝承が生まれたのは、悟り・解脱と極楽往生・死を同一視することによるものだと書きました。
 やがて、その伝承は変化して「三回転ぶと死ぬ」というものに変わったとも書きました。ですが、そこに疑問が残ります。
 なぜ、三回転ぶと死ぬという伝承に変化したのでしょうか。この道が太山寺門前にあり、ここの埋け墓は元々太山寺内にあったものということから、太山寺の信仰を手がかりに考えていきます。





●「三」身山太山寺の三身への五体投地?
 まず目につくのが、三身山という山号です。ということで、三身をウィキってみました。仏の三種類(法身、報身、応身)の身のあり方とのことで、三種類の身にはそれぞれ毘盧舎那仏、釈迦牟尼仏、阿弥陀仏が当てられているようです。
 しかし、太山寺には釈迦堂に釈迦牟尼仏、常行堂に阿弥陀仏はいらっしゃいます。また、三重仏塔の中心には大日如来がいらっしゃり、密教では大日如来と毘盧舎那仏(仏塔ではなく如来とも呼べるはずですが、語感で仏とした)は、同体とも考えられているようです。
 また、日本を含め仏教信仰圏各地では五体投地と呼ばれる全身を地につけて礼拝する方法があります。転ぶことで、結果的に五体投地となり、三回転んで三身である大日如来(毘盧舎那仏)、釈迦牟尼仏、阿弥陀仏を礼拝して、悟りを開く、解脱する=あの世に行くという伝説が生まれたと考えられそうです。

●あるいは太山寺地主三所権現への五体投地?
 「三身」とは関係ないのかも知れませんが、太山寺では前回でも紹介した享和三年(1803)「播磨名所巡覧図絵」では「地主三所権現」として「薬師、釈迦、(阿)弥陀」を挙げています。




↑「播州名所巡覧図絵に描かれた大山寺(太山寺)」昭和四十九年柳原書店発行のものより。
この記事もこの本を参考にしました。

 「地主三所権現」として挙げられている、阿弥陀、釈迦はそれぞれの建物があり、薬師は太山寺の御本尊となっています。
 そして、太山寺は天台宗に属しており、総本山は比叡山延暦寺です。延暦寺の麓には、比叡山の地主神である日吉大社があります。現在は七神が主祭神として鎮座していますが、もともとは大比叡(西本宮)、小比叡(東本宮)、聖真子(宇佐宮)の三神だったそうです。その三神にはそれぞれ本地仏があてられています。文化十二年(1815)「近江名所図会」では、大比叡は釈迦、小比叡は薬師、聖真子は阿弥陀となっていて、太山寺の「地主三所権現」と一致します。「権現」は、仏が神として現れた仮の姿をさしたり、そうなりうる本地仏をさしたりしています。となると、太山寺の「地主三所権現」は「日吉山王」を表すと思われます。


↑日吉大社東本宮(旧称・小比叡、本地仏・薬師)


↑日吉大社宇佐宮(旧称・聖真子、本地仏・阿弥陀)


↑日吉大社西本宮(旧称・大比叡、本地仏・釈迦)

 寿命縮小伝承が「三回転倒死亡伝承」に変わった理由も、地主三所権現への五体投地が成仏につながるという思想からきたものとも考えられます。また、確認できる文献は見つけていませんが、太山寺においては三所権現=三身であったのかも知れません。
 いずれにせよ、太山寺門前の墓地への道が「転ぶと寿命が縮まる」伝承が「三回転ぶと死ぬ」という伝承に変化したのは、三身、あるいは三所権現、あるいはその両方への五体投地での成仏が連想されて変化したものと思われます。




 


282.他所がやるからうちもやるの危険(月刊「祭」2020.6月2号)

2020-06-12 22:04:00 | 新型コロナと祭、民俗

●ウィズコロナ下の祭開催可否の基準
 少しずつ、今年の秋祭の開催の可否が決まってきました。知る限りではほとんどが中止の決断、そして、それが、賢明と言わざるを得ない状況です。新規感染者数が2桁なのは少ないのではなく、感染爆発前夜の数です。
 さて、ここで気になるのがどうやって開催を決めるかです。
  例えば、昭和天皇の危篤時のような宗教的な議論で開催の可否が決まる場合は、他所の祭の「様子見」も選択肢としては有ると思います。
 しかし、新型コロナで「他のところがやるからうちもやる」は、大きな不幸につながるとこの記事に書きました。今回はその理由をシンプルに書きます。

●なぜ「他のところがやるからうちもやる」は、大きな不幸につながるのか
 この冬から春にかけての大規模な国内での流行は、ほとんどが都市部でのものでした。都市部の場合、人口は多く手狭なものの、比較的(といっても今回は優秀なお上のおかげで不足だらけでしたが)医療施設は整っていると言えるでしょう。
 では、祭がさかんな地方で同様のことが起きた場合どうなるでしょうか。多くの祭のさかんな地域の状況は概して下のようなものでしょう。

①主要都市部より、60歳以上の住民の割合が高い。つまり、重症化する可能性が高い。

②主要都市部のようなPCR検査ができる機関がない(例えば三木市内にはありません。)

③主要都市部のような、入院施設がない。
 兵庫県だと加古川と神戸が拠点?

 祭がさかんな他の多くの地域も、上の①②③に当てはまるところはかなりあると思われます。いいかえれば、祭が盛んな地域の多くは、都市部より重症化リスクは高いけど、医療資源に乏しいと言わざるを得ません。
 
このような中で、「他所がやるからうちもやる」が連鎖すると、「他所もうちも棺桶の山」となるのが、現状だと思われます。

 現状では開催は厳しいです。万が一近隣の他所が出したら、うちは余計に無理と言わざるを得ないのが、祭がさかんな地域の医療資源と人口割合から考えられそうな結論です。

●編集後記
 中国で良心的な医者が口止めされ感染が広がり、国内で良心的な専門家の口が塞がれました。愚かな知事や首相の選手の健康を考慮しないオリンピック志向により感染は見事に広がりました。
 緊急事態宣言が解除され、経済は動き出しています。しかし、「不要不急の出勤」をしている人も増えているように見えます。
 愚かなオリンピック志向、愚かな出勤志向によって祭ができない可能性が高いことに落胆しています。



 

281.緊急事態宣言後に分かる!?勤め先ブラック、ホワイト診断(月刊「祭」2020.6月1号)

2020-06-01 11:15:00 | 新型コロナと祭、民俗
ここでのブラック企業は、おおよそこちらの意味で使っています。
●緊急事態宣言解除後の風景
 緊急事態宣言が解除され、再び経済が動き始めました。新型コロナが某国総理周辺のように忖度して、今は出る時じゃないと活動を自粛してくれたらいいのですが、そういうわけにはいきません。忖度してくれるのならば、オリンピック 感染もなかったはずです。
 
 つまり、緊急事態宣言が解除された後の方こそが、よら感染の危機に晒されているとも言えるでしょう。しかし、企業によっては、これまでの感染対策をやめてしまうところがあると聞きます。そこで、あなたの身の回りは大丈夫かどうかのチェックシートを作ってみました。 

★あなたの企業は大丈夫?★

下の①から④の質問にどのていどあてはまるか、点数を下の基準でつけます。それを合計してください。

基準
5めっちゃあてはまる
4そこそこあてはまる
3どちらともいえない
2あまりあてはまらない
1あてはまらない

①今まであった感染症対策グッズ(除菌シート、消毒液、マスクの配布)がなくなった。

②マスク、手洗いなどの対策をしていない人を注意しなくなった。

③リモートですむものを、リモートでするのをやめた。

④ラッシュ時の通勤を控えることもできるのに、できない雰囲気がある。

⑤研修などで会社に忠誠をちかわすための声出し訓練を集まってやらせている。

⑥危機感がないと社員を非難したり、逆に怖がってたら何もできんと言ったりするわりには、具体的な感染防止の方法を示してくれない。

番外:マスクをアベノマスクに指定してくる

6点から10点
 かなりのホワイト企業かつ、会社の経済的な余裕があるかも。

11点から15点
 そこそこホワイト企業、でも、経済的な余裕か、ブラック化の兆しがある?

16点から20点
 ブラック、ホワイトどちらにも転ぶ可能性あり。改善への声を出さないと集団感染の温床に??

11点から25
 ブラック要素が強めかも。経済的な利益や旧来の慣習を重視するあまり、対策が疎かになっている可能性があります。

26点から30点
 かなりのブラック企業か。経営自体がやばくて、感染症対策まで手が回らないか、そもそも、その必要性を感じていないかのどちらかです。弁護士やハローワーク などへの相談をオススメします。

番外が4か5
 あなたの会社の意思決定社は人に言えない悩みを抱えているかもしれません。

編集後記
アメリカのアフリカ系アメリカ人殺害事件に端を発する暴動が止んでいないようです。トランプ大統領のツイッターでの暴力を示唆する発言で、火に油状態です。
 トランプ大統領をホワイトハウスの住人で間だけでも、ブラック企業、ホワイト企業の言葉が意味するものを取り替えた方がいいかもしれません。