屋台文化で育った管理人にとって、オミコッサン(御神輿)は子供が担ぐもの、祭の儀礼上の主役だけど実質は屋台にこそが主役だという程度のものしかありませんでした。その考えが非常に愚かであることを教えてくれたのが、滋賀県大津市日吉大社の山王祭でした。
今回は日吉七社のうち、拝殿と本殿をわけてつくられた五社の格天井の数を数えてみます。
祭神名は神社の案内板およびそれが元にしている文献(明治時代の偽書説あり)に従い、本地仏は近江名所図会に従いました。
●東本宮、樹下宮
東本宮の区域内には七社のうち二社が入っています。東本宮は大山咋命、樹下宮には鴨玉依姫神の夫婦神といわれています。いわゆる地主神の夫婦となります。すぐ下の写真の中心奥が東本宮本殿、手前が拝殿、左が樹下宮本殿、右が拝殿になっています。東本宮の本地仏が薬師如来といわれていることから、もしかしたらもともとは、本殿の位置に薬師如来、左右の本殿拝殿には、薬師寺式伽藍配置をしめす仏塔があったのかもしれないと邪推してしまいます。
●西本宮、宇佐宮、白山宮
一方の来訪神側の西本宮、宇佐宮、白山宮。
↑白山宮の本殿、拝殿。菊理姫命(くくりひめのみこと)。仲介の神様ともいわれています。
↑宇佐宮。田心姫命と言われ西本宮大乙貴命の妻神です。本地は阿弥陀如来とされ東の薬師如来との対比ができあがっています。
西本宮。大比叡ともいわれる宮です。大乙貴命が祭神とされています。
●五社拝殿の格天井
格天井はいずれも、小正方形があつまって一つの中正方形をつくり、それらがさらにあつまって天井(大正方形と本稿ではする。)を形成するというものでした。小正方形の数は中正方形の中に小正方形が一辺にいくつあるか、中正方形の数は大正方形の一辺にいくつあるかを示す数とします。
祭神 | 夫婦関係 神の特質 |
本地仏 | 小 | 中 | |
東本宮 | 大山咋命 | 夫(地主神) | (東方瑠璃光) 薬師如来 |
13 | 10 |
樹下宮 | 鴨玉依姫命 | 妻(地主神) | 地蔵菩薩 | 11 | 10 |
白山宮 | 菊理姫命 | 仲介神 | 十一面観音 | 11 | 10 |
宇佐宮 | 田心姫命 | 夫(来訪神) | (西方浄土) 阿弥陀如来 |
13 | 10 |
西本宮 | 大乙貴命 | 妻(来訪神) | 釈迦如来 | 13 |
13 |
となりました。
これらを見ると、西本宮を一段上においていることが分かります。また、西の如来(宇佐宮・阿弥陀如来)と東の如来(東本宮・薬師如来)で数を合わせていることが分かりました。そして、菩薩同士(白山宮・十一面観音、樹下宮・地蔵)でも数を合わせていました。数の合わせ方は、本地仏の配置を基準にしていることが分かりました。
↑西本宮の格天井。中心部のみせりあがっています。
↑東本宮の格天井。宇佐宮も同様でした。
↑樹下宮の格天井。白山宮も同様でした。
●編集後記
今年、15年ぶりくらいに日吉大社を訪れました。そのとき、学生時代に神輿を担がしてくださり、泊めてくださり、ご飯を食べさせてくださった恩人が他界されていたことを知りました。そこで、おおよそ20年ぶりにその方の家を訪ね、息子さんとお話しさせていただきました。管理人の顔を見た息子さんは、老けたなあと言って笑いました。その口調はあの頃のままでした。
あの時は、下宿から電車を乗り継いでいったり、自転車をこいだりしました。車で送っていただいたりしたこともありました。一週間連続で通ったり、2泊3泊したりしたものです。今回は自分のお気に入りの自家用車で訪れました。滞在時間は数時間でした。20年の月日が大きく身の周りを変化させていっていると痛感しました。
お世話になった方のご冥福をお祈りします。
そして、走馬燈のような人生、いいものにしたいと改めて感じました。