学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

内村鑑三『後世への最大遺物』

2018-12-28 20:57:01 | 読書感想
今日は朝からすこぶる寒く、午後にはぱらぱらと雪が降って来ました。

私にとっては、年末年始休日の初日です。まずは近所の神社に行き、1年間、無事に過ごせたことの御礼のために参拝。次に古本屋へ行って、渋沢栄一の『雨夜譚』、鏑木清方の『明治の東京』、『内村鑑三所感集』、いずれも岩波文庫で購入しました。午後は年賀状書き。今年1年お世話になった方々に心を込めて書きました。

数日前から読んでいた、内村鑑三の『後世への最大遺物』が読み終わりました。私たちは生まれて来た以上、社会のために何か後世に残さなければならないのではないか、と、内村は本書で私たちに問いかけます。では、私たちは具体的に何をするべきか。内村が曰く、社会のためにお金を使ったり、社会をより良くするための事業を実施したり、自分の心の声を文学、すなわち著作として表すなどの方法があると説きます。けれども、それらはみんなができるものではない、であるから、本当に大切なのは私たち一人ひとりが徳を重ねる生涯を送ることこそが大切だと述べます。内村は人間の欲を正直に認めたうえで、それを上手に社会のために使う必要性を説いたようです。内村の提案は現実的で、先日、このブログでも紹介した企業家の青木義雄が内村に心酔したのも頷ける気がします。

文中、文学の場面で、内村が『源氏物語』を否定しているところが興味深い場面です。彼にとって、文学とは社会に還元されなければならないものであり、男性が幾人もの女性と関係するような『源氏物語』は受け入れがたいものだったのでしょう。では、内村は具体的にどんな文学が好きだったのか。内村の文学的趣向について、私は関心が湧いて来ました。いずれ、調べてみたいですね。

さて、明日は年末の挨拶まわりです。明日も冷えそうですね。皆様も暖かくして、風邪などひかぬようお過ごしください。