学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

『日暮硯』を読む

2018-12-30 20:26:01 | 読書感想
今日は朝から久しぶりの雪模様。たまに雪を見る分には、とても新鮮な気持ちになります。版画家の斎藤清だったかと思いますが、街に雪が積もると白と黒の単純な世界に変わり、それが版画の主題になりうる、というようなことを書いていたように記憶しています。

先日から年末の余暇に読書をしているわけですが、今日は『日暮硯』を読み終わりました。この本は、江戸中期、窮乏する信州松代藩の財政をV字回復させた家老、恩田木工に関する筆録です。

財政を立て直す方法は単純なことで、収入を増やし、支出を抑えればいいわけですね。では、そのためにどうしたら良いのか。収入を妨げている原因、支出が増えている原因をそれぞれ突き詰めて、解決策を練る必要性があります。恩田は、まず自分自身の生活を律し、さらに自分の家族や家臣にも広げます。つまり、改革を主導するには、自らが率先して生活を改め、自分の言葉に説得力を持たせないといけないと考えたわけですね。さらに収入、支出の問題を洗いざらい突き詰め、個人を批判することなく、不合理になっていることを改めるようにします。こういう場合、あまりガチガチに改革をすると、必ず不満分子が出てくるものですが、目標さえクリアできれば余暇は何をして楽しんでも良い、とアメとムチを使い分けて、松代藩は恩田を中心に一丸となって財政改革に取り組むことになるのです。

今を生きる私たち、特に社会人にとっては恩田の姿から色々なことが学べるでしょう。私も部下を持つ身として、自分の言葉にどう説得力を持たせればいいのか、さらにどうしたら全員が一丸となって目標に向かって進むことができるのか、のヒントを得ることができました。江本書は江戸時代の文体なので、慣れるまでなかなか大変かもしれませんが、中身の濃い本です。

戸外は未だ風が強く、雪が舞っているようです。師走らしい天気となりました。今年もあと2日、皆様もごゆっくり年末をお過ごしください。