保津川下りの船頭さん

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仕事の誇りについて。

2006-05-31 00:57:39 | 船頭の目・・・雑感・雑記
大抵の人は、生きていく為に何かしらの「仕事」に付かねばならない。

「自分のやりたかった仕事」「やりがいのある仕事」に出会えた人は
まさに幸運な人達で、殆どの人が「生活の為、家族を養う為に稼ぐ」
目的で今の仕事に付いているというのが正直なところかもしれません。

自分自身、今の仕事を選んだのが正しい選択だったのか?悩んだ時期もありました。

そんな時、我が母親からある話を聞いたのです。

それは日本一のレジャー施設で有名な「東京ディズニーランド(TDL)」の
中にあるレストランで実際にあった話でした。

ある日、そのレストランに30代くらいの夫婦らしき二人連れが来られました。

その二人連れはウエイトレスさんに、二人分の料理のほかに
お子様ランチも注文されたそうです。

大概のレストランなら大人客のみでのお子様ランチの注文は
受け付けてない場合が多いそうですが、このお店のウエイトレスさんは
快く笑顔でオーダーを受けられたといいます。

そしてこのウエイトレスさんは、お子様ランチをテーブルに運びながら
「お子様ランチをご注文下さったのは何か理由がおありなのですか?」
とまたもや笑顔でその二人連れに話掛けられたそうです。

ウエトレスさんのあたりの柔らかさもあってか、男性の方が静かに
お子様ランチを注文した訳を話し出されたのです。

「実は数年前、3歳だった子供を連れて家族3人でTDL来たことがあるのです」

「その時、このレストランで食事をして、その3歳の子が
 今と同じこのお子様ランチを注文したのです」

「でも、その子はそれから数ヵ月後、事故で亡くなってしまいました・・・」

「えっ!」と絶句するウエイトレスさん。

運ばれて来たお子様ランチを見つめながら、さらに男性は話を続けます。

「あの事故で子供を失って以来、私達夫婦の仲もギクシャクして
上手くいかなくなり二人で話し合って、結局、離婚する事に決めました」

うつむき返す言葉も見つからないウエイトレスさん。

男性はそのウエイトレスさんの顔を見上げながら

「最後に私達家族の楽しかった思い出がいっぱい詰ったTDLに行き、
このお店で食事をしようと思いまして・・・」と寂しく微笑んだそうです。

「そうでしたか・・・」目にうっすら涙を浮かべたこのウエイトレスさん。

すぐに後方の壁沿いに並べてあった子供用の椅子を持ってきて
「どうぞ、この椅子を御使い下さい」とお子様ランチが並ぶテーブルに添えました。
そして「ごゆっくり、どうぞ」と二人に微笑みかけたのでした。

この夫婦は、向かい合って座る母親の方にこの子供用椅子と
お子様ランチを並べ、涙を流しながら食事をされていたそうです。

食事が終わられてレジに来られた時、
「いろいろ気を遣って頂いてありがとうございました」
「あなたの温かい心遣いのお蔭で、あの子が本当に座っているようでした。」
「あの子が、お子様ランチを食べながら、あの時と同じように私達に
楽しく話し掛けてくれているように感じました」

「そして、あの子が『いつまでもあの頃のパパとママでいて・・』と
いう声が私たちの心に確かに聞こえてきた様に感じたのです」

「だからもう一度、二人の事を考え直そうと、妻とも話していたのですよ」
とその男性は、妻と呼ばれた女性の方に視線を向けました。
その視線を受けた彼女も力強く頷いていました。

この話は実話です。

母は「あんたな~どんな仕事にもその仕事の使命があると思わんか」
「何の仕事に付いても本人の心がけ一つで人さんに喜んでもらえるものや」
「人さんに喜んで貰える仕事は必ず繁盛するもんや」
「仕事のやりがいなんてものは自分の心一つや、仕事に貴賎なんてない」
と言い切ります。
長年、キャリアウーマンとして社会の一線で働き、今では
ファイナンシャルプランナー&何とかマネジャーとして資産運用や
会社経営などのアドバイスもしている母の言葉には実践で培った重みがあります。

確かにこの話は、店に来られたお客様にいい気持ちで食事して頂き、
楽しいひと時を過ごしてもらいたいという一人のウエイトレスの心使いが
破局寸前の夫婦の危機を救った、まさに奇跡のお話といえるでしょう。

またこの様な社員教育を徹底しているところにTDLが
長年、日本一の人気を誇っている秘密なのかもしれないです。

どんな仕事にもその仕事に付いている「理由(わけ)」があるはずです。
そして自分に与えられた仕事に誇りを持ち、その立場でできる
最善のことをいつも考え、精一杯頑張る心一つで、その仕事の価値も
見えてくるものでしょう。

私もこのウエイトレスさんの様に
「来られる人は誰一人、喜ばさずには帰さない」
という、究極のサービス精神を見習い、楽しく
魅力ある観光業を提供したいと感じているのであります。