保津川下りの船頭さん

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保津川・上桂川の鮎(あゆ)の話

2005-06-22 16:19:16 | 船頭
夏の京都の食卓を彩る旬の食材といえば‘鮎(あゆ)’でしょう。

京都では京料理の夏の‘風物詩’と呼ばれ、川魚のなかでも
最も値打ちモノとして評される食材でもあります。

私達の仕事場、保津川にも夏になると毎年、多くの方が鮎漁に来られます。

かの美食家で知られた北大路魯山人も好んで食した鮎。
その著書「鮎の食い方」でも、鮎は選び方から取り方、食べ方に至るまで
こだわりを必要とする川魚だといっています。
魯山人は、まず鮎の選び方として「容姿が美しく、光り輝いているもの」
それと「香気漂うもの」が美味しいと主張。

捕り方は「川を離れて十時間以内でなくては、その価値がない」とまで
言い切り、新鮮さが何より大切で調理する時に死んでいるなど、
もっての他だというのです。厳しい話ですね。

そして食べ方「あくまでも塩焼きで、うっかり食べると火傷をするような
熱い奴を、がぶっとやるのが一番香ばしい」そうです。
つまり照り焼きやてんぷらといった今、流行りの創作料理は
邪道でお気に召さなかったというのです。

さすがに食通と呼ばれる人のこだわりはハードルが高いです。

しかし、京の町衆も魯山人と同じ様な価値を鮎に求めて磨かれたからこそ、
夏の京料理の定番として鮎はその地位を築き上げていったのでしょう。

昔から京の町衆が贔屓にした鮎は保津川や上流の上桂川で捕られたものでした。

捕られた鮎は桶に入れ天秤棒で担いで、アユモチという運搬人が、
今の保津川横を走る山道を小走りで通って京都に運ばれました。

食通である京の町衆を満足させる新鮮で香ばしい鮎を届けるには、
このアユモチという人の運搬技術にかかっていたのです。

新鮮な鮎を活きたまま届けることが絶対条件となることから、
アユモチの人達は運んでいる最中も一定のテンポで上下に振り、
桶の水が泡立つように動かして運んだといいます。

これは鮎の習性が清らかな水と急な流れの環境を必要とするからなのです。

これはどんな登り道や下り道でも、桶の泡立つリズムが
常に一定でなくてはならず、この技術を身に付けることが
一人前のアユモチと呼ばれる条件だったようです。

アユモチが持ち込んだ鮎は愛宕山の麓にある鳥居本と
いう集落の問屋さんに卸され、京都の名だたる料亭の
御膳に並んだのでした。

その問屋の名残りが今、奥嵯峨で有名な鮎料理屋・平野屋さんとつたやさんです。

平野屋さん。


つたやさん。

この様にして運ばれた新鮮な鮎は、優れた料理人の手で、
美食家や京の町衆の口を満足させ、夏の京都で欠かすこと
の出来ない食材としての地位を築いていったのです。

* 保津川漁業組合では、6月25日(土)AM5:00
  鮎の友釣りが解禁となります。
  保津川下りの船が通る渓谷地にも、多くの釣り人の
  姿が見られ保津川の夏の風景となっています。
  保津川漁業組合HP

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