ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.9.15 旅行4日目、法隆寺、斑鳩・西の京へタイムスリップ、大満足の1日

2014-09-15 22:01:21 | 
 昨夜は、今回の旅行で初めて日付が変わらないうちに眠りにつくことが出来た。朝も遅めに起床し、お約束の浴槽足湯を済ませる。足湯をすると体は温まるし、沢山歩いても疲れや浮腫みが出にくくなるような気がするので、旅行中のこの儀式は欠かせない。
 そして、庭園を見ながらダイニングルームで名物の茶がゆ朝食を美味しく頂く。

 今日は10時出発、所要7時間の1日観光コースを予約している。タクシーで近鉄奈良駅まで向かった。夫は和菓子屋さんでバスの中でのお楽しみに、とお菓子を調達してから乗り込む。本当にマメというか準備が良い人だ。
 1番前の列に3人並んで、いざ出発。40分ほどで法隆寺へ到着する。道中“帯解寺”のエピソードを聞きながら、渋滞もなくあっという間だ。

 前回、10年近く前に訪れた時は、ちょっと遠いので、と諦めた日本最初の世界文化遺産・法隆寺。ようやく念願かなっての参拝である。
 今日も素晴らしいお天気に恵まれた。鰯雲が浮かぶ青空に飛鳥時代の姿を伝える木造建築が映えて、美しい。まずは南大門をくぐり、エンタシスの柱等当時の建築の粋を集めた中門・廻廊を過ぎ、塔と金堂を中心とする西院伽藍から参拝開始。
 金堂内部の釈迦三尊像にお参りした後は、五重の塔へ。最下層の内陣には奈良時代の初めに造られたという塑像群の寝釈迦像もあり、目を見張る。大講堂を経て、聖霊院を過ぎ、子規が「柿食へば鐘が鳴るなり」と詠んだ茶店跡の歌碑で記念撮影。平成10年落成の大宝蔵院では、国宝、重要文化財のオンパレード。夢違観音像、歴史の教科書で目にした玉虫厨子等を拝観。次々と現れる宝物類にだんだん感覚が麻痺してくる。それでも、百済観音像の八頭身のすらりとした姿と優美な表情にうっとり。

 そして東伽藍へ移動すれば、聖徳太子を供養するための殿堂、一万円札の透かしでお馴染み・八角円堂の夢殿が。袴腰形式の東院鐘楼等など、あまりに見どころ満載で早くも記憶がオーバーフローしてしまう。ガイドさんの説明がとても素晴らしく、その場では随分お利口さんになった気がしたのだけれど・・・。

 その足で、お隣の中宮寺へ。ここのご本尊は国宝・如意輪観世音菩薩の半跏思惟像で、三大半跏思惟像の一つだという。以前も書いたとおり、京都・広隆寺の弥勒菩薩像が大好きなのだが、中宮寺の像は、スフィンクスやモナリザと並ぶ「世界の三大微笑像」と呼ばれているという。説明を伺いながらそのアルカイックスマイルのお顔の美しさに見入ってしまう。

 ここで午前中のみのコースの方たちは解散、自由散策となる。私たち1日コース参加メンバーは、法隆寺門前の食堂で名物・柿の葉寿司がきれいに盛り付けられた昼食を楽しむ。息子の食後のデザートは当地限定・柿のソフトクリームである。

 午後は半分ほどの18人になり、バスは臨済宗大徳寺派・慈光院を目指す。茶人・片桐石州の茶の教えが息づいている。石畳の坂道には打ち水がされていて、涼しさが心地よい。重要文化財指定の書院は茅葺きの農家風の外観。境内全体を一つの茶席とした風情になるよう演出したという。そこで美しい庭園を愛でご住職のお話を伺いながら、お抹茶と片桐家の家紋である矢切を模した打ち菓子を頂く。先代のご住職には本堂の鳴き龍まで特別にご案内頂く。体中が痺れるほどとても良い音が鳴って大満足。何かいいことがありそうな予感がして、思わずガッツポーズである。

 続いて法相宗大本山・薬師寺へ。10年近く前に訪れた時は、金堂も塔も、もっと朱の色が赤かったように記憶していたが、すっかり渋い落ち着いた色合いになっている。残念ながら東塔は平成の大解体修理中で姿を拝むことは出来ない。あと5年かけて東京オリンピック前には間に合わせる、という予定だそうだ。大講堂の弥勒三尊像の大きさに圧倒される。医王如来様には身と心の病気を救って頂けると思うと、知らず知らずのうちに合掌時間が長くなる。
 参拝の帰りには、門前の老舗店で、ガイドさんお薦めの牛蒡の奈良漬を買い求めた。

 そして、最後は唐招提寺。境内の至る所で、白と薄紅の萩の花が小さな花を咲かせて迎えてくれる。鑑真和上の私寺から始まるこのお寺、井上靖がその生涯を「天平の甍」と題して描いたことで有名だ。前回訪れた時、平成の大改修中で、門から中を覗いただけで残念無念で引き返した所。今回は満を持しての再来である。南大門を入り、眼前に迫る金堂の偉容にいきなり圧倒される。堂内の廬舎那仏、薬師如来像、千手観音像の巨大な乾漆仏も、造像以来初めて堂外に出て修理されたそうだ。
 ここでしか求められないという額紫陽花の香りを模したお線香を仏様用に購入して、本日の観光は無事終了。

 昨日訪れた平城京址の朱雀門を車窓から眺めつつ、近鉄奈良駅まで戻ってきた。フル参加の私たちは、全部で4キロ近く歩いた計算になるという。
 それにしても、今日もまたてんこ盛り。居並ぶ国宝を見るのに忙しく、重要文化財すら素通りするもったいなさに、なんだか申し訳ないくらいだ。
 若い時に訪れてもそれほど胸に響かなかった沢山の仏像に、知らぬ間に心を奪われている。まあ、齢もとったし、病との付き合いも長くなったし、ということだろう。
 
 今回の旅のように、これほど朝から晩までフルに観光に費やした旅行はいったいどのくらいぶりだろう。いつもは、夫と息子が出かけても私は全スケジュールに付き合うことはなく、ホテルで本を読んだり一人のんびり過ごして体力温存する時間を持つのが常だった。
 これは、他でもなく体調が落ち着いているということだ。もちろん、こんな有難い時間がいつまで続くかわからないけれど、今、この時間、生かされている瞬間を精一杯楽しみたいと思う。

 さすがに疲れたのか、帰りのバスの中で鼻血が出てしまい、ちょっと慌てる。なんとか止まってくれたけれど、駅に到着して、そのままタクシーに乗り換えてホテルに戻ってきた。
 そのまま部屋に入らず、ティーラウンジでケーキと紅茶を楽しむ。夫はちゃっかりシャンパンとケーキのセットを注文してご機嫌である。
 
 今夜は、今回の旅の最後の夜だ。数日遅れの夫の誕生日祝いということで、メインダイニングでフレンチのコースディナーを予約してあった。3人で乾杯をして、美しく盛り付けられたお皿の数々を愛でながら、舌鼓。心豊かな贅沢な時間が流れた。

 明日は再び京都に戻り、3か月ぶりに息子の下宿へ。掃除洗濯と一連の家事を済ませてから、息子ともども帰京の予定である。
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