散日拾遺

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銀という名をもつ国

2019-04-11 12:37:59 | 日記

2019年4月11日(木)

 昨日の朝刊、ドラえもんのクイズは「元素の名前が国名の由来になっている国が南米にある、さてどこか」というものである。ひと考えしてアルゼンチンのことを言ってるらしいと思い当たったが、やや首を傾げた。
 
 「大航海時代、スペイン人探検隊が先住民から銀をもらった。銀のラテン語名アルゲントゥム(argentum)が国名(Argentina)のもとになった。銀の元素記号Agも同じ言葉に由来する」
 と解説にある。ちょっとハメられた感じがしないだろうか。
 
 argentumは確かに元素名でもあるが、国名の由来は元素としての銀ではなく、あくまで先住民からプレゼントされた貴金属として銀である。「銀 argentum」という言葉が一方でアルゼンチンの国名になり、他方で元素記号Agのもとにもなったというのが正しく、「元素の名前が国名の由来になっ」たわけではない。つまり、「A➝B かつ A➝C」であるところを、出題は「B➝C」と言い換えている。論理的に誤りといえば大げさだが、微妙に不誠実、軽微ながら詭弁であることは争えない。メディアにとって、言葉は命ではないか。
 
 つまらないことにこだわるようだけれど、この種の軽微な詭弁、微妙な不誠実が、公論の秩序といったものを根から食い荒らすのだ。言葉(論理)はきちんと使いたい。いっぽうでは放送大学の卒研生の中にも、言葉を適切に使って考えることに全力を傾注する若者があり、そうした姿を見ると「まだ何とかなるかもしれない」と思うのである。
 
 
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