2021年5月11日(火)
名前を誤記されることが立て続けに起きた。それも互いに無関係な三つの方面(出版社と本務先とNPO)で、しかしいずれも「昌」が「雅」に化けたのである。偶然?もちろん偶然だろうけれど。
広く用いられている日本語変換システムで「まさひこ」と打つと、デフォルトで最初に出てくるのが「雅彦」ということはあるようだが、これはずいぶん前からそうだった。
その昔「昌」を「晶」と誤記されたことが何度かあったが、これは手書き時代の話でワープロ変換では起き得ない。「晶彦」と書かれたうえ(あるいは「昌彦」のままでも)「あきひこ」と読まれるダブルミスも何度かあり、小学校の学芸会でそれが起きたときには客席にいた父(昭彦)がギョッとしたそうな。
今回の本務先での間違いはオンライン科目の講師名テロップに生じたもので、受講生の注進で知った。さっそく担当者に連絡したところ、主任講師からソッコーで丁重なお詫びをいただいた。主任講師のお名前が奇しくも「雅也」である。
「雅」は「みやび」であり御尊名にこそ相応しけれ、やつがれに似合うものではございませんと書き送ったら、碩学をもって知られる雅也教授から下記の返信が送られてきた。
「雅」の最初の字義は、大和言葉で言う「みやび」ではなく、「カラス」もしくは「深山カラス」だったそうです。それで、部首として「隹」つまり「ふるとり」が付いております。ご存知のように鳥の象形ですので、例えば「雀」「隼」「雉」「雁」・・・のように、あるいは鳥が木に群れているさまを表す「集」と同様に、字義を付けているものと思われます。
一方の音符である「牙」は、おそらく鳴き声「ガー(ヤー)」でしょう。つまり「ガー(ヤー)と鳴く鳥」ということで「カラス」。後世、その羽の色の奥深さから「みやび」の意に転じたと思われます。「雅也」は、原義で言えば、何のことはない、“I'm a crow.”ということだというオチです。ちょっと情けないですが・・・。
そういえば、長く務めた精神科病院に「雅子」という名の女性スタッフがあり、皆が親しみを込めてガコちゃんと呼んでいたっけ。
一方の「昌」の字は太陽二つという明るいめでたさからか、中朝でもこれを含む名が多い。セントルイス時代に親しくなった台湾人眼科医が河子昌先生、韓国人ビジネスマンが韓昌某氏である。同文同種!(某などと当てるのは、彼自身が自分の名を漢字でどう綴るのか、二字目まで思い出せなかったからである。これは同地で出会った韓国人には珍しくなく、面白いのは代わりに奥さんたちがしばしば夫の名の漢字綴りを正確に知っていることだった。)
書肆情報の誤りについては、その後めでたく修正されたことを旧友から知らされた。あらためて御一読・御叱正を乞う次第。
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