2023年6月20日(水)

夏至 旧暦五月中気(新暦6月21日頃)
夏の季節のちょうど真ん中、北半球では昼が最も長くなる日です。
この頃は梅雨のまっ盛りでもあり、じめじめとした日が続くことも。農家では、田植えの繁忙期にあたります。
咲きはじめの花菖蒲、雨に映える美しい紫陽花などが目にやさしく、心なごませる時期でもあります。
(『和の暦手帖』P.54-55)
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早くも夏至、このあと盛夏に向かう中で、陽は次第に短くなるのが何としても不思議である。太陽の力は今が極み、暑さを貯めて熟れさせるのは地上の側の事情なのだ。
七十二候
夏至初候 及東枯(なつかれくさかるる) 新暦6月21日~26日
夏至次候 菖蒲華(あやめはなさく) 新暦6月27日~7月1日
夏至末候 半夏生(はんげしょうず) 新暦7月2日~6日
いやはや、これは調べが要る。
及東は夏枯草の古名だそうで、草木が繁茂するこの時期に枯れていく草を指すのだという。ウツボグサと呼ばれるものがそれであるらしい。
ウツボグサ(靫草・空穂草、Prunella vulgaris subsp. asiatica)は、シソ科ウツボグサ属の多年生植物の一種。日当たりのよい山地に自生し、草丈30センチメートルほどで地下茎を伸ばして殖える。夏に紫色の花穂をつけるが、花が終わると褐色に変化して枯れたように見えることから、カコソウ(夏枯草)の別名がある。漢方に使われる薬用植物で、利尿や消炎に用いられる。
学名の Prunella には扁桃腺炎の意味があり、欧米でも同症の治療に用いられたという。「日本各地、アジア東部に分布する」との別の解説と矛盾するようだが、セイヨウウツボグサなるものの亜種とする記述もあり、大きくは地球上に広く分布する一族らしい。
そのウツボグサこと夏枯草(カコソウ)が枯れる(ように見える)夏至の候、シソの仲間と言われれば確かにそのように見える。

半夏のほうは漢方薬で名が売れている。半夏厚朴湯、半夏瀉心湯など。これはカラスビシャクなるものの別名、あるいは乾燥させた根茎を指すのだと。
カラスビシャク(烏柄杓、Pinellia ternata)はサトイモ科。和名の由来は、仏炎苞とよばれる形状の苞がカラスが使う柄杓に見立てられたもので、「カラスが使う」は「役に立たない」の意味だそうである。旧約の世界から日本の田舎まで、カラスはどうも良い役がもらえない。
方言の名称が面白い。ヒャクショウナカセ(鹿児島県)、カラスノオキュウ(群馬県)、さらに「ヘソクリ」というのもあり、これは上述の根茎を掘って薬屋に売り、小銭を貯めたところに由来するのだと。
その姿はこんな具合。博学なブログ主さんは、半夏生(ハンゲショウ)について「夏至から11日目、太陽が黄経100°を通過する日」であり、かつ「カラスビシャク=半夏が生える頃合い」であると紹介してくれている。

東邦大学のサイトが充実しているが、これは「無断転載禁止」と明記あり。
野田市のサイトが、これまた熱っぽくまとめている。

「役に立たない」カラスビシャクにも、ずいぶん愛好家がいるものだ。
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