2023年8月22日(火)
「亀があわてて駆け寄ってきた」などと言ったり書いたりしようものなら、即座に「こいつはよっぽどものを知らない」と切って捨てられそうである。切って捨てる前に、以下の連続写真を御覧いただきたい。ゆっくり待って撮ったわけではない。けっこう急いで連写している。
「四本の脚のいずれも接地していない時間があること」が「走る」の定義だとすれば、走っているとは言えないかもしれないが、脚の回転や移動速度はかなりのもので、「血相変えて駆けてくる」という表現がぴったりだ。駆け寄ってきた後は、ひたすらすり寄ってまとわりつき、足の甲に上がってきたりする。接近の意志は明白そのもの、犬のようにじゃれついたり顔を舐めたりしないのは、ただ身体構造がそれを許さないからに違いない。
ほら……ね?
ベランダに放し飼いにすることを思いついたのは六月頃で、当初から「毎日餌をくれる存在」としての認知はあったようだが、接近の頻度や反応速度はその後日増しに高まってきた。行動パターンは思いのほか多様で、西側の大きな洗面器とは別に、浅いプラスチック容器に水を張って北側に置いてみたところ、気分にまかせて(?)行ったり来たりしている。どこにいるのか、探させられることも多い。
サンダルの並ぶ上がり口で出待ち風情の時間が長いが、昨日その付近で掃除機をかけたら轟音にタマゲたのか大慌てで逃げ出し、鉢植えの蔭でしばらく首をすくめていた。爬虫類は頭が悪いものときめつけていたが、なかなか捨てたものではない。見知らぬ人間が接近した場合に反応の違いがあるかどうか、次なる関心事である。
この亀はもうずいぶん前に自由ヶ丘あたりの路上をのそのそ歩いていたのを、見かけた小学生が車に轢かれるのを心配して確保した。しかしその子の家では飼えない事情があり、代わりに託された級友というのが我が家の三男である。僕は小学生の頃、松江で似たような亀を飼っていた。近所の水辺でタニシをとってきては餌に与えていたが、どうかするとタニシに哀れを催して水に返してしまうことがあった。今は市販の固形の餌である。
亀一匹でも生き物の同居する家は、その分だけ空気が柔らかく暖かい。
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