カラパイア2024-11-28konohazuku・パルモ
Image credit: University of Exeter
コロンビア、アマゾン地域のセラニア・デ・ラ・リンドーサにある、セロ・アズールの崖には、およそ1万2000年以上前にさかのぼる人類の先祖が描いた壮大な岩絵がある。
全長13kmもの露出した砂岩には、赤い色素でおびただしい数の人間、氷河期に絶滅した様々な動物たちや神話上の生き物などの絵がびっしりと描かれていてそれは見事だ。
では一体これらの絵にどんな意味があるのだろう?考古学者らは、アマゾンの先住民族の長老たちに協力を得て描かれた絵の解釈を試みた。
その結果、シャーマンが動物に変身するといった霊的な側面も描写されており、これまで未知だった古代人の精神世界をうかがい知ることができるという。
先住民族と協力しアニミズム的な視点で岩絵を読み解く
エクセター大学のジェイミー・ハンプソン教授率いる研究者たちは2018年から6年間、地元のトゥカノ族、デサナ族、マタピ族、ヌカック族、ジウ族など先住民の長老たちの協力を得て、この古代の芸術作品の裏に隠された意味を読み解く試みを行っている。
長老たちの話によれば、壁画のさまざまなモチーフは、単に目に見える「現実」世界をそのまま「反映」しただけではないという。
アニミズム的な視点をもつ先住民コミュニティが、彼らの儀式化された社会文化的世界をどのように構築し、関与し、永続させたかについての重要な情報を満載していると言うのだ。
アニミズムとは、自然界のあらゆる存在や現象に「魂」や「霊」が宿ると考える信仰のことだ。
山、川、木、動物、さらには風や火といった自然現象まで、それぞれに意識や生命力があると考え、人間と自然とのつながりを重視する。
マタピ族の儀式専門家、ウルデリコ氏は、絵がなにを意味するのかを理解するには、シャーマニズムの観点から読み解かなくてはならないという。
シャーマニズムとは、シャーマンと呼ばれる霊的な指導者が、霊や精霊と交信して病気を治したり、未来を占ったりする信仰や儀式のこと。
シャーマンは、トランス状態で霊的な世界を旅し、自然や人々との調和を保つ役割を担う。
岩絵にはシャーマンが動物に変化する姿が描かれている
ウルデリコ氏はこう語る。
それぞれの生物の肉体は、その人間の姿かたちを隠す「外皮」をまとっている
他の存在の真の本質と対話するために、シャーマンは自分自身の表面的な覆いを脱ぎ捨てて、種続間の境界が曖昧な精神的領域に入り込む(ウルデリコ氏)
例えば、シャーマンは超自然的な次元を移動するとき、ジャガーの姿で概念化されることが多い。ジャガーはその外見の下に隠している知識や霊力にアクセスすることができるとされているからだ。
デサナ語のyeeはジャガーとシャーマンの両方を意味し、アマゾンの民族誌には”儀式の専門家がジャガーに変身する”という例が数多く見られる。
ここの岩絵は、霊的な領域を取り決める儀式の専門家、つまりシャーマンと、身体の変容、人間と非人間的世界の間の絡み合いに関連していると考えられる。
それは人間がヘビ、ジャガー、鳥などに変身して、その動物の特徴を授けられるという獣神化を描いた多くの岩絵によっても裏づけられている。
岩絵を描いた古代人の子孫である先住民の長老たちは、動物と人間の間の流動的な変化という見解を論じているが、アマゾンのこの地域の岩絵研究に、今回初めて彼らの考えが組み込まれたことになる。
エクセター大学の考古学者ジェイミー・ハンプソン氏は語る。
この岩絵は単に外部的視点からだけでは読み解くことはできません。これらは神聖で儀式的な芸術であり、アニミズム的な宇宙感の枠組みの中で、自然の神聖な場所で創り出されたものだと理解することができるのです。
先住民族の信仰体系や神話を真剣に受け止め、ときに研究に取り入れる必要性があることも示しています(ジェイミー・ハンプソン氏)
本研究は『Arts』誌に掲載された。
References: Indigenous elders and ritual specialists help to unlock the meaning of ancient Amazonian rock art - News / Dazzling Ice Age Amazonian Rock Art Depicts Shamans Spiritually Transforming Into Animals | IFLScience