最近厚生年金基金の解散について耳にすることが多くなりました。実際にお世話になっている各局の中にも加入していた厚生年金基金が解散したという方もいます。
少し掘り下げて解説したいと思います。
[厚生年金基金って何ですか?]
サラリーマンのOBに老後の年金を支給する組織で、国の公的年金である厚生年金の一部を借り受けて自らの年金と一緒に運営していることが最大の特徴です。その仕組みは以下の図の通りとなります。
厚生年金が国の制度であるのに対し厚生年金基金は民間の企業年金となります。
[なぜ解散が相次いでいるのですか?]
元々厚生年金基金には
(1)大企業が単独もしくは子会社との連合で運営していたもの
(2)中小零細企業を含む同業者が業界団体を母体に運営していたもの
がありました。
このうち(1)については運営が困難だとして10年ほど前にその大半が厚生年金基金としての運営を取りやめています。ただし救済措置として従来からの年金受給者にはそのままの給付額を維持しているケースが多いようです。
残された(2)の厚生年金基金は加入企業の意思統一が図れないままズルズルと運営を続けてきましたが、AIJ投資顧問の資産消失事件や長野県建設業厚生年金基金で発覚した多額の横領事件などを契機に法改正が行われ財政の良好なごく一部の基金以外の存続を認めないことになりました。
今後ほとんどの厚生年金基金が解散する見込みです。
[解散するともらっている年金はどうなりますか?]
図にある通り厚生年金基金の年金は
(A)国の厚生年金の一部を国から肩代わりして支給している部分
(B)基金独自の年金部分
を合算した額となっています。(A)に対し(B)は10~30%くらいの額となります。
このうち(A)については解散すると支払義務が基金から国に移され、国が支払を保証します。つまり上の図の「厚生年金基金に加入していない場合」に戻ることになります。一方(B)は解散に伴い支給がストップし、清算作業後に残ったお金が現金の形で現役・OBで分配されます。
ただし(A)の国から借りた厚生年金の部分は最優先で国に返す必要があり、国に返した後のお金を分配することとなりますから額としては多くはないと思います。
なお財政の特に悪い一部の基金については国に返すお金すら満足に確保できておらず、清算作業によって分配される現金がなく分配されないこともあります。財政の悪い基金は母体となる業界が衰退している業種に多く、例えば乗用自動車(タクシー)、貨物輸送(トラック)、石油業(ガソリンスタンド)、繊維、建設業などが代表的です。
分配があるかどうかは基金に直接確認してください。電話などでも教えてくれます。
[詐欺に注意!!]
基金が解散すると清算作業が行われますが、仮に国に返すべきお金が不足していても現役やOBの方個人に負担を求めることはありません。「厚生年金基金が解散してお金が足りないので振り込んでください 振り込まないと国の年金が停止されます」などという電話をしてATMでお金を振り込ませる詐欺が今後起きないとも限りません。
厚生年金基金の解散で個人がお金を負担することは絶対にありませんのでご注意ください。またこのような電話がかかってきましたら一人で悩まず最寄りの警察に相談してください。
[現金での分配は困るのですが・・・]
解散後に残った資産は現役の方やOBに対し現金で分配されることになりますが、その額が50万円を越える場合は「一時所得」として課税対象となります。望まない解散なのに税金まで取られるのか・・・という方もいると思います。
そんな方を救済するため分配されるお金を企業年金連合会に移し換えて年金をもらう方法があります。これは現役・OBとも可能です。
企業年金連合会は短期間で転職した人や解散した企業年金の年金原資を通算し老後に年金を支払う年金通算センターとして厚生省の所管で作られた特殊法人です。
65歳から亡くなるまで生涯年金を受け取ることができます。例えば55歳の男性が50万円を企業年金連合会に移し換えた場合は65歳から年27,500円、65歳の方が50万円を移されますと年23,100円が生涯もらえます。年金は65歳から15年間の保証があり、保証期間中に亡くなった場合は遺族に対し(15年-65歳以降の生存期間分)のお金が保証されます。
移し換えは一時所得の課税がなく、銀行預金よりも高い利率(0.5~1.5%)で資産を増やして年金にしてくれるため、50万円以上の分配金となる場合は検討してみてもいいと思います。詳しいことは厚生年金基金の事務局か企業年金連合会のホームページ、または相談ダイヤル0570-02-2666に電話してみてください。
逆に50万円未満の少額でしたら企業年金連合会に移しても年金額は僅かですから現金でもらって自分で管理された方がよろしいかと思います。
なお現役の方は会社側で受け皿となる制度を作ってくれる場合もあります。受け皿制度に分配金を引き渡す場合は税金がかかりません。基金解散後の受け皿制度があるかは会社の人事総務に確認してください。
少し掘り下げて解説したいと思います。
[厚生年金基金って何ですか?]
サラリーマンのOBに老後の年金を支給する組織で、国の公的年金である厚生年金の一部を借り受けて自らの年金と一緒に運営していることが最大の特徴です。その仕組みは以下の図の通りとなります。
厚生年金が国の制度であるのに対し厚生年金基金は民間の企業年金となります。
[なぜ解散が相次いでいるのですか?]
元々厚生年金基金には
(1)大企業が単独もしくは子会社との連合で運営していたもの
(2)中小零細企業を含む同業者が業界団体を母体に運営していたもの
がありました。
このうち(1)については運営が困難だとして10年ほど前にその大半が厚生年金基金としての運営を取りやめています。ただし救済措置として従来からの年金受給者にはそのままの給付額を維持しているケースが多いようです。
残された(2)の厚生年金基金は加入企業の意思統一が図れないままズルズルと運営を続けてきましたが、AIJ投資顧問の資産消失事件や長野県建設業厚生年金基金で発覚した多額の横領事件などを契機に法改正が行われ財政の良好なごく一部の基金以外の存続を認めないことになりました。
今後ほとんどの厚生年金基金が解散する見込みです。
[解散するともらっている年金はどうなりますか?]
図にある通り厚生年金基金の年金は
(A)国の厚生年金の一部を国から肩代わりして支給している部分
(B)基金独自の年金部分
を合算した額となっています。(A)に対し(B)は10~30%くらいの額となります。
このうち(A)については解散すると支払義務が基金から国に移され、国が支払を保証します。つまり上の図の「厚生年金基金に加入していない場合」に戻ることになります。一方(B)は解散に伴い支給がストップし、清算作業後に残ったお金が現金の形で現役・OBで分配されます。
ただし(A)の国から借りた厚生年金の部分は最優先で国に返す必要があり、国に返した後のお金を分配することとなりますから額としては多くはないと思います。
なお財政の特に悪い一部の基金については国に返すお金すら満足に確保できておらず、清算作業によって分配される現金がなく分配されないこともあります。財政の悪い基金は母体となる業界が衰退している業種に多く、例えば乗用自動車(タクシー)、貨物輸送(トラック)、石油業(ガソリンスタンド)、繊維、建設業などが代表的です。
分配があるかどうかは基金に直接確認してください。電話などでも教えてくれます。
[詐欺に注意!!]
基金が解散すると清算作業が行われますが、仮に国に返すべきお金が不足していても現役やOBの方個人に負担を求めることはありません。「厚生年金基金が解散してお金が足りないので振り込んでください 振り込まないと国の年金が停止されます」などという電話をしてATMでお金を振り込ませる詐欺が今後起きないとも限りません。
厚生年金基金の解散で個人がお金を負担することは絶対にありませんのでご注意ください。またこのような電話がかかってきましたら一人で悩まず最寄りの警察に相談してください。
[現金での分配は困るのですが・・・]
解散後に残った資産は現役の方やOBに対し現金で分配されることになりますが、その額が50万円を越える場合は「一時所得」として課税対象となります。望まない解散なのに税金まで取られるのか・・・という方もいると思います。
そんな方を救済するため分配されるお金を企業年金連合会に移し換えて年金をもらう方法があります。これは現役・OBとも可能です。
企業年金連合会は短期間で転職した人や解散した企業年金の年金原資を通算し老後に年金を支払う年金通算センターとして厚生省の所管で作られた特殊法人です。
65歳から亡くなるまで生涯年金を受け取ることができます。例えば55歳の男性が50万円を企業年金連合会に移し換えた場合は65歳から年27,500円、65歳の方が50万円を移されますと年23,100円が生涯もらえます。年金は65歳から15年間の保証があり、保証期間中に亡くなった場合は遺族に対し(15年-65歳以降の生存期間分)のお金が保証されます。
移し換えは一時所得の課税がなく、銀行預金よりも高い利率(0.5~1.5%)で資産を増やして年金にしてくれるため、50万円以上の分配金となる場合は検討してみてもいいと思います。詳しいことは厚生年金基金の事務局か企業年金連合会のホームページ、または相談ダイヤル0570-02-2666に電話してみてください。
逆に50万円未満の少額でしたら企業年金連合会に移しても年金額は僅かですから現金でもらって自分で管理された方がよろしいかと思います。
なお現役の方は会社側で受け皿となる制度を作ってくれる場合もあります。受け皿制度に分配金を引き渡す場合は税金がかかりません。基金解散後の受け皿制度があるかは会社の人事総務に確認してください。