Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本「獣の奏者 外伝 刹那」

2014-07-08 14:16:08 | Book
上橋菜穂子著「獣の奏者 外伝 刹那」を読了。
「獣の奏者」シリーズ4冊の壮大な物語を感動と共に読み終えた後、外伝があると知って、手にとりました。
「獣の奏者」をずっと「じゅうの奏者」と読んでいましたが、「けものの奏者」だったことを今回知りました。
「獣の奏者」は、大人も子どもも安心して読めるとても素敵な物語です。
作者があとがきで書いているようにこの外伝は「人生の半ばを過ぎた」人が読んだほうがより感慨深いものがあると思います。
中には、エリンの母と赤子のエリンをエリンの母の視点から描いたもの、エリンとイアルの出会いをイアルが語ったもの、エサル師の若い頃の恋の思い出を現在の視点から本人が語ったもの、エリンと赤ん坊のジェシとの日常を切り取ったものの4編がおさめられています。
いちばん心に残ったのは、エサル師の「秘め事」という短編。貴族の家の長女として生まれ、自分の性分に忠実に生きて、現在、カザルム王獣保護場で教導師長をしているエサル。若い頃の禁断の恋。そして、保護場の長として、いちずに王獣のことを考え生き、厳しくかつやさしくエリンを見守るエサル師。彼女の人生の重要な転換期が読め、彼女の人となりがすごく理解できます。
それにしてもこの作者、人生の機微というか、大切なことがほんとうによくわかっているようで、ところどころすごく考えさせられます。
人の心ってほんとうに一筋縄ではいかなくて、時間がたってからわかることがたくさんあります。
何にしろ、どんな困難が人生に待ち受けていようとも、それを正当に受け入れ、小さな幸せの瞬に幸せであることを心いっぱいに感じ、それを糧に、人生を悲観せずに生きていく強さが必要なのだと思いました。
同作者の別シリーズ「精霊の守り人」も読んでみようと思います。
体調は良好です。