Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(59)

2018-04-29 09:38:18 | 日記

 『こう言って置けば、考えている内に短気な気が削がれるだろう。』そうすれば自然にトラブルも減るか無くなるだろう。かつて兄一家から娘の短絡的な行為について、しばしば苦情を受けていた父はそう考えていました。今春からは、親戚以外に近隣の家からも必ず出てくるだろうこういった類の苦情を予想すると、困り果て、嘆息した彼はその内名案を思い付き、自分の娘に先手を打っておいたのでした。この時、彼の思惑通り事は功を奏していました。

 年下の従姉妹と対峙して、今迄とは違う落ち着いた対処に出合い、年上の従姉妹は驚きました。ほんの少し前のこの子とは勝手が違うのです。カーッと来て目に怒りの炎が見えたなら、直ぐに馬鹿野郎などの暴言を吐き、喚き散らして飛びかかって来るのが常なのに、それを抜かした殴る蹴る等の怒りの鉄拳も飛んで来ないのですから、急な年下の彼女の豹変に内心心底驚いてしまいました。しかし、用心深く驚きの色を隠し、ほんの少しだけ白く変わった面を向けて、彼女は何事も無かった様に従姉妹を見据えました。それから彼女も相手の出方を見るべく攻防の体制を取りました。顔を相手から背けつつ、両手は身構えて軽く拳を握って置きました。相手が自分を油断させて、その隙に攻撃してくるつもりなのかもしれないと考えたからでした。男兄弟の兄がいるだけに、彼女は喧嘩にも頗る慣れていました。

 さて、年下の従姉妹の方はというと、この時、父の言葉通り事の確認をするために従姉妹の返事を辛抱強く待っていました。これは彼女にすると全くの、生まれて初めての大変気の長い話でした。

「…ちゃん、本当に私の事をひょっとこに似ていると思っているの。」

業を煮やしかけ、彼女は再度問いかけの言葉を従姉妹に投げ掛けてみました。これに対して、彼女がうんともすんとも反応して来ないので、益々長丁場になりそうだと感じた彼女は、相手の返事を待つ間、今度は何かで時間を潰そうと『本当に似ているのだろうか?』『ひょっとこに?』等、自分の顔に着いてあれこれと過去を振り返って考えてみる事にしました。