Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

マルのじれんま 20

2020-04-30 09:58:04 | 日記
 『何故ミルが?。』

何故今ドクターの胸の内にミルの顔が浮かんだのかしら?。と、シルは不思議に思いました。それに、彼の心の内にはシルが見た事もない地球人で、年配らしい男性の顔がもう1人浮かんだのです。マルの心情の複雑さを思うと、彼女は何となく2人の顔が気になります。

『ドクターの故郷の星での過去と、現在の目の前にある地球という星で、共通に関連する何かが有るのかもしれない。』

彼女はそう考えると、動かせない過去ではなく、これから変更できる未来に向けて、ドクターの心理的療養の解決策を見出せそうだと判断しました。『まぁ最初は過去の歴史を調査しましょう。』彼女はそう決断すると、マルに故郷の星での過去の出来事を尋ねるのでした。

 マルは故郷の星ではこの様に目立つ外見で生まれたものですから、それだけで大変な目に遭ったのだろうと推察されます。しかし、生家の近隣の家々では皆生まれた時からのマルを見慣れていたので、彼に対して何思う所無く無頓着でした。そのお陰で小さな頃はそう違和感なく成長していたマルでした。また、傍には双子の弟のエンもいて、2人は外見が全く同じなのですから尚更です。エンの方も、初期学習に入る前は生来の身なりでいる事が多く、特に兄と違った外見を装う事も無く過ごしていました。問題は地域の学習機関に通うようになってから起き、それは大きくなったのでした。

 初期学習の初日、心配性のエンはもう周りの子達と同じ外見にして通い出していました。それまでに遠出した場所で、彼等は奇異の目で見られた経験があったからでした。一方大らかなマルの方は他人の思惑に無頓着でした。『同年代の子供同士、仲良くなってきっと上手くやれるさ。』と、外見から仲間外れにされるのではないかと心配するエンの事を、それは思い過ごしだと笑っていたものです。

「学習施設では兄の私が側にいるんだ。もし何かあっても私がいるから大丈夫だよ。」

そんな事を言って、就学前の弟のエンの不安を取り除くように慰めていました。しかし、事実はエンの予想した通りでした。マルは同年代の子供達の好奇の目に晒されたのでした。

「今から思うと、弟の方が世間をよく知っていたんだなぁ。」

マルは遠い日を思う様に目を細めて呟きました。

今日の思い出を振り返ってみる

2020-04-30 09:35:40 | 日記

親交 46

   祖父も祖母も共に幼馴染、長じてからも仲の良い関係そのままに結婚したのでした。祖父と祖母に限らず、この地域の住人は大抵が幼い頃からの顔馴染みと結婚すると、その終生を共にする者が......

 良いお天気になりました。夏日になるかもしれませんね。これからは熱中症対策が必要になるそうです。新型コロナの方も、早くワクチンが完成し、認可されるとよいですね。

マルのじれんま 19

2020-04-28 11:05:27 | 日記
 さてドクター・マルと弟のエンがもめた一件が有った翌日、マルとの約束の時間に、シルは自分のワークデスクに着いて彼を待っていました。しかし彼はなかなか彼女の相談室に現れませんでした。

『どうしたのかしら?。』

早速彼女はマルの居所を探ってみます。すると彼は如何やら未だこちらへ向けての通路を移動中のようです。彼女が落ち着いて待っていると、漸くドアの前でるるる…、と来客を告げる合図の音が鳴り、この部屋のルームライトがグリーンの色に変わり点滅しました。

「どうぞ。」

彼女が声を掛けると、やぁ、待たせたねと、ドクター・マルが申し訳なさそうな顔付で部屋に入って来ました。

 どうやらドクターはここに来る前に、エンと彼の子供達の話をしていたようです。

「弟と、なかなか話が合わなくてね。」

「詳しく話さなくても、君の事だ、こちらの事情は大体分かっているのだろう。」

そうドクターは苦笑いして彼女に言いました。しかしシルは微笑むと、

「余計な事はなるべく読まない様にしているんです。」

ご本人から直接お話を伺いますから。と言うと、シルは先ずマルに、自分のデスクの前に据えられている座り心地の良いソファーへと、彼が腰を下ろすよう勧めました。

 さて、シルがマルに彼の弟との事を尋ねると、マルは弟の子供達の件で彼ともめてしまったのだと告白しました。

「半分はエンの子だと思っても、半分はウー、エンの奥さんの名前なんだが、彼女の子だ、そう思うと全く引き取る気になれ無くてね。」

無くてね…。気の毒だとは思うんだが。と、マルは暗い表情で視線を床に落としました。マルはエンの奥さんとの過去の確執を忘れる事が出来ない様子です。

「好きな物は好きなんだが、私は、嫌いな物は嫌いでね、好きになれないんだよ。」

と、最近知り合った地球人男性と同じような事を口にしました。

 彼はその地球人の初老の男性の寂しそうな笑顔を思い浮かべると、次にはその男性を紹介したこの宇宙船のクルー、士官候補生のミルの顔を思い浮かべました。

 ひょんな事から彼と知り合う事になったが…、ミルのお陰でね。とマルは思いました。『彼とは話をしてみると、案外馬の合う相手であった。』と、マルは非常に嬉しく感じるのでした。地球人とね、異星人同士なのに、故郷の星では気の合う合相手がいなかったこの私なのに。「不思議な物だなぁ。」と彼は溜息を吐きました。

 そんな彼に、おやっとシルは一瞬腑に落ちない顔をしてドクターを見詰めました。が、そんな彼女の様子に気付かないドクターに、彼女は自分の顔をドクターと目が合う前にと、普段の涼し気な表情へと戻しました。

マルのじれんま 18

2020-04-27 12:01:51 | 日記
 一騒動の後の店内の後片付けが済んだ頃、ドクター・マルは物思いに沈みこんでいました。そこでシルは彼を誘って、パーラーの隅にある別のテーブルの椅子に2人で落ち着きました。彼女はそこで暖かい紅茶を2つ店員に注文しました。

 「いやぁ、何時もはエンもあんな感じじゃあ無いんだが。」

マルは先ず弟の事を口にして彼を取り成しました。

 私よりは冷静な奴だし、ユーモアも有る、何時もならあんなこと言っても笑って冗談で済ます奴なんだがね。何方かというと、あいつの方が私よりは常識的な分別が有るくらいなんだ。マルはそんな事を言いました。

 「亡くなっていた細君の事を持ち出したのが不味かったな。」

と、彼は複雑な表情と後悔の念を顔に表しました。

「仕様が有りませんわ、ドクターはご存知なかったんですから。」

シルは微笑しました。テーブルの上に載った彼の片手に自分の片手を掛けて、彼女は慰める様に優しく握りしめました。そんな彼女の顔を見詰めて、ドクターも寂しそうに笑いました。

 シルが注文した紅茶が、2人分セットになってトレイに載り自分達のテーブルに届くと、彼女はお茶に付いて来たマーマレードをカップの1つに入れました。

「いかがですか?」

ドクター・マルにマーマレード入りの紅茶を勧めました。彼はああと答えると、彼女の勧めを断る事無く、シルが今入れたばかりのジャム入りのカップに、彼女がポットからトクトクと琥珀色のお茶を注ぐのを眺めていました。

 「オレンジの香りが心地よいね。」

マルはにこやかにシルに語り掛けます。何処でこんなお茶の入れ方を知ったんだね。君は地球には未だ降りていないんだろう。こう意味ありげに彼がシルに問いかけると、シルは曖昧な微笑みを浮かべました。

 地球上の事をこれだけよく知っているなんて、君は勉強家だねとマルが褒めると、シルは、「実はチル副長から教わりました。」と答えました。そこでマルはああと頷くと、合点したという感じで微笑みました。彼は内心やはりねと思います。新任のクルーには必ずといってよい程世話を焼くという、副長チルの性格をドクター・マルはよく知っていました。特に彼が若い女性の新任クルーを放って置かない事も、ドクター・マルは既によく知っていました。

 さて、シルはドクターに、自分の心理カウンセラーを受ける事を勧める事にしました。彼にこの話をすると、ドクターもそうだねと、そうしようと承諾しました。お互いに早い方が良いという事で、彼女は早々に自分の予定を調べてみます。翌日の自分の空き時間に気付くと、彼女はマルのカウンセラーの予約を入れました。

 「では、明日。」

マーマレード・ティーをゆっくりと味わって、一息入れたマルは立ち上がり、シルを1人店に残すと、来客などの一時滞在エリアに在るパーラーを後にしました。
 

今日の思い出を振り返ってみる

2020-04-27 11:32:36 | 日記

親交 45

 その後彼は祖父に抱えられて自室に戻ると、再び前後不覚に陥りばったりと寝床に倒れ込み、そのままの姿勢でグァー、グァーと、寝息も荒く眠り込んでしまいました。彼がこんなにも深くぐっすり......

 今日は良いお天気になりました。気温的には涼しさを感じる予報でしたが、屋内にいる私にはそうでもないです。室内干し用に未だストーブをつけているせいでしょう。