実は弟は既に結婚していてね。彼の5番目の子がやはり私と似た容姿で生まれたというのだよ。如何やら中身もそうらしいという弟の話でね、その子が未だ小さい内に私に引き取ってもらえないかと、彼は言うんだよ。
ここでマルは本当に困り切った顔をすると、沈み込んだ雰囲気になりました。ミルの目に入って来る、ドクターのオーラの色や翳り具合もそれを物語っています。そこで、ミルは彼を励まそうと快活に言いました。
「いいじゃないですか、この船に引き取ればよいですよ。」
ここならドクターの看るお子さんは、艦隊の家族待遇でいられるでしょう。それにここは子供が育つ環境にも適している。家族連れのクルーは多いですからね。友達も沢山できますよ。弟さんのお子さんにとっても、こちらの方が返って過ごしやすいのではないですか。
にこやかに自分に向かって話すミルの顔を見詰め、彼の話に耳を傾けていたらしいドクター・マルでしたが、彼の顔は元気を出すどころか寄り一層困った表情を深め、両眉を渋く寄せるのでした。
「いや、そういう訳には行かないよ。」
「他人事だと思って…。私は本当に困っているんだよ!。」
遂にドクターは怒ってしまいました。もう君に相談したのが間違いだった、そう言うと、
「僕は君の相談にはちゃんと乗って良い様にしてあげたのに。」
そう口早にドクターは口を滑らせると、もう出て行ってくれと、自分のボックスから早々にミルを追い出してしまいました。
『一体何だというのだ。』人が親切に相談に乗っていれば急に怒り出して…。船の通路を歩きながら、ミルの方も少なからず気分を害していました。
「副長のチルに相談してみるかな。」
船に戻ってからチルに会っていなかったミルは、休暇明けの挨拶がてら副長のチルの部屋へと向かう事にしました。ミルは既にバツ艦長に休暇明けの挨拶を終えていました。『今のドクター・マル氏の話は明日の勤務の時にでも艦長に話すか、又は副長のチルの方から艦長に報告してもらうかだな。』彼はそんな事を考えて連絡シャフトの扉の前に来ました。