Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(174)

2018-08-31 10:32:40 | 日記

 「ホーちゃんの事よ、あの子、怒ってる。」

茜さんは小声で手短に答えるのでした。

 あの子あんたに怒ってる、それもかなり怒ってる。と言うと、彼女は、

「多分もうあんたとは遊ばない、もしかしたら、私共遊ばないかもしれない。」

そう付け加えるのでした。

「何でだよ、あの子俺の事が好きなのに、なんでもう遊ばないなんて…」

そう言って彼がよくよく茜さんの顔を見上げると、立ったままで彼を見下ろす茜さんの顔は、ゾッとするような怒りの形相に変わっていました。

 彼はハッとしました。その時の茜さんの顔付きはというと、はっしと彼の顔を見据えたまま目は吊り上がり、眼光はキッとした感じで怒りの炎が燃え上がり彼を睨んでいるのでした。彼女の口も、キュッと両頬にまでつり上がり、かっとばかりに細く開くと、その口から気炎でも吐き出されてきそうな気配に見えました。それは彼女の蜻蛉君への、憤る非難を込めた感情の発露でした。

 蜻蛉君は思わずぶるっと振るえました。茜さんの顔を見詰めていた視線を地面に落とすと、「脅かすなよ。」と小声で言いましたが、蛇に睨まれた蛙の如くです、彼は暫くは身動きがとれないのでした。


土筆(173)

2018-08-30 10:29:29 | 日記

 俺は初めてみたよ、あんな顔。こう、目が丸くなって、目の動きが無くなって、口もぽっかり金魚の口にそっくりで、本当に丸くてぽっかり口に穴が開いてるみたいだった、くくく…、思い出すと可笑しい…。蜻蛉君は忍び笑いをすると、可愛いなぁと小声で呟きました。彼の顔は思わずほんわかと緩み頬を染めて笑ってしまいました。

 「それだわ。」

茜さんが合点して言いました。

「それで分かった。だからホーちゃんあんなになったんだわ。」

困った事をしてくれたわね。茜さんは我知らず石を拾う動作をしながら、おろおろとして蜻蛉君に文句を言い始めました。

「あの子を怒らせると怖いんだから…、」

それが何倍にもなって返って来るんだから、怒らせたら駄目よ。如何しよう、兄さんに言っておこうかな、いえ叔父さんの方がいいかな…。

 茜さんは本当に困った様子で思案に暮れてしまうのでした。蜻蛉君の方はまだ事の事情が分かっていませんから、誤解したままです。てっきり蛍さんが自分の事を好きだから、それで泣き出したのだと思ったままでした。茜さんの言っている事がさっぱり彼には理解できませんでした。

「お前何言っているんだ。」

と、茜さんの方に視線を向けると尋ねました。


土筆(172)

2018-08-30 10:28:48 | 日記

 一瞬、祖父はハッ!として顔を曇らせました。

祖父は孫の片頬に浮かぶ窪みに、やはり胸が痛むのを感じたのです。

『内の嫁の言う通り、この孫の顔に確かに前にはこんな物は出来なかった。』

と感じました。彼は明るく笑う孫の笑顔より、その頬の窪みにばかり目が吸い寄せられてしまいます。そんな彼は我知らずの内に、は~っと溜息を吐きました。『事はこれでは収まらんね。』そんな確信めいた予感が彼にはするのでした。

 実は商いであちらこちらへと回る祖父には、色んな人々に出会い、様々な美人を見る機会が多くありました。本来の笑窪も勿論何度か目にした事が有るのです。それはやはり女性の1つのチャームポイントでした。男性の心をそそる愛嬌がありました。その笑窪と、蛍さんの頬の窪みは、やはり別物だと祖父は感じたのでした。

 彼は気が抜けて、しみじみと孫の頬の窪みに目をやりながら再び嘆息するのでした。『本物とまがい物では、見る人が見れば分かる物だ。』そう思うと彼は、この孫の将来に酷く不安が募るのでした。

 

 「ホーちゃんに何でも言っては駄目よ。」

勿論何かしても駄目だけど、あの子に何かすると後が怖いんだから。と、茜さんは蜻蛉君に言うのでした。

「あんた、あの子に何か怒らせるような事か、あの子の嫌がる嫌な事を何か言ったんじゃないの?」

蜻蛉君は別にと答えます、

「唯、地面にあった穴の事を、あいつが掘った穴だろうと言ってやっただけだよ。」

と、彼は屈んで石を物色しながら、そのままの姿勢でちらりと茜さんの顔を見上げ、その顔色を窺いながら、彼女に素っ気なく答えたのでした。そして彼は面白そうにぷっと吹き出しました。

「その時のあいつの顔ときたら、『鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔』っていう、あれがそういう顔なんだなぁ。」

彼は感慨深そうに呟きました。


やはり猛暑でしょう

2018-08-30 09:59:42 | 日記

 暑さですね、晴天が続きました。熱中症にならないように、電気代の節約の為に、ショッピング店で避暑をした日が多かったです。それも思い出ですが、今年例年と違ったことをしたと言えば、その思い出があります。これはまだ継続中です。

 愛車が古くなったので、次の車検までに買い替えようと考え、今夏はよく車のお店で試乗しました。あと2社は見て回りたいなと考えています。車検は来年なので、のんびり考慮したいと思います。

 今の車はもう20年近く乗る事になり、ほぼアナログ時代の物といえるオートマチックなだけの車です。ラジオとカセットのみのカーナビも何もない車です。実用的な物だと言えばそれ迄なんですが、やはりこれだけ乗って来ると愛着があります。あともう1年。早ければ半年ほど、そう思うと、ハンドルやフロント部などをナデナデしてしまいます。

 そんな私が最先端でハイテクな車の試乗をするのですから、計器類に目が及ぶわけがありません。運転だけで手いっぱい、「ほら、ランプが付いているでしょう」など言われてミラーを見ても、自分ではわき見運転している感覚です。それでも、フロントガラスを見渡してみると、とても見晴らしがよく素敵だと思ったり、るんるんと運転しやすい車だとか、きゃー運転しづらい、相性が悪い、と思う車もありました。

 結局、やはり試乗してよかったです。それぞれの車の特徴以前に、自分が運転しやすい車、しづらい車の2タイプあるという事が分かっただけでも今夏の収穫でした。後は機能とか、装備とか、予算とか好みで決める予定ですが、何につけても、自分がきちんと安全に運転できるか如何かを考えて決めたいです。今夏の思い出は以上です。(試乗で事故らないように願っています。それが今夏の思い出になるなんて嫌ですからね。)


土筆(171)

2018-08-28 08:51:25 | 日記

 『本当に、あんな裁量でいいのだろうか?』

玄関に続く戸の後ろで、静かに聞き耳を立てて様子を窺っていた舅は、彼の妻の采配に一抹の不安を抱くのでした。

『女性の笑窪か、確かに男性には魅力的な物だがなぁ…』

そう心の中で呟きながら、彼は頭の中に女性の美人の条件を次々に思い浮かべていました。色白、二重瞼、面長、瓜実顔、八頭身、…、

『蛍だって、美人といえば昔の美人の条件にぴったりだが…。』

そう思います。

   ふくよかなしもぶくれ、濃く豊かな黒い髪、濃い眉毛。彼はおすべらかし等の昔の美人画を思い浮かべてみます。弓形の細い目、笑った時のホーちゃんの眼だな等、孫の顔と比べると、祖父は全くその通りの顔だとぷっと吹き出し思わず笑ってしまうのでした。

 祖父の笑い声を聞きつけて、当の蛍さんが、幾ら話し掛けても上の空で自分には愛想の無い母の元から離れるとにこやかにやって来ました。祖父が笑っているからにはそこで何か楽しい事があるのだ、詰まらないお母さんはここに置いてお祖父ちゃんの所へ行こうという具合です。

「お祖父ちゃん、何が可笑しいの?」

そう孫に声を掛けられた祖父は、おおそうそうと、にこやかに蛍さんの顔を覗き込んで、「お前ちょっと笑ってごらん。」と言うのでした。

 お祖父ちゃん迄、またかと蛍さんは思いましたが、先程の母達との一件もあり、微笑ではなく大笑いしろという意味だと判断すると、彼女は祖父の前で思いっきりきゃっと笑ってみせます。