Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 42

2019-08-29 10:24:07 | 日記

 こんな時の常の事である状態に私は陥った。私は涙ぐんだ。自分に付いて正しく理解されないという悲しさが、私に涙を運んで来るのだ。

 『でも…。』、と今回私は思った。父にしても大概である。父にきちんと分かってもらえないという事で、如何して毎回自分は嫌な思いをして悲しみに打ちひしがれなければならないのか?。この時、私は突如として悟った。あんな人の為にこんな鬱屈とした暗い気分に落ち込んで行くなんて、自分の事を悪く見る人の為に暗い気分になるなんて、馬鹿げている。と。そして自分の悲観する姿を馬鹿々々しい事と考えた。だからこれ以上は父のせい、彼の誤解で自分が泣くような状態に陥る事は無いなと思った。

 自分を理解しない人のせいで自分が悲しんでいるなんて、それは真に無駄な事だ。これこそ本当に愚の骨頂だと気付いた私は、父の誤解でもうこれ以上泣くまいと決意した。誤解されて自分が悲しい思いをするなんて、そんな人の下になって悲しんでいるなんて、本当にそれは馬鹿げている。誤解するような人のせいで自分が苦しむなんて、悲しい気持になるなんて、そんな状態に意地でもなってやるものかと私は決意したのだ。私はぐっと涙を呑み込んだ。

 目を瞬いて、湧き出して目に滲んでいた涙を乾かすと、唇を噛みしめて私は普段と変わりない顔に戻るよう努力した。この時の私は、自分を誤解して全く理解しようとしない父の態度にはっきりとした怒りを感じていた。

『母もいなくなったのだ、あんな人父でも何でもない、父でいてもらわなくても全然かまわない。』

と考えた。ふん!、と私は畳に足を踏ん張って居間に1人で立った。泣くものか!と、心の中で叫んだ。

 私は一度出た涙が綺麗に乾くまで、父が祖父母の部屋に入った儘で出てこない様に願った。そうしてせっせと平静を取り戻すべく努力していた。しかしそうはいっても、やはり私の涙は引っ込んだようでまた湧き出て来る。抑え込めそうで抑え切れない、これはもう涙を流して泣くしかないと諦めかけた時、漸く私の涙は引き、私は落ち着きを取り戻した。

 そうこうする内に、父は自分の両親と何か話を終えたらしく私のいる居間に戻って来た。解せないなぁと彼は未だ言っていたが、半信半疑と言う顔で私の顔を眺めた。

「お前が穴を開けたんだろう。違うのかい?。」

そんな疑問を私に投げかけて来る。さぁ、私は答えた。

「さぁって、お前が開けたんじゃないなら、違う、だろう。」

と父は妙な顔をして私に言ったが、私はもう父と真面目に相対する気持ちが無くなっていた。

「分かりません。」

「分かりませんて、お前、空けたなら開けただし…。」

父は言い淀んだ。そして考えながら、開けてないなら、していないだろう。と言ったが、最後の語尾は声が小さくなり消え入りそうな感じになった。私はふんとばかりに、

「忘れました。」

と言った。もうお前に真面目に答えてやるものかと心の中で思っていた。私は父からそっぽを向いて知らぬ存ぜぬを決め込んだ。私の事を誤解して止まない、父へのこれが私のしっぺ返しだった。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-08-29 10:21:33 | 日記
 
土筆(171)

 『本当に、あんな裁量でいいのだろうか?』玄関に続く戸の後ろで、静かに聞き耳を立てて様子を窺っていた舅は、彼の妻の采配に一抹の不安を抱くのでした。『女性の笑窪か、確かに男性......
 

 そろそろ雷雨になりそうな気配です。こちらは警戒レベル3です。


うの華 41

2019-08-28 11:13:03 | 日記

 何時もと特にそう変わりなく朝食が済み、私は何思うという所無く一人居間に残り佇んでいた。昨晩、今朝と父や祖母がご飯の介添えをしてくれた。それも普段とそう変わりがあるという物でもない。私には特に違和感が無かった。唯、部屋にポツンと1人でいる時に声を掛けて来る人が1人減った分、私の孤独の間という物が少々増えた。

 私は所在無さにぽかんと部屋や吹き抜けの空間を眺めてみた。そこで私の目は障子の穴に引きつけられた。ああと思う。そういえば母という人がいたな、あの人はもう家にはいないんだっけ。そう思うと、それなりに何だか涼しい気分になった。

障子戸に寄って小さく開いた穴に軽く人差指で触れてみる。その儘そうっと指の腹でくるくる円をなぞってみる。すると昨日のあの人の言葉が私の脳裏に甦って来た。

 「お前の為に…、」と私は我知らずに呟いて、自分の声にハッとして指を引っ込めた。お前の為にか、私の為にあの人はこの穴をここに開けたのか、そう思うと苦笑いが浮かんで来た。『迷惑、そう迷惑だ。』私は腕を下ろすと拳を握り締めた。私にはとても迷惑な話だと思った。行儀の悪い事を、私にあの人は教えようとしていたじゃないか、そう思ってみる。でも何だか、何か心に蟠りの様な物が有るのだ。この時の私の胸の内には、その蟠りの正体について全く理解できないというもどかしさが有った。首を捻って数回考えていたが、さっぱり答えは出てこない。『何だろう?。』再び私は障子の穴に目を遣った。

 先程の様に、私は障子の穴に指を掛けたい衝動に駆られた。が、そう度々指を掛けて誰かに見られたならば、母に賛同して私が穴を開けている、又は広げているとその目撃者に勘ぐられそうだ。それも真意では無い。私は穴を見詰めたまま人差し指を曲げたり伸ばしたりしていた。

 不意に父が台所に続く廊下から居間へと入って来た。私の様子を見詰めると、

「お前やっぱり。」

と言って、めっ!と叱った。穴を開けようとしていたな。昨日の今日なのに、何て奴だ。そんな事を言う。私は父の勢いと語調の強さに委縮してしまった。おどおどと後退りして身を屈めた。そうして何もしていない、何もする気は無いのだという事を伝えようとして拳を確りと握りしめた。この時の私は怖さで口が利けなかったのだ。私はこうする事で穴を開ける指を出そうとしていないという自分の意思の伝達、その事を分って欲しいと父への意思の疎通を図ったのだ。

 しかし、父は目を怒らせた儘だった。彼は口を開いてやっぱりなと言うと、私の傍らをずんずん通り過ぎ、思い出したように戻ると、私のお尻をペン!と1回叩いて来た。彼は再び踵を返して次の間へ戻ると、そのままの勢いで躊躇せずに祖父母の部屋へと消えた。

「母さん、やっぱりだ。」

やっぱりあの穴は智が開けたんだ。父の祖父母に進言する声が聞こえた。私はその声にはぁっと肩で大きな溜息を吐いた。

『父は如何して私の事を間違って見るのだろうか。』

この言葉は私が物心つくようになってから、折に触れて私の悩みの種となって私を苦しめていた。自分の事を父にちゃんと正しく見てもらいたい、理解してもらいたい。その願いが私の心を酷く圧迫して胸苦しくさせると、暗い淵にでも沈むような気持になるのだった。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-08-28 11:10:05 | 日記
 
土筆(170)

 その後、不満が晴れずに不機嫌なままの蛍さんの母と、母の不機嫌の理由が分からないで困っている蛍さんの母子2人を奥に残したまま、祖母は玄関まで1人、曙さん達親子を送って出てその母親に......
 

 雨模様の先週今週。今日も雨。明日、明後日はどうなるのでしょうか。9月中旬迄すっきりしないのかもしれません。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-08-27 09:45:38 | 日記
 
土筆(169)

 傷痕といっても彼女の長男の東雲さんの物は腕にでしたから、長袖などの袖で隠す事が出来る痕でした。が、蛍さんの場合は顔という目立つ場所、しかも女の子の顔の傷ですから、将来の縁談に差し......
 

 旅行に出たいと思うのに、天候が安定しない先週、今週です。季節の変わり目、台風の時期に当たるのでしょう。