「恋の悩みですか?」
不意に母娘2人の頭上から声が降り掛かりました。『しめた!』と、この母は思います。
「はい、この子が恋の病で、」
彼女はそう答えると、にこやかに側の障子窓から覗く婦人に目配せしました。窓辺の婦人は、ははぁんと合点すると内心呟きました、『お金になる話だわ。』。そう思うと、こちらもやはりにこやかに揉み手などして、「なら話を聞きましょうかね。」という塩梅で、女性2人は話しを始めました。
「それで何処の誰に?」
と婦人は尋ねます。「話によっては一肌脱がない事も無いですよ。」と、彼女の方は恋の仲人の申し出など打診します。ところが、「あなたに脱いでもらう事も無いんです。」と、母は不愛想に素っ気なく答えました。婦人は勿論母の返事に驚きます。母の態度を如何いう事だろうかと怪しみますが、「私はほら、ここの住人で、ここに住んでいるくらいですから、ご近所には顔が利くんですよ。」と言うと、続けて、「何でも話してごらんなさい、悪い様にはしないから。」と相手の警戒心を解くように下手に出て優しく声を掛けました。
「だから、あなたの裸なんか如何して私が見なければいけないんです。」
と、母は答え、なんだか本当に目くじらを立て始めました。「猫なで声を出してもそんな物見たくも無い。」そして声を荒げると、どうしてもと言うなら、と「お金でも頂けるというなら見ない事も無いですけどね。」と素っ気なく言うとそっぽを向きました。