その後、不満が晴れずに不機嫌なままの蛍さんの母と、母の不機嫌の理由が分からないで困っている蛍さんの母子2人を奥に残したまま、祖母は玄関まで1人、曙さん達親子を送って出てその母親に言いました。
「なぁに、心配ないよ。頬の傷といっても、蛍のあれは笑窪の様にも見えるから。笑窪なら、女の子の笑窪は美人の条件の1つだからね。」
「傷なら傷で、痕に残ってもそれはそれでいいじゃないか、傷じゃ無くて、笑窪にしておけばきっと大した事にはならないよ。それに、あの笑窪のおかげで、十人並みの器量の蛍でも、あれ1つが有る事で美人の仲間入りが出来たんだよ、めでたいじゃないか。そう思う事にしようよ。」
と慰めるのでした。
「もし仮に、本当に抓った後に茜にもあんな痕が出来たなら、それも笑窪という事で、そうして置こうよ、それで万事丸く収まるというものだよ。」
「また、もし茜にあんな痕が残っても、笑窪が加わればあの子には尚更美人の条件が整ったというものだよ。蛍のは片方だが、もし本当に抓った痕が笑窪になるのなら、いっそ両方抓って両笑窪にしたらどうだい、あの子は今より大層な美人になるだろうよ。」
ははは。等、冗談めかして明るくにこやかに上手く言うと、ほろっと笑顔を漏らした母息子2人に手を振って、姑は穏やかな笑顔で2人を送り出すのでした。
それでも、帰る2人の背は、心なしかやはり肩が落ちて沈んで見えるのでした。祖母が見ていると、時折曙さんは心配そうに母を見上げ、その顔を覗き込むのでした。
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