「縁側を見ているんだよ。」
私は素直に答えた。私自身が興味のある物を祖母に知ってもらう事は、私に取ってとても嬉しい事に思えたからだ。
「縁側?。」
祖母は何やら不思議な面持ちをした。物言いも如何にも合点が行かないという様な力の無い言い方をした。私はそんな祖母の態度に、私が予想したより彼女が話に乗って来ないと感じ、当てが外れたような気分になった。
「面白いんだよ、縁側の模様。」
そこで私は少々詳しく彼女に説明した。ここで祖母がしめたと思ったかどうか私には分からなかったが、否、思ったのだ。彼女の目が少し笑った。そして私が床と祖母の顔を交互に眺めながら、彼女にもう少し説明しようか如何しようかと迷っていると、明らかに彼女は顎を引いて口元に手を遣った。少し目が輝いている感じがする。
『あれ?、お祖母ちゃん笑っているのかな。』
私は半信半疑でそんな事を思った。
すると祖母の目が弧を描いて細くなった。ははぁん、やはり祖母は笑っているのだ。私は何故祖母が笑っているのか、何が可笑しいのだろうかと考えてみた。
縁側、模様、どちらが可笑しかったのだろう。縁側の模様と言ったから、縁側の模様が可笑しかったのだろうか。私は再び桁板の模様に目を移して祖母が笑うようにお可笑しい個所を探してみた。模様は興味深く面白いけれど、笑うという様な滑稽な模様等、私には皆無に見えた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます