20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『わたしのいるところ』(リーブル)菅原優子著

2008年05月31日 | Weblog
 ポストをあけたら、旧い友人である、詩人の菅原優子さんから茶封筒が届いていました。家でハサミで開けるのももどかしく、エレベーターの中で茶封筒を破ると、中から出て来たのは詩集でした。美しい宝石のような詩集。
 菅原優子さんは、『空のなみだ』(リーブル)で今から12年前、第1回「三越左千夫少年詩賞」を受賞されている方です。

「もう、詩は書かない」
 彼女がそうおっしゃっていると、人づてにうかがったのは、いつ頃だったでしょうか。そんなことがあったので、私はエレベーターの中で、飛び上がりたいような衝動にかられました。

 菅原優子さんと最初に出会ったのは、もうかれこれ30年近く前です。
 彼女とは「わっせ」という同人誌のお仲間でした。
 それから数十年。「わっせ」も解散し、お目にかかる機会がないまま、お年賀状交換だけの年月が過ぎていきました。
 思いがけず再会したのは、木暮前会長のお別れの会の日、「千日谷会堂」に時刻より早く準備のために集まった、その場でした。
 お別れの会で彼女は、木暮正夫さんのお作りになった詩を朗読してくださったのです。力強く、しなやかに、けれど悲しく切ない、すばらしい朗読でした。

 それからしばらくして、ご家庭のご事情などから、「もう詩はやめる」とおっしゃっていると、風の噂で聞こえてきました。時を同じくして、ご近所にお住い同士の詩人、Hさんとおふたりで長年やっていらした小さな詩集「カヤック」を閉じる旨のお知らせが届きました。
「カヤック」は詩人おふたりだけの競演詩集でしたが、描き方の対照的なおふたりならではの、とってもすてきな、私の大好きな詩集でした。
 がっかりした気持ちで私は、会議などで詩人のHさんにお目にかかるたび、
「菅原さんはお元気?」と、うかがってしまう日々でした。
 そんな折りの、この詩のえほん。
 もう、うれしくてうれしくて・・・。
 
 あったい おひさまのひかり
 うごかずにじっとしていると
 トンボがわたしのひざに
 おりてきて とまった
 なにかのあいずように
 はねがきらりとひかって
 ふいに思ったの
「わたしは わたし」って

 黒井健さんの日本画のような、りんごも、野の花も、赤い花びらも、みんなみんなすてきです。
 きらきらした菅原さんの感性に、美しく溶けあっています。

『わたしのいるところ』(リーブル刊)菅原優子。
 とにかく、皆さま、お読みになってみてください。

コメント (2)
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