20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『ピンポンはねる』(ポプラ社刊)

2008年08月19日 | Weblog
 友人の作家、工藤純子さんから新刊をご恵贈いただきました。
 工藤純子さんは『GO! GO!チアーズ』(ポプラ社 Dream スマッシュ)でデビューされた新人作家です。現在は「季節風」の編集委員もされています。
 この『ピンポンはねる』が三作目のご著書になります。
 一作目、二作目でチアーガールの女の子たちの友情を書かれた工藤さんは、今回では卓球少女たちを描いています。
 工藤純子さんご自身がもしかしたらスポーツ少女だったのかも知れません。
 チアガールにしても、卓球にしても実に楽しく、生き生きと細部にまで目を行き届かせて書いていらっしゃるので。

 今回、工藤さんの作品を拝読しながら、それとは別に不思議な感動を覚えている自分に気づきました。
 それは「魚のめがねで世界を見れば・・・」から発展していく、子どもたちの思考の深まりの独自性と、作家・工藤純子が発見した「個別の感動」についてのところです。
「これは、もしかしたら、ありきたりのスポーツ物語ではないかもしれない」
 そのとき、ふとそんな直感が脳裏をよぎりました。
「子どもを、どう捉えるか」あるいは「人間を、どう深めていくか」
 それを、こういう切り口から探り出し深めていった工藤純子さんの作家としての視点の確かさに、「やられたな」という思いがじわじわと胸のなかにひろがっていくのがわかりました。
 そして読み終えて、再度、思いました。
「たしかに卓球の魅力と躍動感が余すところなく書かれていたけれど、この物語はそれだけではない。やっぱりただのスポーツものでもなけらば、キャラクターものでもなかった」と。
 そうです。この作品は卓球の楽しさと魅力を堪能しながらも、他者を発見していく物語でもあったのです。
 
 奇才・松本大洋の作品に『ピンポン』というマンガがあります。
『ピンポン』を読んだときに打ちのめされた、あの感情をふいに思い出しました。
「卓球」に夢中になる「ペコ」や「スマイル」や「アクマ」。登場人物たちのくっきりとかき分けられたキャラクターの魅力に度肝をぬかれたことを。


 こうして「個別の感動」を大切にしながら他者を発見する視点を獲得した彼女の、めざましい作家的成長に、同じく私は度肝をぬかれました。
 そんな彼女の作品の力を、批評という形で援助し続けた後藤竜二氏率いる「季節風」の作品を論じ合う力に、私はあらためて感じいっています。「季節風」の人間を深める視線の確かさと、そのすごさに。

 みなさん、ぜひお読みになってみてください。
コメント (4)
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