今夜は、仲間内での読書会です。
もちろん、リモートで。
今回のテキストは、柳美里作「JR上野駅公園口」。
全米図書賞を受賞した作品です。
読みながら、私たちは、なんてひどい国に暮らしているのかしらと、泣きたくなりました。
先日の、日本ペンクラブの恒例「3.11」イベントの豊田さんの講演を聞いていても、涙が溢れて溢れて・・・。
地震からの大津波。
けれどそれ以上に、ひどかったのが、福島原発事故です。
フォトジャーナリストの豊田直巳さんは、原発事故の翌日から、線量計を持って、福島に入ります。
ですから、そこに生きる子どもたちの笑顔も、たくさん出てきます。
でもその子どもたちが、生涯にわたって、甲状腺癌の検査から逃れられない、その実態を、線量計で詳らかに伝えてくれます。
除染もされない地域がまだかなりの範囲あって、そこに家を建て、生涯を終えようと思っていた人たちが、家を奪われ、それでもそのまま、国にはなにもしてもらえず、日々が流れていきます。
地震大国と言われる日本に、なぜ、こんなたくさんの原発があって、また再稼働しようとしているのでしょう。
福島原発復興のために、他の原発を作動させないと、復興できないのだなどの詭弁を弄して・・。
何百年もかかると言われている、放射性汚染物質除去・廃炉への道は、ほど遠く、空間の放射線量が、年間20ミリシーベルト以下なら避難指示が解除され、補償は打ち切られています。
年間20ミリシーベルトというのは、原発事故前の一般公衆の、年間被ばく量の20倍だそうです。
骨折して退院した後、近所の整形外科に、腕のリハビリに通っていました。
先生は、レントゲンの回数をとても気にしながら、骨のつき具合を見るために、半年間のうち、二回くらいやってくださいました。
ちなみに、レントゲン撮影は、一回にだいたい 0.1 から 0.3 ミリシーベルト、被曝するそうです。
医師会などのサイトを見ると、自然放射線からうける放射線量は、世界平均で、年間約2.4ミリシーベルトだそうです。
そういうことと合わせながら、先生は、レントゲンを慎重にしてくださいました。
ですから、年間20ミリシーベルト以下なら、避難解除というのは、世界的に見ても、おかしな論理です。
先日の、豊田さんの講演で伺いました。
その、後始末のために、私たちは印税から「復興特別税」の名目で2037年12月31日まで、源泉徴収されます。夫たちも給与から源泉徴収されています。
また住民税からも引かれています。
みんなで、あの日を背負って、痛みを分かち合いながら、生きているのです。
3月11日が近づくと、日本ペンクラブでは、「あの日を忘れてはいけない」とイベントを開いて勉強会をします。
コロナも、変異種が拡大して、一回目の非常事態宣言の時より、ずっと多い数の感染者が出ても、もう宣言は打ち切るようです。
もう国民も疲れ切っていますから。
宣言を解除して、オリパラに向けて走っていくのでしょう。国民の感染拡大など、無視して。
アメリカのバイデン大統領との対談のために、4月に菅総理一行、80名か90名がアメリカに行くそうです。
全員、2度のワクチンを打って・・・。
他国訪問へのエチケットかもしれませんが、高齢者のワクチン接種が遅れているので「ああ、上級国民は違う」と思う人もいるでしょう。
さて、今夜のテキストに戻ります。
柳美里は、作家としての性根を据えて、上野公園のホームレスたちを取材します。
上野のビジネスホテルに泊まって、ホームレスの目線に張り付いて、張り付いて、取材を続けます。
ラスト、電車に飛び込もうとする主人公のホームレスの幻想の中に出てくるのは、故郷の光景。
可愛がっていた犬を乗せ、必死に車を運転して、高台へと逃げようとする孫娘の背後から、真っ黒な津波が・・・。
そして、車ごと津波に飲み込まれていきます。
生きていれば80歳以上になる主人公の、最期の姿に、フクシマが重なる・・・。
柳美里らしいラストです。
コロナで、非正規の若い女性たちが、困窮し、この本に出てくるホームレスとは違っていても、生きることも困難。
そんな女性たちに、無償で生理用品が配られたとか。すごく多くの女性たちが、救いを求めてやってきたそうです。
この作品の東北からの出稼ぎの人たちが、とうとう上野公園に住み着き、ホームレスになっていく。その状況と、今のコロナ禍での日本の状況は似ています。
本当に、ひどい国に、私たちは住んでいます。
柳美里、すごいなと思いながらも、そんな絶望的な気持ちにもなりました。