ボタンで名高い長谷寺にも天狗杉があります。
仁王門から一の回廊を登りつめた右側の大木がそうです。
この寺の小僧・英岳は夜ごと回廊の灯籠の灯を点けて回り、
余った油を行灯の明かりとして勉学に励みました。
回廊の左右には大杉が多く、そこに住む天狗が油皿をひっ
くり返したり明かりを吹き消したりと悪戯をしましたが、
英岳はひるまず、かえって発憤してとうとう大僧正の地位
にまで昇りました。第十四世能化(のうげ・管長)となった
英岳大僧正は荒れていた伽藍再建のために境内の杉の木を
伐らせましたが、この一本だけは自分を発憤させて現在に
至らせた天狗のために残したあげたということです。
(写真は長谷寺の回廊)