ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

世界最大の石刻大仏・楽山大仏

2010-09-15 15:55:31 | 旅日記
中国四川省の世界遺産を訪ねる旅も、いよいよ最終日を迎えました。
8月29日8時30分、最後の観光地・楽山市に向かってバスで走ります。今日の天候は曇り。
もっとも成都はこんな日が多いそうで、どんよりと霞がかかったようで湿気も高いようです。

大仏は成都から南へ164km離れた楽山市の郊外、岷江、青衣江、大渡江の三本の川が合流
するところにあります。バスで走ること1時間半、市内を離れて緑の多い郊外に来ました。



峨眉山山系の一山、凌雲山のうち栖鷺峰の西岩壁に掘られた大仏は「峨眉山天秀、楽山
天下奇」といわれ、大勢の観光客が訪れる景勝地です。
当時盛んに起こった岷江の水害を治めようと、713年、凌雲寺僧の海通が寺の近くの崖に
掘り始めたと記録されています。完成は海通の没後の803年で、実に90年の歳月がかかって
います。この大仏は他の多くの大仏が国家事業なのに対して、民衆の合力によって建設
されたものです。



ゲートをくぐると断崖に突き当り、道は左右に分かれます。凌雲山は宋代の代表的詩人・
蘇軾(蘇東坡の名の方がよく知られている)所縁の地で、この岩に掘られた大きな字も
彼の書ということでした。
後ろに見える穴をくぐって延々と続く石段を登っていきます。何段あったか忘れました
が、登り下りの中国の観光客をかき分けるようにして、汗を流しながら登りました。

やっと大仏の左横顔の見える広いテラスにでて、自由行動になりました。更に高い処を
目指して登ると…。



右側から大仏を見下ろす別のテラスに出ました。先ほどのテラスにいる人が小さく見え
ます。



始めのテラスに帰り、記念撮影。大仏の高さは約71メートルありますが、肩幅28メートル。
頭は長さ14.7メートル、直径10メートル。螺髪の数は全部で1021個あります。
なお耳の長さ6.72メートル、鼻の長さ5.33メートル、目の長さ3.3メートルです。



中国の人の真似をして、こんな写真を撮ってみました。
テラスから仏像右側の岩壁に「九曲桟道」と呼ばれる急な桟道が刻まれています。長さ
約400メートルほどで下の道と出会います。



大勢の人に交じって「九曲桟道」を途中まで下ってみました。
今度は左側から見上げる形になります。
この九曲桟道は、大仏造営工事の時に使われた道を整備したものですが、本来は一方通行
です。狭い道一杯に下りて来る人たちに謝りながら、集合場所のテラスに帰りました。



テラスの向かい側にある凌雲寺の山門です。入口が三つありますが、左と中央は高僧や
皇帝たちの入口で、右側が私たち一般人の入口です。
山門を抜けると大雄宝殿があり、中央に現在過去未来を表す三世仏と、十八羅漢が祀ら
れています。通り抜けた裏側には観音菩薩が祀られていて、額ずいて拝礼する人の姿も
見えました。



この寺院には、まだまだ見どころがあるのですが、次に遊覧船で下から観光する時間が
迫っているためか、別の広い道を下りました。遊覧船乗り場までは、この人力車で行き
ました。僅か5分ほどですが5元(60円)の体験乗車でした。



遊覧船乗り場。



貸切り船に乗り込み、ライフジャケットを付けて甲板に出ました。僅か40分ほどですが、
船上から始めて大仏の全体像を見ることができます。



まず大仏の近くまで船を寄せて間近に大仏を仰ぎます。



左の赤い崖に先ほど途中まで下りた九曲桟道が見えます。守護神が彫られている岩の裏側に
一方通行の登り道があります。



岸から少し離れた処でしばらく船を停めて写真タイム。大仏全体の姿を見ると改めて
その巨大さに圧倒されます。
足の甲は幅9メートル、長さ11メートルあって、その上に100人が乗れる広さだそうです。
当初は仏像には朱が塗られ、法衣には金箔が貼られて、その上を十三層の建物が覆って
いたといいますから、その壮観さは目を見張るものだったことでしょう。



残念ながら明代になって建物は焼失し、また大仏のあちこちにシミが見られますが、
この巨大な像が1200年もの間、崩壊せずに残っているのは不思議に思います。実はこの
大仏には周到な工夫が施されているのです。まず頭部にある螺髪が排水路の役割を果たし、
また他の身体各部にも排水溝などがあって、完全な排水機能が備わっています。
工事で出た大量の土砂が三つの河の合流点に入れられて川底が浅くなり、水害が減った
ことといい、昔の人の知恵には驚くばかりです。



楽山大仏の観光を済ませ成都に帰る途中、高速道路で日曜日の大渋滞に巻き込まれました。
このタクシーは地元・楽山市のものか「蘇東坡」「我愛酒」の文字が見えます。酒好きの詩人
の名を冠したお酒のCMでしょうか?

この日のスケジュールには民芸店のショッピングが残されていたのですが、この渋滞で時間
がなくなり中止になりました。これまでショッピング以外に車内での写真や物品の販売、
急なオプションの案内があり、その度にガイドの蘇さんが申し訳なさそうにマイクに向かって
いました。それまで観光ガイドではあんなに流暢だった日本語がつまりつまりになり、トーン
も低く聞き取れ難くなるのです。本当はこんなことはしたくないが仕事だから…
という感じがありありでした。それが、ショッピング中止となるや急に明るく、はしゃいだ
様子に変貌しました。きっとマジメで気の弱い青年だったのでしょう。



成都に入り、旅の最後の晩餐は「陳麻婆豆腐店」で四川料理を食べました。前にもここに
来ましたが、日本で有名な店だけに日本語を話すお嬢さんがサービスします。味付けも
日本人に合うようにそれほど辛くなく、美味しいお料理です。
いったんホテルに帰り、3ブロックほど離れた「超市」スーパーマーケットでお土産を買いました。

8月30日 朝、成都を発ち、大連で乗り換えて帰国の途に。帰りはフライトの遅れも
なく予定通り15時半に関空に着き、中国四川省の世界遺産を巡る私たちの旅は終わり
ました。長い間、ご覧頂きありがとうございました。