橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI #365 ≪虚構の中の現実≫

2019年03月05日 | EHAGAKI

お世話になります

ネットでは「虚構新聞」というサイトがあります
たとえば

スマホ時代反映 縦長映画館オープン 横浜
http://kyoko-np.net/2017061301.html

「200年後、ネコが地球の支配者に」スパコン予測 千葉電波大
http://kyoko-np.net/2019020101.html

などなど、“嘘”と分かり易い内容です
パロディ・諷刺・皮肉を通じて、世の諸事象に関心を抱いてほしい
との主旨のようです

ところが

「国際社会に不確定性導入」 トランプ氏、ノーベル物理学賞候補に
http://kyoko-np.net/2019021901.html

いやいや、今の世界、ひょっとしてあるかも?
なんてことになります

そしてこれ

政府統計「信頼できる」100% 内閣府調査
http://kyoko-np.net/2019011501.html

これぐらいの発表があっても不思議でない?
現実が虚構を超えているのではないか、と思うことも

ちなみにこの記事の “オチ” は

「・・・無作為抽出した全国計3人を対象に調査票を郵送・・・
『政府統計を信頼できますか』
という質問に「はい」か「いいえ」で答え・・・
有効回答から3分の1を抽出した統計を四半期ごとに公表している。」

なんとも、現実と虚構の境界が無くなっているかのような、
今日この頃であります

「虚構」と「政治や経済」は同義語かもしれません


さて今回のお題は、ベストセラー「ホモ・ゼウス」からであります

「ホモ・ゼウス」
ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房新書

この本は、いつもの様なサンプルだけでなく
しっかりと上下巻とも kindle版電子書籍で買いゆっくりと読み進んでおります

前著「サピエンス全史」で歴史を語り「ホモ・ゼウス」で
未来を語っているそうですが、今回はその中で、
「ホモ・ゼウス」の前半、振り返り部分であります


◆  ◆ ◆ ◆ ◆  

オオカミやチンパンジーのような動物は、
二重の現実の中で暮らている 
彼らは木や岩や川といった、
自分の外の客観的なものを理解している

また、恐れや喜びや欲求といった、
自分の中の主観的な経験も自覚している 

それに対し、サピエンスは三重の現実の中で生きている

木や川、恐れや欲求に加えて、サピエンスの世界には、
お金や神々、国家、企業についての物語も含まれている

21世紀の新しいテクノロジーは、
神や国家や企業といった虚構を、さらに強力なものにする

未来を理解するには 、
キリストやフランス共和国やアップル社についての物語が、
どうやってこれほどの力を獲得したかを理解する必要がある

「人間は自分たちが歴史を作る」と考えるが 、
歴史はこうした虚構の物語を中心にして展開する

人間の基本的能力は、石器時代から変わらず、
変わったとすれば「衰えた」ことぐらい

だが 、物語はそれによって歴史を石器時代から
シリコン時代へと強力に推し進めてきた

すべてが始まったのはおよそ七万年前

「認知革命」のおかげでサピエ ンスが自分の
想像の中にしか存在しないものについて語りだした

その後の六万年間、
サピエンスは多くの虚構の物語を織り成したが、
それは小さく局地的なものに限られた

小さな範囲ではあったが、
祖先の霊や貴重な貝殻についての物語は、
サピエンスにとって強みだった

そうした物語のおかげで、何百、何千ものサピエンスが
効果的に協力できた
それはネアンデルタール人やチンパンジーには望むべくもない

約12,000年前に始まった「農業革命」は、
共同主観的ネットワークを拡大・強化する物質的基盤を提供した 

農耕のおかげで、都市の多くの人々を集め、
軍隊は何千という兵士を養うことが可能になった

そうなると、新たな障害にぶつかる

集団的神話を維持する為に、初期の農耕民は
人間の脳のデータ処理能力に頼っていた

当然、その能力には限界がある 

そこで彼らは、お気に入りの神のために神殿を建て、
その神を称えて祝祭を催し、生贄を捧げ、
土地や収穫の一部や供物を献じた

6,000年前頃、古代シュメールの都市では、
神殿は崇拝の中心地であるばかりか、
最も重要な政治的中枢や経済的中枢でもあった

同時にシュメールの神々は、
現代のブランドや企業に相当する機能も果たした

神々は農地や奴隷を所有し、融資をしたり、給金を払ったり、
ダムや運河を建設したりできる法人であった

神々はけっして死ななかったし、
相続財産をめぐって争う子供もいないので、
多くの資産と力を蓄えていく

いつしか、多くのシュメール人が神に雇われ、
神から融資を受け、神の土地を耕し、
神に税を支払う義務を負わされることになった 

今日のサンフランシスコで、
たとえばジョンはグーグルに雇われ、
メアリーはマイクロソフトで働いているのと同じ

ある人は偉大な神エンキに雇われ、
その隣人は女神イナンナに仕えていた 

エンキとイナンナの神殿は堂々とそびえ、
その神聖なロゴがさまざまな建物や製品や衣服を飾っていた

私たちにとってグーグルとマイクロソフトが
現実味のある存在であるのに劣らず、
シュメール人にはエンキとイナンナは現実感があった

神々は、石器時代の魔物や霊といった先輩たちに比べると、
強力な存在となった

実際に神々が、
自らの業務を行なっていたわけではないことは言うまでもない 

理由は単純で、彼らは人間の想像の中以外の、
どこにも存在しなかったからだった


◆  ◆ ◆ ◆ ◆  


ということでした

虚構と嘘、似て非なるモノです

人間として「真摯に」活動したいものです


ではまた

虚構:実際にはない、作り上げたこと。作り事を仕組むこと。フィクション。
嘘:事実ではないこと。人をだますために言う、事実とは異なる言葉。