「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
小林信彦
『わがクラシック・スターたち―本音を申せば』
文藝春秋 1620円
中吊り広告問題は遺憾だが、寄稿者に罪はない。「週刊文春」連載の名物エッセイ、昨年分だ。映画、ラジオ、本などについての評価はもちろん、「こんなひどい時代が二度とくるとは思わなかった」と嘆きながらの社会時評が鋭い。「みにくい時代」の灯台である。
原田ひ香 『ラジオ・ガガガ』
双葉社 1512円
ラジオは不思議なメディアだ。不特定多数を対象としながらパーソナルな性質をもつ。この短編集に登場するのは、それぞれラジオに助けられ、励まされている人たちだ。しかも、「伊集院光 深夜の馬鹿力」など実在の番組が物語に組み込まれ、効果を発揮している。
末井 昭 『結婚』
平凡社 1512円
著者は『写真時代』やパチンコ雑誌などで知られる伝説の編集者、また作家でもある。自身の恋愛、結婚、不倫、離婚、再婚の体験を文字通り赤裸々に綴ったのが本書だ。その破天荒な行いを露悪的ではなく淡々と告白。いっそ突き抜けたような清々しさを感じさせる。
松村雄策 『僕を作った66枚のレコード』
小学館 2160円
雑誌『ロッキング・オン』に連載の「レコード棚いっぱいの名盤から」をまとめた一冊。66枚のうちビートルズ7枚、ドアーズ5枚、ローリング・ストーンズ3枚と聞けば、著者の好みが想像できるだろう。60~70年代のロックを浴びた世代にとって価値観の源泉だ。
(週刊新潮 2017年7月6日号)
追記:
「週刊文春」の小林信彦さんの連載コラムが、この何ヶ月か、休載となっています。
毎週、真っ先に開くページなので、ずっと寂しいです。
事情はまったく知りません。
もしも体調などであれば、一日も早いご回復をお祈りいたします。