<2019年7月の書評>
ブレイディみかこ『女たちのテロル』
岩波書店 1944円
百年前、激烈に生きた女たちの肖像だ。獄中で縊死したアナキスト、金子文子。女性の権利を求め大英帝国を揺さぶった、エミリー・デイヴィソン。アイルランド独立戦争を戦った、マーガレット・スキニダー。いずれも「自分以外の誰にも属さない自分自身の女」だ。(2019.05.30発行)
川野京輔『推理SFドラマの六〇年』
論創社 2376円
著者は元NНKディレクター。自身が推理作家だったこともあり、昭和30年代から、そのジャンルのラジオドラマを開拓する。やがてテレビに転じると、「事件記者」などを演出した。本書は、個人史がそのまま日本の推理SFドラマ史と重なる貴重な回想記だ。(2019.05.30発行)
瀬口晴義『オウム真理教 偽りの救済』
集英社 1278円
昨年7月、麻原彰晃などオウム真理教の死刑囚たちの刑が執行された。著者は幹部たちとの文通や面会を20年以上も続けてきた新聞記者。事件と彼らの関係を丁寧に捉え直していく。また巻末の「墓碑銘」に並ぶ、早川紀代秀や林泰男などの人物評も読み応えがある。(2019.06.30発行)
宮本常一『宮本常一 伝書鳩のように』
平凡社 1512円
名前は知っている。いつかは読みたいと思っていた。
そんな人に最適な随筆シーズの最新刊。民族学者である宮本の著作『忘れられた日本人』や『山に生きる人びと』などから選び抜かれた名文が並ぶ。自らの歩みを伝書鳩に見立てて回想した表題作も滋味溢れる。(2019.06.12発行)
池内 紀『ことば事始め』
亜紀書房 1728円
「忖度」と「便宜」の違いとは。「クダを巻く」のクダ、「ピンはね」のピンとは何か。知っているようで知らない。そして知れば少し愉快になる。そんな日常語の面白さを教えてくれる一冊だ。では、「いなせな男」と「あだな女」、それぞれどんな意味?(2019.06.21発行)
倉本 聰『やすらぎの刻 道』第1巻
双葉社 1944円
一昨年話題を呼んだドラマ『やすらぎの郷』。現在放送中の続編のシナリオ集である。石坂浩二演じるベテラン脚本家や往年の大女優たちの「その後」だけでなく、昭和初期から始まる夫婦の物語も展開されていく。巨匠が磨き上げた名台詞の数々を味わいたい。(2019.06.23発行)
岡崎武志『これからはソファーに寝ころんで』
春陽堂書店 1944円
還暦をすぎた古本の達人が書き下ろした、「もう若くなくて幸せ!」な日常を描くエッセイ集。芥川龍之介の短編「年末の一日」に沿って田端周辺を歩く。荻窪の上林暁旧宅を訪ねる。そして本はソファーに寝ころんで。「嫌いは嫌い、好きは好き」で行こう!(2019.05.25発行)
小熊英二『地域をまわって考えたこと』
東京書籍 1728円
『社会を変えるには』などの著書を持つ歴史社会学者が、全国の地域を歩いた。福井県鯖江市では町工場が「わが町」のプライドを生み出し、宮城県石巻市では「面白い人」の移住を促進中だ。それぞれの実情に合った取り組みから、地域振興のヒントが見えてくる。(2019.06.15発行)
松久 淳『走る奴なんて馬鹿だと思ってた』
山と渓谷社 1404円
著者は『天国の本屋』などで知られる作家だ。運動とは無縁の生活をしていたが、体の不調をきっかけに走り出す。一人遊びが平気で、マニア癖もあることから、没入。やがてフルマラソンに挑戦するまでに。走りに人生の意義など見出さない、笑えるマラソン談義だ。(2019.07.01発行)
ローレンス・ブロック:編、田口俊樹ほか:訳『短編画廊』
ハーパーコリンズ・ジャパン 2376円
エドワード・ホッパーの絵画17枚に触発されて書かれた17の短編が並ぶ。編者は「八百万の死にざま」などで知られるブロック。自身も小さな詐欺を働く女性を描いた作品「オートマットの秋」を寄せている。他にスティーヴン・キング「音楽室」など粒ぞろいだ。(2019.06.17発行)
中川五郎『七〇年目の風に吹かれ』
平凡社 2376円
1960年代後半、フォーク・ソングという音楽ムーブメントが起きた。そこで先駆者的役割を果たした一人が著者である。その後、評論家、翻訳家、小説家としても活躍した軌跡を一冊にまとめたのが本書だ。70年代の「わいせつ裁判」の経緯と内幕も明かされる。(2019.06.25発行)
峯田 淳『旅打ちグルメ放浪記』
徳間書店 1620円
「旅打ち」とはギャンブルを目的に旅をすること。夕刊紙の編集委員である著者は競輪歴40年の本格派だ。行く先々で手にするのは車券と2本の箸で、地方グルメに精通している。青森の馬刺し。久留米のとん足。高知でカツオの藁焼き塩たたき。一食入魂の勝負だ。(2019.06.30発行)
豊田綾乃アナウンサー、ライターの西森路代さんと
4月から6月にかけて放送された火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります」を取り上げる特集。
多くの若い女性から評価されたヒロインは、定時で帰ることがモットー。職場の仲間たちを思いやりながら働くことについて考えるドラマ。
スタジオゲスト:碓井広義(上智大学教授)、西森路代(ライター・ドラマ論が専門)を紹介。
西森は「色々な層に思い当たるところがあったのが、ドラマが受けた要因」「ヒロインが、問題意識をもって描けていた」「仕事をするといったことがどういうことか、答えを簡単に振れないことを考えるきっかけになるといい」と述べた。
碓井は「定時で帰る為に、工夫をしていた。仕事と私生活の両方を充実させていることが新しかった」「働き方は生き方を考えること」「一般的な社会派ドラマのように、拳を振り上げるような力が入っておらず、ヒロインの日常を描くなかで問題を見せてくれた、やわらかな社会派」と話した。
――JCCサイトより
「突破力」と「防御力」の両輪で挑む、
日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』
大泉洋さんの「突破力」
松たか子さんの「防御力」
「TBSレビュー」
2019年7月28日(日) あさ5時40分〜6時00分
テーマ:わたし、定時で帰ります。
〜お仕事ドラマ
4月から6月にかけて放送された火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」を取り上げます。
このドラマは、仕事とは何か、人はなぜ働くのかについて問いかけた作品です。
定時で帰ることをモットーとする女性主人公が、職場が抱える「長時間労働」「子育てとの両立」「セクハラ」といった問題に直面し、悩みながらそれを解決していく物語です。
このドラマが問いかけたものとは何なのか?
「お仕事ドラマ」の新たな可能性について考えます。
<出演>
碓井広義さん(上智大学教授)
西森路代さん(ライター・ドラマ論)
キャスター:
豊田綾乃(アナウンスセンター)
----番組サイトより
「TBSレビュー」
2019年7月28日(日) あさ5時40分〜6時00分
テーマ:わたし、定時で帰ります。
〜お仕事ドラマ
4月から6月にかけて放送された火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」を取り上げます。
このドラマは、仕事とは何か、人はなぜ働くのかについて問いかけた作品です。
定時で帰ることをモットーとする女性主人公が、職場が抱える「長時間労働」「子育てとの両立」「セクハラ」といった問題に直面し、悩みながらそれを解決していく物語です。
このドラマが問いかけたものとは何なのか?
「お仕事ドラマ」の新たな可能性について考えます。
<出演>
碓井広義さん(上智大学教授)
西森路代さん(ライター・ドラマ論)
キャスター:
豊田綾乃(アナウンスセンター)
――番組サイトより
テレ朝「サイン」の見どころは
真逆の生き方をする2人の法医学者の対決
今期、「法医学ドラマ」が2本放送されている。きっかけは昨年の1月クールに放送され、数々の賞を受けた「アンナチュラル」(TBS系)だ。追随した他局が法医学系の原作を探し回り、「監察医 朝顔」(フジテレビ系)と「サイン―法医学者 柚木貴志の事件―」(テレビ朝日系)が同時に登場することになった。
韓国ドラマを原作とする、「サイン」の舞台は日本法医学研究院。主人公は解剖医の柚木貴志(大森南朋)だ。腕はいいが、完全な一匹狼タイプ。協調性なし。権威や権力にも屈しない。って、まるで「ドクターX」の大門未知子ではないか。つまり“テレ朝系医療物”の王道キャラなのだ。
このドラマでは、毎回の個別事件の解明と、国民的人気歌手の死の真相という継続案件が並行して描かれる。特に後者に関しては、前院長(西田敏行)を追い払って日本法医学研究院のトップに立った伊達(仲村トオル)、大物政治家を操る怪しい秘書(木下ほうか)、さらに謎の美女(森川葵)などがうごめいており、何やら相当キナくさい。
見所はズバリ、真実を求める柚木とそれを抑え込む権力志向の伊達、真逆の生き方をする2人の法医学者の対決だ。いや、大森と仲村の男優対決と言っていい。両者が同じ空間にいる場面のヒートアップぶりは真夏の暑さを思わせて、「もっとやれ!」と声を掛けたくなってくる。
(日刊ゲンダイ 2019.07.24)