碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「未来は今年を忘れない」の大晦日

2011年12月31日 | テレビ・ラジオ・メディア

2011年の大晦日です。

今、朝の5時前なので、あと約19時間で年明け。


私にとっての大晦日は、1年の中で貴重な、ほぼ何もしない一日になります(笑)。

ふるさとの実家に行き、だららんとして。

夜になったら、毎年母が作ってくれるお節の「ぶりの酒粕煮」などを肴に軽く飲んで。

ちゃんと「紅白」を見て(笑)、そのまま「ゆく年くる年」も眺める。

今年の「ゆく年くる年」は何年ぶりかで、奈良・東大寺からの中継もあるし。

やがて、意を決してに立ち上がると、酔い覚ましを兼ねて近所の神社へお参りに。

そんな、何十年と続けてきた“いつもと同じ”が出来るというのが、実はとても有難いことなのだと、今年はしみじみ思う。


「未来は今年を忘れない」

ACC CMフェスティバルの今年のコピーですが、まさにそうでなくてはならないし、自分もそうありたい。

2012年、この国は、少しずつでも明るいほうへ向かいたいものです。

頼むぞ、来年!


合掌。

2010年 こんな本を読んできた(11月編)

2011年12月30日 | 書評した本 2010年~14年
(hawaiiフォト・シリーズ)


今年の「こんな本を読んできた」を整理しようと思って、ふと、昨年分のうち11月と12月をアップしないままだったことに気がついた。

遅ればせながらではありますが(笑)、2010年11月の「読んで書評を書いた本」を紹介しておきます。

(掲載は「週刊新潮」)


2010年 こんな本を読んできた(11月編) 


佐々木譲『カウントダウン』
毎日新聞社 1680円

 財政破綻寸前の町を再生するため立ち上がる男たちを描いた長編小説だ。著者の出身は北海道夕張であり、古里に対する義憤と応援の思いが凝縮されている。
 舞台となるのは北海道幌岡市。ワンマン市長の長期政権で市議会は形骸化し、無益な投資が市の財政を危機的状況に追い込んでいた。ある日、司法書士で最年少市議会議員の森下直人の事務所を一人の男が訪れる。選挙コンサルティングの多津美裕だ。以前、大手広告代理店にいたという多津美は、いきなり直人に「市長選に出ろ」と迫る。
 あらためて町の惨状に目を向けた直人は、故郷が夕張の二の舞になる前に、火中の栗を拾おうと決意する。極秘で結成される支援組織。専門家の力も借りての現状分析と政策の作成。効果を計算した上での出馬宣言。やがて、直人が予想しなかったほどに過酷で滑稽な選挙戦へと突入していく。
(10.09.25発行)


村松友視『ギターとたくあん~堀威夫流 不良の粋脈』
集英社 1500円

 ホリプロの創始者である堀威夫の軌跡を追った人物評伝だ。同時に日本の芸能界の50年史でもある。
 昭和23年、16歳の堀少年はラジオから流れる「湯の町エレジー」で音楽に目覚める。アルバイトをした金でギターを購入し、練習を開始。やがて少年は一人前の音楽家へと成長し、人気バンド「スイング・ウエスト」を率いるようになる。順調な流れの中で会社を設立。しかし盟友の叛逆に遭い、全てを失う。ところが、堀威夫はめげない。失敗をバネに新たな芸能プロを興す。それが後のホリプロだ。ここからは舟木一夫、和田アキ子、森昌子、石川さゆり、山口百恵、榊原郁恵といったスターたちの発掘と育成、そして成功の物語が展開されていく。
 本書の魅力は堀威夫という男の魅力に尽きる。大胆にして細心。不良性と社会性。その振り幅を著者は「正負の戸板返し」と呼ぶ。
(10.10.20発行)


田村隆一『田村隆一全集 1』
河出書房新社 4725円

没後12年(13回忌)を迎えた現代詩の巨星。満を持して全集の刊行が開始された。この第1巻には最初の詩集『四千の日と夜』など瑞々しい初期詩篇が収められている。また、散文として自伝的要素の強い『若い荒地』も読める。多彩な才能を発揮した詩人の出発点だ。
(10.10.30発行)


ペン編集部:編『印象派。絵画を変えた革命家たち』
阪急コミュニケーションズ 1680円

ゴッホ、モネ、ルノアールなどの印象派と次世代の画家たちが一堂に会した美術ガイドだ。印象派の出現が与えたインパクトの大きさに驚かされる。中でも屹立しているのがゴッホだ。スケッチが挿入された自筆の手紙は、その人間像を知る手掛かりとして興味深い。
(10.10.16発行)


小島正美 『ニュースはこうして造られる~情報を読み解く力』 
エネルギーフォーラム 1260円

「ニュースとは切り取られた事実のことだ」と著者はいう。本書は毎日新聞編集委員による情報解読法だ。リスク報道にかかるバイアスや、国民の間に不安が生じるメカニズムなどを分析している。巻末で著者が提案する「報道ガイドライン」の早期実現が望まれる。
(10.10.05発行)


桐野夏生 『優しいおとな』 
中央公論新社  1575円

 日本そのものが破綻してしまったかのような近未来の渋谷が舞台だ。主人公は1人で生きる15歳の少年イオン。保護施設を脱出して路上生活者となり、炊き出しの食事とささやかなアルバイトで命をつないでいる。
 そんなイオンが危険な地下世界へと入っていく。かつて同じ施設で暮らし、自分を守ってくれた双子の兄弟を探すためだ。地下を根拠地とする疑似軍隊に紛れ込んだイオンだったが、双子はなかなか見つからない。やがて、地下世界の住人たち、そしてイオンにも大きな危機が訪れる。
 描き出される荒廃した世界と、そこに生きる人間たちの姿は様々な寓意に満ちている。これは前作『東京島』をより進化させた物語なのだ。少年イオンの悲しいまでに愛を求める孤独な魂が胸を打つ。タイトルの「優しい」には、著者が現代社会に向けた痛烈な批判が込められている。
(10.09.25発行)


内田 樹『街場のマンガ論』 
小学館 1470円

 常日頃「マンガびいき」を標榜する著者のマンガ論。専門である哲学よりも小説よりも熱く語っている。ただし、いかに「日本が誇るソフト」と持ち上げられてもマンガはマンガだ。どこか「日陰者」的存在であることを踏まえた上での「身びいき」であり応援である。
 最も頻繁に登場する作品は山本鈴美香『エースをねらえ!』だ。この作品から、日々の生活を「唯一無二のかけがえのない経験」として捉える生き方を学んだと著者はいう。いわば「死に臨んで悔いのない」状態である。また井上雅彦『バガボンド』を「短期間に成長する子どもの物語」と考え、その葛藤と成熟の関係に教育の原点を見出す。
 さらに近頃巷の女子に人気の「ボーイズラブ(少年愛)マンガ」にも言及し、全共闘運動の反米ナショナリズム闘争の「松明」を継承したものと位置付ける。独断にして卓見なり。
(10.10.09発行)


辰濃哲郎&医薬経済編集部 
『歪んだ権威~密着ルポ 日本医師会 積怨と権力闘争の舞台裏』
 
医薬経済社 1890円   

元朝日新聞記者が日本医師会の内側を活写したノンフィクションだ。軸となるのは熾烈な医師会長選挙。それは狡猾な戦略や知略が横行する、まさに「欲張り村」の村長選挙である。また特定看護師問題をはじめ、自らの権益を守る動きも呆れるほど露骨だ。
(10.09.29発行)


青柳いづみこ『水のまなざし』  
文藝春秋 1470円   

ピアニストである著者ならではの青春“音楽”小説だ。音大附属高校でピアノを学ぶ真琴は突然声を失う。個人レッスンの教師。療養のため訪れた祖母の家で出会う少年。そして父。少女から大人への揺れる季節が、クラシック音楽をバックに細やかに描かれる。
(10.10.15発行)


講談社:編 
『西本願寺御影堂「平成の大修復」全記録 一九九九~二〇〇九』

講談社 1470円   

10年を費やした修復が完了した西本願寺の象徴。使用する木の切り出しに始まる作業の全貌を伝えるドキュメントだ。屋根裏には当時の門主・良如と並んで棟梁の名前が残る。新たに焼いた瓦と古い物の共存も見事だ。本書はまた西本願寺とその周辺の案内書でもある。
(10.10.20発行)


玄田有史『希望のつくり方』 
岩波新書 798円   

希望。本来誰もが持っているはずなのに、いつの間にか忘れていた言葉だ。東大教授の著者と仲間が取り組んだのが「希望学」であり、これはその成果発表である。希望とは何か。著者は「何かを実現したいという思い」であり、そのための「行動」だという。
とはいえ、希望の多くは実現せず失望に変わる。大事なのはその経験を踏まえて次の新たな希望へと柔軟に修正していくこと。大きな壁にぶつかった時は「壁の前でウロウロすべし」のアドバイスもユニークだ。希望学とは希望に出会うためのヒントかもしれない。
(10.10.20発行)


森 博嗣『喜嶋先生の静かな世界』
講談社 1680円

 この理系青年の静かな成長物語は平成の『三四郎』ともいうべき作品だ。学ぶ喜び、知る楽しさ、そして学問や師の意味を再認識させる秀作である。
 理系学部4年生の僕が配属となったのは喜嶋先生の研究室。先生は何時間かの睡眠以外、すべてを学問に投じたシンプルな生き方だ。卒論を書き、大学院へと進んだ僕もまた、修行僧のような生活に悦楽さえ感じるようになる。「もっと深いところまで潜りたい。もっと遠いものを掴みたい」と研究に没頭していくのだ。
 純粋な研究者というべきか。先生は地位にも金にも執着はなく、ひたすら「人間の知恵の領域を広げる」ことに専念する。そんな先生との十数年に及ぶ奇跡のような師弟関係が、僕に影響を及ぼしていくプロセスを丁寧に描いている。理系人間ならではの思考や行動が、これほど新鮮に感じられる小説もあまりない。
(10.10.25発行)


四方田犬彦『人、中年に到る』
白水社 1890円

 著者はかつて『ハイスクール1968』で自らの青春とその時代を描いた。本書では、57歳になる自分自身の内側だけに目を向け、深い思索を展開している。本文にも登場するモンテーニュになぞらえて、エッセイではなく、『エセー(随想録)』と呼びたい一冊だ。
 「本と娼婦」では、書物は読むことはもちろん、その背表紙から醸し出される滋養が人に影響を与えると指摘する。また「わたしはなぜ旅に出るか」では、旅の目的と効用として再生、達観、内省の三つを挙げる。旅は人を自分自身との対話へと向かわせるのだ。
 「わたしは世代を標榜するいかなる力にも与したくない」と書くのは「世代について」の項である。人間を個人としてでなく、ひとくくりの束として扱うこと、さらに例外を排除することへの嫌悪だ。こうした著者ならではの感性と論理が、読む者を強く刺激する。
(10.10.10発行)


稲葉なおと『ドクター・サンタの住宅研究所』 
偕成社 1260円

森の奥にある奇妙な研究所。所長は工学博士であり、子どもの悩みを解決してくれる「発明家」でもあった。3つの物語からは、住宅がそこに暮らす人間の心をも守る場所であることが伝わってくる。一級建築士で文筆家の著者による、子どもと大人のための寓話集だ。
(10年11月発行)


吉野朔実 『神様は本を読まない』
本の雑誌社 1365円

『本の雑誌』に連載中の、<読書エッセイマンガ>シリーズ最新刊。著者自身をデフォルメした主人公の、ユーモアとシニカルが微妙に配分された読書生活が可笑しい。新刊だけでなく旧作も頻繁に登場するブックガイドでもある。翻訳家・柴田元幸との対談付きだ。
(10.10.15発行)


黒沢 清 『黒沢清、21世紀の映画を語る』
boid 2310円

映画『トウキョウソナタ』などの監督であり、東京芸大教授でもある著者の講演・講義録だ。小津安二郎、大島渚からフェリーニまでを取り上げ、「この映画のここを見ろ」とアジテートする。映画論の師匠は蓮實重彦だが、全編語り言葉であるため分かりやすい。
(10.10.15発行)


西澤保彦 『幻視時代』 
中央公論新社 1680円

 物語は意外な場面から始まる。文芸評論家の矢渡利悠人と作家の生浦蔵之介が偶然立ち寄った写真展。そこで二人は“あり得ないもの”を見る。展示された一枚に写っていたのは、彼らと高校の文芸部で一緒だった風祭飛鳥だ。写真が撮影されたのは1992年。しかし、彼女はその4年前に遺体で発見されていた。
 SFやミステリが好きだった悠人が、高校の文芸部に入ったのは86年ことだ。顧問の国語教師・白洲、早熟な文学少女・飛鳥、そして後輩である蔵之介と知り合っていく。悠人は密かに飛鳥に憧れるが、相手にはされなかった。やがて飛鳥が文芸誌主催の新人文学賞を最年少で受賞。天才女子高生作家の誕生は、飛鳥自身だけでなく周囲の人間の運命をも変えていく。
現在の悠人、蔵之介、編集者・長廻の三人が掘り起こす、22年前と18年前の衝撃の真実とは・・・。
(10.10.25発行)


工藤美代子『悪名の棺 笹川良一伝』
幻冬舎 1785円

「人事は棺を蓋うて定まる」という。ならば死後15年を経た笹川良一の評価は定まっているのだろうか。「政財界の黒幕」「ギャンブル王」などのイメージは今も健在だ。一方、海外では慈善活動家として称えられている。本書はその落差の中にある希有な人物像を描き出す試みだ。
 まず驚くのは戦前・戦中の「愛国運動」の資金源。笹川はこれを軍部や企業との関係から生じた金ではなく、相場師として得た巨額の利益、つまり自費で賄っていたという。それでいて日常生活では倹約を通した。
 また、あたかも盟友のごとく語られることの多い児玉誉士夫との因縁と確執、背信の真相も明らかになる。さらに、遺族からの証言を踏まえた艶福家として姿。西と東を行き来しながらの「愛の分配」は、その呆れるようなスケールもあって苦笑いしたくなる。人間・笹川良一の真骨頂だ。
(10.10.25発行)


勝目 梓『死支度』  
講談社 1680円

今年78歳を迎える著者の老境幻想小説だ。妻を亡くした99歳の男が死を前にして“最期の望み”を遂げようとする。それは女性の体毛を使った奇想天外な企みだった。性への妄執は生への執着なのか。夢と現実の狭間に浮かび上がる、過激にして清冽な物語だ。
(10.10.27発行)


野地秋嘉『昭和のスター王国を築いた男 渡辺晋物語』  
マガジンハウス 1680円

4年前の『芸能ビジネスを創った男 渡辺プロとその時代』に加筆。さらに秘蔵写真を掲載した新装版だ。渡辺が芸能プロを近代産業化した功績は大きい。またナベプロ出身の人々が芸能界を動かしてきたことも分かる。出色の昭和芸能史。
(10.10.21発行)


NHK「無縁社会プロジェクト」取材班:編著
『無縁社会~“無縁死”三万二千人の衝撃』 

文藝春秋 1400円  

NHKスペシャルで放映され、大きな反響を呼んだ秀作ドキュメンタリーの単行本化だ。長期化する不況。揺らぐ仕事や家庭。自殺率世界第2位のこの国で、引き取り手さえ不在の孤独な死が増加中だ。そんな誰ともつながれない「無縁社会」の実体を明らかにする。
(10.11.15発行)


石川輝吉『ニーチェはこう考えた』
ちくまプリマー新書 819円

 大学の教壇に立ちながら思索を続ける著者によれば、ニーチェの哲学は「うじうじした小さな人間のための哲学」である。また、「どうしたら苦しみにもかかわらず元気を出して生きられるか」を考え抜いて生まれたものだ。それはまさに現代人が抱える命題でもある。
 ニーチェを支えた柱は三つ。ギリシャ悲劇、ショーペンハウアーの哲学、そしてワーグナーの音楽だ。これら「ほんもの」の力を借りて、ニーチェは自身を開放していく。本書でその思想の歩みをたどるうちに、「自分を変えるのは自分」という覚悟が見えてくる。
(10.11.15発行)


三浦しをん『小暮荘物語』
祥伝社 1575円

 「小暮荘」は、時代から取り残されたような古い木造アパートだ。住人たちも、ちょっと不思議な人ばかり。本書は、小暮荘とその周辺で繰り広げられるウエルメイドな人間模様の連作集だ。
 二階に住む坂田繭の部屋に、突然、瀬戸並木がやって来る。修業中のカメラマンである並木はかつての恋人だが、何年も音信不通だった。今、繭は伊藤晃生とつき合っている。並木が乱入してきた時も部屋には晃生がいた。新旧の男二人が狭い部屋で向かい会う。
 同じ二階で暮らす神埼はサラリーマン。金もなく恋人もいない彼の楽しみは、階下の女子大生・光子の生態を覗き見ることだ。いつの間にか、光子本人より彼女のことを知るようになる。
その光子と仲がいいのは大家の小暮だ。妻のいる家を出て自分のアパートで暮らすこの老人には、死ぬ前に思い切りセックスをしたいという秘めた願望があった。
(10.11.10発行)


宮本徳蔵 『文豪の食卓』
白水社 1575円

 タイトル通りの本ではない。文豪は登場するが、好物料理を紹介するわけではないからだ。料理は、いわば刺身のつま。同時代作家としての回想と文芸評論が融合した、滋味溢れる文学エッセイである。
 たとえば著者が学生の頃。東大正門前の「白十字」で小林秀雄が渡辺一夫、中島健蔵などと歓談している。青年たちは離れたテーブルで珈琲をすすりながら聴き耳をたてた。話はそこから『本居宣長』に移り、宣長と著者の故郷である松坂のこと、恩師・寺田透の小林への評価、さらに小林の「直感」に関するエピソードが語られていく。
 また埴谷雄高との京都旅行の思い出も貴重品。寺だけでなく先斗町や祇園を歩く珍道中に、埴谷と三島由紀夫をめぐる逸話が加わる。他にも井伏鱒二と鰻、泉鏡花とうどん、谷崎潤一郎と葛など、“美味そうな話”が目白押しだ。
(10.10.15発行)


渋井哲也 
『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり~未遂者の声と、対策の現場から』
  
河出書房新社 1575円 

著者は長年自殺をテーマに取材を続けるフリージャーナリスト。年間3万人台という“自殺王国”の背景に何があるのかを、未遂者たちの証言から探っている。さらにネット上での自殺対策や地域で取り組むべき方策についても言及。「支え合う」社会への示唆に富む。
(10.11.30発行)


岡田邦雄 『ル・コルビュジエの愛したクルマ』
平凡社 1680円 

建築家として余りに著名なコルビュジエの創造に、新たなスポットを当てた好著。紹介される名建築以上に、クルマ社会の到来を前提とした建物や都市計画の存在に驚く。また彼が設計したマキシマムカーも、小さなボディと大きな機能を両立させたデザインが新鮮だ。
(10.10.15発行)


木原武一 『快楽の哲学~より豊かに生きるために』
NHKブックス 998円 

ギリシャ哲学からカント、そしてゲーテまで。『人生に効く漱石の言葉』などで知られる著者が挑む“快楽の思想史”だ。「幸福は状態のなかに、快楽は活動のなかにある」と著者は言う。その活動の原動力は欲望だ。満たされないものへの渇望こそが快楽へとつながる。
(10.10.30発行)











映画『リアル・スティール』は“父子物語”の佳作

2011年12月30日 | 映画・ビデオ・映像

映画『リアル・スティール』を観た。

ショーン・レヴィ監督は、確か『ナイト・ミュージアム』の人だ。


2020年、ボクシングは、生身の人間ではなく高性能のロボットたちが闘う競技になっていた。元ボクサーのチャーリー(ヒュー・ジャックマン)は、ロボットの賭け試合などで生計を立てていた。ある日、かつての恋人が亡くなり、その息子・マックス(ダコタ・ゴヨ)がチャーリーの元にやって来る。部品を盗むために忍び込んだゴミ捨て場で、マックスはATOMという旧型ロボットを見つけ、家に持ち帰ってきた。マックスはATOMをチューンナップし、試合に出場する事を決意する。


なんだか、このところ「スピルバーグがらみ」の作品を観る機会が多いような・・・

これもプロデューサーにスピルバーグが入っていて、だからかもしれなけど、基本は「父子物語」だ。

ロボットを媒介にしていて、近未来のお話だけど、軸は「父と息子の再会と再生」の映画です。

古くて新しいというか、王道というか、シンプルだけど打つものがある。

ロボットは、もう完全にそこにいるみたいで(笑)、映像は完璧だ。

いや、それより見事なのが息子役のダコタ・ゴヨ(珍しい名前だなあ)。

ありきたりとはいえ、やはり天才子役って言葉が似合う。

本当に上手い。

『マイティ・ソー』にも出ていたけど、こっちのほうが断然存在感がある。

ヒュー・ジャックマンも、「困った父ちゃん」がいい感じで板についていて。

読後感も良いです。

規模はともかく、いい意味での小品、佳作といった1本。

無理に観る必要はないけど、ヘタなものを観るよりは、ずっといいです(笑)。


『日経MJ』で、「今年のテレビCM」について解説

2011年12月29日 | メディアでのコメント・論評

『日経MJ(日経流通新聞)』に、「2011年テレビCMトップ10」という記事が掲載された。

広告効果について、識者12人に対する調査を行った結果だ・・・・


「笑顔ある日常へ」応援

東日本大震災が襲った2011年、「日常」や「つながり」がテレビCMのキーワードになった。日経MJが識者12人に実施したアンケートで、最も企業の売り上げに貢献したCMは、震災による自粛ムードがまん延するなか、「日常に戻ろう」というメッセージをユーモラスに表現したエステーの「消臭力」。九州新幹線の全線開通を祝う人たちの笑顔をつないだ九州旅客鉄道(JR九州)のCMも高い評価を得た。

<2011年テレビCMトップ10>

1位 消臭力(エステー)
2位 iPhone(アップル)
3位 九州新幹線(JR九州)
4位 SoftBank(ソフトバンクモバイル)
4位 au(KDDI)
6位 ソウルマッコリ(サントリー酒類)
6位 チキンラーメン(日清食品)
6位 「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」(サントリーHD)
9位 エコ家電(日立アプライアンス)
10位 ユニクロ(ファーストリテイリング)


仕掛け多彩に参加型磨く

2011年はCMがインターネットと連動することで、エンターテインメント性に磨きをかけた年だった。味の素は約40年の歴史を持つ長寿ブランド「クノールカップスープ」の活性化に成功。江崎グリコのCMから飛び出した仮想アイドル「江口愛実」にも注目が集まった。視聴者との双方向性をいかに高めるかがCMの作り手の腕の見せどころだ。


・・・・この特集記事の中で、今年のテレビCMに関して、解説をしています。

震災機に価値を再評価

リーマン・ショック後の広告費の減少傾向と、今回の東日本大震災。テレビCMを取り巻く環境は大きく変わろうとしている。テレビ事情に詳しい上智大学新聞学科の碓井広義教授に、今後の展望などを聞いた。

――震災がCMに与えた影響は。

「消費者は震災前、CMは番組の合間に流れる空気のような存在とみなしていた。震災で状況が一変。テレビ画面から企業の広告が消えたことで、消費者はCMの価値を再評価した。つまり、消費者にとってCMとは、何かを発見するきっかけであったり、笑いをもたらしてくれる存在でもある。癒しを与えてもらった人もいるだろう」

――CMの作り方は変わったか。

「CMの作り手は商品情報にとどまらず、時代の空気も作品のなかで表現する。震災後のCM制作のキーワードは月並みだが『つながり』『絆』だろう。家族のありがたみなど当たり前に思っていたことが、当たり前ではないということを震災で気づいた消費者は多いだけに、この傾向はしばらく続くはずだ」

――テレビの広告費は長期的に減少傾向だ。

「優れた作品はテレビでの放映件数が少なくとも、動画サイトや交流サイトを通じて人気が広がっていく。好例が(アンケートで3位になった)九州限定放映の新幹線開通CMだ。日本では無名のポルトガル人の少年を起用した(1位の)エステーも、広告費以上のインパクトを視聴者の与えた。広告費をかければ良いという傾向が弱まっているだけに、この流れは止まらないだろう」

(日経MJ 2011.12.28)




AKB48の“少女力”

2011年12月29日 | 「東京新聞」に連載したコラム

『東京新聞』に連載しているコラム「言いたい放談」。

年内最後の掲載分では、AKB48について書きました。

AKB48については、できれば今年中に一度書いておきたかったのです。

いわゆる「AKB商法」を含め、色んな側面があるのは承知の上ですが(笑)、彼女たちが“期せずして”体現しているものがあるように思っていたので、その一端に触れてみました。


AKBパワーの謎は

今年、AKB48が発売したシングル五作はすべてミリオン、つまり百万枚を突破した。五作連続は一九九九年にGLAYが達成して以来の記録だ。

CDが売れない時代に、なぜAKB48は快進撃を続けられるのか。その人気の背景に何があるのか。

AKB48最大の強みは過剰ともいえる人数の多さだ。一人一人は普通の女の子だが、チームとしてのパフォーマンスには元気と明るさ、そしてプロにもかかわらずアマチュア的健気さがある。

またグループ、ユニット、ソロと多彩な組み合わせが可能で見る者を飽きさせない。そこに劇場公演、握手会、総選挙、ジャンケン大会なども加わり、「AKB48というシステム」が構築されているのだ。

だが、彼女たちが発するエネルギーには、エンターテンメント・ビジネスの論理だけでは説明できないものがある。

多分それは集団が生みだす“少女力”みたいなものだ。神楽を舞い、神託を伝えた古来の巫女たちが持っていたような力。

オーバーに言えば民俗学の柳田國男が「妹(いも)の力」で書いた、女性だけが持つソウルフルなパワーかもしれない。しかもその力は少女時代という期間限定で発揮される。

彼女たちもファンもそのことを無意識に知っており、同時代を共生しようとしているのではないか。そんなことを思うと、来年も目が離せない。

(東京新聞 2011.12.28)

神保町で、「冬休み本」の仕入れ(?)

2011年12月28日 | 本・新聞・雑誌・活字

新聞のコラムや時評、週刊誌の書評など、年内に書くべき原稿の仕事がすべて終わった。

おつかれさま、ワタシ(笑)。

そこで、この冬休みに読みたい、書評や仕事とは無関係の本を仕入れに、神田神保町へ。

九段下で地下鉄を降り、ゆるゆると歩きだす。



地上に出れば軍人会館、いや九段会館がそびえている。3月11日の震災では、天井が落ちて人が亡くなった。合掌。

この界隈をのんびり歩くのも久しぶりだなあ、と思いつつ神保町エリアに入っていく。



神田古書センター、田村書店、小宮山書店、少し回りこんで三茶書房。

結局、学生時代から立ち寄ってきた店に、いつも寄るわけです。

すずらん通りに入って、最初のお宝あり。



三省堂書店裏側の小さな広場のワゴンというか出店で、大量の三島由紀夫を発見してしまった。

何とほとんどが初版で、しかもいずれも1000円以下と安価なのだ。

さあ、大変(笑)。



入手したのは・・・・



『沈める瀧』中央公論社(昭和30年4月 初版)


『美徳のよろめき』講談社(昭和32年6月 初版)


『音楽』中央公論社(昭和40年2月 初版)


『対話・日本人論』番町書房(昭和41年10月 初版)


『わが友ヒットラー』新潮社(昭和43年12月 初版)


『命売ります』集英社(昭和43年12月 初版)


『対談集 源泉の感情』河出書房新社(昭和45年10月 初版)


『新潮 三島由紀夫読本』新潮社(昭和46年1月臨時増刊)


『蘭陵王』新潮社(昭和46年5月 初版)


『わが思春期』集英社(昭和48年1月 初版)


・・・・それぞれの本の感触に、時代がフリーズドライされているようで。

さらに、オマケのように(笑)、大江健三郎の初版も1冊見つけてしまった。


大江健三郎『日常生活の冒険』文藝春秋(昭和39年4月 初版)


勢いに乗って、そのまま三省堂第2アネックスビルに入り、エレベーターで5階の神保町古書モールへ。

ここでは開高健の、やはり初版本に遭遇してしまう。

1冊500円となっていて、それでも十分なのに、さっき三島本を購入した際に「御買物券」400円分をプレゼントされたので、名作2冊を計600円にて入手。

何だか開高さんに悪いみたいだった(笑)。


開高 健『夏の闇』新潮社(昭和47年3月 初版)


開高 健『ロマネ・コンティ・一九三五年』文藝春秋(昭和52年5月
初版)

かなり重くなった手提げ袋を持ちながら、すずらん通りを歩き出したのだが、ボヘミアンズ・ギルドでストップ。

店先の棚に「みすず書房」の本がどっと並んでいたのだ。

岩波書店の岩波茂雄や筑摩書房の古田晃などと同じく、みすず書房創業者である小尾俊人もまた、わが故郷・信州の生まれ。

「みすずかる信濃の国」なのです。

ま、それはともかく、みすず書房も良質の本が多いのだが、基本的には結構いい値段(笑)であり、学生時代には、そう簡単に手が出せなかったのを思い出す。

で、この“みすず棚”で見つけたのが、中野好夫の以前から気になっていた2冊だ。各300円也。


中野好夫『酸っぱい葡萄』(昭和53年10月 2刷)
中野好夫『人は獣に及ばず』(昭和57年6月 初版)

・・・・ということで、本日の“仕入れ”は終了。

大収穫に満足し、両手のずっしりとした重みと共に、地下鉄の駅へと向かいました。

やはり“古書ワンダーランド” 神保町は楽しい(笑)。

「家政婦のミタ」の40%、実はすごい数字

2011年12月28日 | テレビ・ラジオ・メディア
            (「国民的行事」だった最終回)

読売新聞「YOMIURI ONLINE」で、田中聡記者が書いた「今を読む」を読む。

ドラマ「家政婦のミタ」に関する分析だ。

文中、先日この最終回について、読売新聞でコメントしたものが引用されていました。

田中さんが言う通り、40%って確かに「すごい数字」なのです。


「家政婦のミタ」に見る日本人の現状
40・0%、というのはすごい数字なのである。

何がって? 21日に日本テレビ系で放送されたドラマ「家政婦のミタ」最終回の視聴率のことだ。この2、3回、20%台の後半を記録していたから、最終回で30%は超えるだろうとは思っていたが、まさかここまでとは。

民放ドラマ視聴率の40%超えは2000年、キムタクと常盤貴子が共演した「ビューティフルライフ」以来。つまり21世紀に入って初めての出来事、今世紀最大のヒットなのである。

40%超えがどのくらいすごいのか。過去5年間の全番組の視聴率と照らし合わせながら、もう少し細かく説明しよう。ちなみに数字はビデオ・リサーチ社、関東地区のデータを基にしている。

期間中、この大台をクリアした番組は、「ミタ」をのぞくと9本しかない。まず3本は大みそかの「紅白歌合戦」(2008年=42・1%、2009年=40・8%、2010年=41・7%)である。

残り6本は、すべてスポーツ中継だ。4本が昨年のサッカー・ワールドカップの日本戦(パラグアイ戦の第一部=57・3%、カメルーン戦後半=45・5%、オランダ戦=43・0%、デンマーク戦=40・9%)。

残り2本は2009年のワールド・ベースボール・クラシックの日本対韓国(40・1%)と同年のボクシング、内藤大助対亀田興毅(43・1%)。

同じサッカーでも今年あったアジアカップでは、準決勝の韓国戦35・1%、決勝のオーストラリア戦33・1%、と注目度が一枚下がる。ブームになった「なでしこジャパン」の最高は、五輪予選の韓国戦の後半、29・0%。

お母さんを亡くしたばかりの浅田真央ちゃんが優勝した25日の全日本フィギュアスケート選手権が26・7%。2008年の北京五輪開会式が37・3%……。

つまり、「家政婦のミタ」がたたき出した数字は、オリンピックやアジアカップを超えて、WBCやワールドカップに匹敵する。それは日本人にとって、「国民的行事」であったことを意味するものなのだ。

では、なぜこんな数字が出たのか。

24日の読売新聞夕刊で、上智大学の碓井広義教授は「最終回の視聴率が30%を超えるかどうかがインターネット上などでも話題になっていた。ドラマを見ないと言われる若い人たちが、話題のイベントに参加するような気持ちで視聴したのではないか」と分析している。

実際、フェースブックやツイッターでの情報拡散は、かなり派手だったようだ。話題が話題を呼んで、本来の力よりも1、2割増の数字が出たことは、容易に想像がつく。


ただ、その「水増し」部分をのぞいても、「家政婦のミタ」があげた数字は非常に高い。11月30日に記録した29・6%という視聴率は、件の最終回をのぞいても年間4位にあたる。ベースとなる人気はどこから来ているのか、を探らないと、「国民的話題」の根本は理解できないだろう。

崩壊しかかった家庭に、ロボットのように無表情な家政婦が入り込み、与えられた無理難題を顔色も変えずにこなそうとする――。このドラマのエッセンスを簡単に言うと、こんな風になるだろうか。

そこに現代社会のメタファーを見いだし、心理的なリアリティーを感じたからこそ、視聴者はこのドラマを見続けていたに違いない。

筆者が見たのはホンの数回に過ぎないが、印象に残ったのは異様に平板な画面と寒々しい雰囲気である。それはまるで今年、あちこちで聞かれた「絆」という言葉とは裏腹の、人間関係の希薄さと、それに対する不安と焦燥を象徴しているようだった。

仮面をかぶったような「ミタ」の顔。その裏側に、ひそかに人間関係に悩む日本人の現状が見えた気がするのは、私だけだろうか。

(読売新聞 2011.12.27)

テレビ界、この1年の総括

2011年12月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「TV 見るべきものは!!」。

今回が年内最後の掲載なので、この1年をざっくり総括してみました。


テレビの劣化
一層進むのか、下げ止まるのか


2011年のテレビ界を振り返ると、あらためて3月11日の東日本大震災が大きな出来事だったことがわかる。

単純な話だが、停電すればテレビ自体はただの箱にすぎない。肝心なときに必要な情報をどう伝えるのか。

また原発報道では政府や電力会社が発表する情報をそのまま流す「発表報道」の限界も見えた。

テレビというメディアの存在意義や、意味さえ問われた1年だったと言える。

ドラマでは最後に話題を総取りしたのが日テレ「家政婦のミタ」だ。

震災以後、家族という当たり前の存在の大切さが見直された。

ミタ(松嶋菜々子)というミステリアスな“異形の者”を一般家庭に放り込むことで、家族の絆を浮き彫りにしたのだ。

今年は他にもフジ「それでも、生きていく」、TBS「生まれる。」、テレ朝「11人もいる!」など家族とその再生をテーマとしたドラマが目立った。

一方今年のバラエティは昨年以上の低迷が続く。

制作費削減は視聴者にもバレバレ。

お笑い芸人やタレントをスタジオに集めてのクイズや、「衝撃映像」と称する海外からの買い付けモノの羅列で何本もの特番が作られた。

昨年まで大活躍だった池上彰さんの露出が減ると同時に、知的エンターテインメント番組も激減したことが情けない。

さて来年。テレビの劣化は一層進むのか、それとも下げ止まるのか。

(日刊ゲンダイ 2011.12.26)

今週の「読んで(書評を)書いた本」 2011.12.26

2011年12月26日 | 書評した本たち

新潮文庫Yonda?CLUB事務局から、待望の「ジッパー付きブックカバー」が届いた。

「新潮文庫」の三角マークを20枚集めて応募すると、全員がもらえる
という景品だ。

ハサミで応募マークを切り取り、用紙に貼って、ポストに入れてから、
だいぶ経つのだが、ようやく入手。

鮮やかなオレンジ色と感触が、なかなかいい。

私にとっては、結構嬉しい“クリスマス・プレゼント”(笑)でした。






今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通りです。


平松洋子 『野蛮な読書』 集英社

佐藤愛子 『これでおしまい~我が老後』 文藝春秋

久世光彦 『歳月なんてものは』 幻戯書房

小田嶋 隆 『その「正義」があぶない。』 日経BP社 

キネマ旬報社:編 『シネアスト 相米慎二』 キネマ旬報社



* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』(12月29日号)
  に掲載されています。



お茶目な「将棋講座」

2011年12月26日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日(25日)、NHK・Eテレ「将棋講座」を見て驚いた。

いきなりサンタが2人、立っていたのだ(笑)。

聞き役のつるの剛士だけでなく、講師の棋士もこの格好。

オンエアの日曜がクリスマスってことで、お茶目したわけだ。

やってくれるもんです(笑)。

出演した『広告の番組』、無事オンエア

2011年12月25日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日24日(土)の昼、出演した『広告の番組』(テレビ東京)が、無事オンエアされました。

唐橋ユミさんは、評判のメガネがチャーミング(笑)。

その司会ぶりは丁寧かつナチュラルで、とても話しやすかったです。

また、収録から放送までが近かったから、制作陣は大変だったと思います。

全体が20分という番組の中で、15秒ならぬ90秒といった“長尺CM”が何本も流れたので、スタジオでのトークは大幅に圧縮され、話をしたうちのごく限られた部分が使われていました。

これは、まあ、そういうものです(笑)。

見てくださった知り合いの皆さんから、感想メールを何本も頂戴しました。

その一部を以下に転載させていただきます・・・・

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九州新幹線のCMは、もう何回も見ているはずなのに、今日見ても、また涙が出そうになります。年老いたので涙腺が緩いせいもあると思いますが、あのCMにはクリエイティブの原点があるように思います。「演出」とは本当はどうあるべきなのか。「伝える」とは本当はどうあるべきなのか。今の時代に問いかけている事柄が多いCMだと思います。

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「広告の番組」、見させていただきました。今年のグランプリは「九州新幹線全線開業」だろうなぁと思ってました。ネットの力は大きいですね。東北新幹線・青森開業のシリーズCMも良かったです。JRは企業としてはどうかと思いますが、CMはいいですね。ドコモの「森の木琴」もいいCMですよね。ドコモのCMといえば、有名俳優をそろえて、これ見よがしな割につまらないドラマ仕立てのものが目立ってうんざりしますけど、これはいいですね。東京ガス、大和ハウスのCMは、オチがなんとなく読めてしまうんだけど、引き込まれてウルっときてしまう。うまいなぁと見入ってしまう。先生のおっしゃっていた「人の気持ちに訴える 気持ちを動かすCM」がキーとなるとのお話、同感です。ただ、あまりに番組が短い!もう少しお話をうかがいたかったんですが…。ものすごく削っていますよね。もったいない。1月7日もあるというので必ず見ます。

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広告って、時間が短い分、凝縮された表現ですね。鋭くも柔らかいまなざしのコメント、勉強になりました。番組は妻と一緒に見ていたのですが、妻曰く、JR九州のCMは、20年くらい前に、英国国有鉄道で似たCMがあり、NTTドコモの森の木琴は、パイオニアの昔のCMの換骨奪胎ではないかと言っておりました。私はどちらも知らなかったのですが、本歌取り、というものなら、おもしろいですね。

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セゾングループやサントリーが華々しく「作品」を流していた時代を知るだけに、昨今のCMの存在感の薄さには、ある種の感慨を抱いていますが、録画視聴で飛ばされかねない時代だからこそ、企業としてのメッセージを込めた(80年代とは別の)「作品性」が必要なのだろうと思います。番組でも紹介されていた東京ガスのお弁当などが好例ですね。私はエステーや西友のやり方が好きです。

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グランプリの九州新幹線のCMで、いきなり涙腺が緩みました(笑)。もしあのとき、あのタイミングで見ていたらもっと気持ちが高ぶっていたかもしれません。次回の放送も楽しみに見させていただきます。

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・・・・皆さん、ありがとうございました。

というわけで、次の私の出演は、年明け最初の1月7日(土)放送分になります。

次回は、もう少しトーク部分が出てくるかと思われますので(笑)、引き続き、よろしくお願いいたします。





<参考>
『広告の番組』WEBサイト:
http://www.tv-tokyo.co.jp/koukoku/

『家政婦のミタ』最終回について、「読売新聞」でコメント

2011年12月25日 | メディアでのコメント・論評

『家政婦のミタ』の最終回、“驚異の40%”に関する記事が、「読売新聞」に掲載されました。

年末に飛びだした大記録。

この記事の中で、高視聴率の背景についてコメントしています。


なぜ40%「ミタ」
「ネットで話題」「家族の絆に関心」


日本テレビ系の連続ドラマ「家政婦のミタ」が、21日の最終回で40・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という高視聴率を記録した。15%がヒットの目安とされる昨今のテレビドラマでは異例の数字だ。

「家政婦――」は、崩壊寸前の家庭に派遣された家政婦を主人公にしたホームドラマ。主人公の三田(みた)灯(あかり)を松嶋菜々子さんが演じた。派遣先の家族の非常識な依頼を無表情で遂行する三田のキャラクターが人気を呼び、「承知しました」というセリフは流行語となった。

10月12日の初回は19・5%と好スタートを切り、5話目で22・5%を記録した後は20%台を維持。最終回で一気に上昇した。民放ドラマの視聴率が40%台に届いたのは、2000年のTBS系「ビューティフルライフ」以来11年ぶりだ。

高視聴率の背景を、上智大学文学部の碓井広義教授(メディア論)は、「最終回の視聴率が30%を超えるかどうかがインターネット上などでも話題になっていた。ドラマを見ないと言われる若い人たちが、話題のイベントに参加するような気持ちで視聴したのではないか」と語る。

作品内容について、日本大学芸術学部の上滝徹也教授(テレビ文化史)は、「東日本大震災以来、家族の絆がクローズアップされた。『マルモのおきて』(フジテレビ系)や『おひさま』(NHK)が好調だったように、ホームドラマへの関心が高まっていた」と分析する。

「何が正しくて何が悪いのか分からない時代に、信念を貫くキャラクターは鮮烈な存在。三田が笑顔を封印した理由は何かというサスペンス的な興味も、視聴者を引きつけたのでは」とみている。

(読売新聞 2011.12.24)


クリスマス・イブ

2011年12月24日 | 日々雑感

今日は12月24日。

クリスチャンじゃないけど(笑)、クリスマス・イブだ。

今年もまた、東京のクリスマスに雪はない。

毎年この時期に、我が家の玄関の窓に立ってくれる、2体の雪だるま。

外から帰った時、ちょっと嬉しくなります。


<直前予告>明日24日(土)の「広告の番組」に出演します

2011年12月23日 | テレビ・ラジオ・メディア

明日24日(土)、テレビ東京「広告の番組」にゲスト出演します。

放送は、昼12時05分~12時25分。

テレビ東京系全国ネット。

「この1年の広告を振り返る」という特集で、司会の唐橋ユミさんを相手に、あれこれお話させてもらいます。

今年最大の話題作「祝!九州縦断ウエーブ特別篇」(JR九州)の180秒ロングバージョンも、丸ごとお見せしちゃいますぞ(笑)。

ぜひ、ご覧下さい。



<このブログでの関連記事>

テレ東らしい意欲的な新番組「広告の番組」
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/733546c5a9a4e4fb64a5ad4798f8656e

“参加型イベント”となった「家政婦のミタ」最終回

2011年12月23日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日(木)、研究室にいたら新聞社から電話が入った。

「家政婦のミタ」最終回の視聴率が40%だった、というのだ。

おお、そりゃすごい。

35%くらいは行くかも、と予測していたが、それを大きく上回る数字だ。

何しろ・・・

現行方式の調査を始めた1977年9月26日以降、NHKの大河ドラマや時代劇などを除いた「一般劇」の中では日本テレビ系「熱中時代」最終回と同率の歴代3位となった。1位は83年3月放送のTBS系「積木くずし・親と子の200日戦争」最終回の45.3%、2位は2000年3月放送の「ビューティフルライフ」最終回の41.3%。
(日経新聞 2.11.12.22)


・・・・ふーん、歴代3位ときたか。

日テレは、さぞ大喜びだろう。

だって、このおかげでフジテレビをかわして、年間視聴率1位をゲットできる可能性が強まったわけで、それは営業収入に露骨に反映される。大きな利益につながる。

聞けば、昨日は日テレの社員食堂はタダ!だったそうだ(笑)。

で、新聞社の記者さんからコメントを求められた。

話したポイントはひとつ。

最終回は、期せずして“イベント”になっていた、ということだ。

録画して見てきた人たちが、最終回をリアルタイムで見て、「噂の30%超え」に立ち会う気になったこと。

それまで熱心に「ミタ」を見ていなかった人たちも、ここ何週間かの「高視聴率」報道(騒動?)によって、最終回には参加してみようと思ったこと。

テレビ放送という「現場」にリアルタイムで参加。

つまり、この最終回の放送自体が、見事な「参加型イベント」になってしまったのだ。

学生たちも、ツイッターやフェイスブックでの「ミタ」関連がすごかったです、と言っていた。

前日から当日にかけて、「明日の最終回が楽しみ」とか、「今日は家に帰ってミタを見るよ」とか、すごい数の書き込みが飛び交ったのだ。

日テレは、「最後だけでも見ておこう」という駆け込み組にも、午後9時からの「特別版」で対応。それに続く最終回本編へと誘導していった。

いやはや、それにしても40%。

テレビ業界にとっては、久しぶりで景気のいい話となりました(笑)。