おかげさまで、
街の本屋さんや
ネット書店などで
品切れが続いている、
『少しぐらいの嘘は大目にー向田邦子の言葉』。
現在、
新潮社さんが
大急ぎで
「増刷中」とのことです。
お待たせして
すみませんが、
どうぞよろしく
お願いいたします。
碓井 広義
おかげさまで、
街の本屋さんや
ネット書店などで
品切れが続いている、
『少しぐらいの嘘は大目にー向田邦子の言葉』。
現在、
新潮社さんが
大急ぎで
「増刷中」とのことです。
お待たせして
すみませんが、
どうぞよろしく
お願いいたします。
碓井 広義
「イチケイのカラス」は
堅物エリート裁判官・黒木華の存在が光る
月9「イチケイのカラス」(フジテレビ系)は刑事裁判官を主人公とする、初の民放連ドラだ。
第1の魅力は型破りな裁判官、入間みちお(竹野内豊)にある。ヒゲを生やし、黒い法衣のままで外を歩き、法廷の法壇から降りて被告や証人に語りかける。組織のルールからは逸脱だ。
しかも公判中に気になること、納得できないことがあると、迷わず「職権を発動します!」と宣言。自ら現場検証を行うのだ。確かに、こんな裁判官、見たことがない。
しかし、その型破りのおかげで裁判官が最も警戒すべき、冤罪を避けることができる。我が子を虐待して「乳幼児揺さぶられ症候群」を発症させたと疑われた母親(前田敦子)の名誉を回復したり、愛する者を守るために殺人の罪をかぶろうとしていた男(岡田義徳)を救ったりしていくのだ。
真実が明らかになるラストまでの過程がよく練られており、事件の当事者だけでなく、裁判官たちの人間模様も丁寧に描かれている。
中でも入間の暴走にやきもきする、堅物エリート裁判官の坂間千鶴(黒木華)の存在が光る。本来は否定すべきだが、つい「入間劇場」に巻き込まれてしまう、千鶴の心境の変化も見どころのひとつだ。
飄々としていながら強い信念を持つ入間を演じる竹野内。同じ月9の「ビーチボーイズ」から約25年が過ぎ、何ともいい味の中年俳優になった。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.04.28)
木俣正剛『文春の流儀』
中央公論新社 1980円
最近、出版社についての書籍が立て続けに出ている。森功『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』は新潮社。魚住昭『出版と権力 講談社と野間家の一一〇年』は講談社。そして柳澤健の『2016年の週刊文春』が文藝春秋である。いずれも読み応えのあるノンフィクションだ。
本書の舞台もまた出版社だが、その趣きはかなり異なる。著者は文藝春秋の元役員だからだ。しかも『週刊文春』と『文藝春秋』の編集長を経験している。内部にいた当事者だからこそ語り得るエピソードが、この回想記の持ち味だ。
たとえば著者が『週刊文春』副編集長だった1997年に起きた、神戸の連続児童殺傷事件。「酒鬼薔薇聖斗」と名乗った少年Aの両親の取材を志願したのは27歳の女性記者だった。両親の隠れ家を見つけ出し、取材依頼の手紙を手渡すためにレンタカーで張り込む。やがて面談にこぎつけるが取材は拒否された。
しかし彼女は「サイコパス=精神病気質」の観点から新たな少年像を提示し、両親の説得を続ける。『「少年A」この子を生んで』という手記の完成まで1年かかった。「口を開かせるのは人間力だけです」と著者。現在、この女性記者は『週刊朝日』で編集長を務めている。
一方、著者は自身の失敗についても明かしていく。『週刊文春』時代の「責任を免れない記事」として挙げるのは、美智子皇后バッシング事件(93年)、JR東日本の駅構内キオスクの『週刊文春』販売拒否事件(94年)などだ。それらの経緯と反省も踏まえ、文春の本来の姿は「常識の番人」であるべきだと断言する。
ライバルの『週刊新潮』が「見識」を示すメディアであるなら、文春ジャーナリズムは「常識」を語るメディアでありたいと言うのだ。
筆を向ける相手は弱者より強者。記者の正義感より読者の共感。そんな著者の信念が、次代の書き手にも継承されることを願いたい。
25日(日)の「TBSレビュー」、
テーマは
「がっちりマンデー!!」〜経済バラエティを考える
でした。
以下は、
お話させていただいた内容の概要です。
経済番組の難しさについて、碓井は「経済とお金がらみの部分で、お金について語ることは品がなく、恥ずかしいと刷り込まれている部分がある。だから、そういうハードルを超えていく難しさがある」
ここで、「がっちりマンデー!!」がどのような番組なのか、ある企業の儲かる秘密を紹介する社長さんシリーズが流れた。この日、取り上げた「オイシックス」とは食品の宅配会社だ。
会社の要の一つとして野菜のバイヤーが紹介された。この会社では購入だけでなく、生産者と野菜の開発も手掛ける。
この番組のプロデューサーである大松さんは、番組のコンセプトを聞かれ「もともとは儲かっている人に学ぼうというコンセプトだった。どうやったら楽しく分かりやすく興味を持って見てもらえるのか考えて、”儲かる”をキーワードに番組を作ってる」
また、番組制作については「裏側にある会社や社長の考え方が伝わるように心がけている」。
この番組について、碓井は「番組全体が基本的には成功物語だと思う。成功物語は見ていて気持ちいいし明るい気分になれるので、それが大きいと感じた」
続いて紹介するのは、マニアックな製品や身近なものを扱う事業などにスポットを当てる儲かるビジネス。
取材やリサーチについて聞かれると、大松さんは「ネットとかで出てこないこともあるので、国会図書館に行ったりとか専門的な業界紙みたいな所に資料を見たりとかして探してくる」
これに、碓井は「この番組を見ていて感心することが2つある。1つは視点。ものの見方みたいなものを提示してくれる。あと1つはキャッチコピー。例えば、誰もが見たことあるけど中身は知らないであったり、名前が分からないけど儲かってるぞみたいな、これから見せようとしているものがどういうものなのか上手いキャッチコピーで示してくれる」
大松さんは「がっちりマンデー!!」の展望について、「ソフトバンクやトヨタなど、まだ番組に出ていない会社などもあるため、番組としてぜひ取材したい」
経済バラエティの今後について、碓井は「色々な社会現象は経済問題に関わっている」とした上で、「日曜日にヒントをもらって月曜日に動き出せるコンセプトを評価するとともに、そういった視聴者の好奇心にこれからも応えてほしい」と話した。
豊田アナ、大松プロデューサーと
「TBSレビュー」
2021年4月25日(日)
あさ5時40分〜6時00分
テーマ:「がっちりマンデー!!」〜経済バラエティを考える〜
毎週日曜朝に放送の「がっちりマンデー!!」は、バラエティの要素を取り入れ、経済をわかりやすく、楽しく伝えるをモットーに、17年続く番組です。制作責任者に話を聞き、経済バラエティについて考えます。
<出演>
碓井広義(メディア文化評論家)
大松雅和 (「がっちりマンデー!!」プロデューサー・総合演出)
キャスター:
豊田 綾乃 (TBSアナウンスセンター)
番組サイトより
23日(金)のNHK「あさイチ」で、
『少しぐらいの嘘は大目にー向田邦子の言葉』(新潮文庫)が
紹介されました。
書評家の永江朗さんがオススメする、
「誰かに贈りたくなる本」の1冊です。
以下は、
スタジオでの解説やトークの採録です。
***********
上條アナ 続いては脚本家、エッセイスト小説家として、皆さんご存じの向田邦子さんのことばを集めた作品です。
「少しぐらいの嘘は大目に」。
この本のおすすめポイントは何ですか?
書評家・永江朗さん 向田さんは亡くなってからことしで40年になるんです。あっという間に40年が過ぎてしまいましたが、いまだに、向田ドラマ、それからエッセーは忘れられない、読み返してみたいなと思いますけど。
評論家の碓井広義さんが、ドラマのプロデューサーもなさっている方ですけれど、碓井さんが、これまでの向田さんのさまざまな作品の中から、名言、名ぜりふ、名シーンを集めて、ハンディーな文庫本に、まとめました。
これがね、いいことばが、いっぱい出てくるんですよね。
例えば、
「結婚というのは7年じゃだめなのね」
「完全な家庭というものがあるはずがない」
何かかみしめると、いろいろな味が出てくることばがたくさんある、すてきな本です。
上條 男女関係だけじゃなく、仕事や生き方など、身の回りのちょっとしたことを描いた、ことばもたくさん載っていて、気付きをもらったり共感をしたり、気に入ったことばを探しながら読むのも楽しかったです。
その中から、ご紹介したいことばがあります。
「パックをしている時だけは女は鏡を見ない。その代りに、心の目を開き、わが心の中のうぬぼれ鏡を見ているのである。」
上條 西さんどうですか?
スタイリストの西ゆり子さん 全くそのとおりだと思います。
大吉 うぬぼれ鏡ですか。
西 パックをしているときは確かに鏡を見ないなと。過去を見るとうぬぼれますよね。若さがあったし、こんな感じだったしで、うぬぼれ鏡を見ているんですね。でも、それも大事。
大吉 いい鏡ですから大事にしましょう。
上條 すてきなことばがたくさん載っています。
***********
永江さん、西さん、「あさイチ」レギュラー陣の皆さん、
ありがとうございました!
明日23日(金)の
NHK「あさイチ」で、
『少しぐらいの嘘は大目にー向田邦子の言葉』が
紹介されるそうです。
詳細は
分かりませんが(笑)、
ありがたいことです。
ぜひ、ご覧ください!
ついに民放ドラマ初主演!
ドラマ25「ソロ活女子のススメ」
(テレビ東京系)
江口のりこの快進撃が止まらない。「半沢直樹」の国交相はもちろん、「その女、ジルバ」や「俺の家の話」などでも存在感を示してきた。「ソロ活女子のススメ」(テレビ東京系)で、ついに民放ドラマ初主演だ。
五月女恵(江口)は出版社の契約社員。仕事が終わると即退社する。一人で好きな場所に行き、一人で好きなことを楽しむ「ソロ活女子」なのだ。
このドラマ、実在のモノやコトに架空の人物がからむ、「孤独のグルメ」の流れだ。ただし、対象は食堂、サウナ、キャンプなどの「単品」ではない。恵が訪れる場所や体験は実に多彩だ。ひなびた動物園でイヌワシだけを眺める。プラネタリウムで高原の天体観測を疑似体験する。さらにラブホのスイートのような部屋で一人、まったりと過ごしたりもする。
ソロ活では、カップルなど他者の目が気になるものだ。しかし、恥ずかしいと感じるのは、自分が勝手にイメージする、他者のリアクションが原因だ。実際は、女一人であっても客として平等に扱われるし、他の客もこちらに関心などない。自分を制限していたのは自分だったのだ。
同僚がウンチクを語る。「それ、どこの情報?」と恵。「ネットですけど」と言われて、「だろうね」と恵。この「だろうね」というセリフのニュアンスを、これほど的確に表現できる女優、そうそういるものではない。
(日刊ゲンダイ 2021.04.21)
『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)、『おんな太閤記』(NHK)などいくつもの名ドラマを世に送り出した橋田壽賀子さん(享年95)が旅立った。市井に生きる女性に焦点を当てたドラマはお茶の間に愛され、なかでも大きなヒットとなったのが『おしん』(NHK連続テレビ小説)だろう。
平均視聴率は52.6%、最高視聴率は62.9%とテレビドラマ史上最高視聴率を誇り、日本国内のみならず海外60か国以上で放送された。なにより、1983年の放送から約40年が経ったいまでも作品の魅力は色褪せることはなく、まさに国境も時代も超えた名作。その名作に橋田さんはどんな「人生哲学」を込めたのか。
『おしん』が放送されたのはバブル景気直前。もはや戦後、ではもちろんなく、人々は好景気に浮かれていた。そんな時代になぜ、明治から戦中、戦後の苦労がブームになったのか。少女時代のおしん役を演じた小林綾子は橋田さんの言葉をこう振り返る。
「先生は、“高度成長の時代に、どんどん豊かになっているけれど、それとは逆に大切なものを忘れているのではないか”とおっしゃっていました。それを見つめ直すために『おしん』を書かれたそうです」。物にあふれ満たされているはずなのに、心が貧しくなっているのではないか、と危惧していたという。
お金を払えばなんでも手に入る時代だったからこそ『おしん』が生まれたと話すのは、メディア文化評論家の碓井広義さんだ。
「どこかでみな、“本当にこれがずっと続くのかな?”“これでいいのかな?”と無意識の不安感のようなものがあったのではないかと思います。この好景気があるのは誰のおかげか。明治、大正、昭和の時代に苦労を重ねてきた先人たちがあってこその“いま”であることを忘れていませんか?というメッセージだったのだと思います。
反戦・平和思想を強く持たれていた橋田先生ですから、戦争を引き起こす物質的な豊かさを追い求めるのではなく、心の豊かさ、心の平和の大切さを訴えていたのでしょう。誠実に生きるおしんの姿がそれを見せてくれていると思います」。
髪結いとして働いているときに出会った田倉と結婚したおしんだが、その後も苦労の連続。子供を抱えながら働く姿は、当時注目されていた“女性の社会進出”を体現していた。
「それは決して社会的になにかリーダーになるとかではなくて、一市民として生きる女性が堂々と自分自身を確立していくプロセスです。浮かれた時代に、女性というのはどーんと構えて地に足がついているんだ、ということも伝えたかったのだと感じます」(前出・碓井さん)。
男だらけの映画・脚本の世界にたったひとりで挑んだ橋田さん。苛烈なパワハラを受け、イヤというほど理不尽を味わったというが、「お茶くみをするために会社に入ったわけではない」と啖呵をきって10年勤めた松竹を辞めたとき、橋田さんの胸にあった信念こそ「私は、私の道を行くしかない」だったのだ。
バブル崩壊、不況、震災、そしてコロナ禍と、暗く先の見えない時代に何度でも『おしん』に励まされるのは、「命以外すべて失うことを何度経験しても、人のせいにせず、自分自身の力で立ち上がる。その姿に勇気をもらう」(前出・碓井さん)からではないか。
(女性セブン 2021年4月29日号)
富良野 2021
願はず、
わしらず(あくせくせず)、
ただ静かなるを望みとし、
憂へ無きを楽しみとす。
鴨長明 『方丈記』