碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「大河」の王道感あり

2018年02月28日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評



しんぶん赤旗のリレーコラム「波動」。

今回は、NHK大河ドラマ「西郷どん」について書きました。


「大河」の王道感あり

昨年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」は題材選びに疑問があった。女性が主人公の時代劇は難しいのだ。「八重の桜」(2013年)は新島襄の妻。「花燃ゆ」(15年)が吉田松陰の妹。歴史上の人物を支えた立派な女性たちだが、大河としては不発だった。よく知らない人物が主人公だと見る側の関心は薄い。また本人のエピソードが弱いとダイナミックな物語展開にならないのだ。

その点、今回の「西郷(せご)どん」は安心して見ていられる。知名度は抜群で、幕末・維新の重要人物だ。それでいて西郷の人物像や果たした役割について、誰もが詳しく知っているわけではない。これを機会に学んでみるかという視聴者も多いはずだ。

まず、西郷を演じる鈴木亮平のはつらつとした表情、セリフ、そして動きが気持ちいい。鈴木は朝ドラ「花子とアン」でヒロインの優しい夫役で注目された。しかし鈴木の持ち味はそれだけではない。映画「HK/変態仮面」で見せた、針が振り切れたような全力演技が忘れられない。「西郷どん」でも、気持ちが高揚した際に繰り出す“怒涛の寄り”は肉体派俳優の本領発揮だ。また喜怒哀楽がはっきりした裏表のない西郷の性格も、鈴木はよく体現している。

そしてもう一人、このドラマを熱いものにしているのが、島津斉彬役の渡辺謙である。父親である斉興(鹿賀丈史)に藩主の座から降りるよう迫った時、弾を1発だけ込めたピストルで、なんとロシアンルーレットをやってみせた。頭に銃口を押しつけ、本当に引き金をひく。まさに命を賭けた諫言(かんげん)である。その迫力 は、まさに“世界のケン・ワタナベ”。画面の空気は一気に凝縮し、渡辺がこのドラマの主役に見えたほどだ。

実はこの名場面、林真理子の原作小説「西郷どん!」には書かれていない。脚本の中園ミホのオリジナルだ。こうした力業がズバリと決まるほどドラマは盛り上がる。さらに、かつての大河ドラマ「翔ぶが如く」(1990年)で西郷を演じた、西田敏行を起用したナレーションも成功している。悠揚迫らぬ調子にユーモアが加味されて、見る側をリラックスさせてくれるのだ。全体として大河らしい大河であり、その王道感を楽しめる。

(しんぶん赤旗 2018.02.12)

書評した本: 高橋敏夫 『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』ほか

2018年02月26日 | 書評した本たち



週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。

松本清張ブームの再燃 その理由がここに
高橋敏夫 『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』

集英社新書 821円

昨年放送された松本清張原作のドラマは、『黒革の手帖』など4本もあった。なぜ今も清張作品は広く受け入れられるのか。高橋敏夫『松本清張「隠蔽と暴露」の作家』を読むと、その答えの一端が見えてくる。

早大教授である著者は、清張の怒涛のような表現活動の核に「隠蔽と暴露」という方法があったと言う。同時に「隠蔽を暴露する」ではないことを強調する。圧倒的な勢力による巨大な秘密の隠蔽と、それに対する個々の小さな暴露という対比を重視しているのだ。

その上で、清張が作品を通じて暴露してきたものを浮かび上がらせていく。『球形の荒野』『黒地の絵』は、戦後も続いていた「戦争」を。『ゼロの焦点』『砂の器』では、暗い戦後をなかったかのように覆い隠した「明るい戦後」の欺瞞を。

そして『点と線』『けものみち』が暴いたのは「政界、官界、経済界」の癒着や汚職だ。さらに「オキュパイドジャパン(占領下の日本)」という、現在まで影響を与え続けている巨大な密室をこじ開けようとしたのが、『小説帝銀事件』や『日本の黒い霧』だった。

清張作品は途切れることなく書店の棚に並んでいる。また今後もドラマや映画などの映像化は続くだろう。著者はそんな清張ブーム再燃の背景に、「ふたたび姿をあらわしはじめた秘密と戦争の薄暗い時代」としての現代を見る。清張の生活史を踏まえ、作品群に新たなスポットを当てた本書もまた、隠蔽する力に抗う一つの試みかもしれない。


片岡義男『珈琲が呼ぶ』
光文社 1944円

「フィリップ・マーロウはコーヒーを飲むか」などという書き出しが魅力的だ。「片岡義男の世界」と珈琲はよく似合う。だから珈琲が人やものを呼んでくる。ボブ・ディラン、辰巳ヨシヒロ、森茉莉、そして神保町の喫茶店。書き下ろしの珈琲エッセイ、全45篇だ。


中川右介『世界を動かした「偽書」の歴史』 
KKベストセラーズ 1566円

フェイクはニュースだけではない。本書には、真贋が問われる書物や文書でありながら、歴史を変えた事例が並ぶ。マルコ・ポーロが書いていない「東方見聞録」。ナチスが利用した最悪の偽書「シオン賢者の議定書」。いずれも背後に隠された物語が興味深い。


(週刊新潮 2108.02.22号)

【気まぐれ写真館】 新千歳空港

2018年02月25日 | 気まぐれ写真館


2018.02.24

【気まぐれ写真館】 千歳で、メンチカツに生姜醤油

2018年02月25日 | 気まぐれ写真館

北海道千歳市「柳ばし」


最高のホッケ、1枚お土産にいただきました


HTB北海道テレビ「イチオシ!モーニング」 2018.02.24

2018年02月25日 | テレビ・ラジオ・メディア
イチモニ土曜日の面々














【気まぐれ写真館】 札幌、夜

2018年02月24日 | 気まぐれ写真館
2018.02.23

HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2018.02.23

2018年02月24日 | テレビ・ラジオ・メディア




高橋春花アナ




オクラホマ藤尾さん


土屋まりアナ


国井美佐アナ


高橋アナ、ヒロさん












【気まぐれ写真館】 札幌で、鴨せいろ

2018年02月24日 | 気まぐれ写真館
すすきの・まる山

書評した本: 樋口尚文 『映画のキャッチコピー学』ほか

2018年02月23日 | 書評した本たち



週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


樋口尚文 『映画のキャッチコピー学』
洋泉社 1728円

かつては「惹句(じゃっく)」と呼ばれた映画の宣伝文句。スターで押す、スケール感で煽るなどアプローチは様々だ。本書では洋画・邦画から厳選した傑作を解説していく。「凶暴な純愛映画」はリュック・ベッソン『ニキータ』。宮崎駿『もののけ姫』は「生きろ。」である。


伊集院 静 『文字に美はありや。』
文藝春秋 1728円

旅する作家による“書をめぐる旅”である。しかも時間も空間も自在な旅だ。書聖・王羲之に始まり、空海、坂本龍馬から立川談志までが並んでいる。鈴木大拙と西田幾多郎、2人が書いた「無」の一文字を見比べるだけでも刺激的だ。文字は確かにその人をあらわす。


樋口 進 『スマホゲーム依存症』
内外出版社 1382円

著者はネット依存に警鐘を鳴らしてきた医師だ。現在、働き盛り・子育て世代のスマホゲーム依存が増加中だという。依存は脳の病気であり、本人の意志や家族の支援だけでは抜け出せない。背景となるキーワードは「現実逃避」。その原因を探ることから治療が始まる。


小松健一 
『古地図片手に記者が行く
 ~「鬼平犯科帳」から見える東京21世紀』

CCCメディアハウス 1382円

人気番組『ブラタモリ』(NHK)を思わせる歴史散策ガイド本。「清水門外の役宅」から話題の富岡八幡宮まで、古地図と現在の地図を対比させながら歩くことで、「鬼平」の世界のリアルとフィクションを楽しめる。江戸と21世紀の東京が想像力で地続きになった。

(週刊新潮 2018年2月15日梅見月増大号)


伊丹十三 
『ぼくの伯父さん~単行本未収録エッセイ集』

つるとはな 2160円

没後20年の今も、『ヨーロッパ退屈日記』などの著作が書店に並ぶ。本書収録の文章が書かれたのは60~70年代。食、子育て、テレビと話題は多岐にわたる。中でも得意の会話形式による展開が見事だ。「メニューの中に、うまい物が必ず一個はある」など名言多数

(週刊新潮 2018年2月8日号)

週刊新潮で、フジテレビ「石橋貴明」新番組についてコメント

2018年02月22日 | メディアでのコメント・論評


「とんねるず」のおかげだから
「フジ」が切れない「石橋貴明」

黄金時代のスローガン、“楽しくなければテレビじゃない”ではないが、“これじゃあまるで意味がない”。凋落の著しいフジテレビのお荷物と言われた「とんねるず」。その番組打ち切りがようやく決定したものの、新番組が始まるという。そこには、切るに切れない事情があって……。

1988年スタートの「とんねるずのみなさんのおかげです」から、足かけ30年。「みなさんのおかげでした」(みなおか)の3月終了が発表されたのは、昨年暮れのことだった。フジテレビ関係者は、

「近頃は視聴率が振るわず、度々、打ち切りが囁かれていました。多い時で1人あたり1000万円近かった高額のギャラが制作費の大半を占め、問題視されていたのです。昨年、亀山前社長に代わって就任した宮内社長が、聖域なき改革を打ち出し、各番組に視聴率のノルマを課しました。その結果、ようやく『みなおか』を打ち切ることになったのです」

ところが、番組終了の翌4月から、深夜枠でまたしても、とんねるずの番組を新たにスタートさせるというのだ。正確には、木梨憲武(55)は出演せず、石橋貴明(56)のみとなるが、視聴率が取れないゆえに切り捨てたタレントを再度起用するとは、随分と懐が深いではないか。

お気に入り

放送記者によると、

「タモリの『笑っていいとも!』が終了した際は、半年ほど後に『ヨルタモリ』を始めましたし、小堺一機の『ライオンのごきげんよう』の時も、代わりの新番組が始まりました。局に貢献したから、スパッと切ることが出来ないのでしょうけど、そこがフジのダメなところでもあるのです」

よく言えば情に厚いが、悪く言えば、この期に及んでも会社の状況が見えていないというわけだ。それにしても、なぜ、数字が取れないとんねるず絡みの新番組をスタートさせるのか。

「とんねるずは、日枝相談役のお気に入りだからですよ。日枝さんが編成局長の時に『夕やけニャンニャン』、社長時代に『みなおか』がヒットし、絶頂期のフジを支えた立役者と言えます。日枝さんは彼らに恩を感じていて、だから、視聴率が取れなくても『みなおか』が続けられたのです。特に石橋はプライベートでも日枝さんと親しいため、宮内社長はそのことを忖度して石橋の新番組を用意したと言われています」(同)

フジテレビは、「番組編成は現場担当者が行っており、社長や相談役が関与することはございません」と言うが、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、

「現在、新番組の内容はまだ決まっていないそうですが、制作費を抑えるためにも、トーク番組になる可能性が高いと聞いています。とんねるずの魅力は、傲慢キャラの石橋が好き勝手なことをし、木梨がそれを中和することで成立していました。新番組は石橋1人ですから、本来の面白さが生かされるのかどうかが心配ですし、そもそも目新しい番組になるのかも疑問です」


楽しいフジテレビの復活には程遠い? 

(週刊新潮 2018年2月15日号)

BSプレミアム「荒神」の内田有紀に拍手

2018年02月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



NHK BSプレミアム「荒神」
業を背負った女の悲しさを表現した
内田有紀に拍手

先週末、BSプレミアムで「荒神(こうじん)」が放送された。原作は宮部みゆきの同名小説。舞台は元禄時代、東北地方の山村だ。

永津野藩の重臣、曽谷弾正(平岳大)は隣接する香山藩へ残忍な攻撃を続けていた。妹の朱音(内田有紀)は兄に反発し、家を出て村で暮らしている。ある日、怪物に襲われたという少年を旅の浪人(平岡祐太)が助け、村に運び込んでくる。

まず、CGで作られた怪物が見事な出来栄えだ。村を破壊し、無慈悲に人を食べ、踏み潰していくさまは結構怖い。正面から見たギョロ目の顔が、映画「シン・ゴジラ」の第2形態、通称・蒲田くんに似ているのはご愛嬌だ。

ただし、このドラマの見どころはCGだけではない。ヒロインである朱音の可憐さ、りりしさ、そして業を背負った女の悲しさを表現した内田に拍手だ。特に怪物と向き合うラストシーンでの立ち姿と表情は絶品だった。

過去には「北の国から2002遺言」の高村結、近年は「ドクターX~外科医・大門未知子~」の麻酔科医、城之内博美というハマリ役を持つ内田。今後は、一昨年の「ナオミとカナコ」(フジテレビ系)のような中途半端な形ではなく、この「荒神」に負けない主演作に挑戦してほしい。

ドラマ全体としては、原作で描かれていた、敵対する両藩がそれぞれに抱える事情や因縁などを、もう少し丁寧に見せてくれると、ありがたかった。

(日刊ゲンダイ 2018.02.21)

大河ドラマらしい大河ドラマ、その王道感が楽しめる「西郷どん」

2018年02月20日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


「直虎」から「西郷」へ

昨年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」は、そもそもの題材選びに難がありました。女性の場合、時代劇ではなかなか主軸になりづらいのです。過去の作品でいえば、「八重の桜」(2013年)は新島襄の妻で、「花燃ゆ」(15年)は吉田松陰の妹でしたよね。いずれも歴史上の人物を支えた立派な女性たちですが、大河としては不発でした。

また「直虎」では、その知名度の低さも足を引っ張ったと思います。よく知らない人物が主人公だと、見る側の関心が希薄になるのも仕方ありません。さらに直虎本人のエピソードが弱かったために、ダイナミックな物語展開にならなかった。実在した人物とはいえ、歴史上マイナーだった女性を大河の主人公にもってくるのは、柴咲コウさんの熱演があったとしても難しかったのです。

その点、今回の「西郷(せご)どん」は安心して見ていられます。大河では戦国時代と並んで王道の幕末・維新が舞台。西郷隆盛の知名度は抜群で、もちろん歴史上の重要人物です。それでいて、「偉人」という言葉だけではくくり切れない、西郷の人物像や果たした役割について、誰もが詳しく知っているわけではありません。これを機会に学んでみようか、という視聴者も多いでしょう。

鈴木亮平の躍動感

まず、西郷を演じる鈴木亮平さんのはつらつとした表情、セリフ回し(当時の日本は薩摩弁、土佐弁、会津弁など、出身が違えば互いに外国語を聞くみたいだったでしょうね)、そして動きが、すこぶる気持ちいい。鈴木さんは朝ドラ「花子とアン」で注目されました。真面目で優しくて包容力もある、ヒロイン(吉高由里子)の理想的な夫です。

しかし鈴木さんの持ち味はそれだけではありません。映画「HK/変態仮面」で見せた、針が振り切れたような全力演技が印象に残っています。「西郷どん」でも、気持ちが高揚した時に繰り出す“怒涛の寄り”など、偉丈夫の肉体派俳優、鈴木亮平ならではのものです。また喜怒哀楽がはっきりとわかる、裏表のない西郷の性格も、鈴木さんはよく体現しています。

渡辺謙の迫力

そしてもう一人、このドラマを熱いものにしているのが、島津斉彬役の渡辺謙さんでしょう。第4話で、斉彬は父親である斉興(鹿賀丈史)に藩主の座から降りるよう迫った時、弾を1発だけ込めたピストルで、なんと「ロシアンルーレット」をやってのけました。頭に銃口を押しつけ、本当に引き金をひく。弾が飛び出したら即死という、命を賭けた諫言(かんげん)です。その迫力は、まさに“世界のケン・ワタナベ”。画面の空気は一気に凝縮し、渡辺さんがこのドラマの主役に見えたほどでした。

また第5話では、藩主となった斉彬による「御前相撲大会」が開催されました。西郷たち若者は、この大会の勝利者となって、斉彬に直接、自分たちの思いを伝えようと計画します。画面狭しと闊歩する、まわし姿の男たち。しかも優勝した西郷は、斉彬と記念の相撲をとって、藩主を投げ飛ばしてしまいます。いかにも西郷らしい一幕でした。

脚本家・中園ミホの創意

実はこの第4話のロシアンルーレットも、第5話の相撲大会も、林真理子さんの原作小説「西郷どん!」(KADOKAWA)には書かれていません。脚本の中園ミホさんのオリジナルです。こうした創意に満ちた荒技が、ズバリと決まれば決まるほど、ドラマは盛り上がります。

今回は男っぽい、男くさい大河と言えます。だからこそ、西郷に思いを寄せる糸(黒木華)や、後の篤姫である於一(北川景子)が出てくるシーンが輝きます。このバランスがいい。

さらに、かつて大河ドラマ「翔ぶが如く」(1990年)で西郷を演じた、西田敏行さんを起用したナレーションも成功しています。悠揚迫らぬ調子に、ユーモアがほどよくブレンドされており、見ている側をリラックスさせてくれるのです。「西郷どん」は、全体として大河ドラマらしい大河ドラマであり、その王道感が楽しめます。

石原さとみ主演『アンナチュラル』は、オリジナル脚本が光る新感覚サスペンス!? 

2018年02月19日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


『逃げ恥』野木亜紀子のオリジナル脚本

ドラマのシナリオには2種類あります。一つが小説や漫画などの原作があるもの。もう一つは、原作なしのオリジナルです。前者は「脚色」と呼ばれ、本来はゼロからストーリーやキャラクターを作り上げる「脚本」とは異なるものです。もちろん、どちらがエライ!とかいう話ではありません。

たとえばアメリカのアカデミー賞などでは、「脚色賞」と「脚本賞」はきちんと区分されていますよね。しかし日本のドラマでは、どちらの場合も「脚本」と表示されることが多いです。

野木亜紀子さんは、いま波に乗っている脚本家の一人でしょう。一昨年の『重版出来!』(TBS系)、『逃げるは恥だが役に立つ』(同)で大ブレイクしましたが、どちらも漫画が原作でした。そんな野木さんの新作『アンナチュラル』(同)は、原作のない「オリジナル脚本」です。しかも主演は勢いのある石原さとみさん。石原さんが主人公を演じることを踏まえて書かれた、いわゆる「当て書き」の脚本となっています。

「科捜研の女」ならぬ、「不究研の女」!?

第1話、冒頭の場面。登場したのは石原さとみさんと市川実日子さんでした。おお、映画『シン・ゴジラ』の最強女性陣じゃないか。再び大怪獣にでも挑むのか。もちろん、違います。彼女たちが闘う相手は「不自然な死(アンナチュラル・デス)」。法医解剖医である三澄ミコト(石原)たちが働いているのは「不自然死究明研究所(UDIラボ)」です。

警察や自治体が持ち込む遺体を解剖し、死因をつきとめていく民間組織という、この設定自体が新機軸です。「科捜研の女」ならぬ、「不究研の女」ですね。(第何話だったか忘れましたが、「科捜研の沢口靖子だって忙しいのよ」という台詞が出てきて笑ってしまいました)

ミコトは警察官ではありませんから、捜査権はありません。ただし調査や検査を徹底的に行います。第1話では青年の突然死の原因を探っていました。警察の判断は「虚血性心疾患」(心不全)でしたが、検査の結果、心臓には問題がありませんでした。薬物による急性腎不全の疑いが出てくるのですが、肝心の毒物が特定できません。そこに遺体の第1発見者で婚約者でもある女性(山口紗弥加)が現れます。しかも彼女の仕事は劇薬毒物製品の開発で・・・という流れでしたが、この後に予想外の展開が待っていました。

絶妙な脚本に応える出演者たち

さらに驚かされたのが第3話です。物語のかなりの部分が「法廷劇」になっていました。舞台となったのはカリスマ主婦ブロガー殺人事件の裁判。ミコトは代理の証人として出廷します。被告は被害者の夫(温水洋一)であり、妻から精神的に追い詰められたことが動機だというのです。しかし、ミコトは証拠である包丁が本当の凶器ではないことを法廷で指摘します。被告もまた無実を主張しはじめました。

この回で出色だったのは、はじめは検察側の証人として法廷に立ったミコトが、次の裁判では被告側の証人へと転じて、敏腕検事(吹越満)と戦ったことです。この意外性たっぷりな展開こそ野木脚本の成果だと思います。何よりミステリー性とヒューマンのバランスが絶妙で、テンポは快調なのに急ぎ過ぎない語り口が見事です。

また出演者たちが脚本によく応えています。石原さんは『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)の時とはまた趣きを変え、パワーを自在にコントロールする演技で堂々の座長ぶり。同僚の一匹狼型解剖医、中堂(井浦新、適役)のキャラクターも際立っています。第3話で片鱗を見せた、ミコトと中堂のコンビネーションが、今後も物語を動かしていくはずです。「不条理な死」を許さないプロたちを描く新感覚サスペンスとして、大いに楽しめる1本になっています。

【気まぐれ写真館】 郊外の夕景

2018年02月18日 | 気まぐれ写真館
2018.02.17

すごいぞ!「みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展」

2018年02月18日 | 舞台・音楽・アート


川崎市市民ミュージアムで、3月25日まで



















見終わって・・・やっぱり、天才でした!


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懐かしの「金曜オトナイト」で