碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

テレビ愛知「やらせ問題」

2009年01月31日 | テレビ・ラジオ・メディア
困ったなあ。ほんと、困った。

テレビ愛知の<やらせ>問題である。

今どき、って、つまり「あるある」以後という意味だけど、「相変わらずテレビはそんなことやってんのかい!」と世間から言われるってことが分かっていない。

しかも、今回の<やらせ>、はっきり言って、セコいのだ。ダサいのである。

番組は、「松井誠と井田國彦の名古屋 見世舞 ( みよまい ) 」。その企画コーナーだ。

一般素人さんの通行人にインタビューするつもりが、うまく捕まらなかった。そこで、女性スタッフを“通りがかり”の素人に仕立てる。

で、ここからが笑っちゃうのだが、オンエアで彼女たちの名前を実名でテロップ表示。しかも、番組の終わりにも“いつも通り”スタッフの名前を流したというのだ。

視聴者がそれに気づく。「あれ? さっきインタビューに答えていた人と同じ名前じゃないの?」って。

何とも“お間抜け”な<やらせ>であり、別にニュースや報道系の番組ではなく、ローカル放送の深夜バラエティなんだけど、発覚しちゃえば、「やらせ問題」と言わざるを得ない。

しかも、最初、テレビ愛知は自社サイトで「収録当日、予定時間内にインタビュー相手を確保できなかったため、制作会社が本人たちの了解を得て、出演させた」と説明。いかにも制作会社の責任、というニュアンスだった。

ところが、すぐに前言を翻す。「収録現場に、社員もいた」と言い出したのだ。目の前で行われている初歩的(低レベル)な<やらせ>を、いわば黙認していたわけだ。

<やらせ>にもレベルはあるのだ。制作会社の人間も、局の人間も、揃いもそろって・・・。

凋落、陥落の烙印を押され始めたテレビ界だが、それを後押しするような出来事だといえる。

「没落しつつあるから、その程度の人材」なのか、「その程度の人材だから、没落していく」のか。うーん、本当に情けない。

ブルーノートの夢

2009年01月30日 | 本・新聞・雑誌・活字
昨日は、来週に迫った4年生の卒業研究発表会のリハーサルが、朝から夕方まで行われた。

論文と共に、その発表も審査の対象となるのだ。たくさんの“ダメ出し”をする。

今日は、副査を務める他所の研究室の発表本番。これまた、ずっと教室にこもって、発表を聞き続け審査を行う、ハードな一日。


閑話休題(お話変わって)。

見つけると、どうしても、手が伸びてしまうのが<ジャズ本>だ。

ましてや「ブルーノート」の文字があれば、もう止まらない。

『ブルーノート100名盤』(平凡社新書)は、どこを開いても楽しい。

今年、いや今月、創立70周年を迎えた最強のジャズレーベル。数多ある名盤の中から「私のベスト3」を選ぶ、という世界的なアンケートが行われた。この本は、その結果発表みたいな一冊だ。

で、一体何が選ばれたのか。

第1位 「ブルートレイン」 ジョン・コルトレーン
第2位 「サムシング・エルス」 キャノンボール・アダレイ
第3位 「クール・ストラッティン」 ソニー・クラーク
第4位 「モーニン」 アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
第5位 「処女航海」 ハービー・ハンコック
第6位 「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」 ソニー・ロリンズ
第7位 「アウト・トウ・ランチ」 エリック・ドルフィー
第8位 「キャンディ」 リー・モーガン
第9位 「ソウル・ステーション」 ハンク・モブレー
第10位 「バードランドの夜 Vol.1」 アート・ブレイキー

以上がベスト10だ。

全部は持っていないけど、1位から6位、そして10位は手元にある。確かに、どれが1位でも2位でもおかしくないくらい、どれもいい。

一番聴くのは「サムシング・エルス」だ。

メンバーにマイルス・デイビスがいる。ハンク・ジョーンズがいる。アート・ブレイキーもいる。悪いわけがない。絶品の「枯葉」も、1958年の録音だから半世紀も前になる。でも、古さなどとは無縁だ。

12位に入っている、バド・パウエル「ザ・シーン・チェンジズ」もよく聴く。この中の「クレオパトラの夢」が好きだ。

以前、「RYU’S BAR」という、作家の村上龍さんがホスト役の対談番組があった。そのタイトルテーマ曲が「クレオパトラの夢」だったのを思い出した。

現在、村上さんがやっている「カンブリア宮殿」も悪くないけど、経済がテーマだからね。ゲストが限定されるわけで。

その点、よかったなあ、「RYU’S BAR」。今やってたら、見るんだけどなあ。

まあ、これもまたクレオパトラの夢かも。

ブルーノート100名盤 (平凡社新書)

平凡社

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ついに「陥落!」と書かれてしまったテレビ

2009年01月29日 | テレビ・ラジオ・メディア
『日経ビジネス』で面白い記事を読んだ。

若者の「クルマ離れ」に関して、その理由を、当の若者たちから聞き出している。

挙がったポイントは、以下の4つ。

(1)魅力のない商品
(2)社会や需要の構造的問題
(3)ライフスタイルや価値観の変化
(4)コストがかかり過ぎ

これって、(4)はともかく、他は若者の「テレビ離れ」の要因にも通じるように思う。

筆者の池原照雄さん(経済ジャーナリスト)は、「自動車メーカーとして魅力ある商品の提供という基本線でも大いなるアプローチの余地はある。」という。

これまた、テレビの凋落を止める可能性を示唆しているような言葉だ。

相手が若者だろが熟年だろうが、電波がアナログであろうがデジタルであろうが、予算が高かろうが低かろうが、<魅力ある商品(番組)>を提供できているかどうか、である。


今週号の『週刊 東洋経済』は、テレビを「凋落」ではなく、「陥落」とまでいっている。

日テレ・氏家会長のインタビューには「生き残るのは2~3社だ」の大見出し。地方に関しては、なじみの北海道を例に挙げ、「北海道5局体制の黄昏」と題するシビアな内容だ。

また、私があちこちで書いたり、言ったりしてきた<負のスパイラル>についても解説されている。

とにかく、読んでいて、ほとんどの記事に「うん」と頷けるのだから衝撃的だ。果たして<魅力ある商品(番組)>の開発は間に合うのか・・・。

週刊 東洋経済 2009年 1/31号 [雑誌]

東洋経済新報社

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4月からのテレビは毎日が<小林姉妹の日>

2009年01月28日 | メディアでのコメント・論評

TBSの<4月改編>。やはりインパクトがあったんだなあ、と思う。

「読売新聞」と「日刊ゲンダイ」から、立て続けに取材を受けた。

話題の中心は、もちろん「平日18時~20時、2時間の大型報道番組」である。詳細は、各紙の記事が出たら、ご覧いただくとして・・・

現在、TBSの平日は、17時から2時間の“夕方ワイド”「イブニング・ファイブ」。そして、19時台が曜日ごとの1時間枠だ。

月曜 関口宏の東京フレンドパークⅡ
火曜 ぴったんこカン・カン
水曜 復活の日 (司会:福留功男)
木曜 徳光和夫の感動再会“あいたい”
金曜 チェック!ザ・No.1

これらが、ぜ~んぶ消えるんだから、確かに大事(おおごと)である。しかも、司会を務めているのは関口さん、福留さん、そして徳光さんという高額ギャラの大御所ばかり。

はっきりしているのは、これまでテレビ界に“大物司会者”として君臨してきたこの方々を、TBSは番組共々“リストラ”する挙に出た、ということだ。

彼らの功績はともかく、年齢的なことも含め、ずっと肩たたきをしたいと思っていたんだろうが、「それに取って代わるだけの番組」の実現も困難で、ずるずるとここまで来た。

しかしながら、経済状況の悪化の中で、司会者も含む番組全体の“費用対効果”を考慮し、また、局イメージのアップも目論んだ上で、「報道番組」という世間的にも文句の出にくい“飛び道具”を持ってきた。

これにより、平日19時台の「バラエティ地区」を一気に“地上げ”しようというわけだ。いやあ、ナイスです。

ただ、この社運を賭けたような<平日ゴールデン2時間ぶち抜き大型報道レギュラー番組>のキャスターが、「チューボーですよ!」の小林麻耶アナ(4月からはフリーで稼ぐ)ってところが、これまたナイスです。番組タイトルは「ホードーですよ!」にでもしますか(笑)。

今や会社の残業もなくなり、まっすぐ帰宅するオトーサンたちが、まず目にするのがTBSの麻耶嬢であり、その3時間後にご対面するのが日テレ「NEWS ZERO」の麻央嬢なのだ。

もう毎日が<小林姉妹の日>である。小林シスターズの電波ジャック。二人が双子だったら、もっとナイスだったんだけど(笑)。

月から地球を見たひとたち

2009年01月27日 | 映画・ビデオ・映像
アポロ11号が、人類初の月面着陸を成功させたのが1969年7月。今からちょうど40年前のことだ。

この“史上空前の挑戦”であり、“史上最大の冒険”だったプロジェクトを描いたドキュメンタリー映画『ザ・ムーン』を観た。

ぶっ飛んだ(笑)。

何が凄いか。

まず、NASAの<蔵出し>だという、お宝映像である。これでもか、という感じで大盤振る舞いされている映像が、圧倒的な力を持っているのだ。

69年当時、私は中学生。テレビにかじりついて月面からの生中継を見ていた。それ以来、大きくなるにつれて、「アポロ」関係の写真や映像をたくさん見てきたし、テレビの仕事でまとめて見る機会もあった。

しかし、そんなものは、膨大なNASA映像のほんの一部の、そのまた端っこだったということだ。

月へ向かう途中の船内はもちろん、コントロール・センター内部の様子も、そして月面で撮影された映像も、すべて驚きの連続だった。カメラを通じて「月に行った」感じさえする。中には、月面での“ドライビングショット”まであるのだ。

月面。そこから見える地球。美しさと静けさ。<実写>の強さを思い知った。

この映画の、もう一つの凄さ。それは、登場する10人の宇宙飛行士たちである。

作品全体が、彼らへのインタビューとNASAの記録映像の二つの要素で出来上がっている。実はとてもシンプルなのだ。

それだけに、映画の中の、宇宙飛行士の存在は大きいのだが、まあ、彼らの何とカッコいいこと!

彼らの多くが「アポロ計画」の最中に30代だったから、現在は70~80代だ。一般的には「おじいさん」のはずだが、とてもそんなふうには呼べない。

顔がいい。刻まれた年輪もいい。何より<語る言葉>が素晴らしいのだ。

シナリオ、台本といったものがあって、役者がしゃべっているのではないか、と思うほどだ。

事実と回想、それに対する自分の考え、感想など、特別なことを話しているわけではなく、自身の体験を語っているだけなのに、含蓄のある、深い、そのまま名言集に載りそうな言葉の連続である。さすが、本物の「ライトスタッフ(正しい資質)」。

NASAの蔵出し映像と宇宙飛行士たちのインタビューが緻密に構成され、史上最大の冒険が、リアルなものとして目の前で展開される・・・。

この映画には、うーん、参りました。

ザ・ムーン~映画「ザ・ムーン」オリジナル・サウンドトラック

デラ

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安野画伯の<やわらかエッセイ>253本

2009年01月26日 | 本・新聞・雑誌・活字
昨年秋、「菊池寛賞」を受賞した、画家の安野光雅さん。

その最新エッセイ集が『語前語後』(文藝春秋)だ。

元々は、季刊誌『数学のたのしみ』(日本評論社)に、4年間続けられた「村の広場の午後」という連載である。

253本もの短い文章の内容は多岐に渡っている。本のこと、新聞の記事、旅先での話・・・。

いずれも安野さんは、ふと気がついた、ふと気になった、という雰囲気の軽いタッチで書いている。それでいて、読む側は「へえ~」とか「ふ~ん」とか、つい声がもれる面白さだ。

しかも、この本を読む限り、安野さんが意外とテレビをよくご覧になっていて、驚く。

「課外授業 ようこそ先輩」
「ピタゴラスイッチ」
「ザ!世界仰天ニュース」
「行列のできる法律相談所」などなど。

それどころか、あの「あるある」捏造問題にまで言及している。

こうした事件が起きたとき、番組制作者側が「視聴者もつくりが入っていることを分かっている」と言い訳することに対して、「無責任だ」とお怒りだ。

その通りです。

巻末の、森毅先生との対談も、画家と数学者の「ものの見方」に関する相違や共通点が、とても興味深い。

語前語後
安野 光雅
朝日新聞出版

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ラッパ屋の新作「ブラジル」に拍手!

2009年01月25日 | 舞台・音楽・アート
「好きな劇団は?」と聞かれたら、必ず「ラッパ屋です!」と答える。この20年くらい、ずっと同じだ。

そのラッパ屋の新作を観てきた。紀伊国屋ホールでの「ブラジル」である。

いやあ、もう、客席で開演を待っている間も嬉しくて仕方がなかった。何しろ新作は2年ぶりだ。

最近は、福本伸一さん、おかやまはじめさん、木村靖司さん、弘中麻紀さん、岩橋道子さん、三鴨絵里子さんといった<ラッパ屋の役者さん>たちの活躍の場が広がり、みんな忙しい。

それに脚本・演出の鈴木聡さんがまた忙しい。昨年はNHKの朝ドラ「瞳」などの大仕事もあったし。それで、以前は年に1回は行われた公演が、なかなか難しくなっているのだ。

ホールのロビーで、久しぶりで鈴木さんとご対面。「待ってましたよお」と公演へのお礼を申し上げた。

そして、いよいよ「ブラジル」の開演だ。

例によって、ワンシチュエーションの舞台装置。今回は、千葉の海岸近くにあるペンションである。

集まってきたのは、大学の軽音楽サークル(しかもボサノバ!)のOBやOGたちだ。サークルを創設した大先輩が還暦を迎え、そのお祝いという名目で、みんなが久しぶりに集合したらしい。このペンションを経営する夫婦も、サークルの仲間だ。

彼らの年齢は40代から60代まで。中にはサークル内で結婚したカップルも複数いる。独身の男女もいる。会社の窓際族もいる。不倫中の女性講師もいたりする。

メンバーの一人は、最近、健康診断で引っかかり、再検査となった。もしかしたら、余命半年かもしれない。初めて身近に感じる死。ココロは乱れる。その乱れは、他のメンバーにも伝わっていく。みんなも、それぞれココロに抱えているものがあるからだ。

ペンションという限られた空間と、2泊3日という限られた時間の中で、互いの過去と現在が交錯し、ぶつかり合う。

大きく言えば、「生きることと死ぬこと」という大テーマだ。「年齢を重ねること」「老いること」の意味も問われる。

でも、そこはラッパ屋である。この重いテーマを、明るさとユーモアの中で展開していく。観客は、大いに笑って、そして少しほろっとしながら、ちゃんと<大事なもの>に触れていく。気がつかされるのだ。

「永遠と感じた瞬間こそが永遠なんだよ」のセリフが、忘れられないものとして残る。

終わって、拍手、拍手。

うーん、よかった。ラッパ屋結成25年。成熟期だ。

紀伊国屋ホールでの公演は今日が千秋楽。いずれまた見せてもらえるはずの新作を、辛抱強く、楽しみに待たせていただこう。

鈴木さん、ラッパ屋の皆さんに感謝です。

沢尻エリカさま「結婚披露パーティ」の会場

2009年01月24日 | テレビ・ラジオ・メディア
珍しく芸能ネタである(笑)。

沢尻エリカ嬢と高城剛さんの結婚報道の中で、「ありゃりゃ」という一件があったのだ。

25日(日本時間26日)に、ハワイ島のコナにある「高城氏の知人がやっているコーヒー農園」で結婚披露パーティを行う、という話のうちは「ふーん、ハワイ島かあ、いいなあ」程度だった。

次に、そのコーヒー園には「水辺に十字架」があってウンヌンというのが聞こえてきて、「もしや、いや、そんな・・・」と不安になった。

そして、ついにテレビのワイドショーが、その農園の名を伝えた。なんと「マウカメドウズ」でありました。

ここは、ドトールが経営するコーヒー農園だ。

山の中腹にあって、コナの町と、その向こうの海が見下ろせる、素晴らしいロケーションの場所だ。

更に嬉しいことには、あまり有名ではなく、観光客もほとんど来ない。ふだんは本当に静かな農園なのだ。

昨年行ったときも、お客といえば、我が家の4人のみ。

斜面に広がるフルーツ園をのんびり散策し、たどりついた先には「永遠の泉」と呼ばれるプールというか池がある。その水辺には真っ白な十字架が立っている。十字架の彼方には青い海が見える。

そこで美味しいコーヒーを飲み、その後、畑にコーヒーの木を植えに行く。1本100$。後で、植えた人の名前入りのプレートも設置してくれる。いい記念だ。

日本にいても、ハワイ島の、コナの、あのコーヒー園の畑で、自分たちが植えたコーヒーの木が、太陽の光を浴びたり、雨に濡れたりしているのを想像するだけで、かなり和む。

高城さんとは、もう20年前になるだろうか、その実質的デビューとなった「ビデオビエンナーレ」でお会いしたのが最初だ。才能あふれる映像作家の登場、という感じだった。後には、私のプロデュースしたドラマに“役者”として出演してもらったりもした。

もちろん結婚はお目出度いことだし、大いに祝うわけですが、我が<ハワイ島の隠れ家>的な、大のお気に入りであるマウカメドウズが、今後は「エリカ様が結婚披露をやった場所」として、観光客がどかどかやって来るスポットになってしまうとしたら、非常に残念。

正直言って、どこか他所でやって欲しかったなあ(苦笑)。

まあ、それも、もはや、せんないこと。

事、ここに至っては、私が撮った写真より何倍も美しい現地の風景をバックに、高城夫妻の披露パーティがつつがなく開かれることと、お二人のお幸せを祈るばかりであります。嗚呼。

<言葉の総本山>がやって来た

2009年01月23日 | 本・新聞・雑誌・活字
大きな箱が届いた。受け取ると、その重さで両腕がぐっと下がる。「おお、これこそ言葉の重みというものではないか」と一人感激する私。

注文しておいた、待望の『広辞苑 第六版』である。しかも「総革装」なのだ。

2008年の1月に出版された『広辞苑 第六版』。すぐにも入手したかったが、じっと待った。

そして1年後の今月20日、ついに、この「総革装」バージョンが発売されたのである。

これまで手元にあった「広辞苑」は、91年11月に出た第四版。「い」の項目を眺めると、「インターナショナル」の次が「インターハイ」となっている。

第六版をひも解けば、「インターナショナル」と「インターハイ」の間に鎮座する言葉は、当然のことながら「インターネット」である。もちろん「ネット」も「ブロードバンド」も出ている。

途中に第五版があったとはいえ、ワタクシ的には、18年の歳月が、今、埋められたのだ。メデタイ!

革の表紙を近くで見ていると、ほのかに漂うのは懐かしいランドセルの香りだ。全体を包む、濃い目の茶色が奥ゆかしくも美しい。「天」には金が塗られている。紅白が組み合わされた「花ぎれ」も鮮やかである。

クルマに関しては、古(いにしえ)より、「いつかはクラウン」という名コピーがある。それでいえば、「いつかは総革装広辞苑」だ。

クルマのステアリングは革巻きじゃなくても構わないが(早口言葉か)、「広辞苑」ほどの<言葉の総本山>ともなれば、革装にさせていただいてもいいのではないか。

10年近く、いや10年以上もお世話になる「師」であり、一緒に戦う「友」であり、日常的に支えてくれる「妻」でもある。総革装もゼイタクじゃないと思うのだ。

昨日、「ボルサリーノ・トラベラー」4万5千円也を躊躇した私も、「総革装 広辞苑 第六版」1万5千円也には、何のためらいもなかった。って、胸を張るほどのことじゃないけど。

とにかく、頼りになる強い味方がやって来た。この辞書を見ているだけで、わけもなく「がんばるぞ!」と元気が出る。さあ、仕事の原稿に取り掛かろう。

総革装 広辞苑 第六版

岩波書店

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この冬、ちょっと欲しいもの

2009年01月22日 | 日々雑感
私のアタマは、坊主頭というか、剃ってはいないので1ミリカットと自分では呼んでいるが、とにかく冬場は寒い。

そこで外出時は、ほとんど帽子をかぶる。普段は完全にラフな服装なので、帽子は野球帽(じゃなくてアポロキャップか)が多い。気がつけばアポロキャップが10個以上もあって、日々、選んでかぶっている。

今では懐かしいが、かつて「部長」とか、「代表取締常務」とか、フツーのビジネスマンみたいな役職をしていた時期があり、その頃はスーツも着ていたのだ。

スーツに野球帽は似合わない。もちろん、当時の帽子は「ソフト」だ。冬の定番は、ベストにスーツで、コートにソフト、そしてマフラーと革手袋だった。

ソフトは、あれこれ試したが、結局、一番気に入ったのがボルサリーノだった。別にブランド好きというわけではなく、実際に使ってみると、その“しっくり感”がやみつきになる帽子なのだ。

いつも革ジャンとか、パイロットジャンパーとかで、ほいほい大学に行ってしまう私だが、今日のように冷たい雨の降る日には、アポロキャップ以外の帽子をかぶりたい時もある。

今、ちょっと欲しいなあ、と思っているのが「ボルサリーノ・トラベラー」という旅行用ソフト帽だ。

撥水性のファーフェルト製だから、小雨も傘なしでOK。丸めて携帯することも可能。質感と機能性と気軽さがウリだ。

ただ、お値段は、確か4万円以上のはずで、こちらは「ほいほい」というわけにはいきません(笑)。

でも、いいんだよなあ・・・。

ボルサリーノ物語
出石 尚三
万来舎

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「米大統領就任式」生中継を見ながら

2009年01月21日 | テレビ・ラジオ・メディア
オバマ氏がアメリカ大統領に就任した。

昨夜、その模様を生中継で見ていて、「何かが(よき方向へ)変わるかもしれない」と思える国民はシアワセだなあ、と思った。わが国では、「それに引き比べて・・」という話になってしまうのが残念だ。

オバマ大統領の就任演説の中で、最も印象的な言葉は「責任」だった。

たぶん、今後、メディアからは<責任の時代>といったフレーズが発信されていくのではないか。

国の責任。国民(個人)の責任。選択の責任。何かを背負う責任。決して軽い言葉ではない。

ファーストレディのファッションだの、2人のお嬢さんが通う名門私立小学校の情報も結構だが、オバマ大統領によって何が変わり、何が変わらないのか、それはこの国とこの国の個人にどんな影響を与えるのか、といった報道が、もっと欲しい。



さて、放送批評懇談会が発行している月刊誌『GALAC(ぎゃらく)』の2月号が発売された。

ここに、昨年11月末に行われた公開シンポジウム「ギャラクシー賞受賞報道活動を見て、制作者と語る会」の<報告>を書かせていただいている。


盛況だった公開シンポジウム!

「ギャラクシー賞受賞報道活動を見て、制作者と語る会」報告

 シンポジウムの話が出たのは、今年のギャラ
クシー賞報道活動部門の審査会が行われた夜だ
った。受賞作を制作した局は、東京だけでなく、
名古屋、金沢、札幌など全国各地にまたがって
いる。それぞれ見事な取り組みなのだが、キー
局のネット番組以外は基本的に各地域でしか見
られない。ならば、受賞作品を一挙に上映し、
その制作者の方々と語り合う機会を作れないだ
ろうか、ということになったのだ。
 その後、幸いなことに放送批評懇談会と東京
工科大学メディア学部の共同主催という形が決
まり、今回の公開シンポジウム「ギャラクシー
賞受賞報道活動を見て、制作者と語る会」を開
くことができた。11月29日(土)午後、会場
である八王子の東京工科大学メディア・ホール
には350名を超す参加者が集まった。
 シンポジウムは3部構成とした。各ブロック
では、東京の2局、名古屋と金沢、札幌の2局
の作品を上映し、その後、制作担当者と放送批
評懇談会の選奨委員が登壇。参加者も交えての
“語り合い”となる。
 東京工科大学・軽部征夫学長の「大学にとっ
ても大変意義のある催し」という挨拶に続いて
第1部が始まった。上映作品は、TBS「“エ
コ偽装”報道」(選奨)と日本テレビ「『ネット
カフェ難民』キャンペーン」(優秀賞)である。
ただ、残念ながらTBSと日本テレビの制作者
は生放送や収録本番と重なってしまい、欠席。
放懇の堀木卓也さん(民放連)、小林英美さん
(読売新聞)、そしてコーディネーター・司会
の碓井という3名でのトークとなった。
 堀木さんは、TBSが内部告発を受けて紙を
作るという“実証実験”を行った点を「テレビ
ならではの報道活動」と高く評価。また、リア
ルタイムで“難民”たちの現場を追った日本テ
レビの報道が、厚労省による実態調査へとつな
がっていったことに関して、小林さんが「新聞
は写真1枚とグラフだけで伝えられない。映像
の力を感じた」と述べた。そして、会場の参加
者からは、テレビが一つの問題を継続して報道
していくことの意義についての感想が語られた。
 第2部では、名古屋テレビ「『どですか!』
生き生き まいらいふ」(選奨)とテレビ金沢
「人情物語 向こう三軒両どなり」(優秀賞)
を上映。パネラーは名古屋テレビの大池雅光さ
ん、テレビ金沢の辻本昌平さんと中崎清栄さん。
放懇からは上滝徹也さん(日大芸術学部教授)
と坂本衛さん(ジャーナリスト/報道活動委員
長)が参加した。
 大池さんが「80歳以上の人に出ていただくこ
とで、押し付けがましくなく地域性を目指した」
と語り、辻本さんは「地域の人情をもう一度と
いう思いで制作している」。これに対して上滝さ
んからは「両作品の中には、人のふれ合いや互
助の精神という、生き方に関わる内容が盛り込
まれている」という指摘があり、坂本さんも「
報道というと不正追及などの一般的イメージが
ある。しかし、それだけではない」として、高
齢者問題にもこの2作品のような多様なアプロ
ーチがあることを強調した。
 参加者からも「自分が暮らす地域のお年寄り
と、もっとコミュニケーションしたくなった」
という発言が出た。また、中崎さんからは、ギ
ャラクシー賞を受けたことで「地方でしこしこ
やっている(笑)地道な活動がやりやすくなっ
た」と感謝の言葉があった。
 第3部の作品は、北海道テレビ「イチオシ!
『政務調査費』」(選奨)と札幌テレビ「ST
Vニュース『ニセコ町果実酒問題』報道」(大
賞)である。札幌から来てくださった寺内達郎
さん(北海道テレビ)と山谷博さん(札幌テレ
ビ)のお二人に、麻生千晶さん(作家)と坂本
衛さんが加わってのトークとなった。
 麻生さんは、「イチオシ!」での地方議員に
対する取材について「追い詰められた顔、嘘を
ついている顔をブレずにじっと撮り続けたこと
に感心した」と言い、「心の奥底を垣間見せる、
素晴らしい人間凝視だ」と評価。寺内さんの「
場合によっては議員生命に関わってくる。“脇
を固める”ことが大事」という発言からは真剣
勝負の緊張感が伝わってきた。
 「行政批判ではなく、これ皆さんどう思いま
すか?と問いかけたかった」と言うのは山谷さ
ん。その活動は、結果的に酒税法の不合理性を
衝く大きな成果を残すことになった。坂本さん
は「発表ジャーナリズムではなく、主張がある。
しかも、がなりたてずに、ユーモラスに、しつ
こく迫った」と成功のポイントを挙げた。
 また、会場の参加者から「果実酒の報道は、
問題提起から決着まで、1年もかけていたこと
に驚いた。最後にペンションのオーナーや記者、
そしてスタジオのキャスターも一緒になって果
実酒で乾杯していたシーンに感動した」という
感想があり、山谷さんが「ニュースの中で乾杯、
という馬鹿馬鹿しさで終わりたかった。よくぞ
見てくださいました」と笑顔で答えていた。
 第3部は最終ブロックということもあり、こ
の後、全体のまとめとなっていく。ギャラクシ
ー賞における「報道活動部門」の意味。報道活
動の多様性。地方局で多くの優れた取り組みが
行われていること。それらが、現在テレビがさ
らされている厳しい状況の中で、いかに大切な
ことかを、参加者と共に確認した。最後に山口
治男メディア学部長と坂本委員長の挨拶があり、
第1回目となるシンポジウムは無事閉幕した。

    (月刊「GALAC」2009年2月号)

GALAC (ギャラク) 2009年 02月号 [雑誌]

角川グループパブリッシング

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ポプラ社の「少年探偵」シリーズと「RED」

2009年01月20日 | 本・新聞・雑誌・活字
久しぶりで<丸の内>へ出かけた。スーツにネクタイというビジネスマンを大量に見た(当たり前か)。ふだん大学のキャンパスで暮らしているせいか、ちょっと新鮮な光景だった。

丸の内には、映画『チェ 28歳の革命』を観た際にもこのブログに書いた、4K(ハイビジョンの4倍の精細度)と呼ばれるデジタルシネマのカメラ「RED」を見学に行ったのだ。

いやあ、確かに、ほとんどフィルムと変わらない画質。早く導入できるといいなあ、と思った。

丸の内への往復の電車内では、江戸川乱歩の『怪人二十面相―少年探偵』(ポプラ文庫)を読み続けた。昭和39年に出た単行本の復刻文庫版だ。

乱歩が子ども向けに書いた、この少年探偵シリーズは、私がいた小学校の図書館にもずらっと並んでいて、一冊ずつ楽しんで読んだ記憶が甦る。

「そのころ、東京中の町という町、家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。」・・・この書き出しだけで、もうわくわくしてくる。

乱歩が描く、当時の麻布や上野の風景も(見てはいないのに)懐かしい。

映画『K-20 怪人二十面相・伝』は面白かったが、少年探偵団の物語を、原作に忠実に映画化したら、どんなだろう。もちろん、「RED」を使ったデジタルシネマでの制作だ。

怪人二十面相―少年探偵 (ポプラ文庫クラシック)
江戸川 乱歩
ポプラ社

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先行上映で観た『007 慰めの報酬』

2009年01月18日 | 映画・ビデオ・映像
24日(土)から公開される映画『007 慰めの報酬』を、つい待ちきれなくなり、<先行上映>で観てきた。

前作『007 カジノ・ロワイヤル』では、6代目ボンドであるダニエル・クレイグがなかなかよかった。

それは、クレイグのボンドが不死身のスーパーマンではなく、身体を張ったというか、生身のアクションというか、“人間ボンド”としてそこにいたからだ。作品的にも面白かったし。

さて、新作。

お話は「前作の1時間後」から始まる。気分は続編だ。

前作で愛する女性を死なせてしまったボンドは傷ついている。でも、スパイに私情は禁物。真相を追って、また疾走を開始する。

アクション、アクション。今回もクレイグは体当たりだ。世界各地に飛ぶのも、いつも通り。

ただ、何だか興奮しない。“わくわく感”が少ない。なぜだろう・・・。

ターゲットの<悪役>が、慈善団体を隠れ蓑にして、裏でやっているであろう<悪事>が、その「中身」と悪の「度合い」が、どうもうまく伝わってこない。

それから、ヒロイン(かつてはボンド・ガールといった)も、幼いころに両親を殺された元諜報員という、ややヘビーな設定。“復讐と任務”の間で悩むボンドとの相乗効果(?)で、映画全体のトーンを暗めにしている。

ヒロインを演じるウクライナ出身のモデル、オルガ・キュリレンコも、美女なんだけど仏頂面ばかりが印象に残る。少しは笑顔も見せてくれ!(笑)

「ショーン・コネリー時代」とまでは言わないが、もう少し、明るさや余裕、ユーモアがあってもいいんじゃないか。リアルな諜報活動、アクション、そしてユーモア。要はバランスの問題だ。

ボンド映画に何を求めるか、ってことかもしれないけど、うーん、今回は、正直言って、見終わると、ちょっと疲れた。


そうそう、本当は前作を“おさらい”してから観にいくつもりだったが、いきなり映画館に出向いたため、すっかり前の物語を忘れていた。

これが結構ハンデとなり、映画のはじめのあたり、ずんずん進んでいく展開に気持ちが入っていけなかった。

これから観る人は、必ず「カジノ・ロワイヤル」のDVDなどをレンタルし、復習(予習?)しておくほうがいいです。

007 カジノ・ロワイヤル [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテイメント

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札幌での”お宝”探し

2009年01月17日 | 本・新聞・雑誌・活字
本日の札幌は快晴。センター入試の日だから、受験生にとっては助かる。

昨日は、番組と番組の間に、大好きな札幌・石川書店で“お宝”探しだ。

見つけたのは、三島由紀夫の『豊饒の海』全4巻揃い。しかも初版。これを、おかみさんが「持ってけ、泥棒!」のお値段に勉強してくださって、ひたすら感謝だ。

さらに、田中純一郎の名著『日本映画発達史』の単行本(貴重!)、全4巻揃いも入手した。こちらも、とんでもない格安値段で、とても言えない(笑)。

ついでに、色川武大の遺稿集『ばれてもともと』(文藝春秋、89年、初版)もゲットし、まとめて宅配便で送ってもらうようにした。うーん、便利だぞ、宅配便。

番組終了後は、札幌駅そばの紀伊国屋書店。

ここでは・・・
森達也『森達也の夜の映画学校』(現代書館)、
モリッシー『「テレビ鑑賞家」宣言』(情報センター出版局)、
見田宗介『まなざしの地獄~尽きなく生きることの社会学』(河出書房新社)、
筑紫哲也『スローライフ~緩急自在のすすめ』(岩波新書)、
小谷野敦『新編 軟弱者の言い分』(ちくま文庫)

買ったばかりの本を抱え、ちょっと幸せな気分で、札幌の友人と久しぶりの夕飯。やはり北海道は美味い。また楽しからずや。

森達也の夜の映画学校
森 達也,代島 治彦
現代書館

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「テレビ鑑賞家」宣言
モリッシィ
情報センター出版局

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まなざしの地獄
見田 宗介
河出書房新社

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スローライフ―緩急自在のすすめ (岩波新書)
筑紫 哲也
岩波書店

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新編 軟弱者の言い分 (ちくま文庫)
小谷野 敦
筑摩書房

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ドラマ「リセット」のスペシャルとレギュラー

2009年01月16日 | テレビ・ラジオ・メディア
昨夜は、スペシャルドラマ「リセット」(読売テレビ製作)を見た。

誰しも「ああ、あそこで、あんなことをしなければ」と悔やむような、過去の出来事がある。もしも「今、その場に戻れたら、別の選択をするのに」という望みが叶えられるとしたら・・・。

 
認知症になった母親(市毛良枝)と、そのひとり娘(京野ことみ)の物語などが展開された。

少しテンポがゆるくて、ややじりじりしたが、それぞれが丁寧に作ってあり、好感がもてた。

そして、23時58分からはレギュラー版の「リセット」が放送されたが、こちらは原稿の仕事があって、見ることはできなかった。

ただ、このドラマ、中身とは別のことだが、面白いことがある。

KDDIが、放送終了の約24時間後から、「LISMO Video Store」で無料配信するのだ。読売テレビにしてみれば、地上波で放送した番組を無料で配信するのは初てのこととなる。

どんな反響があるか、興味深い。