碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

週刊新潮「私の週間食卓日記」に寄稿しました

2020年05月31日 | 本・新聞・雑誌・活字

 

週刊新潮「私の週間食卓日記」

 

コロナ禍にテレビと読書三昧

いえ、仕事です。

 

碓井広義 (メディア文化評論家)

1955年、長野県生まれ。テレビマンユニオン・プロデューサー、慶大助教授などを経て、今年3月まで上智大教授。近著に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」(新潮新書)。

 

この春、大学を定年退職。緊急事態宣言とほぼ同時だったので、そのまま「在宅ワーク」に突入した。

5月13日(水)

NHK朝ドラ『エール』を見ながら朝食。まず納豆と豆腐を食べ、トースト・牛乳・トマトと続く。昼食もバナナ入りシリアルに牛乳が定番。昨年の夏、機内誌で読んだ浅田次郎さんのエッセイに、「朝夕の納豆と豆腐で減量に成功」とあり、さっそく実践。毎日30分の散歩も加えた9カ月で体重は8キロ減り、血糖値や血圧の数値も大幅に改善された。日中、片岡義男『彼らを書く』とオリヴィエ・ゲズ編『独裁者が変えた世界史』上下巻を読み進める。18年続けている週刊新潮の書評用だ。夕食のメインは「よだれ鶏」。ニンニクとピリ辛だれが堪らない。深夜ドラマ『レンタルなんもしない人』(テレビ東京系)を見て、いつもの午前2時に就寝する。

5月14日(木)

週刊現代の電話取材あり。テーマは「70年代の忘れられない本」。村上春樹さんのデビュー作『風の歌を聴け』を挙げた。79年、自分の進む方向がまだ見えず、模索していた20代半ばに読んだ一冊だ。動画配信サービスの利用が増えた。今、ハマっているのは、Netflixの韓流ドラマ『愛の不時着』。財閥の後継者であるヒロイン(ソン・イェジン)が、パラグライダーの事故で北朝鮮に侵入してしまう。途方もない物語だが、すこぶる面白い。夕食は信州にいる母が送ってくれた「開田高原そば」。麺もつゆも美味しく、つい食べ過ぎてしまう。WOWOWで放送していた、タランティーノ監督『ヘイトフル・エイト』3時間7分を見て寝る。

5月15日(金)

北海道新聞から書評を依頼された本、川島博行『日高晤郎フォーエヴァー』が届く。道内のテレビ局で15年間、コメンテーターをさせていただいた。土曜の昼間、札幌でタクシーに乗ると、ほぼ100%の確率で「日高晤郎ショー」(STVラジオ)を聴くことができた。亡くなったのは一昨年だが、お元気ならリモート出演でも番組を続けていたはずだ。週に1本のペースとなっている、「ヤフー!ニュース」のコラムを書く。テーマは、コロナ禍に揺れるテレビの現在とこれからについてだ。夕食は、『チコちゃんに叱られる!』(NHK)を見ながら、我が家の人気メニュー「アヒージョ」。オリーブオイルに浸したパンも好き。80年代半ばから35年続けている、日刊ゲンダイのコラムの参考として吉田修一さんの小説『路(ルウ)』を読む。今夜も就寝は午前2時。

5月16日(土)

朝から週刊新潮の書評本を読む。同時に来週掲載分のゲラ直し。取り上げたのは瀬川裕司『映画講義 ロマンティック・コメディ』だ。休憩時間には、今年1月に亡くなった坪内祐三さんの著作を『ストリートワイズ』から読み直している。現在、5冊目の『文庫本を狙え!』。書店に並ぶ文庫の新刊を眺め、「これは坪内さんが書きそうだ」と予測するのが楽しみだった。残念だ。夕食は、いわゆる「刺身定食」。貝類が大好きなので、折り重なるように並ぶ赤貝やトリ貝に拍手する。23時から、ETV特集『お父さんに会いたい〜“じゃぱゆきさん”の子どもたち〜』(NHK)を見た。生きづらい人生を、必死で生きようとする人たち。静かな語り口で、社会と人間の実相を見せてくれた。

5月17日(日)

昨夜放送された、波瑠主演の土曜ドラマ『路~台湾エクスプレス~』(NHK)を録画再生。原作とも比較し、日刊ゲンダイのコラムを書く。大河ドラマ『麒麟がくる』を見ながら、義母が作ってくれた筑前煮やエリンギの粕漬などが中心の夕食。思えば、大河は第1作の『花の生涯』(1963年)から全部リアルタイムで見てきた。9年前、異色の学園ドラマ『鈴木先生』(テレビ東京系)で注目した長谷川博己さん。大河の主演が実現したことは感慨深い。

5月18日(月)

終日、週刊新潮の書評を書く。前記の2冊に『少女漫画家 赤塚不二夫』も加わる。よく知られた「ひみつのアッコちゃん」以外にも、赤塚は大量の少女漫画を生み出している。「ジャジャ子ちゃん」、「まつげちゃん」、「へんな子ちゃん」など、タイトルだけで笑ってしまう。夕食は信州から取り寄せた「おやき」。鉄火みそ、切り干し大根などが入った故郷の味だ。録画しておいた『隕石家族』(東海テレビ制作、フジテレビ系)を見る。新作が軒並み放送延期や制作中断となる中、貴重な連ドラだ。しかも設定がふるっている。数カ月後に巨大隕石が地球に衝突し、人類滅亡は不可避。と思いきや、突然隕石がコースを変えてしまう。そんな「緊急事態」に振り回される、ごくフツーの家族の「非日常的日常」がおかしい。

5月19日(火)

書評本『日高晤郎フォーエヴァー』を読み、原稿を書く。夕方の散歩では書店に立ち寄るのがルーティンだ。先週最終回を迎えた、WOWOWのドラマ『鉄の骨』。池井戸潤さんの同名原作小説が読みたくなり、文庫本を購入。かつて北海道の大学に単身赴任していた6年間、毎晩食事していたのが千歳の「柳ばし」だ。おかみさんが送ってくれたホッケを焼いて夕食。家族に小さな祝い事があり、久しぶりの缶ビール。1本だけなのにほろ酔いで、今夜は仕事にならない。第1回から楽しんでいる『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)は、今週も名場面を集めた総集編。地方への「出張」コーナーを含め、番組全体が復活する日を待ちたい。

(週刊新潮 2020年6月4日号)

 

「週刊新潮」2020年6月4日号


【気まぐれ写真館】 見上げれば、月

2020年05月30日 | 気まぐれ写真館

2020年5月29日


週刊朝日で、「朝ドラ」11月以降開始について解説

2020年05月29日 | メディアでのコメント・論評

 

 

朝ドラ「おちょやん」杉咲花 

異例の晩秋スタートで現場困惑

 

現在放送中のNHK連続テレビ小説「エール」が、6月29日から一時、放送を休止する。新型コロナウイルスの感染拡大の防止で、撮影を見合わせているためだ。

この影響で、2020年度後期のドラマも調整せざるを得ないという異常な事態となっている。60年近くにおよぶ朝ドラの歴史上、初めてのことだ。

「放送休止のしわ寄せが次作に来るかもしれません」

そう話すのは、朝ドラ評論家の田幸和歌子さん。

朝ドラは、今回から4K放送対応となり、編集の作業が変化した。それに加え、働き方改革の影響もあり、放送はこれまでの月〜土の週6回から、月〜金の5回と短くなっている。

「そこからさらに短縮してコンパクトなものになってしまうと、せっかく練り込まれた作品なのでもったいない気がします。ただ、撮影が再開しても、現場対応はいろいろと大変です」

大人数が集まったり、出演者が密着、密接したりする場面は撮りづらくなるからだ。

「エール」は、窪田正孝の主演で、作曲家・古関裕而の人生を描いている。後期は、戦前から松竹で活躍した女優・浪花千栄子をモデルにした「おちょやん」(主演・杉咲花)。「エール」の放送休止にともない、「おちょやん」も11月以降の開始にずれ込みそうだ。

メディア文化評論家の碓井広義さんは、こう話す。

「『エール』も『おちょやん』も実在の人物がモデルであるため、話数の調整はしやすいのでは。実際に起こったことをベースに描いていくわけですから、始まり方と終わり方はある程度決まっています。その分、途中でのコントロールのしやすさはあります。逆に、架空のエピソードを足していくほうが難しい」

仮に「おちょやん」が年度末に終了せずに、次々作も5月以降にずれ込む可能性もある。

前出の田幸さんは、

「思い切って『おちょやん』を春スタートにまでずれ込ませ、その間、しっかり作ってあげたほうがいいのでは」と話す。

碓井さんは、

「朝ドラは、日々の時計代わりであるとともに、特に春スタートの作品は、季節、年度のスタートに合わせた、暮らしのリズムとも一致している側面もあります。しかし、今回学校の9月スタートも検討されているように、コロナによって社会のリズムも大きく変わる可能性がある。その影響はテレビ界にも出てくるかもしれません」

まずは、「エール」が再開しないことには始まらない話ではあるが……。【本誌・太田サトル

(週刊朝日  2020年6月5日号)


「行列の女神」凄腕コンサルがよく似合う鈴木京香

2020年05月28日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「行列の女神」

鈴木京香が演じる

凄腕コンサルがよく似合う

 

ラーメンは好きだが、行列は苦手だ。それでも時々、「行列のできるラーメン店」に行ってみたいと思うが、コロナ禍でそれもままならない。鈴木京香主演「行列の女神~らーめん才遊記~」(テレビ東京系)で、リモート会議ならぬ、リモート行列を体験だ。

主人公の芹沢達美(鈴木)は人気店の創業者にしてカリスマ職人。コンサルティング会社「清流企画」を率いて、苦境に立つラーメン店を「行列のできる店」へと再生していくのが仕事だ。

18日放送(5杯目)はリタイアを考えている老店主の依頼で、街の中華食堂の後継者選びを行った。候補者たちに数日間、実際に店主として働いてもらい、その様子を見て決定するコンペ形式だ。

3人の候補者は、それぞれキャリアも技量もあるという。しかし芹沢の経験と観察眼は鋭い。料理人としての作法が雑だったり、店主として神経が行き届かない点などを見抜く。選ばれたのは、「店と人(客や近隣)」の両方を把握し、さらに「この味を残したい」という店主夫妻の思いを大切にする男(音尾琢真)だった。

鈴木京香といえば、昨年秋の「グランメゾン東京」(TBS系)を思い出す。倫子シェフがフレンチから中華に転じたみたいだが、一筋縄ではいかない凄腕コンサルがよく似合う。

また狂言回しの新人社員役、黒島結菜も健闘している。京香姐さんの指導で、「行列のできる女優」を目指したい。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2010.05.27


「応援歌」で盛り上がった朝ドラ、「軍歌」はどうする!?

2020年05月27日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

「応援歌」で盛り上がった朝ドラ、

「軍歌」はどうする!?

 

この春から放送中のNHK連続テレビ小説『エール』。もうすぐ2ヵ月になりますが、誰もが楽しく見られる、良質なドラマになっていると思います。

主人公は、作曲家の古関裕而(こせき ゆうじ)がモデルの古山裕一(窪田正孝)ですが、オペラ歌手を目指している妻・音(二階堂ふみ)との「夫婦物語」であり、幼少期から音楽に親しんできた2人の「音楽物語」でもあるという、絶妙な合わせ技が効いているのです。


「早稲田祭り」だった、先週の『エール』

先週は、よく知られた早稲田大学の応援歌『紺碧の空』の「誕生秘話」といった展開で、完全に「早稲田祭り」でしたね。

その上、「実は既婚者でした」の報道で話題となった、『あさイチ』の近江友里恵アナウンサーが早稲田出身で、しかも応援団に所属していたことがあるというので、「朝ドラ受け」も一層盛り上がっていました。

確かに、古関裕而が作曲した『紺碧の空』は、とてもいい応援歌です。

早慶戦が好きで、学生として、次に教員として、さらに保護者というか親としても、長年、神宮球場の慶應応援席に座ってきました。早稲田が「♪紺碧の空、仰ぐ日輪」と歌うときの一体感や、こちらに対する圧力は、相当なものだったことを思い出します。

実は古関裕而、戦後には慶應の応援歌も作っています。『我ぞ覇者』という曲なのですが、残念ながら、歌った回数はあまり多くありませんし、歌詞もすぐには思い出せません(笑)。

「♪若き血に燃ゆる者、光輝満てる我等」と歌う『若き血』や、「♪早稲田を倒せ、早稲田を倒せ、早稲田を倒せ~」と連呼する『ダッシュ慶應』などと比べると、明らかに出番は少なかったのです。

そうそう、裕一の妻・音を演じている二階堂ふみさん。在籍年数は多くなっていますが、今も総合政策学部所属の「塾生(現役の慶應生)」です。ちなみに、卒業した慶應OB・OGは「塾員」と呼ばれます。「塾生」の二階堂さん、『我ぞ覇者』はともかく、『若き血』のほうは、一度くらい歌ったことがあるかもしれません。


「応援歌」から「軍歌」へ

21歳の古関裕而と、18歳の妻・金子(きんこ)が東京へやって来たのは、1930年(昭和5年)9月のことでした。10月には、「コロムビアレコード(ドラマではコロンブスレコード)」の専属作曲家となります。

そして、新応援歌『紺碧の空』が神宮球場で初めて歌われたのは、翌31年(昭和6年)春の早慶戦。ドラマの通り、2勝1敗で早稲田が勝利しました。

さて、当時の時代背景に注目してみましょう。同じ31年の9月、「満州事変」が起こります。さらに32年1月に「第1次上海事変」。そして3月には「満州国」の建国が宣言される。

つまり、ここから日本という国が軍事色を強めていく時期でした。レコード会社も、時代に合った音楽を提供していくことになります。いわゆる「軍歌」や「時局歌」です。

古関裕而たち専属作曲家には、曲数のノルマがあります。当然、業務として「軍歌」も「時局歌」も作るわけです。

『満州征旅の歌』、『起てよ若人』、『肉弾三勇士の歌』などですが、やがて古関は、このジャンルでの代表作となる大ヒットを放ちます。「♪勝って来るぞと勇ましく」の歌い出しで知られる『露営の歌』。「盧溝橋事件」から「日中戦争」へと突入していった、37年の作品です。

古関が作った、軍歌のタイトルの一部を挙げてみます。『少壮空爆少年兵』、『華やかなる突撃』、『皇軍入城』、『南京陥落』、『黄河を越えて』、『形見の日章旗』、『銃後県民の歌』・・・。

コロムビアレコードが、「軍歌の覇者」というキャッチコピーを付けたほど、古関は軍歌のヒットメーカーとなりました。

さらに1941年(昭和16年)12月8日、つまり太平洋戦争の開戦当日の夜には、JOAK(後のNHK)のラジオ番組「ニュース歌謡」で、古関が書いた『宣戦布告』なる曲が放送されたのです。こうした活動は、敗戦まで続けられました。


「軍歌の覇者」をどう描く?

では、果たしてこのドラマでは、「軍歌の巨匠」「軍歌の覇者」だった古関をどう描くのでしょうか。それが気になります。

もちろん主人公は「古山裕一」ですが、ドラマ開始時に登場した『オリンピック・マーチ』も、『紺碧の空』も、紛れもない古関裕而の作品であり、見る側にとっては、基本的に「古山、ほぼイコール古関」と言っていいでしょう。

「古山裕一は『紺碧の空』は作ったけれど、架空の人物なので、『露営の歌』は作りませんでした」というわけにはいきません。

前述のように、レコード会社の専属作曲家としての「業務」だったことは事実です。では、戦時中もしくは戦後の古関の中に、いかなる「葛藤」があったのか、なかったのか。

また戦場へと駆り出された若者たちは、「戦時におけるエール(応援)」としての古関の軍歌を、どのような思いで聞き、そして歌ったのか。

さらに、「戦時放送」という形で戦争にかかわり続けた、当時唯一の放送局であるJOAK。その果たした役割や意味を、現在のNHKは、そして制作陣は、どう捉え、どのように表現していくのか。

実録ドラマの中の「戦争と音楽」。そして「戦争とメディア」。しっかりと見つめていきたいと思います。


言葉の備忘録156 どんな風に・・・

2020年05月26日 | 言葉の備忘録

ぼーっとできるのも才能です

 

 

 

どんな風に書くか

というのは、

どんな風に生きるか

というのと

だいたい同じだ。

 

 

村上春樹『村上朝日堂』

 

 

 


日刊ゲンダイで、情報番組の「盛りすぎ映像」について解説

2020年05月25日 | メディアでのコメント・論評

 

 

バイキング、モーニングショー

情報番組で“盛りすぎ映像”相次ぐ背景

 

情報番組の“盛りすぎ”虚偽映像に関する謝罪が相次いでいる。

19日放送の「バイキング」(フジテレビ系)が17日の原宿・竹下通りの混雑模様として紹介した映像が3月に撮影したものと判明し、20日、進行役を務める榎並大二郎アナウンサー(34)が謝罪。映像にマクドナルドのシーズン商品「てりたま」のポスターが映り込んでおり即バレしたのだ。

また「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)も20日に放送のJR蘇我駅に鉄道ファンがホームにあふれている写真が3月に撮影されたものだったことが明らかになり、同番組内で斎藤ちはるアナウンサー(23)が謝罪。

この日は只見線の「キハ40系」車両が小湊鉄道へ譲渡、蘇我駅で撮影できる希少な日で、鉄オタが集結していると報じたが、当日は小雨模様だったのに晴天の写真が紛れており、鉄オタから車両が別物と指摘。不要不急の外出をしている人の多さを意図的に“盛って”演出していたことが明らかに。

今どきSNSで熱愛をにおわせただけでもバレるのに、事実でないと一目でバレる映像を入れ込むのはお粗末としか言いようがない。

メディア文化評論家の碓井広義氏がこう言う。

■テレビの自粛警察化

「このような捏造が続く背景には“テレビの自粛警察化”と3密防止による現場の“マンパワー不足”があるのでは。『けしからん!』と言いたいがための素材をつくることにしか目を向けず、同時進行で検証されていることすら忘れている。番組のコンセプトに合わせるため、目を引くため、『バイキング』ならMCの坂上忍さんが怒るための素材づくりしか考えていない。

3密対策で現場スタッフも削減しているなら、取材すべきものを絞り込んで戦力を投入すべき。『モーニングショー』の蘇我駅のような内容は、現場にいる視聴者の投稿動画で十分かもしれない。不自由だからこそ、より本質を考え抜いた取材をすべきではないでしょうか」

ネットで簡単にバレることに気づいていないテレビマンが多いこと自体が衝撃である。


(日刊ゲンダイ 2020年5月23日)

 


大阪日日新聞に、「倉本聰の言葉」の書評

2020年05月24日 | 本・新聞・雑誌・活字

 

 

大阪日日新聞に、

「倉本聰の言葉」の書評が

掲載されました。

ありがとうございます。

 

 

「倉本聰の言葉」 

碓井広義:編、新潮新書 

言葉を旅する楽しさ

 

ずっとずっと昔。世界の国旗を覚えようとして、すぐさま挫折。地球儀をくるくる回して押さえた場所の国名を言えるようにしようとしたが、回すだけでついぞ指で押さえることはなかった。

しばらく時は過ぎ、思春期と呼ばれる年齢を迎えた頃に小田実の「何でも見てやろう」に感化され、世界中を旅することができる本を読みあさった。もちろん沢木耕太郎の「深夜特急」で、当たり前のようにバックパッカーに憧れたが、ページを閉じた瞬間に旅に出る勇気は見事に消滅。

本書は巨匠・倉本聰の傑作ドラマ全作品の中から厳選されたせりふ400余りが並ぶ名言集だ。ドラマの流れの中での言葉だが、一つ一つを切り取っても心に突き刺さる。深くて、重たくて、潔くて、寂しくて、悲しくて、切ない。

倉本聰を知ったのは「北の国から」。純、蛍を演じた2人は俳優として今も活躍しているが、いつまでたっても純、蛍のままで、申し訳ないがすぐに名前は思い出せない。いつぞやはドラマのロケがあったのだろうか、心斎橋の信号で大人になった蛍とすれ違ったが、「ほんまに大きなったなぁ」と、まるで親戚を見るような感情があふれた。

もはや、バックパックを担いだ世界を歩く旅人にはなれないし、その気力も体力もない。「純、蛍。金なんか望むな。倖(しあわ)せだけを見ろ。」「人が信じようと信じまいと君が見たものは信じればいい。」。今は言葉を旅する楽しさを満喫している。(一)

(大阪日日新聞 2020.05.14)

 


YOSHIKIさんと黒柳徹子さんの「ありがた感」

2020年05月23日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

異次元の人!? YOSHIKIさんと

黒柳徹子さんの「ありがた感」

 

X JAPANもそうですが、YOSHIKIさんも「異次元」という言葉が、よく似合います。

いえ、音楽家として優れた才能の持ち主というだけではありません。社会や世間とは一線を画す、もしくは俗世から離脱したかのような孤高の雰囲気。って、まさに「極めた人」じゃないですか。

缶コーヒー「ワンダ『極』」の最新CMで、YOSHIKIさんは黄金色のドラムを叩いています。ドラマーがドラムを叩いているだけなのに、秘宝を拝見する時と同様の「ありがた感」が漂うのはなぜだろう。

しかも決めゼリフは、たったひと言、「出来ました」。肩の力が抜けた、自然体の言葉が、見る側にじわっと浸透していきます。

これまた美味しいコーヒーが出来たという意味を超え、何か「素晴らしいこと」が起きたと告げられたようなインパクトがあり、思わず手を合わせたくなる。って、YOSHIKIさんは仏像か!

そういえば過日、YOSHIKIさんが新型コロナ救済基金に、約1000万円を寄付したと報じられました。俗世の困難を見過ごすことのできない、その異次元の慈愛にも感謝です。

「ワンダ『極』」CMより

 

そして、黒柳徹子さんもまた、「異次元の人」と言えるでしょう。

日本でテレビ放送が始まったのは1953年。その当時から、黒柳さんはテレビの中にいました。

黒柳さんを、初めて画面で見たのは、小学1年生だった61年です。ドラマ「若い季節」(NHK)、音楽バラエティー「夢で逢いましょう」(同)などの人気番組を掛け持ちしていました。

そして、約60年後の現在も「徹子の部屋」(テレビ朝日系)を続けている。驚異的なことです。

「ウーバーイーツ」のCMでは、黒柳さんが、小松菜奈さんと部屋の中にいる。室内に並んでいるのは、黒柳さんが我が子のように可愛がっているという、徹子カットの「盆栽」たちです。非凡な人が愛する凡才、いえ盆栽。

「あなた、お好きなの選んでいいわよ」と言われた菜奈さん、一つの盆栽を指さします。

すると黒柳さん、すっと真顔になって、「それね、私が一番好きな子なの」。

嗚呼! このひと言が黒柳さんらしくて笑ってしまう。思ったことはハッキリと言う。忖度なしです。白は白、黒は黒。パンダの配色と同じくらい明快だ。

いつの時代も、どんな社会でも、「自分の価値観」で生きていく。コロナ禍にも負けない強さを持つのが「黒柳徹子」であり、「異次元の人」である証左です。

そんな黒柳さんと同時代に生きられる私たちは、あのタマネギ頭に向って、手を合わせてもいい。きっと、ご利益があるはずです。ありがたや、ありがたや。

「ウーバーイーツ」CMより


言葉の備忘録155 犀(さい)の・・・

2020年05月22日 | 言葉の備忘録

 

 

 

犀の角(つの)のように

ただ独り歩め。

 

 

「サイの頭部にそそり立つ太い一本角のごとく、

 独りで自らの歩みを進めなさい」の意

――ブッダのことば

NHK 『瀬戸内寂聴の東北青空説法』(2011)より

 

 


NHK「路(ルウ)~台湾エクスプレス~」癒やされる秀作

2020年05月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

NHK「路(ルウ)~台湾エクスプレス~」

癒やされること必至の秀作

 

先週から始まった「路~台湾エクスプレス~」(全3回)。タイトルだけ見ると、かつての「プロジェクトX」が思い浮かぶ。

だが、台湾新幹線実現への取り組みは物語の一面だ。軸となるのは日本人と台湾人の運命的な「つながり」である。

主人公の多田春香(波瑠)は学生時代からの台湾好き。大手商社に就職して4年目、台湾新幹線プロジェクトに参加する。

しかし春香には、日本に残してきた恋人に言えない秘密があった。最初の台湾旅行で出会った、エリック(アーロン)という台湾人青年への思いだ。

連絡先のメモを紛失して探し出せないままだが、会いたい気持ちはずっと変わっていない。

実はエリック、日本の設計会社で働いている。もちろん春香は知らない。互いのことを気にかけながら、居場所が入れ替わっていたのだ。

そして第1話のラストでは、2人が8年ぶりの再会を果たすことになる。

とはいえ、「国境を越えた熱愛」といったトーンの恋愛ではない。男と女ではあるが、何より「人」として好ましく、また「こころの支え」として大切な存在なのだ。

原作は吉田修一の小説。脚本は「篤姫」や「江」の田渕久美子。演出は「花子とアン」の松浦善之助だ。

どこか懐かしい台湾の風景を背景に、静かで抑制の効いた恋情が、波瑠とアーロンを通じて丁寧に描かれていく。癒やされること必至の秀作だ。

(日刊ゲンダイ 2020.05.20)

 


言葉の備忘録154 経験する・・・

2020年05月19日 | 言葉の備忘録

 

 

 

経験するというのは

事実其儘(そのまま)に

知るの意である。

全く自己の細工を棄てて、

事実に従うて知るのである。

 

西田幾太郎『善の研究』

 

 

5月19日は、

西田幾太郎の誕生日。

1870年生まれ。

生誕150年。

 

 

 


「パンドラの箱」を開けてしまったテレビの、明日はどっちだ!?

2020年05月18日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

「パンドラの箱」を

開けてしまったテレビの、

明日はどっちだ!?

 

39の県で「緊急事態宣言」が解除されました。でも、第2波到来の不安は消えていませんし、この解除の結果が吉と出るかどうかも、まだ分からない状態です。

テレビ界でも、今期クールの目玉となるドラマの多くが、放送延期や制作中断に追い込まれたままです。

またワイドショーのコメンテーターたちは、自宅などスタジオ以外の場所からリモート出演し、モニターの中から語りかけています。さらに、メインキャスターが不在となるニュース番組まで現れました。これまた未曽有の事態と言えます。

しかし、それ以上に驚いたのは人気バラエティー番組から、「司会者」の姿が消えたことです。『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)の4月13日放送分で突如、司会を務めるマツコ・デラックスさんと村上信五さんが、「音声」だけの出演となってしまった。

ご存知のように、この番組は「世間で話題となっている様々な件」を独自調査し、スタジオのマツコさんと村上さんが、ツッコミ的なコメントをしていく構成になっています。

この4月13日の回で、何より意外だったのは、2人が音声のみであるにもかかわらず、番組が、それなりに成り立っているように見えたことです。

視聴者が番組の流れをよく理解しているという前提があるとはいえ、「番組の顔」である司会者が、それこそ顔や姿を見せていなくても、番組が「出来てしまった」ことに注目すべきでしょう。

70年近い時間をかけて築き上げ、見る側も作る側も当たり前だと思っていたテレビのスタイルが、一晩で丸ごと変わったようなインパクトがありました。ややオーバーな表現をすれば、「パンドラの箱」を開けてしまったのではないか。

『月曜から夜ふかし』は、今週5月11日の放送に至っても、2人の扱いは、ほとんど変わっていません。しかも、すでに2人の「不在」に、見る側が慣れ始めていることに気づくのです。

テレビであるにもかかわらず、声だけの出演の「日常化」。番組が「成り立っているように見えた」段階から、「成り立っている」段階へと進んできた。

いつになるのか分かりませんが、コロナ禍が終息したとします。その時、バラエティー番組には、以前と同様の「ひな壇芸人」が並んでいるだろうか。ワイドショーのスタジオには、タレントやコメンテーターが座っているだろうか。

いや、それどころか、バラエティーやワイドショーの司会者や、ニュース番組のキャスターも、以前と同じような形で存在しているのかさえ不明です。

広く知れ渡った言葉に「断捨離(だんしゃり)」があります。不要な事物を「断つ、捨てる、離れる」ことで、生活のみならず、生き方そのものも改善しようとする取り組みです。

現在のテレビは、新型コロナウイルスという外圧によって、この断捨離を強いられているとも言えます。人やシステムを見直して、「本当に必要なもの」だけを取捨選択する。

ただし、そうやって苦境を乗り切ったとして、すべてが「元通り」になるはずもありません。では、それを「退化」や「劣化」と呼ぶのか。それとも、予期せぬ「進化」なのか。

「ポスト・コロナ」時代のテレビが、あちらこちらに顔をのぞかせている現在、テレビというメディアの「本質」も、同時進行で問われているのかもしれません。


言葉の備忘録153 失敗は・・・

2020年05月17日 | 言葉の備忘録

 

 

 

失敗は、

人として生きて

いこうとする者の

年輪だ。

 

 

坂田信弘:原作、かざま鋭二:作画

『大地の子 ゆう』第5話

 

 


今夜見る予定の「ETV特集」

2020年05月16日 | テレビ・ラジオ・メディア

 

 

5月16日(土)よる11時

ETV特集

 

かつてアジアから来日し「じゃぱゆきさん」と呼ばれた女性はおよそ百万人。日本人男性との間に生まれた子供は十万人とも二十万人とも言われる。そんなアジアで生まれ育った子どもたちが成人を迎える今、多くが日本を目指している。目的は父親を探すため。20歳以前に父の認知があれば、日本国籍取得が可能だ。しかし認知は簡単ではない。父親と自らのアイデンティティーを探し求める若者のまなざしから、日本社会を見つめる。