日本民間放送連盟が発行している「月刊民放」。
発売中の11月号から、「放送時評」の連載が始まりました。
複数の執筆者の持ち回り形式なので、今後、数か月に1度の割合で、順番が回ってくるはずです。
今回は最初ということもあり、このところテレビに関して思っている
ことを、どどどっと(笑)書かせていただきました。
「大人」にとってのテレビドラマ
前クールの連続ドラマはやや寂しかった。特に大人の男が見続けたいものが少なかった。周囲からも「なぜ自分たち大人の見るドラマがないんだ?」と度々聞かれた。まさか「ドラマは若者を相手に作られているんです」とか、「テレビはあなた方をターゲットにしていません」などと言えるはずもない。
その一方で、若い人たちがテレビを、中でもドラマを見ていない。それは、たとえばNHK世論調査部の「20代男女と30代男性の1割以上がテレビを全く視聴していない」「20代女性のテレビ視聴時間は10年前と比べて25%以上も減っている」といった調査結果を見なくても、日常的に接している学生たちに聞いてみるとよくわかる。しかも制作側がまさに「若者向け」として作っているものほど、当の若者たちが素通りしている。送り手が考える「受取り手」と、実際のそれとの間が、かい離しているように思えてならない。
もう一つ、気になるのが視聴形態だ。地デジになって、以前よりも録画で見る人が明らかに増えている。何しろ、あの番組表も、ワンプッシュの録画予約も、どんどん放り込めるハードディスクも実に便利だ。しかも、かつての録画機はいかにも「録画したものを見る」という画質だったが、今は地デジ効果でオンエアと見間違えるほどだ。「自分の都合」に合わせて、オンエアと変わらない「高画質」で、「自分が選んだ番組」を見られる快適さは誰も否定できない。
しかし、テレビの側はあくまでも「リアルタイム視聴」を前提とした長年のビジネスモデルを堅持している。録画して見ている視聴者を「頭数」から外した番組作りを行っている。「タイムシフト視聴」という視聴者(スポンサー企業から見れば消費者)の動向を無視しており、ここにもまた大きなかい離があるようだ。
乱暴なことを言えば、テレビは戦争末期の軍部のようになっていないだろうか。現実を正確に見ることを避け、自分たちが描いたストーリーに固執し、白を黒と言い続けて多大な犠牲者を生んだ戦争指導者たち。NHKスペシャル「終戦なぜ早く決められなかったのか」の中で、「無理だと思っていたが、自分からは言えなかった」と語る彼らと今のテレビが重なってくる。
テレビも、そろそろ現実と向き合ったほうがいい。「消費活動の主役は若者層で、彼らは送り手の都合に合わせてテレビの前に待機しており、番組を見るだけでなく、そこで流されるCMに刺激されてモノをばんばん買ってくれる」というストーリーが、自分たちの思っているほど成立してはいない現実と。
今テレビを見ているのは、若者より遥かに多数の大人たちだ。生活における携帯電話やスマートフォンの重要度が高い若年層をテレビに向ける努力は必要だが、テレビの重要度が高い年齢層をもっと大切にすべきではないか。ドラマに関しても、「若者にウケたい」「(見たけりゃ)大人も見ていい」ドラマだけでなく、「大人が見たい」ドラマを意識して作り出すことが必要だと考える。
・・・・以下、略。
続きは、ぜひ本誌をご覧ください(笑)。