碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

週刊新潮で、芸能界「10代不足問題」について解説

2017年12月31日 | メディアでのコメント・論評



「広瀬すず」「竹内涼真」ひっぱり凧の陰に
芸能界“重大”問題

現在、芸能界では、10代の俳優不足という“重大”問題が起こっている。映画やドラマなどで高校生役をこなしているのは、どこかで観たような顔ぶればかり。

女優では、広瀬すず(19)に仕事のオファーが一極集中している。一方、男優では、20代半ばの菅田将暉や竹内涼真が、学ラン姿で演じるほかない有り様なのだ。

11月20日、NHKは2019年度前期放送の朝ドラ「夏空」のヒロインに、広瀬を起用すると発表。

日本アニメの草創期に北海道十勝で、アニメーターを志した女性の高校生時代から40歳前後までを演じるという。

「NHKは、再来年の放送にもかかわらず、『夏空』のヒロイン発表を行った理由について、女性記者が過労死したことで導入された“働き方改革”を挙げました」

と解説するのは、スポーツ紙の芸能担当記者。

「1日の撮影時間を短縮せざるを得ず、これまでよりも早めにドラマ制作に取りかからねばならないからということでした。とはいえ、『夏空』は朝ドラの100作目に当たるのですが、来年の99作目『まんぷく』はキャスティングも何も決まっていません。結局、映画やドラマにひっぱり凧になっている広瀬のスケジュールを今年中に押さえておく必要があったからではないでしょうか。いまでは、高校生役を演じられる若手女優というと、広瀬くらいしか見当たらないのです」

これまでに、広瀬が高校生に扮した作品は、映画では「先生! 、、、好きになってもいいですか?」や「チア☆ダン」、ドラマでは「怪盗 山猫」や「学校のカイダン」などいくつもある。

「“制服が着られる女の子”なら、まず頭に浮かぶのが広瀬です。同学年の橋本環奈も、『セーラー服と機関銃』や『ハルチカ』などの映画で女子高生ヒロインを務めたり、また、一つ年下の永野芽郁(めい)もドラマ『僕たちがやりました』で、同じく女子高生役を演じている。この2人が広瀬に続いていますが、やはり露出の多さと知名度では、広瀬の一人勝ちで間違いありません」(同)

痛々しい

一方、男優では、広瀬のような一人勝ちがいるわけではない。

そもそも、10代の役を演じられる、10代の役者がいないのである。

そのため、例えば、「帝一の國」という映画で、高校生に扮したのは菅田将暉と竹内涼真らだった。さらに、「オー! ファーザー」では、岡田将生(まさき)が高校2年生の役で登場し、学ラン姿を披露。福士蒼汰も、「ストロボ・エッジ」で、有村架純(24)と高校生カップルを演じている。

「なかでも、最年長だと思われるのは、小栗旬です」

とは、芸能ジャーナリストである。

「当時31歳でしたが、月9の『信長協奏曲』で戦国時代にタイムスリップした高校1年生の役を務めていました。ただ、いくらなんでも痛々しいものがあった。他に、『僕たちがやりました』で、28歳だった窪田正孝が高校2年生の役。さすがに制作発表の記者会見で、“気づいたら29になるみたいな感じだし……。高校生役なんてできるかなと思って。ヒロイン(永野芽郁)とは11歳差だし、あと一つでひと回り。結構、シンドイですよ”とボヤいていました」 

なぜ、芸能界に“重大”問題が起こったのか。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、

「広瀬さんは、『ゼクシィ』などのCMで注目を集めてから一気に主役級の女優へと駆け上がりました。これほど早いスピードでブレイクした女優はなかなかいません」

と指摘する。

「だから、広瀬さんより年下の女優が育ってきていないという印象を受ける。テレビや映画の制作者側はキャスティングで冒険しようとせず、いわば安易に広瀬さんを選び、一極集中が進むことになったわけです」

しかし、男優の方が問題はより深刻だという。

「制作者側が大コケしないようにと、知名度のある男優を選ぶようになっています。その結果、どの作品も同じような人が出ているということになって、新しい人にはスポットライトが当たるチャンスが巡ってこない。すでに売れた役者ばかりに頼り切っていては、自分で自分の首を絞めることになるのに、制作者側がそれに気づいていないのです」(同)


そのうち、高校生を演じるのが、白髪やシワの目立つようになった役者ということになるかもしれない。

(週刊新潮 2017年12月28日号)

『陸王』も終わって、2017年の「ドラマ」を振り返ってみると・・・

2017年12月30日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


クリスマスプレゼントのような、日曜劇場『陸王』(TBS系)の最終回もオンエアされ、2017年のドラマ界もフィナーレを迎えようとしています。1月から12月までに放送された「ドラマ」を振り返りながら、今年の「この1本」を選んでみたいと思います。


「ドラマのTBS」が復活か?

この1年、ドラマ界をリードしてきたのは、明らかにTBSでした。導火線となったのは、昨年10~12月に放送された『逃げるは恥だが役に立つ』です。新垣結衣さんと星野源さんが、契約結婚という新たな恋愛の形を絶妙な表現で提示していました。

その勢いを受けた今年の第1弾が『カルテット』(出演:松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平)です。緊張感のある台詞の応酬が見事でした。その後もTBSは、共感しづらいヒロインのW不倫のてん末を描いた『あなたのことはそれほど』(波瑠、東出昌大)など意欲作を連打してきました。

特に今期は、ドラマの王道感に満ちた日曜劇場『陸王』(役所広司、竹内涼真)。マニアックな笑いのクドカンドラマ『監獄のお姫さま』(小泉今日子、森下愛子、菅野美穂、坂井真紀、満島ひかり)。チーム医療のリアルを取り込んだ『コウノドリ』(綾野剛、吉田羊)という話題作3本が並びました。

これらは、よく練られた脚本と興味深い登場人物、さらに物語にふさわしいキャストに支えられており、その作り方は基本的に正統派です。またチーム半沢と呼ばれる、『陸王』の伊與田英徳や福澤克雄、『カルテット』の土井裕泰、『あなそれ』『監獄のお姫さま』の金子文紀といった力のある作り手たちによる、“署名性のあるドラマ”になっていることも特色です。「ドラマのTBS、復活」と言っていい1年でした。


半年間、毎日楽しめた2本の「昭和ドラマ」

今年のドラマ界で、大きな収穫の一つが『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)の出現でしょう。

現在のテレビを支える“大票田”でありながら、高齢者層はずっとないがしろにされてきました。このドラマは、自身も高齢者である脚本家・倉本聰さんが仕掛けた、高齢者による、高齢者のための、高齢者のドラマという一種の反乱、いや真昼の革命です。

第一の見所は、浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫といった大女優たちが見せる、ノスタルジーに満ちた“虚実皮膜”の人間模様。次に、長い間この国と芸能界を見続けてきた倉本さんが、物語の中に仕込んだ警句、鋭い社会批評、そしてテレビ批判でした。

それは介護問題からテレビ局の視聴率至上主義、さらに禁煙ファシズムとも言うべき風潮にまで及んでおり、何ともスリリングにして痛快でした。時代設定は現代ですが、描き出された世界観はまさに昭和であり、そのテイストはシルバードラマ第2弾『トットちゃん』でも継承されています。

『やすらぎの郷』と同時期に放送されたのが、NHK朝ドラ『ひよっこ』でした。ヒロインは、高校卒業後に東京で働き始める谷田部みね子(有村架純)。架空の人物であるみね子は「何者」でもないかもしれませんが、家族や故郷、そして友だちを大切に思いながら懸命に、そして明るく生きていました。いわば等身大のヒロインであり、だからこそ見る側は応援したくなったのです。

まだ戦後の影を残し、暮らしも社会も緩やかだった昭和30年代。「大阪万国博覧会」(同45年)が象徴する、経済大国へとこの国が変貌していく40年代。そのちょうど境目、東京オリンピックが開催された昭和39年から物語を始めたことで、私たちが何を得て、何を失ってきたのかを感じさせてくれました。昭和ドラマの真骨頂です。


2017年の「この1本」は!?

他に印象に残ったドラマを挙げるとすれば、日本テレビ系では、アラサー女子の恋と仕事に関する“勘違い”が笑えた『東京タラレバ娘』(吉高由里子)。また、“隣の美人妻”と“秒殺アクション”をダブルで楽しめた『奥様は、取り扱い注意』(綾瀬はるか、西島秀俊)もあります。

「月9」がどうにも振るわなかったフジテレビ系にも、『嘘の戦争』(草なぎ剛)や『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(小栗旬)、今期の『刑事ゆがみ』(浅野忠信、神木隆之介)といった異色の秀作がありました。

そうそう、忘れてはならないのは、テレビ東京系の「ドラマ24」枠です。今年も『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら』(大杉漣、遠藤憲一ほか)、『孤独のグルメ Season6』(松重豊)、『下北沢ダイハード』(古田新太ほか)など、深夜ならではの実験的で刺激的なドラマが続きました。

というわけで、もしも2017年の「この1本」を選ぶとすれば・・・。

豊作のTBS作品も捨てがたいのですが、今回は『やすらぎの郷』にしたいと思います。テレビ界に一つの風穴をあけたこと、新たな可能性を示したこと、何より82歳の現役脚本家・倉本聰さんの挑戦に敬意を表したいのです。

次点の第2位として、24日に終了したばかりの『陸王』を挙げます。これまで、もう十分に評価されていますが、こうなるぞと分かっていても、最後まで、見る側の感情を気持ちよく揺さぶってくれた手腕は、やはり大したものだからです。

そして第3位が『カルテット』です。見る側にとって、まさに“行間を読む”面白さがありました。ふとした瞬間、舞台劇を見ているような、緊張感あふれる言葉の応酬は、脚本家・坂元裕二さんの本領発揮でした。

それをオンエア時にリアルタイムで見ようと、録画などタイムシフトで見ようと、「いいドラマ」は見た人に必ず何かを残してくれます。来年もぜひ、早く続きが見たくて堪らないドラマ、ついクセになるような味わいのドラマが、1本でも多く現われてほしいと願っています。

書評した本: 中川 右介 『阿久悠と松本隆』ほか

2017年12月30日 | 書評した本たち



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

二人の天才が交差 もう一つの現代史
中川 右介『阿久悠と松本隆』

朝日新聞出版 972円

中川右介『阿久悠と松本隆』は不世出の作詞家2人の軌跡を描いている。1971年、『スター誕生!』(日本テレビ系)が始まった。

企画から関わる阿久悠だが、山口百恵とは距離を置いた。彼女にはレコード会社の敏腕プロデューサーがいたためだ。やがて百恵は沢田研二、ピンク・レディーなど、阿久が手がける歌手たちにとって最大のライバルとなっていく。

一方の松本隆は、60年代末に細野晴臣たちと後の「はっぴいえんど」を結成。初めて日本語でロックを歌った伝説のバンドだ。

74年にアグネス・チャン「ポケットいっぱいの秘密」の作詞で周囲を驚かせたが、注目を集めたのは太田裕美の「木綿のハンカチーフ」だ。

阿久が書いた、都はるみ「北の宿から」と同じ75年の発売。4番まである長さ、しかも男女の視点が頻繁に入れ替わるという革新的な曲だった。

阿久悠と松本隆、それぞれの取り組みをカットバックさせながら、著者はアイドル全盛時代へと向かう音楽界と時代状況を活写していく。

両者が一瞬交差するのが81年だ。3月にピンク・レディーが解散。阿久は大人の歌の作り手へと変化する。松本は松田聖子に「白いパラソル」を提供し、寺尾聰「ルビーの指環」でレコード大賞を獲得した。

歌謡曲という枠組みの中で改革を進めた阿久悠。異端者であるがゆえに枠組みからも自由だった松本隆。音楽と社会意識がリンクしていく本書は、いわば“もう一つの現代史”である。



実相寺昭雄 
『実相寺昭雄叢書I 闇への憧れ〔新編〕』

復刊ドットコム 3996円

生誕80周年を迎えた実相寺昭雄監督。その処女出版にして最も重要な著作『闇への憧れ』が40年を経て復活した。映画や音楽への敬意を踏まえて展開される、テレビジョンに関する論考は先鋭的かつ過激だ。また庵野秀明監督が新たに語った実相寺像も示唆に富む。


宇野常寛 『母性のディストピア』
集英社 2999円

気鋭評論家による最新サブカルチャー論だ。対象となるのは『風立ちぬ』の宮崎駿、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季、そして『攻殻機動隊』の押井守。彼らを通じて「戦後」を検証していく。また『シン・ゴジラ』、『君の名は。』なども独自の視座で読み解く。


相場英雄 『トップリーグ』
角川春樹事務所 1728円

大和新聞の松岡は、官房長官番として権力の中枢に食い込んでいる。同期入社で、現在は出版社系週刊誌記者の酒井は、埋立地で発見された1億5000万円の謎を追っている。浮かび上がってきたのは、かつ
て首相の首を飛ばした疑獄事件。2人の運命も急転していく。


堀井憲一郎 『愛と狂瀾のメリークリスマス』
講談社現代新書  907円

思えば不思議な現象だ。キリスト教徒でもない日本人が、毎年キリスト降誕祭に大騒ぎするのだから。コラムニストの著者は調査の結果、これぞ「日本人ならではの知恵」だという。戦国時代から現代まで、500年に及ぶ日本人とクリスマス祝祭の関係が明かされる。

(2017年12月14日号)



佐伯啓思 『「脱」戦後のすすめ』

中公新書ラクレ 842円

著者は今の日本を、「文明の衰退のプロセス」の実験場と見る。人と社会を疲弊させるばかりのグローバリズム。無限の経済成長を求めるほど深まるニヒリズム。憲法と防衛をめぐる不毛な議論。「独裁は民主主義から生み出される」という警告がリアルに響いてくる。


藤 真利子『ママを殺した』
幻冬舎 1404円

女優・藤真利子は作家・藤原審爾の娘だ。火宅の人でもあった父と結ばれ、自分を生み育ててくれた母。著者はそんな最愛の母を11年の介護の末、昨年秋に見送った。本書は両親のなれそめから家族3人の軌跡、さらに母と娘の切実な絆までを綴った凄絶な手記だ。

(2017年12月21日号)


「孤独のグルメ」に関するコメントを、ワシントンポストが掲載

2017年12月30日 | メディアでのコメント・論評


New Year’s Eve in Japan:
Watching a hit TV show
about a man who eats alone


By Anna Fifield
Asia & Pacific
December 26

TOKYO — Forget big and almost always disappointing parties, and that struggle to get home after midnight. In Japan, New Year’s Eve is all about watching TV at home with your family, a reward after you’ve done your end-of-year deep clean.

Usually, Japanese families gather to watch the “Year-end Song Festival” on NHK, the public broadcaster, where popular singers are divided into teams — red for women, white for men — and battle it out, with the winner announced shortly before midnight. (More often than not, it’s the men.)

Some families switch channels to watch the “This Is No Task for Kids!”variety show in which comedians do stupid things and get punished for screwing up.

But this year a show that for many Japanese “salarymen” is pure escapism will take on the entertainment programs. “The Solitary Gourmet” will broadcast its first New Year’s Eve special, in which the star, a character named Goro Inogashira, will travel by himself to the western coastal area of Setouchi and eat. All by himself.

“I think TV Tokyo has given up trying to win audience for this slot,” Yutaka Matsushige, the actor who plays Inogashira, joked about the channel’s decision to broadcast a New Year’s special on a night that, for almost 70 years, has been defined by the red-and-white singing contest on NHK.

“The Solitary Gourmet,” now in its sixth season, is a uniquely Japanese kind of hit.

This is a country where men are supposed to get jobs in big companies and remain there for life, spending long days in the office and then long nights eating, drinking and sometimes singing karaoke with their superiors. If your boss asks his team to have dinner together, there is no saying no. These salarymen barely see their wives and children during the week.

That is why Inogashira has emerged as a kind of role model for a big swath of Japanese society. He’s a middle-aged Japanese man, but he’s free from the round-the-clock obligations of corporate life. He’s a self-employed salesman of soft furnishings imported from Europe.

He doesn’t drink. He’s not obliged to socialize with colleagues. He’s unencumbered by a family.

He just travels the country selling his wares. And when he gets hungry, he stops off at small, no-frills, family-run restaurants and relishes the local specialties. Over six seasons, he has eaten chicken hot pot in Fukuoka and grilled beef tongue in Sendai.

“Salarymen are corporate slaves who work tirelessly for their companies and their families,” said Ushio Yoshida, a TV critic for the Tokyo Shimbun newspaper. “But Inogashira has escaped this slavery. That’s why he’s a hero to many people.”

In food-mad Japan, the show also has helped take some of the stigma out of eating alone.

Inogashira is a fictional character, and the show is scripted — he thinks about what to eat, describes what he is eating and comments on what others are eating — but the restaurants he visits are real.

Before season six began this spring, Matsushige told local reporters that he didn’t understand why people were interested in watching a middle-aged man just eating — and eating slowly. Still, he said, it’s the food that’s the star of the show. He’s just a supporting actor.

The show is made up of lots of long, lingering footage of the menus and the meals — sizzling meat, trays of sashimi, steaming bowls of noodles. These are the kind of shots typically seen on cooking shows rather than drama programs.

Inogashira sits there, by himself, and just savors the food. He’s not looking at his phone; he’s not reading a book — he’s just enjoying every mouthful. He never Instagrams his meals.

He’s not self-conscious about being alone in rowdy bars or barbecue restaurants. He even has a sweet tooth and enjoys desserts — something associated with being a sissy for many Japanese men.

“He’s very particular about how he eats each dish. He always asks the restaurant staff how to eat the meal to maximize the flavor and loyally follows their instructions,” Toyo Keizai, a popular weekly magazine for salarymen, noted in an article. “You hear Goro’s inner monologue. That’s all there is, but the time passes fast.”

Sometimes, however, the show proves controversial. A minor furor broke out on Twitter when Inogashira put soy sauce in his natto, a sticky ¬fermented-bean dish, and then mixed it in. Aficionados say the natto should be whipped up first and then the soy sauce should be added.

On New Year’s Eve, TV Tokyo will run a 90-minute special, from 10 to 11:30 p.m., in which Inogashira takes his last business trip of the year to the Setouchi area, between Hiroshima and Osaka.

The area is famous for its seafood but also for udon, a thick wheat-flour noodle. On New Year’s Eve, Japanese people usually eat soba, a thinner buckwheat noodle said to symbolize longevity — long life like a long noodle.
But TV Tokyo is keeping the menu for New Year’s Eve under wraps for now.

The show is based on a comic-book series that was popular in the 1990s and was translated into languages including Spanish and French. The writer, Masayuki Kusumi, will appear live on television before the show is broadcast.

At the beginning, these stories were popular among men in their 30s to 40s, who started writing online about their experiences visiting the same restaurants, Kusumi said.

Business executives who can eat alone feel liberated from the demands and stresses of work, and the audience enjoys that, the program’s producer has said.

A senior government official who often has to endure long, stuffy dinners for work said he tries to follow the solitary gourmet’s example as often as he can, patronizing small eateries and enjoying not having to talk about government business.

But now, the show has become popular among women and younger men, too, with viewers eager to see where Inogashira goes next.

“The main character behaves honestly, following his appetite and his instincts like a wild animal. He’s just an ordinary middle-aged man, but he lives very freely,” said Yoshida, the TV critic. “That’s liberating and refreshing to watch.”

The fact that Inogashira is single resonates in a country where young people are spurning marriage, said Hiroyoshi Usui, professor of media culture at Sophia University in Tokyo.

His choice of simple, ordinary, inexpensive restaurants shows that one can find small bursts of happiness without trying too hard, Usui wrote on his blog.


Yoshida said that when she watches the show, she often gets a craving for whatever Inogashira has been eating. “If Inogashira was eating curry, I might eat curry the following day,” she said. “It’s quite influential.”

But Matsushige, the actor who plays the solitary gourmet, has a warning for viewers: “If you watch the show at this late hour on New Year’s Eve and get hungry, there won’t be any restaurants open. So don’t get mad at us.”

Yuki Oda contributed to this report.

(The Washington Post 2017.12.26)


記事の中で、「Usui wrote on his blog」と紹介されているのは、ヤフー!ニュースの連載で「孤独のグルメ」について書いたものを指します。

以下に、転載しておきます。



あと数回となった“幸福な一人飯” 
「孤独のグルメ」を味わい尽くしたい!?

今年上半期のテレビ界、あちこちで“食ドラマ”を目にしました。「ホクサイと飯さえあれば」(TBS系)、 「野武士のグルメ」(ネットフリックス)、 「ワカコ酒」(BSジャパン )、「幕末グルメ ブシメシ!」(NHK)などです。

しかし個人的には、あと数回を残すのみとなった「孤独のグルメ Season6」(テレビ東京系)が、最もフィットする食ドラマです。


定番の味「孤独のグルメ」

開始から5年。「孤独のグルメ」はシリーズも6を数え、すっかり深夜の人気定食、いえ人気の定番となりました。

何がいいかと言えば、「変わらないこと」ですね(笑)。主人公の井之頭五郎(松重豊)が、出かけた先の町で早々に仕事を済ませ、食べもの屋に入るというパターンは、ずっと変わっていません。

今期も、新宿は淀橋市場の豚バラ生姜焼き定食を、世田谷区太子堂の回転寿司を、また千葉県富津のアジフライ定食を、どれもうまそうに食べています。しかも、このドラマの名物である五郎のモノローグというか、心の中の声がよりパワーアップしているのです。

たとえば渋谷道玄坂の「長崎飯店」。皿うどんに入っていた、たくさんのイカやアサリに、五郎は心の中で「皿の中の有明海は、豊漁だあ~」と感激です。また春巻きのパリパリした食感について、「口の中で、スプリングトルネードが巻き起こる」と熱い実況中継を展開します。

さらに追加注文の特上ちゃんぽんに、長崎ソースをドバドバかけて食べながら、「胃ぶくろの中が『長崎くんち』だ。麺が蛇踊りし、特上の具材が舞い、スープが盛り上げる。最高のちゃんぽん祭りだ!」と、驚いちゃうほどの大絶賛です。

もしもこれを情報番組などで、若手の食リポーターが語っていたら噴飯ものでしょう。きっと「オーバーなこと言ってんじゃないよ!」と笑われてしまいます。

しかし、我らが五郎の言葉には、“一人飯(ひとりめし)のプロ”としての説得力があります。「食への好奇心」、「食への感謝の気持ち」、そして「食に対する遊び心」の3つが、過去のシリーズ以上に“増量”されているからです。


最近の「食ドラマ」

そういえば、「孤独のグルメ」をはじめ、最近の食ドラマは主役1人で成立させているものが多いですね。

かつて「一人飯」は「ぼっち飯」などとも言われ、マイナスイメージが強かった。でも、いまどきは未婚や晩婚に加え、離婚も増えたりして、個の自由を大切にする考えが広まり、「一人飯」が共感を呼ぶようになったのではないでしょうか。

しかも、最近の食ドラマに出てくるのは、高級店や高級食材ではなく、普通の食堂や食材が中心です。デフレが日常化する中で、無理をしなくても手が届く幸せを、じんわりと肯定してくれているのです。

あと数回の幸福な一人飯「孤独のグルメ」。その“定番の味”を、まさに味わい尽くしたいと思います。

(ヤフー!ニュース「碓井広義のわからないことだらけ」2017.06.17)

30日(土)午後、「ミヤギテレビ」にVTR出演

2017年12月29日 | テレビ・ラジオ・メディア


先日、仙台のミヤギテレビ(日テレ系)から取材を受けました。

テーマは、観光PR動画についてです。

壇蜜さんが出演した、宮城県の観光PR動画「涼・宮城」。

いろいろな意味で話題となりましたが、今回新たに石原プロの協力を得て、「湯渡軍団」が制作されました。

この一連の動画作品に対する評価など、インタビューに応えています。

放送は、明日30日(土)の午後です。




ミヤギnews every.年末SP 
「追跡!! ニュース2017」
12月30日(土) 14:00~14:55 
ミヤギテレビ


<番組情報>

▽いま全国の自治体がしのぎを削るの観光PR動画。宮城でも「涼・宮城」「湯渡軍団」とユニークな動画が登場し話題に。なぜ公開が相次ぐのか?そのワケと成功の秘訣を追跡する。

▽衆議院選挙直前に巻き起こった野党再編。それを巻き起こした希望の党。落選候補はいま何を思う…。

▽宮城初開催の和牛五輪。牛に青春を捧げる女子高校生に密着。新人気象予報士の奮闘を通して1年の天気を振り返る。

産経WEST【甘辛テレビ】での「コメント」再掲載

2017年12月28日 | メディアでのコメント・論評


「コメンテーターは1人で十分」
「ネット世論におずおず」
…グッときた著名人の苦言・至言
~今年のTV界総まくり

今年もいろいろあったTV界。相次ぐ不倫に若手芸能人の引退、小林麻央さんのがん死…。年末恒例のTV界総まくりは今回、ちょっと趣を変えて、私が直接取材、あるいは見聞きした中で、グッときたセリフや苦言、至言を紹介する形で振り返ります。(豊田昌継)

〈一つの番組にコメンテーターってあんなにいります? 彼らが専門外のことを無難に発言することに視聴者は飽きています。大上段に斬ることができる人が1~2人いれば十分ではないでしょうか〉

フリーアナウンサーの羽川英樹さんに取材したのは1月でした。現在64歳。最近はラジオ出演がメインとなりましたが、「11PM」や「2時のワイドショー」で培った切れ味は健在でした。僕もこの意見に大賛成です。

〈全国ネットになると縛りや規制もある。大きなグローブをはめて戦っているようなもの。こちらは素手でガチンコ。それが関西人の気性に合っているし、クレームがあるかもしれませんが数字は伸びます〉

久しぶりにメッセンジャー黒田有さんを単独で取材したのは4月のことでした。番組では“いじられ役”が多いですが、彼の目線に注目してください。常に冷静です。

〈『1億総文句言い』の現代では、どちらに判断を下しても矢が飛んでくる。きれいに裁けない。となると、影響力のある『ネット世論』を横目に、あいまいなまま、おずおずと模様眺めするしかない〉

6月、MBSテレビ「ちちんぷいぷい」の“ニュースのおっちゃん”の不倫報道をめぐり、碓井広義・上智大教授に、処分をためらう局の対応について聞きました。おっちゃんは10月改編でこっそりと番組を退きました。


〈僕のボケは、絵で言うと『お前、何を描いてるねん?』というボケなんですが、こいつ(小杉)が瞬時にパパッと色を塗ってくれる。『吉田が言いたかったのはこういうことか』と説明してくれるんです〉

9月、お笑いコンビ「ブラックマヨネーズ」の結成20年記念番組の制作会見がカンテレでありました。その際の吉田敬さんの発言です。同局では「村上マヨネーズのツッコませて頂きます!」「ウラマヨ!」のMCでコンビ仲の良さが際立つ2人。吉田さんと小杉竜一さんの笑いにおける関係性がわかるコメントでした。

〈政治的なコメントを求められたときは、仕事としてとか好感度を求めるとかではなく、50年後や100年後の日本がよくなるように、というのを心がけて、何の計算もなく発言させてもらっています

TBS系ドラマ「陸王」でも好演した吉本新喜劇座長の小籔千豊さん。最近はお笑いだけでなく、討論番組でも力量を発揮しています。彼の“真っ向発言”は時としてネットで炎上することもあるようですが、無難な番組に比べてよっぽどマシです。

〈名古屋の人はマイクを向けると基本は逃げはるそうです。でも、僕が行くと来てくれるんです。スタッフも不思議がっています。いっぺん、地元のおばちゃんには『関西人なのにガツガツしてないのがええ』と言われました〉

ほのぼのしたロケでおなじみお笑いコンビ「矢野・兵動」の兵動大樹さん。関西だけでなく、名古屋でも同様の番組をこなしています。この発言、裏を返せば“ガツガツ”は関西しか通用しないということでしょうか。

〈自分が思い描ける範囲なんて知れています。出演者や周囲からわけの分からん球が飛んできたりする。それを受け入れる方がオモロイものが作れると気づいたんです〉

読売テレビ「ダウンタウンDX」を人気番組に育て上げ、現在は「Nj」のアーティスト名でライブやラジオ番組でマルチに活躍する同局の西田二郎プロデューサー。すべてを受け入れる柔軟性こそが番組作り…いや、どの世界にも通用するコツかもしれませんね。今年最も感動した言葉でした。では皆様、よいお年を…。

(産経WEST【甘辛テレビ】 2017.12.27)

2017年ドラマ総括 TBS復活と昼ドラ「やすらぎの郷」の革命

2017年12月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



TV見るべきものは!!年末拡大版

ドラマのTBS復活と昭和ドラマの隆盛
ドラマ大賞 倉本聰脚本「やすらぎの郷」

この1年、何本もの“見るべきドラマ”を生み出してきたのはTBSだ。緊張感のあるセリフの応酬が見事だった「カルテット」(出演・松たか子ほか)、共感しづらいヒロインのダブル不倫を描いた「あなたのことはそれほど」(波瑠)などの意欲作を連打した。

特に今期は、ドラマの王道感に満ちた「陸王」(役所広司)、マニアックな笑いの「監獄のお姫さま」(小泉今日子ほか)と話題作が並んだ。よく練られた脚本、興味深い登場人物、さらに物語にふさわしいキャストに支えられており、その作り方は基本的に正統派である。

また「陸王」の伊與田英徳や福澤克雄、「カルテット」の土井裕泰、「あなそれ」「監獄のお姫さま」の金子文紀ら力のある作り手たちによる“署名性のあるドラマ”であることも特色だ。「ドラマのTBS、復活」と言える1年だった。

今年のドラマ界で、大きな収穫の一つが「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)の出現だろう。現在のテレビを支える“大票田”でありながら、高齢者層はずっとないがしろにされてきた。このドラマは、自身も高齢者である脚本家・倉本聰が仕掛けた、高齢者による、高齢者のためのドラマという一種の反乱、真昼の革命だ。

第1の見どころは、浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫といった大女優たちが見せる、ノスタルジーに満ちた虚実皮膜の人間模様だった。次に、長い間この国と芸能界を見続けてきた倉本が、物語の中に仕込んだ鋭い社会批評である。それは介護問題からテレビ局の視聴率至上主義、さらに禁煙ファシズムの風潮にまで及んでおり、それらがスリリングにして痛快だった。舞台は現代だが、描かれた世界観はまさに昭和である。

「やすらぎの郷」と同時期に放送されたのが、NHK朝ドラ「ひよっこ」だ。ヒロインは、高校卒業後に東京で働き始める谷田部みね子(有村架純)。架空の人物であるみね子は何者でもないかもしれないが、家族や故郷、そして友達を大切に思いながら懸命に、そして明るく生きていた。いわば等身大のヒロインであり、だからこそ見る側は応援したくなった。

暮らしも社会も緩やかだった昭和30年代。経済大国へとこの国が変貌していく40年代。その境目、東京オリンピックが開催された昭和39年から物語を始めたことで、私たちが何を得て、何を失ってきたのかを感じさせてくれたのだ。

他に印象に残ったドラマとして、日本テレビ系ではアラサー女子の恋と仕事に関する“勘違い”が笑えた「東京タラレバ娘」(吉高由里子)。“隣の美人妻”と“秒殺アクション”をダブルで堪能した「奥様は、取り扱い注意」(綾瀬はるか)がある。またフジテレビ系には「嘘の戦争」(草なぎ剛)、今期の「刑事ゆがみ」(浅野忠信)という異色の秀作があった。

そして忘れてはならないのはテレビ東京系「ドラマ24」枠だ。今年も「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら」(遠藤憲一ほか)、「下北沢ダイハード」(古田新太)といった、深夜ならではの刺激的かつ実験的なドラマが楽しめた。

というわけで、今年の「TV見るべきものは!! ドラマ大賞」である。豊作のTBS作品も捨てがたいが、今回は「やすらぎの郷」に決定した。テレビ界に一つの風穴をあけたこと、新たな可能性を示したこと、何より82歳の現役脚本家・倉本聰の挑戦に敬意を表したい。第2位には「陸王」。そして第3位は「カルテット」だ。

2018年もぜひ、続きが見たくなるドラマ、クセになるようなドラマが一本でも多く現れてほしいと願っている。

(日刊ゲンダイ 2017.12.27)


日経新聞で、「地方局と4K」についてコメント

2017年12月26日 | メディアでのコメント・論評



地方局4Kに挑む 生き残り賭けノウハウ蓄積
独自の番組を国内外に販売


4Kで番組作りに挑む地方局が増えている。最新の映像技術を武器に、全国や世界の放送・動画配信業者に番組を提供し、存在感とブランド力を高めるのが狙い。テレビ視聴者が減り、経営環境が厳しさを増すなか、独自のコンテンツとノウハウを蓄えて生き残りに賭ける。

青白い光の中に、モニターが浮かび上がる。宇宙船の司令室を思わせる部屋は、大分朝日放送(大分市)の4Kプレビュールームだ。同社は2015年、2500万円を投じて、全国で初めて撮影から編集まで一貫して行う4Kシステムを整備した。

「どこもやっていないのは、むしろチャンス」と上野輝幸社長は意気込む。単発の4K番組のほか、昨年6月から毎週土曜日に15分のレギュラー番組を制作し、くじゅう連山のミヤマキリシマや由布院温泉など九州の名所や文化を伝える。すでにストックは120本近くあり、映像配信サービスの「ひかりTV」やCATVにも番組を販売している。

4Kの本放送は来年12月にBSで始まるが、地上波しか持たない地方局には、本来差し迫った需要がない。にもかかわらず挑戦するのは「従来通りキー局の番組をかけるだけでは生き残っていけない」(上野社長)との危機感からだ。

社員の意識変化

新技術の導入には「局のブランド化につながる」との狙いもある。同社は開局して24年と歴史が浅く、まだ地域での知名度は低い。社員にもマイナー意識があったが、4K導入後は全国の局から視察が相次いだ。

総務省の補助金も獲得し、海外向け番組の制作機会も得た。「地方局であってもコンテンツを作り、全国へ発信する姿勢がなければ今後、戦っていけない。今は新しいことをやるんだという意識が社員にも芽生えつつある」(上野社長)

石川テレビ放送(金沢市)も意欲的に取り組む局の1つだ。社内に編集室を備え、15年8月から毎週土曜に「新ふるさと人と人」を放送している。

工芸の街であり、人間国宝が多い土地柄を生かし、九谷焼や加賀友禅などの伝統工芸や人々の暮らしを記録する。木下敦子ディレクターは「(高画質の4Kは)風景に強いイメージだが、職人の顔や手のシワなどにも人生が見える」と言う。

専用の撮影や編集の機材が必要になる4K番組の制作には、人員と費用がかかると二の足を踏む局も多い。だが、同社の崎川洋司制作部長は「コストは思ったほどかからなかった」と明かす。ハイビジョン化の際はカメラ一式の整備に約2700万円かかったが、4Kの場合は1400万円程度とほぼ半額ですんだという。

制作体制もディレクター、カメラマン、音声の3人で地上波の番組と同じだ。データ量が大きいため映像の読み込みやコピーに多少時間はかかるが「長くても10日で仕上がる。制作費も1本20万円ほどで、地上波と大差はない。無理なくできている」(木下ディレクター)。

旅番組を再編集

インバウンド需要の高まりを背景に、コンテンツを直接海外に発信しようとする動きもある。札幌テレビ放送(札幌市)は今年6月、4K番組3本を香港の映像配信サービス会社に販売した。雪祭りや北海道の風景をドローンで空撮した映像などだ。4月からは道内の駅を4Kで撮影する番組の制作も始めた。

菅村峰洋コンテンツ部マネージャーは「北海道は外国人観光客が多い。自然を美しい映像で見たいというニーズは高い」と話す。同社は7年前から海外への番組販売に力を入れる。地上波で放送した旅番組を再編集して独自に売り込み、今ではシンガポールやタイ、台湾などの放送・動画配信業者に提供している。こうした実績は4K番組の販売にとっても強みだ。

「国際市場でも年々4Kの存在感は増している」(菅村マネージャー)。韓国は冬季オリンピックに合わせ、今年世界で初めて4Kの地上波放送を開始した。ネットを利用する動画配信業者も世界中に増えている。映像コンテンツは不足し、需要は高まっている。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は「地方からでも世界を驚かす番組を届けられる環境が整いつつある。4Kは地方局が生き残るための大きな武器になるかもしれない」とみる。

【文化部 赤塚佳彦】
(日本経済新聞 2017.12.23)




間もなく折り返し点の『わろてんか』、後半はもっと面白くなる!?

2017年12月25日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


スタート時の期待

10月に始まったNHK朝ドラ『わろてんか』。気がつけば、もう間もなく前半戦が終了します。

このドラマがスタートした頃、週刊誌の取材を受けて、以下のように答えたことがありました。

「何といっても、吉本興業に触れることが勇気あるドラマといえるでしょう。単純にヨイショで終わるはずはありませんし、加えて、芸能あるいは芸能界の陰の世界をどこまで見せるのか、どう描くのか。それを切り捨ててしまうことはないと思いますし、踏み込んだ展開が楽しみです。

『カーネーション』(11年度下半期)で描かれた、「コシノ3姉妹」の母親の場合、その不倫までドラマの中に取り込み、一歩踏み込んだ作品となっていました。朝から「いけない恋」を描くのかと、当時大きな話題となったものです。

今回の『わろてんか』も、単なるキレイ事の作品にするのではなく、描かなければならないことはしっかり描き、ドラマに広がりや奥行きをぜひ持たせてほしいところです。難しいところではありますが、恐らくそこまで描かないとドラマに真実味が出てこないでしょう」(サンデー毎日 2017年10月15日号)

「北村てん」と「吉本せい」

あれから3ヶ月。ここまで見てきて、今、反省していることがあります。それは、吉本興業の創業者である「吉本せい」の生涯を、ドラマの形で見られるのではないかと期待し過ぎていたことです。

確かに、NHKは放送前から、「吉本せいをモチーフにしてはいるが、あくまでもフィクション」だと強調していました。ついそのことを忘れて、ドラマの中に「吉本せい」を見ようとしていたのです。

あらためて、「北村てん(葵わかな)」と「吉本せい」は別人なのだと思わなくてはならない。せいは、てんのように京都の老舗薬問屋に生まれた「お嬢さん育ち」ではありませんし、幼少期から「笑い」にこだわっていたわけではなかったですし、夫となる吉本泰三と「運命的な出会い」や「駆け落ち」をしたこともありません。

また吉本せいは、てんのように、いつ見ても、何があっても、ひたすらニコニコ笑っているような女性でもなかった。てんとせいの共通点は、いきなり家業とは無関係な寄席を手に入れた夫がいたこと、そして必死で新事業の成功を目指したことでしょう。

後半こそが見せ場!?

主演の葵わかなさん、よく頑張っているとは思います。ただ残念ながら、清濁併せ呑むような骨太さをもつ「吉本せい」と比べると、「北村てん」という女性が、物語全体を引っ張るキャラクターとして、やや弱いのです。いや、弱く設定されているのです。そのため、松坂桃李さんや高橋一生さんなど、男たちのほうにばかり目が行くような印象を受けてしまいます。

特にここしばらくは、落語家・桂春団治をモデルにしているらしい月の井団吾(波岡一喜)と兄弟子の団真(北村有起哉)、そして間に挟まれた師匠の娘・お夕(中村ゆり)という3人のエピソードが面白く描かれ、本筋であるてんや藤吉(松坂)を忘れそうでした。

ここまで、視聴率はそれなりかもしれませんが、「面白いのか、面白くないのか、よくわからない」という感想を聞くことが多かった『わろてんか』。年明けからの後半戦では、モチーフとしての吉本せいの生涯を、ある程度”なぞる”という意味でも、藤吉が亡くなった後の、てんの奮闘が描かれるはずです。

夫との二人三脚ではなく、一人の「女興行師」となったてんが、どのようにして関西の笑いの世界で“天下を取る”のか。そのプロセスの喜怒哀楽を早く見たいものです。その際、シナリオで、もう少しヒロインを立ててほしいと思います。

また、チーフディレクターの本木一博さんも、大河ドラマ『軍師官兵衛』などを手がけてきた、チカラのある演出家です。後半戦は、てんを応援したくなるような多くの見せ場を作って、前半以上に楽しませてくれることを願っています。

「吉本せい」の実像は?

そうそう、「吉本せい」の実像を知りたい方には、矢野誠一『新版 女興行師 吉本せい~浪花演藝史譚』(ちくま文庫)を、またせいをモデルにした小説では山崎豊子『花のれん』(新潮文庫)を推薦しておきます。

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NHK朝ドラ「わろてんか」の残念ポイントは!?

2017年12月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



NHK「わろてんか」
主演の葵わかなはよく頑張っているが・・・

10月に始まった「わろてんか」も、間もなく前半戦終了だ。ここまで見てきて、反省していることがある。吉本興業の創業者「吉本せい」の生涯を、ドラマの形で見られるのではないかと期待し過ぎていたことだ。

確かにNHKは放送前から、「せいはモチーフだが、あくまでもフィクション」と強調していた。あらためて、てん(葵わかな)とせいは別人だと思わなくてはならない。

せいは、てんのように京都の老舗薬問屋の「お嬢さん」ではないし、幼少期から「笑い」にこだわってきたわけではない。また夫となる吉本泰三と「運命的な出会い」や「駆け落ち」をしてもいない。2人の共通点は、家業とは無関係な寄席を手に入れた夫を助け、事業の成功を目指したことだ。

主演の葵わかなは、よく頑張っている。ただ残念ながら、てんという女性が物語全体を引っ張るキャラクターとしてはやや弱く、松坂桃李や高橋一生ら男たちのほうにばかり目がいくような印象を受けるのだ。

特にここしばらくは、桂春団治がモデルとおぼしき月の井団吾(波岡一喜)と兄弟子の団真(北村有起哉)、そして間に挟まれた師匠の娘・お夕(中村ゆり)という3人のエピソードが面白く、本筋であるてんや藤吉(松坂)の存在を忘れそうだった。

後半戦では、シナリオでもう少しヒロインを立ててほしいものだ。

(日刊ゲンダイ 2017.12.20)