碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

NHK朝ドラ『つばさ』の”いい感じ”

2009年03月31日 | テレビ・ラジオ・メディア
NHKの朝ドラ『つばさ』が、いい感じだ。

まだ2日しか付き合っていないのに、「甘玉堂」の玉木一家が好きになっている。

川越の、和菓子の老舗「甘玉堂」。

女将は吉行和子さん。自分の娘(高畑淳子)と職人頭(中村梅雀)を結婚させ、跡継ぎとした。二人の孫(多部未華子・冨浦智嗣)もいる。

フツーなら、何の変哲もない和菓子屋一家なんだけど、次の女将であるはずの高畑淳子さんが、クセ者というか変わっているのだ。

10年前に(理由はまだ分からないが)家出して、しかも、川越祭りの頃になるとひょっこり帰って来るという。

帰ってくれば、必ず騒動が起きるらしい。

でも、つばさの父・梅雀さんは、そんな高畑さんを許しているようだし、帰ってくると嬉しそうだ。この梅雀さんがいいねえ。

そして、ヒロインの多部未華子さん。

ちょっと古風な雰囲気がいい。昭和を感じさせる少女。「鹿男あおによし」の女子高生・堀田イトも印象的だった。

多部さんの演技力は心配ないので、安心して見ていられる。他のキャストも大丈夫だし。

後は、戸田山雅司さんの脚本、ストーリーなわけだが、ユーモアの質やバランスも巧みで、いい感じになっている。

今日の2回目。甘玉堂の作業場で、職人たちに混じって、つばさや弟が働いている。みんな白い作業着だ。

突然、つばさが「気のせいかもしれないけど、8人いるような・・・」と言う。本来7人で仕事をしているはずなのだ。私も、思わず画面の中の人数を数える。あ、1人多い・・・。

結局、これは母である高畑さんが帰ってきていて、潜り込んでいたんだけど、分かっていても笑ってしまう。どこか、向田邦子さん描く『寺内貫太郎一家』を思わすユーモア。

いいねえ。

それと、家出しながら、祭りが近くなると帰ってきて、騒動を起こす高畑淳子さん。

これも勝手な連想だけど、ふと『男はつらいよ』と重なった。

「とらや」も老舗のお団子屋さんだ。そして、寅さんが、ふらっと柴又に帰ってくることで“騒ぎ”が起きるのだ。

でも、妹のさくらはもちろん、おいちゃんも、おばちゃんも、口では「困ったもんだ」と言いつつ、いつも寅さんの帰りを待っているではないか。

ということで、<『つばさ』=『寺内貫太郎一家』×『男はつらいよ』>説の誕生だ(笑)。

車検切れまで、あと2日

2009年03月29日 | クルマ

今月いっぱいで、っていうか、あと2日で車検が切れる、私の通勤用コンパクトカー。

すでに“10年選手”ということもあり、「いっそ丸ごと新しくするのもアリかな」などと思い、あれこれ試乗を続けてきた。

トヨタiQ、スズキスプラッシュ、ホンダインサイトなどだが、ついに結論が出た。

ジャ、ジャーン!

と、効果音が入るほどの結論ではないが、また車検を取ることにしたのだ。

なーんだ、と言うなかれ(笑)。

一番の理由は、やはり、今のクルマが好きなんだなあ。

質実剛健みたいなヤツで、そんなにアイソはないが、デザインが気に入っている。

ヘッドランプが、今どきの“つり目”というか斜め上にしゅっと切れ上がるような、きつい目をしていないのもいい。

それに、何より信頼できるのが大きい。

高速なんて、いわばクルマに命を預けるようなもんだが、「フツーにしてていいですよ」と言ってくれるかのように安定した走りだ。

今回の車検。嬉しいことに、特に悪いところはなし。そこで、だいぶ磨り減っていたタイヤを総入れ替えした。

そうしたら、まあ、喜ぶこと。クルマが(笑)。

身体が軽くなったかのように、一層きびきびと走る。

車検からの帰り道。脇道から、他のクルマが急に飛び出してきたときも、実に機敏な動きで、かつ見事なラインを描いてこれを回避した。

「えらいぞ!」と声をかけ、ハンドルを撫でてやった。

クルマも“褒めて育てる”、いや褒めて乗る。うーん、これですね。

というわけで、また少なくとも2年間、「あれがいい」「これがいい」とクルマ選びを楽しめることになったのでした。

メデタシ、メデタシ。

確かにコラボだ、「ルパン三世VS名探偵コナン」

2009年03月28日 | テレビ・ラジオ・メディア
         ヴェスパニア王国ならぬ大学キャンパス          



物語の終わり近く。

「僕、まだオジサンの名前、聞いてないんだけど・・・」
「俺の名前?(ニヤリとして)ルパン3世」

なーんて台詞のやりとりをしているのが、あのコナン君と、あのルパンなのだ。

いやあ、すごい(笑)。

昨夜の日本テレビ「ルパン三世VS名探偵コナン~アニメ史上最強コラボ完成!!世紀の大泥棒と天才名探偵大激突!!伝説の(秘)王冠と誘拐された蘭!巨大な陰謀に危機一髪のルパンとコナン決着は!?今夜限りのテレビ初登場!!」である。

!!マーク盛りだくさんの“ご案内”に導かれ、しっかり拝見した。

ヴェスパニア王国の“お宝”。王室を舞台とした“陰謀”。

本当に同じ画面にいるコナンとルパン。

コナンも、ルパンも好きなので、見る前は、「さあ、どんなかなあ」と心配もしたが、十分楽しませていただいた。

完全な“異国”にしたことがよかったみたい。

でもね、それなりに面白かったことを前提に言えば、まあ、“コラボ”も結構なんだけど、これは、これで、この1回だけってことにして欲しいなあ。

「今夜限りの」って謳っているから大丈夫のはずだけど、「好評につき」なんて言わないで(笑)。

もちろん、「ホームズ対ルパン」という例もあるし、「コナン対ルパン3世」も悪くはないんだけど、やはりコナンにはコナンの、ルパンにはルパンの、それぞれ見事に確立された<世界観>があって、その世界の<ルール>や<約束>があって、そこに没入したいんだよね。

異種格闘技の面白さとは、また別だと思うのだ。

もしかしたら、「ウルトラマン対ゴジラ」みたいなもんで(笑)、それぞれの世界で活躍(?)してくれていたほうが、両方のファンには嬉しかったりして。


ちなみに、劇場版のゴヒイキは、ルパンなら「カリオストロの城」。コナンは野沢尚さん脚本の「ベイカー街の亡霊」です。

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テレビ愛知「やらせ問題」で新展開

2009年03月26日 | テレビ・ラジオ・メディア
今年1月に発覚したテレビ愛知「やらせ問題」で、新たな展開があった。

昨日になって、「制作責任者である同社の担当プロデューサーが放送前にやらせの事実を認識していたこと」が明らかになったのだ。

トホホである。

しかも、「やらせ」を実行した制作会社が、収録後、局のプロデューサーに説明したが、この局Pは、映像を確認した上で「大した問題でないと思った」そうだ。

トホホの2乗。

さらに、「やらせ」発覚後、このプロデューサーは調査委員会に対して「常務に報告した」と語り、その常務は「記憶がない」と突っぱねる。

食い違いどころか、これでは、社内のどこかで“事実の隠蔽”が行われていたと思われても仕方がない。

いやはや、なんとも。

1月31日のこのブログで、私は次のように書いた。
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/57e079bbffdcec2a71cdbe3b1ec89cae


最初、テレビ愛知は自社サイトで「収録当日、予定時間内にインタビュー相手を確保できなかったため、制作会社が本人たちの了解を得て、出演させた」と説明。いかにも制作会社の責任、というニュアンスだった。

ところが、すぐに前言を翻す。「収録現場に、社員もいた」と言い出したのだ。目の前で行われている初歩的(低レベル)な<やらせ>を、いわば黙認していたわけだ。

<やらせ>にもレベルはあるのだ。制作会社の人間も、局の人間も、揃いもそろって・・・。

凋落、陥落の烙印を押され始めたテレビ界だが、それを後押しするような出来事だといえる。

「没落しつつあるから、その程度の人材」なのか、「その程度の人材だから、没落していく」のか。うーん、本当に情けない。


テレビ愛知の「やらせ」。日本テレビの「虚偽証言報道」。

地滑り的な崩れ方というか、底が抜け始めたというか、テレビ界自身が自らの基盤を壊そうとしているかのようだ。これを“自壊”という。

『朝日新聞』で「バンキシャ!」問題についてコメント

2009年03月25日 | メディアでのコメント・論評

昨夕、日本テレビが、「バンキシャ!」に関する記者会見を行った。

久保前社長などからの「説明」と、「社内検証の途中結果」が伝えられたのだ。

「朝日新聞」は、今日(25日)の朝刊の「メディアタイムス」のページで、この件に関する特集記事を掲載している。

今回、「バンキシャ!」が、どんなふうに取材を進めていったのかが、ある程度見えてきた。

制作側が、問題の虚偽証言をした人物を“見つけた”きっかけが、インターネットの「取材協力者・出演者募集サイト」で情報提供を呼びかけたことだったというのも驚く。

しかも、この証言者(元会社役員)は4年前にも「バンキシャ!」に登場しているのだ。その時のネタは「バイアグラ体験」である。

さらに、テレビ朝日「スーパーモーニング」にも、耐震強度偽装問題などで、2度出ていた。

今回も、本人が「謝礼金が目的」と言っているわけで、テレビでの証言の“常連”だったのだ。

これ以外にも、制作側が、元役員に会って取材を行うよりも前に(!)、岐阜県庁を訪れ、担当者にカメラを向けていたことも判明した。

また、問題の岐阜県だけでなく、「山口県の裏金報道」も裏付けや確認が十全でなかったことが明らかになった。

その上で、日本テレビは、いわゆる「再発防止策」なるものを提示している。

それは、2班態勢の取材チームを一つにするとか、「危機管理アドバイザー」を置くといった内容だ。

詳細は「朝日新聞」の特集記事を読んでいただくのがいいと思う。

この記事の中に、私のコメントも出ている。

見出しは「報道への信頼失う」。例によって、記者の方に答えた多くの内容が、ぎゅっと凝縮されたものだ。


「取材は最初から構成があり、「裏金はない」と県側が否定する「絵」を単にはめ込んだだけ。謝礼を前提にしていることも含め、作り手側が「報道」と思っていないことの表れだ」

「どこかでチェックが利かなかったのか、個人でなくシステムの問題として考える必要がある。このずさんさは今回の件だけなのか」

「番組全体も見直さないまま、再発防止策が示された。取材体制を1チームにすればさらに取材がタイトになるうえ、何でも危機管理アドバイザー任せになり、ますます現場で判断しなくなるのではないか」

「これでは視聴者が「報道番組だけは」と思っている信頼さえ失いかねない」


今回の件は、現在のテレビが“内蔵”する、いくつもの問題を露呈させている。検証も、検討も、まだ始まったばかりだ。

卒業、おめでとう!

2009年03月24日 | 大学

今日は大学の卒業式(学位記授与式)。

まずは晴天で、よかった。

卒業式名物ということになるんだろうか。いろんな方々の、ありがた~い祝辞やご挨拶が続く。

中には「犬も歩けば棒に当たる」なんていう金言(?)も披露されて・・・。

いかん。前列の学生が眠そうだ。頭が揺れている。

あ、完全に爆睡体勢に入った。

おいおい、そこはステージ上から一番目立つ場所だよん。

と、注意も出来ない辛さ(笑)。

学位記の授与、学部生代表や大学院生代表の答辞も済んで(そういえば大学の卒業式で送辞はないなあ)、ようやく式は終了。

最前列の爆睡クンも目を覚ました。

会社に入ったら、新人のうちは(?)会議や飲み会で寝たりしないように、な。

みんなが4月から参入していく「世の中」は、今、80年だか100年に一度とかの、結構大変な状況ではある。

でもね、世界経済も日本経済も、そして会社の経済も大事だけど、大事なことは他にもあるはずだ。

一体、何が、<本当に大切なこと>なのか。それを常に自分のアタマで考えながら、日々やっていってください。


とりあえず、元気で。みんな、元気で。

卒業、おめでとう!

本日発売の『週刊現代』で「バンキシャ!」問題をコメント

2009年03月23日 | メディアでのコメント・論評

先日、「真相報道バンキシャ!」の虚偽証言報道問題で取材を受けた「週刊現代」の記事が出た。

本日発売の4月4日号、「テレビの暴走 トップの厚顔」という特集記事だ。

「バンキシャ!」の一連の動きを総括したところで、私のコメントが登場する。


「(3月1日の放送で)問題に触れたのはわずか90秒です。しかもその大半は、誤報して申し訳ないという趣旨の謝罪ではなく、逮捕された元会社役員がいかに悪いヤツで、われわれを騙したという説明に終始したんです」

その後、久保社長の辞任会見の話になり、取材制限を行ったことを伝えた流れで、再度、登場。

「説明責任を果たさないまま、幕引きをしようとしているようにしか見えません。会見のやり方も、テレビ局なのにカメラ取材を拒否するなど、理解に苦しむ」

「テレビメディアは他のメディアや一般企業が不祥事を起こすと、厳しく追求する。ところが、自分たちが過ちを犯すと、ガードが固くなる」

「報道機関なら、より一層、プロセスを含めて詳細に事実関係を開示し、説明する責任があります。いったいどういう神経なのか」


例によって、取材の際に話したことの要約というか、一部というか、短くまとめられたものだが、言いたかった主旨はこの通りだ。

今後、大事なポイントとなってくるのは、やはり制作会社との関係である。

今日は、新聞からも取材や原稿の依頼があったので、近日中に、紙面をお借りして自分なりの考察を伝えていきたいと思う。

これ以上、同じような問題が起きないようにするためにも、日本テレビやBPOによる検証結果を待つだけでなく、様々な議論が行われたほうがいい。

『黒部の太陽』前編

2009年03月22日 | テレビ・ラジオ・メディア
豪華なキャストだなあ、『黒部の太陽』。

さすが「フジテレビ開局50周年記念ドラマ特別企画」。

昨夜の前編だけでも、男優が香取慎吾、小林薫、伊武雅刀、ユースケサンタマリア、小野武彦、國村隼、火野正平、柳葉敏郎、田中邦衛、津川雅彦、寺脇康文、中村敦夫などなど。

女優陣も、綾瀬はるか、深田恭子、志田未来、本仮屋ユイカ、浅野ゆう子、風吹ジュン、泉ピン子といった面々が並んだ。

いやあ、よくぞ集めました。

そんな中で、主演の香取慎吾が大健闘。チカラ、入ってました。他の方々も、それぞれに役柄を押さえていたし。

それはそれで拍手なんだけど、物語としては、どうにも散漫な印象で、困った。

これだけのメンバーが出ているから、それぞれの“見せ場”や“芝居場”を作らないと、という行政的な配慮はあるだろう。

それを前提としても、見せられるエピソードが「トンネル堀り」という“本線”を支え、盛り上げるというか、本線に収斂するというか、そういうふうになっていかないのだ。

というのは、そうしたサイドのエピソード自体の問題と、描き方・見せ方の問題と、両方があると思う。

たとえば、わりと頭のほうで、黒部山中に視察に入ったとき。河原で話をしている小林薫たちの向こうに見える崖を、何人かがよじ登っている。

すかさず、「地質調査をしているですよ」みたいな説明の台詞があった。

「ああ、落とさなきゃいいけどなあ」「でも、そんなアカラサマなことはやらないだろう」と思った瞬間、崖に張り付いていた一人がザザッと足を踏みはずして落下し、死んでしまうのだ。しかも小林の「かつての部下」が。

ありゃりゃ、である。

大変な場所にダムを造ろうとしていたこと。これを皮切りに多くの犠牲者を出したこと。などなどを伝えようという演出であることは分かる。

だが、ほとんど垂直みたいな急峻な崖を、命綱もなしで登らせ、調査をさせていたとすれば、当時だって会社の責任問題だ。

また、香取慎吾が、初めて関西電力の工事担当者である小林薫の自宅を訪問するシーン。

香取は家を探してうろうろ。商店街には買い物に来ている小林の娘・綾瀬はるか。

二人は、それと知らずすれ違う。

「まさか、これで家の前でバッタリなんて、やらないよね」と思っていると、間もなく小林家の前でバッタリ。

こういうのって、分かりやすいというより、陳腐でしょ。見ているほうが照れてしまう。

どちらのエピソードも、挿入するなら、もう少し違った描き方や見せ方があったはずだ。

脚本なのか、演出なのか、それは知らないが、せっかくの豪華キャストによる“本格大型ドラマ”なんだから、“小手先”みたいなことに時間やエネルギーをかけて欲しくない。

それより、ドラマの“本線”を充実させるべきだ。

トンネルも、「原寸大」セットをうたっていたが、なかなかの出来。

ただ、実際に掘り進むシーンが、なんだか6~7人による、非常に小さな作業に見えてしまったのは残念。もっとオオゴトだったわけです。

破砕帯の大量出水は大きな見せ場だが、映画でも、石原裕次郎さんがケガをしたシーンだ。このドラマでも、迫力のある映像になっていた。

さあ、今夜の後編は、どんなふうになっているのか。

黒部の太陽
木本 正次
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臨場感と緊迫感の映画『ワルキューレ』

2009年03月21日 | 映画・ビデオ・映像
ずしんと、きました。

映画『ワルキューレ』だ。

監督:ブライアン・シンガー、主演:トム・クルーズ。

舞台は第二次大戦下、1944年7月のドイツ。

伯爵にして軍人、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐が挑むのは「ヒトラー暗殺」である。

この映画の最大のメッセージは、「ドイツが“ヒトラーのドイツ”だけではなかった」ということ。

命がけで、これに抵抗し、ドイツとドイツ国民、いやヨーロッパを救おうとした人たちがいたのだ。

タイトルでもある「ワルキューレ」は、本来、ヒトラーが亡くなった場合の反乱軍鎮圧計画である。これを利用して、ヒトラーを暗殺しようとする。

実在の人物たちによる、実際にあった出来事だと、今回、初めて知った。

もちろん、ヒトラーは45年まで生きていたわけだから、この暗殺計画は失敗している。

それを知ってはいても、映画を観ながら「何とか成功してくれ」と祈るような気持ちになっていた。

1944年当時のドイツにタイムスリップしたような臨場感。

中でも、ヒトラーが立てこもっていた総統大本営「狼の巣」や山荘の内部が興味深い。

暗殺計画の実行場面はもちろんだが、計画にとって必須だった「ヒトラーのサイン」を手に入れようとするシーンも、歴史の一場面に立ち会うようで、実にスリリングだ。

欲を言えば、もう少し、サスペンス性を高めることは可能だったように思う。

この計画に参加した、シュタウフェンベルク大佐以外の人物たち(軍の高官や政治家もいる)のことも描いていくのだが、やや中途半端。ならば、もっと大佐に集中してもよかったのではないか。

なーんてことも、後からは思うが、観ている間は、それこそ緊張しっぱなしだった。

『トップガン』から23年。

トム・クルーズ、ますます頑張ってます。

ワルキューレ ヒトラー暗殺の二日間
スティ・ダレヤー
原書房

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『トップガン』とBBQ(バーベキュー)

2009年03月20日 | 映画・ビデオ・映像
昨夜、テレビ東京の木曜洋画劇場で『トップガン』をやっていた。

86年の公開時に映画館で何度も観たし、VHSもDVDも(確かレーザーディスクも)家にある。さらにオンエアでもくり返し観ているのに、またついつい観てしまう。

好きなんだなあ。

例によって、放送時間に合わせて、あちこちカットされたバージョンだけど、それでもやっぱり面白い。

F14トムキャットが飛んでる映像だけで涙が出そうだ。

冒頭の、あの空母の甲板から飛び立つ前の準備段階から、わくわくする。公開当時も「MTVのような」と形容された、リドリー・スコット監督好みの映像。スローを有効に使い、編集も小気味いい。

当時、トップガンが置かれていたのは、カリフォルニア州サンディエゴ郊外のミラマー基地。そこへバイクで向かうトム・クルーズ。バイクと離陸していく戦闘機の“並走”シーン、よかったなあ。

国籍不明のミグと戦って、撃ち落しちゃうノーテンキぶりも、まあ、いいじゃないの、映画の中だし。

街のシーンの多くは、サンディエゴで撮影された。

以前、世界的宇宙物理学者であるフリーマン・ダイソン博士を取材するために、サンディエゴに行った。

そのとき、映画の中に登場する「店」があると聞いて、探してみた。

この店で、トム・クルーズ、教官で恋人のケリー・マクギリス、相棒のグース、そしてグースの奥さんであるメグ・ライアン(可愛かった)が、グースの弾くピアノに合わせて、みんなで歌うのだ。楽しいシーン。

それに、ラストでも登場する。トム・クルーズがカウンターに一人でいると、突然、ジュークボックスから思い出の曲が流れ出す。立ち上がり、店内を眺め回していると、背後にマクギリスが現れる。

あの店である。

教えられた地区を歩き回ったのだが、それらしい店が、なかなか見つからない。

で、ようやく見つけました。

なんと、それはバーベキューで有名な店だったのだ。

外には「BBQ」の看板が出ていて、当然ジャンル違いと思い、何度も店の前を行ったり来たりしてながら、まったく気がつかなかったのだ。

店内は、はっきり言って、何のヘンテツもない、普通のBBQ屋さん。そういわれてみれば、確かに「あの店」なんだけど、かなり“飾りつけ”を施していたようだ。

しかし、ちゃーんと、ジュークボックスがあった。

トム・クルーズがいたカウンターと椅子もあった。

もちろん、座ってみました。ケリー・マクギリスは現れなかったけどね。

BBQ屋さんが、あんな雰囲気のある店に変身するのもまた、映画の夢である。

トップガン [DVD]

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宇宙をかき乱すべきか〈上〉 (ちくま学芸文庫)
F. ダイソン
筑摩書房

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本日、大学で「メディアコンテンツ展」開催。
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じわりと怖いぞ、道尾秀介『鬼の跫音』

2009年03月19日 | 本・新聞・雑誌・活字
道尾秀介さんの新刊『鬼の跫音(あしおと)』(角川書店)が、じわりと、怖い。

『カラスの親指』が直木賞候補となった道尾さん。

これが初の短編集だが、ミステリーとホラーが融合した、独特の作品世界を堪能できる。

冒頭の「鈴虫」では、ある<完全犯罪>が描かれる。11年後に事件が発覚した時、捕まった男はいう。

「人間なんてね、生きてるだけでみんな犯罪者ですよ」。

やがて、読者は警察も気づいていない驚きの真相を知ることになるのだ。

青春のあやまちと呼ぶには重過ぎる罪を犯した主人公が、20年後の祭りの夜に恐ろしい制裁を受けるのは「よいぎつね」だ。

神社の境内。
お神輿を納めた蔵。
河原の土手。

誰もの記憶の中にある何気ない風景が、道尾さんの手にかかると逃れられない宿命の舞台と化す。

また、「遠くから鬼の跫音が聞こえる」という書き出しで始まる「冬の鬼」は日記形式の一篇。

元旦から8日までの記述が、なぜか日付の古い順に並んでいる。

書き手である女性の思考と視点だけを追ううちに、ふと背筋が寒くなってくる。

鬼は人間のこころに巣くう魔物。姿の見えないその怖さは収録の6篇に共通しています。

鬼の跫音
道尾 秀介
角川グループパブリッシング

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「真相報道バンキシャ!」虚偽証言報道問題 その2

2009年03月18日 | メディアでのコメント・論評

日本テレビ「真相報道バンキシャ!」虚偽証言報道問題で、雑誌などから取材を受ける。

基本的には、昨日、このブログに書いたことが軸だが、もう一つ、ポイントになるのが「制作会社との関係」だ。

そう、またもや、制作会社が出てきたのだ。

というのは、あの「あるある捏造問題」のときもそうだったからで、バラエティなどのジャンルだけでなく、報道番組にも制作会社が関与している。

何か、テレビで問題が起きたとき、実は制作会社が当事者だった、というケースが多すぎる。

残念なこと、というだけでなく、制作会社全体にとっても、非常に大きなマイナスなのだ。

「バンキシャ!」が、どのような制作体制をとっており、制作会社が何を、どれだけ作業しているのか、正確なところが伝わってこない。

「あるある」と同様に、「スタジオ出しのVTRを、1本いくらで作る」という形での“発注・受注関係”なのか。

それとも、スタッフの派遣、もしくは人材リースという形で参加しているのか、不明だ。

いずれにしても、あの虚偽証言をした元役員をネットで見つけて、実際に取材したのは「制作会社の3人」といわれている。

日テレの社員スタッフと、制作会社のスタッフが、「バンキシャ!」という番組を協働で作っていたわけだが、同じ番組をやっていても、立場は大きく異なる。また、「報道の人間」としての教育においても、両者は違っていたはずだ。

制作体制や、人材育成、ジャーナリズム教育などが、この番組の場合、どうなっていたのか。

そのあたりのことも、今後、再発防止のためにも、検証されなくてはならない。

しかし、それにしても、制作会社全体が苦境にある中で、こうした問題の当事者として制作会社が登場していること自体、返す返すも残念だ。

日本テレビ社長辞任の<謎>

2009年03月17日 | テレビ・ラジオ・メディア
なぜだ。

うーん、わからん。

日本テレビの久保伸太郎社長は、このタイミングで、なぜ“辞任”なのか。

確かに、報道機関として、今回の問題は重い。

いや、だからこそ、反省と共に、なぜこの「誤報」が生まれたのか、そのプロセスを明らかにすべきだった。

しかし、久保社長は、記者会見で「誤報の原因」について問われた際、「私が職を辞したということで、すべての説明をつけたいと思います」と言うにとどまった。

つまり、原因(真相)については聞いてくれるな、ということになる。

これは、おかしい。

まるで、辞任によって、今回の件全体の<幕引き>をしたかのように聞こえる。

これから、どんな”不都合な真実”が出てきても、「もう辞任で責任はとった」と言いたいかのようだ。

だが、そうはいかないはずだ。

一体、何が起きたのか、起こしたのか。

元役員の虚偽証言に騙されたというなら、「なぜ騙されたのか」が重要なのだ。

報道機関として、取材のプロセスのどこに問題があったのか。今後のためにも、しっかり検証する必要があるし、その検証結果を公表・説明する責任もある。

そんな検証作業よりも先に、「辞任」と「処分」を決めてしまったところが謎なのだ。

なぜなら、検証によって、コトの重大性なり、問題の深さなりが見えてくるわけで、進退や処分はそれによって判断されるはずだからだ。

現時点で、いくつか考えられることがある。

1)
東京新聞が報じているが、取材過程において得られた岐阜県側の「回答」を、本来の質問とは別の質問の答えとして使った件。

「バンキシャ!」側から「会計検査院が指摘した不正経理について」として取材があり、県出納管理課長が「調査する」と回答。

番組では、その回答を「裏金の虚偽証言についての対応」として放送した、というのだ。

事実であれば、放送されたVTRの中に、“捏造”に近い部分が含まれていたことになる。

2)
虚偽証言をした元役員は、その理由・目的として「謝礼金」を挙げている。カネ目当ての行為だったわけだ。

問題は、本当に「バンキシャ!」側が、この元役員に、本当に謝礼金を支払ってはいないのか、ということ。

この点について、久保社長は会見で否定したが、ならば、外の”条件”や”見返り”はなかったのか。ここは再度明らかにすべきだろう。

しかし、もしも謝礼金を支払っていた場合、局内のルールはどうあれ、ジャーナリズムの取材方法として、論議を呼ぶことは確かだ。

3)
これが最悪のケースだが、元役員の虚偽証言に「騙された」のではなく、虚偽と知っていて、わかっていて、これを撮影し、放送した場合。

これだと、もはや「誤報」ではない。「捏造報道」になってしまう。

これなら、社長辞任も当然だろう。しかし、今、日テレからそんな情報は出ていない。


以上のように考えてくると、この「虚偽証言報道問題」をめぐって、日テレが明らかにすべきことは山積しており、本当は、辞任や処分より、そちらこそが優先されるべきなのだ。

というわけで、現段階でのこの辞任、やはり<謎>である。

20日(金)に「メディアコンテンツ展」開催

2009年03月16日 | 大学

20日(金)の春分の日に、大学で「メディアコンテンツ展」が開かれる。

なぜか、その実行委員長というのをやっていて、今日も準備を進めているところだ。

「メディアコンテンツ展」は、メディア学部と大学院の学生が、卒業研究として制作したコンテンツを発表する展覧会として、2003年に始まった。

以来、映像、音楽、CG、そしてWebコンテンツまで、東京工科大学メディア学部で展開されている様々な表現活動を内外に向けて公開し続けてきた。

今年はメディア学部開設10周年に当たるため、「メディアコンテンツ展」もそれを記念して、これまでの成果を含め、より多くの作品を展示する。

卒業研究プロジェクトから生まれたものはもちろん、プロジェクト演習やコア演習などで制作された多彩なコンテンツは、メディア学部の奥行きと広がりを再認識させてくれるはずだ。

「メディアコンテンツ展」サイト:
http://www.teu.ac.jp/mce/2009/

「のど自慢」グランドチャンピオンに拍手

2009年03月15日 | テレビ・ラジオ・メディア
毎年この時期に行われるのが、NHK「のど自慢」チャンピオン大会だ。

日曜ごとに誕生する全国各地のチャンピオン。その中から選ばれた人たちの歌が聴けるわけだが、その歌が、それぞれ、びっくりするくらい素晴らしくて、毎年、楽しみにしている。

昨夜、今年のチャンピオン大会の様子が中継された。

出場の15組は、年齢・性別・地域もバラエティに富んでいるが、抜群の歌唱力は共通している。ほとんど差がない。全員を優勝させたくなるほどだ。

最終的に、今年度のグランドチャンピオンとなったのは、井上美優さん。歌ったのは絢香の「三日月」だ。

声につやとのびがあり、気持ちも入っていて、聴いていると、実に気持ちいい。優勝もうなづける。

井上さんは群馬の盲学校に通う16歳だ。

受賞後、ステージ上で、あらためて「三日月」を歌う彼女の後ろには、お母さん、おばあちゃんが涙を流しながら立っていた。

彼女は最後まで、堂々と、しっとりと、歌いきった。

拍手!でした。

そういえば、2年前のチャンピオン大会でも、優勝したのは全盲の少年だったなあ、と思ったら、井上さんはその時の少年(今は18歳になる清水博正さん)の後輩だそうだ。

すごいぞ、群馬県立盲学校。

歌が、そして歌うことが、井上さんや清水さんを内側から支え、強くし、自分を表現する大事なツールになっているのかもしれない。

今度は、グランドチャンピオンたちを集めたコンサートが見たい、というか聴きたくなった。

そういえば、『のど自慢』という井筒監督の映画もあったなあ。

のど自慢 [DVD]

ポニーキャニオン

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