碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

<2019年9月の書評>

2019年09月30日 | 書評した本たち

 

 

<2019年9月の書評>

 

宮脇孝雄『洋書天国へようこそ~深読みモダンクラシックス』

アルク 1728円

海外文学、特に英語の作品を原書で読んでみたい。そんな願望を持つ人は少なくないはずだ。著者は熟練の翻訳家であり、翻訳教室も開講中。チャンドラーやクリスティなどの作品と原文の解説は自由闊達で、洋書に対する心のハードルを少しだけ下げてくれる。(2019.07.26発行)

 

宮入恭平

『ライブカルチャ―の教科書~音楽から読み解く現代社会』

青弓社 2160円

テレビの音楽番組は激減し、CD市場も低迷の一途だ。しかし、主なコンサート会場やライブハウスは満員観客を集めている。音楽との接し方が変わったのだ。気鋭の研究者がアイドルフェスをはじめ、法律や教育など多角的な視点からライブの本質に迫る。(2019.07.29発行)

 

土屋時子・八木良広:編

『ヒロシマの河~劇作家・土屋清の青春群像劇』

藤原書店 3456円

「原爆詩人」として知られる峠三吉とその仲間の平和運動を描いた創作劇が『河』だ。作者の土屋清は広島生まれ。戦後は労組活動や反戦運動に携わってきた。本書は土屋の評伝と『河』に関する資料などで構成されている。何より収録の「上演台本」が貴重だ。(2019.08.06発行)

 

渥美 清『新装版 渥美清わがフーテン人生』

毎日新聞出版 1512円

映画『男はつらいよ』の公開から50年。唯一の「聞き書き本」の復刊だ。昭和51年、シリーズ第17作『寅次郎夕焼け小焼け』の公開を前にした回想だった。終戦直後の上野、闘病時代、アフリカ旅行、そして車寅次郎のこと。口調が寅さんのままという大サービスだ。(2019.08.05発行)

 

磯前順一『昭和・平成精神史』

講談社選書メチエ 1944円

気鋭の研究者による戦後論。何より視点がユニークだ。太宰治を通して敗戦と復興を捉え直し、ゴジラと力道山を梃子に戦争と植民地支配を検証していく。また歌手の沢田研二に注目して戦後社会の超克の端緒とする。浮かび上がるのは「終わらない戦後」の意味と実相だ。(2019.08.08発行)

 

山田敏弘『CIAスパイ養成官~キヨ・ヤマダの対日工作』

新潮社 1566円

こんな女性が存在したことに驚く。戦後に渡米し、アメリカ人と結婚。CIA中央情報局)で、スパイに日本語や日本文化を教えていたのがキヨ・ヤマダだ。しかも教官の域を超え、実際の工作任務にも携わっていた。綿密な取材で謎の半生が明らかになっていく。(2019.08.20発行)

 

はらだみずき『銀座の紙ひこうき』

中央公論新社 1836円

神井航樹は50代半ばだ。息子の就職活動をきっかけに、自身の新人時代を振り返る。紙を専門に扱う「銀栄紙商事」に入社したのは1987年。仕入部に配属され、走りながら仕事を覚える悪戦苦闘の日々が続く。働くこと。秘めた夢。そして恋。銀座が舞台の青春譚だ。(2019.08.25発行)

 

鈴木信行『同窓会に行けない症候群』

日経BP 1512円

同窓会に参加しない人が増えた背景に、「平成の30間の経済環境の変化」があると著者は言う。会社での出世が難しい時代。自分の仕事に納得できない人が多い。また起業も成功するとは限らない。一体どうすれば同窓会に出られるのか。その処方箋も提示される。(2019.08.26発行)

 

今森光彦『光の田園物語~環境農家への道』

クレヴィス 2700円

写真集『里山物語』などで知られる著者が、荒れた農地を里山として再生する「環境農家」になった。本はその取り組みをめぐる、写真と文章による記録であり報告だ。開墾に始まり、農地作り、植物の移植などが続いた。人と自然の美しい共生が形になっていく。(2019.08.29発行)

 

梶村啓二『ボッティチェッリの裏庭』

筑摩書房 1944円

ルネサンスの巨匠による一枚の真筆画。謎の未発見作品をめぐって展開される、時空を超えた美術サスペンスだ。時間は1510年、1945年、201X年と移動し、場所もフィレンツェやベルリンから日本までが舞台となる。「本物とは何か」を問う野心作だ。(2019.08.30発行)

 

小川隆夫『改訂版 ブルーノートの真実』

東京キララ社 2700円

創立80周年となる、世界的なジャズ・レーベル「ブルーノート」。創立者アルフレッド・ライオンへの直接インタビューを軸にまとめた貴重な「真の歴史」だ。当初「ブルース・ノート」だったレーベル名の変更。第1回作品の初版が50枚という秘話も泣かせる。(2019.08.30発行)

 

山口 孝『赤塚不二夫伝 天才バカボンと三人の母』

内外出版社 1836円

赤塚不二夫が亡くなって11年。本書は初の本格評伝だ。キーワードは「かあちゃん」。実母のりよ、最初の結婚相手だった登茂子、そして最期を看取った妻の真知子だ。本書では漫画家としての軌跡と、この天才を支えた3人の女性の姿が鮮やかに描かれている。(2019.09.14発行)

 

 


「凪のお暇」 「空気」よりも自分らしさを

2019年09月29日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評

 

 

 <週刊テレビ評>

「凪のお暇」

「空気」よりも自分らしさを

 

夏クールのドラマが終了した。今期の特色は漫画を原作とした作品が多かったことである。上野樹里「監察医 朝顔」(フジテレビ系)。石原さとみ「Heaven?」(TBS系)。杏「偽装不倫」(日本テレビ系)。そして黒木華「凪のお暇(なぎのおいとま)」(TBS系)などだ。

ヒロインたちの年齢は、30歳前後のいわゆるアラサー女子であることも共通していた。ただし、「凪のお暇」の主人公、大島凪だけは異色だ。突然会社を辞めてしまい、無職。しかも理由は、「空気」を読むことに疲れ切ったからだ。同僚のミスを押し付けられても空気が悪くなるからと文句が言えない。また彼女たちとのランチでも話を合わせることに必死だった。本当は一人で静かに食べたいのに、仲間外れになるのを怖れたのだ。

さらに、同じ会社にいる恋人の我聞(高橋一生)が、「カラダの関係だけの女」「ケチくさい女」と陰で言っているのを知って、過呼吸で倒れる始末。結局、会社を辞め、我聞との関係を断ち、住居も変えてしまう。これが「お暇」だ。引っ越し後、凪は女性にモテまくりのゴン(中村倫也)や、「空気」を読むのが苦手な坂本(市川実日子)などと知り合っていく。

このドラマ、よくあるアラサー女子の成長物語に見える。確かに凪は徐々に変わっていく。周囲ばかりを気遣うのではなく、自分の思いや考えを口にし、実行するようになっていく。だが、本人以上に周りの人たちを変えていくところにこの作品の醍醐味があるのだ。我聞は、まさに「空気」を読む達人だが、いつの間にか自分の本心が言えない男になっていた。それが凪の不在によって本当の気持ちに気づく。そしてゴンもまた、女性に優しいのは本来の自分を見失っていたからだと分かる。

そして肝心の凪だが、我聞から「お前は他人に関心がないんだ」と指摘され、傷つきながらも妙に納得してしまう。こうした描写が、このドラマのリアルにつながっている。視聴者は、我聞とゴンと凪の奇妙な三角関係にヤキモキしてきたが、最後に凪は「自分らしい道」を選択していくのだ。

劇作家・鴻上尚史さんの近著のタイトルは『「空気」を読んでも従わない』。それが生き苦しさから脱する方法だと言う。思えば凪も途中から、「空気」を分かった上で隷属しなくなっていく。また「空気」に従うことで他者に認めてもらおうとしなくなっていく。自分の「承認欲求」に振り回されることへの決別は、見る側をも勇気づけてくれた。黒木、高橋、中村、それぞれが当たり役で、今年の夏を代表する一本となった。

(毎日新聞「週刊テレビ評」2019.09.28)


書評した本:西田浩 『秋吉敏子と渡辺貞夫』

2019年09月29日 | 書評した本たち

 


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


日本のジャズを牽引した二人の生ける伝説

西田 浩『秋吉敏子と渡辺貞夫』

新潮新書 778

70年代はじめから80年代末にかけて、土曜深夜12時、FM東京で「渡辺貞夫 マイ・ディア・ライフ」が放送されていた。同名のオープニング曲が流れてくると、一瞬でありきたりの日常が違って見えてきた。ナベサダのジャズの力だ。

西田浩『秋吉敏子と渡辺貞夫』は、二人のレジェンドの歩みと戦後日本のジャズ史をたどることのできる好著だ。1929年、満州で生まれた秋吉敏子。戦後、親と移り住んだ別府のダンスホールでピアノを弾き始める。16歳だった。上京するのは48年のことだ。

一方、33年に宇都宮で生をうけた渡辺貞夫。16歳になった時、やはりダンスホールでクラリネットを吹いていた。高校3年で出会ったサックスを抱え、単身上京したのは卒業後だ。

本書を読むと、戦後の東京が「ジャズの街」だったことがリアルに伝わってくる。盛んだった進駐軍ジャズ。各所のジャズ喫茶やクラブ。アメリカの大物演奏家も多数来日した。二人がリンクするのは53年。秋吉のカルテットに、20歳の渡辺が加わったのだ。

3年後、バークリー音楽院に留学する秋吉に代わり、リーダーを務めたのは渡辺だった。本場アメリカで鍛えられた秋吉が、今度は渡辺の留学を助けた。そして、帰国した渡辺もまた多くの後輩たちを支援していく。二つの巨峰に連なる、日本ジャズ山脈の威容だ。

現在89歳になる秋吉敏子と86歳の渡辺貞夫。堂々の現役プレイヤーとして、伝説はまだまだ続いている。

(週刊新潮 2019919日号)

 


文学部横断型人文学プログラム「プロジェクト・ゼミ」成果発表会

2019年09月28日 | 大学

 

 


思わぬ良作、多部未華子主演『これは経費で落ちません!』は怒涛の最終話へ

2019年09月27日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

思わぬ良作、

多部未華子主演『これは経費で落ちません!』は

怒涛の最終話へ

 

9月も間もなく終わりますが、7月に始まった夏クールのドラマも、ほぼ終了となりました。10月の秋クール開始まで、しばらく寂しい時間に入ります。
 
振り返れば、夏クールには30歳前後の、いわゆるアラサー女子と呼ばれる世代のヒロインがたくさん登場していました。
 
上野樹里『監察医 朝顔』(フジテレビ系)。石原さとみ『Heaven?』(TBS系)。杏『偽装不倫』(日本テレビ系)。黒木華『凪のお暇(なぎのおいとま)』(TBS系)などです。
 
昔の言い方なら、「いずれアヤメか、カキツバタ」といった感じの個性的なヒロインたち。結構熱い競い合いになっていました。
 
そんな中で、上記のドラマとは、ちょっと違った雰囲気を持っているのが、間もなく最終話となる、NHKドラマ10『これは経費で落ちません!』(金曜夜10時)です。
 
ヒロインである森若沙名子(多部未華子)は、医師でもレストラン経営者でもなく、中堅せっけん会社「天天コーポレーション」の経理部員です。
 
経理部自体が、会社では「縁の下の力持ち」的な役割を担っているように、沙名子もまた、本来は目立つような存在ではありません。ごく普通の、真面目で、しっかりした、仕事はよくできる経理部員さんです。
 
そんな一見ドラマのヒロインからは遠そうな人物が、ずっと見続けていたいような物語をけん引している。
 
しかも会社というもの、そして、そこで働く人たちの生態というものが、一種普遍的な(どこの会社にもありそうな)エピソードとして描かれている。このドラマの面白さは、そこにあります。
 
毎回、沙名子が何らかの不正や疑惑に気づくことで、物語が動き出します。経費で購入した高級ブランド品や撮影機材の私的流用。取引先との契約更新を利用した不正。請求書や領収書に隠された真実を見抜く力が抜群なのです。
 
とはいえ同じ会社の人間がしたことであり、時には深く追及しないほうがいい場合もあります。沙名子は「うさぎを追うな!(些細な事にとらわれるな)」と自分に言い聞かせたりするのですが、やはり不正を放ってはおけません。
 
なぜなら、それこそが、沙名子が先輩たちから学んできた「経理部の仕事」だからです。また、そんな沙名子のおかげで、当事者が決定的なダメージを受けずに済むこともあるんですね。このあたりの“機微”の描き方も、このドラマの見どころのひとつです。
 
沙名子が持つ生真面目さ、情に流されない正義感、そして本当の意味の優しさ。そんな「森若さん」のキャラクターが、あまりに多部未華子さんにピッタリで、一昨年の秀作『ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~』(NHK)に並ぶ適役といえるでしょう。
 
朝ドラ『つばさ』でヒロインを務めたのが10年前。アラサーとなり、さまざまな「大人の女性」に挑戦する攻めの姿勢に拍手です。
このドラマでは、仕事の面だけでなく、沙名子のプライベート部分からも目が離せません。30歳になる沙名子ですが、これまで恋愛方面については奥手というか、マイペースでした。自分の生活や精神状態を、自分自身でコントロールしている感覚が心地よかったからです。つまり、沙名子にとって、「元カレ」なるものは存在しません。
 
そこへ現れたのが、同じ会社の営業部で働く、山田太陽(ジャニーズWESTの重岡大毅)でした。
 
この「太陽くん」、元気で明るく、少し調子が良すぎるところもあるのですが、沙名子のことは本当に好きなようで、見ている側も「まあ、それなら許そう」(笑)という気分になってきました。ただし、「純情なアラサー女子の心を傷つけたら承知しないぞ!」の条件付き。なにしろ、まさかのプロポーズもしちゃったし。
 
最近の第8話、第9話で、物語は大きく動いてきました。ジュニアと呼ばれる社長の息子、円城格馬(橋本淳)が専務として入ってきたのです。さっそく社内改革に乗り出し、経理部もアウトソーシングの対象と宣言されました。そうなれば、経理部員のリストラが断行されます。
 
一方、吉村営業部長(角田晃広)、新島総務部長(モロ師岡)、新発田経理部長(吹越満)など、反専務派が何やら画策しているようで、社長秘書の有本マリナ(ベッキー)がホステスのバイトをしているクラブに集まっていました。
 
管理職たちが飲み代を経費で落とし、マリナは自分の売り上げになるというセコイ話だけでなく、企業買収がらみの裏の動きがありそうです。
 
すっかり名トリオとなった、沙名子&麻吹美華(江口のりこ)&佐々木真夕(佐藤沙莉)の3人も、自分たちの職場の存続がかかっているだけに、気が気ではありません。
 
リアルとユーモアのお仕事ドラマであり、微笑ましい恋愛ドラマでもある『これは経費で落ちません!』。仕事と恋愛、すべてのエピソードを回収し、どんな着地を見せるのか。怒涛の最終話に注目です。

「ボイス」伊勢谷友介が魅せた異常者ぶり

2019年09月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

 

日テレ「ボイス」伊勢谷友介が魅せた

威風堂々の異常者ぶり


秋風と共に今期のドラマも続々と終了している。「ボイス」も先週が最終回だった。舞台は神奈川県警港東警察署の「緊急指令室」。出動班の樋口(唐沢寿明)と声紋分析官の橘(真木よう子)が主人公だ。樋口は妻(菊池桃子)を、橘は父親を同じ連続殺人鬼に殺害されている。

原作は韓国ドラマだが、結構ツッコミどころが多い。たとえば橘の並外れた聴覚。トンネル内で爆発崩落事故が起き、作業員が閉じ込められる。指令室にいる彼女は、現場で樋口が手にする無線機が拾う音だけで被害者の位置を探るのだ。うめき声やかすかな呼吸音を聞き分け、「25メートル直進して右へ」などと指示を出す。「どんだけ~」と笑っちゃうほどの能力だ。

また樋口は絵に描いたような昭和の刑事。直情径行&暴力上等の熱血漢で、ニックネームが「ハマ(横浜)の狂犬」ときた。48歳の設定だが、今年56歳の唐沢が演じるのは、ちょっと痛い。

そんな主人公ペアを補って余りあるのが、殺人犯を演じた伊勢谷友介(写真)だ。少年時代に父(伊武雅刀)が人を殺す現場を目撃して心が歪み、鉄アレイを使った撲殺を繰り返す。特に伊勢谷の引きつった笑顔が印象的だ。最終回の父に刺殺されるシーンに至るまで、堂々の異常者ぶりが際立っていた。

今期唯一の刑事ドラマだが、やや安直なリメーク物という内容にとどまったのは残念だ。

(日刊ゲンダイ 2019.09.25)


言葉の備忘録107 大切なのは・・・

2019年09月24日 | 言葉の備忘録

 

 

大切なのは、

なにが自分にとっての宝石かを

見極めることだと思う。

社会の隅々にまで行き渡っていた

確固たる基準は、

もはや存在しないのだから。

 

 

東山彰良「越境 ユエジン」


越境
東山 彰良
ホーム社


 


生出演「爆笑問題の日曜サンデー」、無事オンエア!

2019年09月23日 | テレビ・ラジオ・メディア

女優の遊井亮子さん

田中さん、太田さん、遊井さん、江藤アナと


本日、TBSラジオ「爆笑問題の日曜サンデー」に生出演

2019年09月22日 | テレビ・ラジオ・メディア

 

22日(日)の午後、

TBSラジオ

「爆笑問題の日曜サンデー」

生出演します。

 

番組は、13時から17時まで。

私が生出演するのは、

14時からの

『サンデーマナブくん』のコーナーです。

 

番組サイトによれば・・・

 ▼14:00~ 『サンデーマナブくん』
 特集は「がんばれ!2時間ドラマ」。
 各局のレギュラー放送枠がなくなってしまった今、
 2時間ドラマの成り立ちや魅力をマナブ!

・・・とのこと。

 

生放送なので、

どんな話が飛び出すのか

わかりません(笑)。

お時間あれば、

ぜひ聴いてみてください!

 


週刊朝日で、「おっさんずラブ」続編について解説

2019年09月21日 | メディアでのコメント・論評

 

「おっさんずラブ」続編ドラマ10月スタート  

いまだ詳細が発表されない理由は?


8月下旬公開の劇場版が現在も上映中の「おっさんずラブ」が、再びテレビドラマとして帰ってくる!

とはいえ、現時点で分かっていることは、ドラマの第2弾が10月からスタートするということぐらい。作品の内容はおろか、主演の田中圭はじめ、主要なキャストの誰が出演するのかどうかなどの発表もまだないという段階で、ファンもハラハラしているよう。

あるテレビ関係者によれば、

「作品の色が強いドラマということもあるのでしょうか、あるメインキャストが出演に難色を示していて、その調整もあるのではないかとも言われています」

とのことだが、ある放送作家は、「映画が公開中ということもあるのではないでしょうか」とみる。

「続編の情報がたくさん出ることで、興味がドラマのほうに移ってしまい、興行収入に影響を及ぼす可能性もありますから」

ドラマに詳しい上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、

「ドラマの視聴者のすべてが劇場版を見ているわけではないので、それをふまえたものにするのかどうかがまず気になりますね」

と期待するが、人気作の続編ということで、

「シーズン1は、たまたま見た人たちが、面白いなと思い、マッチの火が一本ずつついていき、大きな炎になっていくようなところがありました。しかし、その後社会現象になり、映画もヒットしている。最初から大きなたいまつが燃え盛っているところからのスタートになりますから、その期待度にいかにこたえるかにかかっていますね」

と言う。

碓井教授は、期待を裏切らないためには「ガラっと変えすぎてはいけない」と指摘する。今回の続編では、「男女入り乱れてのラブバトルが展開される」と公表されており、女性も交えた複雑な恋愛事情が描かれるのではないかという見方もある。

「今回初めて見る視聴者もいると思いますが、多くは、“あの”『おっさんずラブ』との再会を楽しみにして見るわけで、みんなの見たい『おっさんずラブ』というものから離れたものにならないこと、男性たち同士のピュアな恋愛というものが作品の根底にあるということは、外さないでほしいところですね」(碓井教授)

前出の放送作家は、

「『TRICK』シリーズや『只野仁』シリーズなど、テレ朝は深夜枠でもシリーズ物を得意とする局ですから、『おっさんずラブ』もあまり外すことない続編になるのではないかと思います。予想しながらワクワクしてもらうためにも、あえて情報を抑え、反応を見ながら調整しているのかもしれませんね」

と語る。

「前作では、人を好きになるとは? 結婚とは? など、それまでのドラマの概念とは違う見せ方で、考えさせてくれたり発見のあるドラマでした。続編でもそういう発見があるといいですね」(碓井教授

まさかのキャスト一新、まったく新しい「おっさんずラブ」が描かれる可能性も現時点ではゼロではないが、明かされる詳細を楽しみに待ちたい。(本誌・太田サトル)

週刊朝日オンライン 2019.09.20)


「週刊少年チャンピオン」主人公と錦織圭選手のコラボ

2019年09月20日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

森永製菓「inバープロテイン」

漫画の主人公と錦織選手コラボ

 

漫画誌「週刊少年チャンピオン」が創刊されたのは、アポロ11号が月に行った1969年7月のことだ。記念の50周年にあたる今年、森永の「inバープロテイン」とコラボした。

登場するのは「バキ道」、「ブラック・ジャック」、「弱虫ペダル」、「ハリガネサービスACE」、「あっぱれ!浦安鉄筋家族」の5作品とテニスの錦織圭選手だ。画面には5人の主人公たちと、5人の作者が描き下した5タイプの錦織選手が並ぶ。

確かに範馬刃牙も大沢木小鉄も錦織圭も、「なりたい自分」以外の何者でもない。また、「いつでも、どこでも、必要なチカラ」を求めていることも共通している。何より、どこまでも挑戦を続ける攻めの姿勢が魅力的だ。

思えば半世紀前、「少年サンデー」「少年マガジン」といった既存の人気漫画誌に挑んだのが「少年チャンピオン」だった。ヒーローとは「あきらめない人」を指す言葉かもしれない。

(日経MJ「CM裏表」 2019.09.16


「サギデカ」木村文乃が圧巻 これから佳境のリアルドラマ

2019年09月19日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

 

「サギデカ」木村文乃が圧巻

これから佳境のリアルドラマ

 

漫画や小説が原作のドラマも結構だが、たまには面白いオリジナル作品を見てみたい。そんな人たちに勧めたいのがNHK「サギデカ」だ。

人公は特殊詐欺捜査が専門の警部補、今宮夏蓮(木村文乃)。悪質な詐欺組織を追っている。主な被害者は老人たちで、家族がトラブルに巻き込まれたと言って欺く基本的なものから、「地面師」グループによる犯罪に巻き込まれたケースまで、展開される詐欺事件はいずれもリアルだ。

夏蓮は捜査の過程で、電話で相手をだます優秀な「かけ子」だった加地颯人(高杉真宙)と出会う。「自殺したくなるほど働かせて微々たる給料しか払わない、合法なだけでケチで冷たいブラック会社より、ウチのほうが社員思いで合理的」だと言い張る加地。「やるんだったら本当にガメツイ年寄りをピンポイントで狙いなさいよ!」と怒りをあらわにする夏蓮。この取調室の場面は、木村が主演女優としての存在感を示して圧巻だった。

実は夏蓮にも加地と同様、過酷な過去があることが分かってきた。加害者と被害者。犯罪者と警察官。単純な対立軸だけでは見えてこない、社会や人間の深層に迫ろうとするこのドラマ、脚本は文化庁芸術祭大賞「透明なゆりかご」の安達奈緒子である。詐欺組織を率いる「番頭」(長塚圭史)や、その上に君臨する「首魁」(田中泯)との戦いもこれからが佳境だ。

(日刊ゲンダイ 2019.09.18)


言葉の備忘録106 自分が・・・

2019年09月18日 | 言葉の備忘録

『ウルトラセブン』第43話「第四惑星の悪夢」で、ソガ隊員が使用していたホロスコープ。本体部分:直径79mm、厚さ19mm、リューズ部分:直径12mm、厚さ4mm、真鍮製。実相寺昭雄研究会所蔵。

 

 

 

自分が何者か

決めるのは自分だ。

人がどう言おうと

関係ない。

 

 

映画「パシフィック・リム:アップライジング」


ドラマの主役はサウナ「サ道」

2019年09月17日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評

 

 

 

 「サ道」

ドラマの主役はサウナ

 

金曜の深夜、もうすぐ午前1時というタイミングで始まるのが「サ道」だ。「さどう」と読むが、茶道ではない。サウナも極めれば「道」になるのだ。とはいえ、お作法講座の番組ではない。れっきとしたドラマである。

ドラマなので主人公をはじめとする登場人物たちがいる。ナカタ(原田泰造)、偶然さん(三宅弘城)、そして若手のイケメン蒸し男(むしお、磯村勇斗)だ。普通のサウナ好きは「サウナー」、達人の域にある者は「プロサウナ―」と呼ばれるが、3人のプロサウナ― は同じ行きつけのサウナで知り合った。

毎回、彼らは上野のサウナ「北欧」で、のんびりサウナ談義をしている。その最中に「ところで、あそこに行ってきましたよ」とナカタが言い出し、画面には彼が一人で訪れた各地のサウナが現れる。いや、旅番組のように原田泰造がレポートするわけではない。ドラマの中の架空の人物、ナカタによるサウナ巡礼の様子が映し出されるのだ。

出かける先は実在のサウナばかりだ。たとえば、杉並の住宅街にあり遠赤外線サウナと屋外での外気浴が人気の「吉の湯」。水風呂がミニプールになっている錦糸町の「ニューウイング」。珍しいテントサウナが楽しめる平塚の「太古の湯 グリーンサウナ」。さらに、富士山の天然水を使った水風呂で知られ、“サウナの聖地”として崇められている静岡の「サウナしきじ」も登場した。いずれも魅力的で、すぐにでも行ってみたくなる。

ナカタはどこのサウナでも、サウナ・水風呂・休憩の「基本セット」を数回繰り返す。やがて、一種のトランス状態のような快感がやってくる。この状態は「整う」と表現されるが、整うことでしか得られない恍惚感がサウナの醍醐味だ。

つまりこの番組、ジャンルとしてはドラマだが、主役は原田泰造ではない。一軒一軒のサウナこそが真の主役であり主人公なのだ。現実の出来事や実在の人物を物語として描く「ドキュメンタリードラマ」という手法があるが、これはそのサウナ版だと言っていい。

架空の人物と実在の場所の見事なハイブリッド。それはヒットシリーズ「孤独のグルメ」などで磨かれてきた、テレ東深夜ドラマのお家芸だ。

(しんぶん赤旗「波動」2019.09.16)


「実相寺昭雄研究会」9月例会 ゲストに堀内正美さん

2019年09月16日 | 映画・ビデオ・映像

 

実相寺昭雄研究会の

9月例会は、

ゲストに

「実相寺組俳優」(ご本人談)の

堀内正美さん(写真前列中央)を

お招きして、

行われました。