日経MJ(日経流通新聞)の年末恒例企画、「テレビCMトップ10」が発表されました。
「2015年のテレビCMトップ10」
1位 au(KDDI) 松田翔太、桐谷健太、浜田岳 <86点>
2位 ライザップ(RIZAP) 赤井英和、香取慎吾 <46点>
3位 ジョージア(日本コカ・コーラ) 山田孝之 <37点>
4位 カップヌードル(日清食品) 錦織圭、橋本環奈、西内まりや <31点>
5位 ポッキー(江崎グリコ) 三代目 j soul brothers from exile tribe <19点>
6位 カロリーメイト(大塚製薬) 平祐奈 <18点>
6位 ラ王(日清食品) 西島秀俊 <18点>
8位 ポカリスエット(大塚製薬) 吉田羊、鈴木梨央、中条あやみ <17点>
8位 WAKE(ダイハツ工業) 玉山鉄二、中島広稀 <17点>
10位 ネオレスト(TOTO) 横田栄司、寺田心 <16点>
この1年間に放送されたテレビCMのうち、「広告効果が高い」と思われるものについて、識者10人がトップ10を挙げ、それを点数化したものです。1位の最高点は100点。
私を含む選者(回答者)10人は以下の各氏です。(五十音順、敬称略)
碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)
川島蓉子(ifs未来研究所所長)
草場滋(メディアプランナー)
佐々木豊(日本デザインセンターブランドデザイン研究所所長)
関根心太郎(CM総合研究所代表)
田中理沙(宣伝会議取締役編集室長)
松田久一(JMR生活総合研究所代表)
神酒大亮(ムービーインパクト代表)
村山らむね(通販評論家)
山田美保子(放送作家・コラムニスト)
(日経MJ 2015.12.28)
詳しい内容は本紙をご覧いただくとして、ここにランクインしたものも含め、個人的に注目した「2015年のCM」を振り返ってみたいと思います。
「2015年の極私的注目CM」(順不同)
●TOTO 「ネオレスト 菌の親子篇」
ネット社会を痛烈に批判した『ネット・バカ』の著者ニコラス・G・カー。その新作が『オートメーション・バカ』だ。飛行機から医療まで、社会のあらゆる部分が「自動化」された現在、利便性に慣れるあまり、それなしではいられない事態に陥っていないかと警告する。
カーの言い分も分かるが、こと温水洗浄トイレに関しては譲れない。悩める人々に福音をもたらした世紀の発明品だと思っている。1982年に登場した、戸川純さんの「おしりだって、洗ってほしい。」というCMも衝撃的だった。コピーは巨匠・仲畑貴志さんだ。
その後も進化を続け、新製品では見えない汚れや菌を分解・除菌し、その発生さえ抑制するという。これではトイレに生息する“菌の親子”、ビッグベンとリトルベンもたまったものではない。 除菌水の威力を見た息子菌(寺田心くん)の「悲しくなるほど清潔だね」のせりふが泣けてくる。ごめんね、リトルベン。
●ソフトバンクモバイル 「白戸家 お父さん回想する篇」
映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を、有楽町の日劇で見たのは全米公開翌年の1978年。それから約20年後に作られたのが『エピソード1/ファントム・メナス』である。後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの少年時代を描いた、後日談ならぬ衝撃の“前日談”だった。
この「お父さん回想する篇」で驚いたのは、お父さん(声・北大路欣也さん)とお母さん(樋口可南子さん)が高校の同級生で、当時の“見た目”は染谷将太さんと広瀬すずさんだったことだ。特に今年の目玉、超新星アイドルである広瀬さんの起用はお見事でした。
また、染谷さんが上戸彩さんにそっくりな保健室の先生(上戸さんの二役)にトキメクのも、後年のお父さんを彷彿とさせて苦笑いだ。今後、染谷さんと広瀬さん、二人の高校時代を舞台に、回想の枠を超えた“前日談”の物語が展開されてもおかしくない。いや、ぜひ見てみたいものだ。
●明治 「果汁グミ 変身ぶどう篇」
思えば「グミ」は不思議な食べ物だ。成分は果汁などとゼラチン。名称はゴムを意味するドイツ語が由来となっている。歯の健康に寄与する菓子という発想が、いかにもドイツっぽいではないか。日本では1980年の「コーラアップ」が初のグミ製品で、発売はもちろん明治だ。以来35年、最近ではグミと聞けば石原さとみさんの顔を思い出す。
今回の「変身ぶどう篇」では、石原さんはOL役だ。「これ、辛抱たまらん。けしからん」とエレベーターの中で、果汁グミを口に入れる。すると、ぶどう柄の衣装へと大変身。可愛いのだが、上司には「魔女?」と聞かれてしまう。ムッとしながら、「妖精だわ」(なぜか名古屋弁風アクセント)と言い返す様子がまた笑える。
石原さんといえば、あの魅力的な唇だ。グミじゃなくても吸い寄せられるだろう。しかし、カメラはそんな唇のアップを撮らないし、見せてくれない。この自制心、この寸止め感。いや、だからこそ、また見たくなるのだ。実にけしからん唇であり、けしからんCMである。
●キリン 「ビターズ チューハイ事業部の謀反 妻篇」
今年の夏に放送されたドラマ「民王」(テレビ朝日系)は出色の1本だった。総理大臣(遠藤憲一さん)と、不肖の息子(菅田将暉さん)の心が、突然入れ替わってしまう破天荒な物語。特に、未曾有の状況に陥った総理を演じる遠藤さんから目が離せない。また、ドタバタコメディでありながら、政治や権力への風刺劇になっている点も秀逸だった。
このCMでの遠藤さんはビール事業部長。最近、ライバルのチューハイ事業部が投入した新製品の動向が気になって仕方ない。部下たち(小池栄子さん、濱田岳さん)の調査によれば、「とりあえずビール」の牙城を崩しそうな勢いだという。
さらに色っぽすぎる妻(橋本マナミさん)も愛飲し、「わたし、メロメロ~」などと言い出す始末だ。遠藤部長はあのワニ顔を千変万化させ、驚いたり憤ったりしている。「男の顔は履歴書で、女の顔は請求書」だというではないか。この夫妻にぴったりの言葉だ。チューハイ事業部はもちろん、妻の“謀反”にも負けず、頑張れ!遠藤部長。
●大和ハウス 「ここで、一緒に 嘘篇」
気がつけば、深津絵里さんとリリー・フランキーさんは、もう4年も“夫婦”をしている。いや、もちろんCMの中での話だ。しかし当初は、あんな素敵な家で深津さんと暮らすリリーさんへの悔しい気持ちがあった。ようやく最近になって、良き隣人夫妻として眺められる平常心も生まれてきた。やはり、継続は力である。
リリーさんの仕事といえば、「週刊SPA!」の連載「グラビアン魂」にトドメをさすと思っている。みうらじゅんさんとグラビアアイドルについて語り合う、究極のエロチック対談だ。外では男の本音と妄想を炸裂させているリリーさんが、家では、妻を元気づけようと子猫を飼い始める。しかも本当はお店で買ってきたのに、捨て猫を助けたと嘘までついて。
多分、深津さんは“夫”の「グラビアン魂」的猥雑性を知っている。同時に、少年のごとき純情と自分への愛情も分かっている。そんなオトナの女性なのだ。うーん、またも悔しさが甦ってきた。
●日清食品 「ラ王 食べたい男 クリスマス篇」
「幸福な家庭は似ているが、 不幸な家庭はそれぞれに不幸である」。トルストイの『アンナ・カレーニナ』に出てくる名言だ。そう、不幸な家庭の“あり方”は千差万別である。西島秀俊さんが抱える事情も特殊なものだ。なぜか家では、大好きな「ラ王」を食べさせてもらえない。
西島さんはこれまでも耐えてきた。「明日のお昼はラ王がいいなんて思わないことにしたんだ」と同僚の滝藤賢一さんに告白したり、ウチで食べていけよと勧められても、「最初のラ王は妻のラ王って決めてる」と断ってしまったり・・・。
街がクリスマスで華やいでも、相変わらずラ王が食べられない西島さんは憂鬱だ。タクシーの運転手(西村雅彦さん)まで「クリスマスったって、ラ王にのっけるチャーシューが増えるくらいでね」などと追い打ちをかける。西島さんは生唾ゴクリだ。食べたいのに食べられない男の笑える不幸が、食べたいだけ食べられる私たちの幸福を浮き彫りにする。
・・・こうして並べてみると、選んだものには“物語シリーズ”が多い。短い秒数でありながら、見たもの以上を想像させる“物語喚起力”に優れていたCMばかりだ。
さて、2016年のCMでは、どんな登場人物たちによる、どんなストーリーが展開されるだろう。
美人度が稀薄になった
「女子アナ」ランキング
「女子アナ」ランキング
1位/水卜(みうら)麻美(28)=日テレ=、3位/有働由美子(46)=NHK=、6位/狩野恵里(29)=テレ東=……。
12回目となる“好きな女性アナウンサーランキング”が今年もオリコンから発表された。10代から50代までの男女1000名への好感度調査の結果だが、なんだかぽっちゃり系が並んでいて、ランキングというより“番付”のよう。
「2位のカトパンこと加藤綾子(30)=フジ=は定位置にいますが、全体的に美人度が稀薄化していますよね。ビジュアルだけならこういう結果にはならない。こういったアンケートに積極的に参加するのは若い女性が多い。その意味では、上っ面の美しさだけで成り立つ商売ではなくなったのでしょう。ネットである程度の素がわかってしまうのですから。それよりも男に振られる哀しみもわかってくれそうな、共感できる“お姉さん”に人気が集まっているのだと思います」
とは上智大学の碓井広義教授(メディア論)である。
美人アナの代名詞であった滝川クリステル(38)は一昨年の6位を最後にランク外となった。また、知的美人でありながら、『モヤモヤさまぁ〜ず2』で意外な天然ぶりを発揮して人気となった大江麻理子(37)=テレ東=は、昨年の4位から10位に一気にダウン。
「金持ちと結婚してからはニュースに専念し、結局ただの女子アナだったのかというガッカリ感が表れているのかもしれません」(同)
四十路を超えてなお自らをさらけ出し、ランクインを続ける有働を見よ!
(週刊新潮 2015年12月24日号)
<第12回 好きな女性アナウンサーランキング>
1 水卜麻美(→昨年1位)日本テレビ
2 加藤綾子(→2位) フジテレビ
3 有働由美子(→3位) NHK
4 山崎夕貴(↑10位) フジテレビ
5 桑子真帆(初) NHK
6 狩野恵里(→6位) テレビ東京
7 竹内由恵(→7位) テレビ朝日
8 夏目三久(↑10位) フリー
9 赤江珠緒(初) フリー
10 大江麻理子(↓4位) テレビ東京
(ORICON STYLE)
「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
井田真木子 『井田真木子と女子プロレスの時代』
イースト・プレス 3240円
新卒で入社したのが早川書房だった。神田多町の本社がまだ木造社屋の頃だ。ハギワラという声の大きい同期がいて、後に“音楽評論家・萩原健太”になる。
また翌年の新人の中にイダさんという物静かな女性がいた。間もなく私が退職したため、彼女のフルネームが井田真木子だと知るのは10年後、1991年に『プロレス少女伝説』が大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した時だ。
『プロレス・・』には3人の女子プロレスラーが登場する。柔道から転身してきた神取忍。中国未帰還者三世の天田麗文。そしてアメリカ人のデブラ・ミシェリーだ。それぞれの尋常ではない半生と女子プロレスの世界を垣間見せてくれる、ルポルタージュの秀作だった。だが、ここには長与千種がいない。
本書では、『プロレス・・』に至るまでの軌跡を辿ることができる。85年からの4年間、専門誌「Deluxeプロレス」に書いた選手へのインタビュー、エッセイ、試合レポートなど、女子プロレスに関する膨大な記事が収められている。
中でも圧巻なのは長与千種へのインタビュー群だ。ライオネス飛鳥とのタッグチーム「クラッシュギャルズ」は、80年代後半に一大女子プロレスブームを巻き起こした。当時トップスターだった長与が、自身やプロレスについてこれほど率直に語ったものはない。
ある時は逆に長与が問いかける。「長与千種って、どんなレスラーなん?(中略)あたしは、どんなあたしなん?ねえ」。井田は、「私に答える義務があるわね」と言い、「長与千種は、観客を、単なる観客のままでおわらせないのね。(中略)観客にも血を流すことを要求するレスラー」だと答えている。取材対象者との絶妙な距離感が生んだ言葉だ。
2001年3月に、44歳で急逝した井田真木子。間もなく没後15年、この分厚く重たい一冊と共に、伝説のフリーライターが甦る。
東野圭吾 『人魚の眠る家』
幻冬舎 1728円
離婚の危機に直面していた夫婦を悲劇が襲う。溺れた娘が脳死状態に陥ったのだ。どのような処置を、どこまで行うのか。迫られる究極の選択。かけがえのない存在である娘と共に、母親は驚くべき道へと踏み込む。作家デビュー30周年記念にふさわしい問題作だ。
西堂行人 『[証言]日本のアングラ~演劇革命の旗手たち』
作品社 2808円
アングラ演劇が興ったのは1960年代後半だ。その担い手は徒手空拳の素人たちだった。唐十郎、鈴木忠志、佐藤信、そして寺山修司に別役実。きらめく才能が、それぞれの「集団」を率いて大暴れした。7人との対話と2本の論考で甦る、演劇が熱かった時代。
林 壮一 『間違いだらけの少年サッカー~残念な指導者と親が未来を潰す』
光文社新書 842円
最近ラグビーが注目されているが、裾野の広さではサッカーに敵わない。しかし著者は強い危機感を持つ。サッカー少年を育てる“よき指導者”の不在と、我が子だけに目を向ける親の存在だ。各地の優れた指導者に会い、再生へのヒントを探る。鍵はメンタルにあり。
(週刊新潮 2015.12.24号)
12月24日、『報道ステーション』(テレビ朝日系)の古舘伊知郎キャスターが、来年3月末で降板することを発表した。番組はタイトルを変更せずに継続され、キャスターのみが交代する形だという。
同日夕方、新聞社からの取材を受け、以下のような内容の話をさせていただいた。
「NHK『ニュースウォッチ9』の大越健介キャスターに続き、古舘さんも降板。安倍政権は2015年のうちに面倒なことを一気に片付けることができて、“年末大掃除完了!”と喜んでいることでしょう。残るはTBS『NEWS23』の岸井成格さんくらいですか。とにかく、古舘さんのことを官邸が快く思っていないことくらいテレ朝は分かっているので、ホッとしていることは間違いありません」
そして一夜明けた25日、「残るは『NEWS23』の岸井さんくらい」と言ったばかりの岸井氏が、古舘氏と同様、来年3月末に降板との報道があった。もしこれが事実なら、安倍政権の“年末大掃除”は、いよいよシャレでは済まなくなる。
●異様な意見広告
11月の中旬、紙面全体を使った意見広告が読売新聞と産経新聞に掲載された。題して「私たちは、違法な報道を見逃しません」。
広告主は「放送法遵守を求める視聴者の会」という団体で、『NEWS23』のキャスター、岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)を非難する内容だった。
今年9月、参議院で安保関連法案が可決される直前、岸井氏は番組内で「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げるべきだと私は思います」と述べた。意見広告はこの発言を、番組編集の「政治的公平性」の観点から、放送法への「重大な違反行為」に当たると断じていた。
確かに放送法第4条には「政治的に公平であること」や、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」が規定されている。
しかし、それは一つの番組内における政治的公平ではなく、事業者が放送する番組全体のそれで判断されるべきものだ。その意味で、岸井発言は決して“違反行為”などではない。
2つの全国紙に、全面広告を打つ費用は決して小さくはない。個人に対する意見広告というのも異例だ。この組織にとって、是が非でも訴えたい内容だったということか。
個人に対する新聞での意見広告というのも異例だったが、それ以上にこの意見広告を目にした時の違和感は、“視聴者(市民)の意見”という形をとりながら、メディアコントロールを強める現政権の思惑や意向を見事に体現していたことだ。
『NEWS23』は、『報道ステーション』と並んで、政権に対しても“言うべきことは言う”姿勢を持った貴重な報道番組だ。その姿勢は、故・筑紫哲也氏がキャスターを務めていた頃と比べて弱まってはいるが、現在も岸井氏が孤軍奮闘で引き継いでいる大事なカラーである。
昨年の11月、同番組に出演した安倍首相は、VTRで紹介された街頭インタビューで自身にとって厳しい意見が流れると、生放送中にも関わらず「これ、ぜんぜん(国民の)声を反映していませんが。おかしいじゃないですか」と抗議した。そうした経緯も、この異様な意見広告で思い起こされた。
また、この広告が出た時期も絶妙だった。10日ほど前の11月6日に、BPO(放送倫理・番組向上機構)が、『クローズアップ現代』(NHK)のやらせ問題に関して「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表。この意見書の中で、放送に介入しようとする政府・与党を、「放送の自由と自律に対する圧力そのもの」だと強く批判したのだ。意見広告は、BPOの意見書に対する政権の反感・反発を“代弁”したかのようなタイミングと内容だった。
そして、もう一つ気になっていたのは、この意見広告に対して、TBSがきちんとした反論や抗議を行ってこなかったことである。本来なら、岸井発言についてはもちろん、放送法や報道番組に対する認識を、放送事業者の見解として示すべき事態だった。
そして、いきなり今回の「岸井氏降板」報道である。
●視聴者に対して説明を
現在、政権の露骨なメディアコントロールが続いている。昨年11月の各局報道局長に対する公平中立要請。今年4月、『クローズアップ現代』に関する総務大臣からの厳重注意。自民党情報通信調査会が行った、NHKとテレビ朝日の幹部への事情聴取。また6月には自民党の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかける」という暴言。さらにBPOの意見書も、政権中枢は真摯に受けとめてはいないことが、いくつかの発言で明らかだ。
テレビ朝日は、そして(岸井氏の件が事実であれば)TBSも、こうした背景と両キャスターの降板が無関係だと言い切れるのか。政権への”恭順”を示すための、トカゲのしっぽ切りではないのか。それは放送の自律や報道の自由を自ら放棄することに繋がらないのか。両局は、視聴者に対して明確な説明を行うべきだろう。
(Yahoo!ニュース個人 2015/12/25)
「報ステ」古舘降板
後任キャスターは宮根か羽鳥か池上か
局アナなら富川悠太
後任キャスターは宮根か羽鳥か池上か
局アナなら富川悠太
「こんにちは。12月24日木曜日、報道ステーションです」
開口一番、「情報ライブ ミヤネ屋」でこう言ったのは、MCを務める宮根誠司(52)。
この日、テレビ朝日が04年から「報道ステーション」のキャスターを務めてきた古舘伊知郎(61)の来年3月末での降板を発表。かねて後任候補として名前が挙がっている宮根は、さっそくネタにしてみせ、「年末までには電話かかってくると思うんで、テレ朝からの電話待ちです。『ミヤネ屋』が(午後)4時に終わって、飛行機に乗ったら間に合う」と“ダブルヘッダー”にも余裕を見せていた。
古舘の降板について上智大・碓井広義教授(メディア論)はこう言う。
「『ニュースウオッチ9』の大越(健介)キャスターに続き、古舘さんも降板。安倍政権は2015年のうちに面倒なことを一気に片付けることができて、“年末大掃除完了!”と喜んでいることでしょう。残るは『NEWS23』の岸井(成格)さんくらいですか。とにかく、古舘さんのことを官邸が快く思っていないことくらいテレ朝は分かっていますからね」
同じ日、会見を開いた古舘は「やってみたらものすごく不自由な12年間だった。綱渡り状態でやってきました」と恨み節をぶちまけていたが、注目は早くも後任人事に移っている。宮根以外にも安藤優子(57)、羽鳥慎一(44)などの名前が挙がっているが……。
「羽鳥アナの可能性は低いでしょう。今年10月に自身の名前がついた冠番組『羽鳥慎一モーニングショー』が始まったばかりで、視聴率も好調。同時間帯の『スッキリ!!』(日テレ系)を抜いてトップの『とくダネ!』(フジ系)に迫る勢いだからです。局内では、古舘の就任以来『報ステ』に出演している富川悠太アナを推す声もあります」(テレ朝関係者)
前出の碓井教授は「古舘さんの後任は誰が来ても難しい。経費削減の意味でも、局アナでつなぐ可能性は十分にあります。ギャラも“タダ”ですしね。もし、有名キャスターでやるとしたら、私が推すのは池上彰さん。厳しいツッコミもしつつ、フォローも上手で『アンチ』も少ない。非常にバランスのいい仕切りができるからです」。
後任について古舘は「僕のようにあまり問題発言をしない人がいいんじゃないでしょうか」と自虐気味に語っていたが、誰がキャスターの椅子に座るかで、テレ朝の報道姿勢がよく分かる。
(日刊ゲンダイ 2015年12月25日)
撮影:内藤絵美(毎日新聞)
竹橋の毎日新聞社へ。
ペリー荻野さんにお目にかかりました。
年明けに掲載予定の「特集ワイド新春対談」です。
ドラマからバラエティまでを、怒涛のように(笑)語り合う、楽しい対談になりました。
朝昼のTV番組のテーマ曲に
槇原敬之が相次いで使われるワケ
槇原敬之が相次いで使われるワケ
気がつけば“マッキーだらけ”である。『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)、『ノンストップ!』(フジテレビ系)といった情報系番組から、10月にスタートした『じゅん散歩』(テレビ朝日系)まで、番組テーマ曲はどれも槇原敬之(46)だ。
平日の朝昼の時間帯に、一人のアーティストのテーマ曲がこうも並ぶのは珍しい。『ノンストップ!』と『じゅん散歩』は時間帯も被っている。なぜどの局も、マッキーを使いたがるのか。
元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんは、その秘密が槇原の持つ職人気質にあると語る。
「槇原さんは誰もが認める一流のアーティストであると同時に、優れた“音楽の職人”でもあります。自分の表現したい世界をゼロから作ることもできるし、オーダーに合わせてイメージに合った曲を作ることもできる。時には番組名そのものを入れることもあります。
そこまでやると『アーティストとしての魂を売った』と言われかねないので、普通は簡単には引き受けないものですが、槇原さんは快諾して書き下ろしています。制約のある中でも自分のクリエイティビティーを発揮できる、職人としての自信と実力があるからでしょう。実際、歌詞の中で番組名が浮くようなこともなく、自然に溶け込んでいると思います」(碓井さん・以下同)
『ヒルナンデス!』のテーマ曲『LUNCH TIME WARS』、『ノンストップ!』のテーマ曲『Life Goes On ~like nonstop music~』にはいずれも番組名がサビの中に入っている。『一歩一会』に番組名は入っていないが、曲のタイトルは番組のコンセプトとして使われる言葉をそのまま使用したものだ。どの曲も番組のイメージを盛り込んでいるが、単独でフルコーラスを聴いてみると、紛れもなくマッキーの曲である。
「発注するテレビ局としても、槇原さんには頼みやすいんです。それは人柄もありますが、技術的なことをいえば、作詞・作曲・編曲と全部やってくれるところが大きいと思います。作曲家、作詞家など別々に発注していると調整が大変。槇原さんなら一人に頼めば済みます。秒数まで思いのまま、オーダーに合った曲を作ってくれます。
さだまさしさんなどもいろんな番組のテーマ曲を手がけていますが、あくまでそれはさだまさしさんの曲として耳に残るものです。槇原さんほど依頼主のオーダーに応えてくれるアーティストはなかなかいないんじゃないでしょうか」
朝昼の明るい時間帯に槇原のテーマ曲が集中しているのも理由があるという。
「槇原さんの曲は、ポジティブで軽快なので、明るい時間帯によく合います。その時間帯の情報系番組は女性視聴者をターゲットにしているので、主婦層に嫌われていてはいけませんが、女性心理も踏まえて作られた槇原さんの曲には女性ファンも多く、問題になりません。
番組のテーマ曲に求められるのは、いい曲であると同時に、曲だけが突出して目立っていないということ。曲は主役ではなく、あくまで番組のイメージを補強するものでなければなりません。自己主張と自己抑制のバランスが大事なのです。槇原さんはそこを自由自在に調整しているといえます」
『どんなときも。』から24年。アーティストとして、職人として、円熟期に入ったマッキーに注目である。
(NEWSポストセブン 2015.12.22)
日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!! 」。
今回は、今年の放送界を振り返る、年末拡大版です。
TV見るべきものは!! 年末拡大版
BPOの矜持を感じさせた
政権与党への意見書
BPOの矜持を感じさせた
政権与党への意見書
この1年の放送界を振り返る、恒例の年末拡大版だ。まずは、3月に発覚したNHK「クローズアップ現代」やらせ問題である。出家詐欺を扱った回で、事実とは異なる人物を登場させたり、恣意的な映像を見せたりしながら、偽りのスクープともいえる内容が流された。
BPO(放送倫理・番組向上機構)が調査を行い、11月に公表された意見書では、当事者である記者に重大な放送倫理違反があったと指摘。報道番組で許容される範囲を大きく逸脱した取材方法や表現を用いたことを強く批判した。
この意見書が異例だったのは、記者やNHKへの意見だけでなく、政権与党に対して、個々の番組に介入すべきではないこと、またメディアの自律を侵害すべきではないと強調した点にある。政権によるメディア・コントロールがさらに強まることを警戒・けん制しており、BPOの矜持さえ感じさせる、筋の通ったものだった。
BPOが懸念するように、今年は政権の露骨なディア・コントロールが続いた1年だ。各局の報道局長に対する公平中立要請。「クロ現」への総務大臣による厳重注意。自民党情報通信調査会が行ったNHK経営幹部の事情聴取。また自民党の勉強会での「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかける」という暴言。そして、前述のBPOの意見書を軽視する政権中枢。来年は、メディア側の自覚と自律がより求められることになる。
■ドラマは良作を送り出したTBSに拍手
次にドラマだが、今年を代表する1本は、やはり「下町ロケット」(TBS系)だろう。町工場の技術者たちの奮闘と大逆転の物語は、2冊の原作を凝縮した脚本、脇役まで気を配ったキャスティングと役者たちの熱演、緩急自在の演出などが融合し、まさに“見るべき”ドラマとなった。
テレビ離れ・ドラマ離れが言われる中、この1年間に「流星ワゴン」「天皇の料理番」「ナポレオンの村」「下町ロケット」の4本を送り出したTBSには拍手を送りたい。技術面も含めた品質をキープし、ドラマ全体の底割れを防ぐ役割を果たした。何より、しっかりと作られたドラマには、たくさんの人の気持ちを動かす力があることを実証した功績は大きい。
2本目は「民王」(テレビ朝日系)だ。首相(遠藤憲一)とダメ息子(菅田将暉)が入れ替わるドタバタコメディが、現実の政治に対する不満や不安を背景に、期せずして秀逸な風刺劇となった点が興味深い。
NHKでは、ピエール瀧が主演した「64(ロクヨン)」が印象に残る。少女誘拐事件と警察内部のせめぎ合いを扱いながら、じりじりするような緊迫感と時代の空気感を表現して見事だった。
さらに、現在放送中の朝ドラ「あさが来た」が視聴者の支持を集めている。幕末生まれの大店(おおだな)のお嬢さんが、どう流転し成長するかという実話ベースが功を奏した。同じく実在の女性の生涯を描いてきた、大河ドラマ「花燃ゆ」の残念な“迷走”と好対照だ。来年、堺雅人主演「真田丸」での大河復活に期待したい。
(日刊ゲンダイ 2015.12.23)
「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
伊藤裕作 『愛人バンクとその時代』
人間社文庫 864円
著者は40年のキャリアを持つ風俗記者。かつては年に百人の風俗嬢を取材していた大御所である。
本書の中心は、昭和58年に大ブームとなった愛人バンク「夕ぐれ族」だ。組織のオーナーで広告塔は筒見待子。後に売春斡旋容疑で逮捕される。ちなみに「愛人バンク」のネーミングを伝授したのは著者だ。体験取材の形で何人かのシロウト女性と出会い、交際の一部始終を報告していく。
バブル景気へと向かう、浮き足立った空気を背景に、愛人獲得の淡い夢を追った男たち。一方どのような若い女性たちが、何を求めて自らに値札を付けたのか。戦後ニッポンの性文化史、欲望史に咲いた“あだ花”の実相が見えてくる。
池井戸 潤 『下町ロケット2 ガウディ計画』
小学館 1620円
この秋のヒットドラマ『下町ロケット』。原作は直木賞受賞作である同名小説と本書だ。ロケットエンジンのバルブに加え、最先端の医療機器開発が焦点となっている。連続する危機に、「逃げたら何ひとつ、残らない。実績も評価もだ」と主人公は一歩も引かない。
河原一久 『スター・ウオーズ論』
NHK出版新書 842円
日本語字幕監修者でもある著者は、映画『スター・ウオーズ』を最もよく知る日本人の一人だ。本書の狙いは、「なぜ面白いのか?」の解明にある。映画史における位置づけ。描かれている物語世界の意味。シリーズが持つ文化としての価値。新作を見る前に読むべし。
(週刊新潮 2015.12.17)
日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。
今回は、広瀬すずさんが出演している、「東京ガス」のCMについて書きました。
東京ガス
「エネファーム 父さんの若い頃は」編
「エネファーム 父さんの若い頃は」編
父と娘の会話 「今」切り取る
今年のマイベスト邦画は是枝裕和監督『海街diary』だ。鎌倉の古い家で暮らす姉妹の物語。特に“平成の原節子”ともいうべき長女役の綾瀬はるかと、腹違いの妹である広瀬すずが印象に残った。
成長していく少女ほど、はかないものはない。今という時間にしか映しこめない輝きがスクリーンの広瀬にはあった。
そんな娘と深夜の食卓で2人きり。聞いてみたいこともあるはずなのに、「父さんの若い頃はなあ・・」と、かつてモテたという得意の話を口にしてしまう。それでも優しい娘は聞いている。スマホを手放さないところが今どきだけど。
ただ、いつもと違うのは、父の話の中に新たなエネルギーシステムが出てきたことだ。ちょっと見直す娘。でも、“努力の話”に転調した途端、席を立ってしまう。これまたリアルで苦笑いだ。
今や“平成の国民的妹”であり、“究極の末娘”でもある広瀬すず。来年はどんな表情を見せてくれるのだろう。
(日経MJ 2015.12.21)